第11章 放射能調査

§2 調査の状況

 わが国における放射能調査は国内各機関の協力の下に大気(浮遊塵埃,落下塵埃,降雨,対流圏,成層圏),海洋(海水,生物,沈澱物,港内海水および海底土),陸上(陸水,土壌),動植物,食品,人体(臓器,骨,尿)等の放射能を調査対象としている。
 大気放射能については気象庁と気象研究所が落下塵,雨水の調査および地表からのγ線測定を行ない,また対流圏,成層圏の放射能をラジオゾンデにより測定し高度6000mまでの大気の資料を採取し,分析を行なった。
 さらに防衛庁技術研究本部ではジエット機により成層圏内の資料採取および測定を行なった。
 海洋放射能については,近海の親潮黒潮の表層海水および将来の廃棄物の海洋投棄に備えての深海水と沈積物の調査を気象庁と海上保安庁で行ない,水産研究所では東京湾および相模湾その他3箇所について生物,沈澱物の調査を行なった。気象研究所では表層海水中の14Cの調査を行なった。また海上保安庁では原子力船サバンナ号入港に備え,横浜港,神戸港のバックグラウンド,海水および海底土の調査を行なっている。
 陸上放射能については各都道府県衛生研究所が陸水の放射能を測定,必要により放射線医学総合研究所がその資料の分析を行なっている。また農業技術研究所では土壌より植物への汚染移動を調査するとともに各地の資料の放射化学分析を行なっている。
 動植物および食品に関しては,農業技術研究所および各地域の農業技術研究所において米,麦,飼料,野菜等について放射能調査および落下塵と土壌の農作物に対する関連性の調査を行なった。家畜衛生試験所では牛骨中の90Srの分析を行なった。さらに食品については各地の衛生試験所で放射能を測定し,必要な場合放射線医学総合研究所で分析した。また栄養研究所では全国3ケ所の標準献立3種につき調査した。なお,放射線医学総合研究所では農畜産物,海産物中の14Cの調査を34年度から始めた。
 人体については放射線医学総合研究所が臓器,骨の90Srおよび地方衛生研究所で採取した尿中の137Csの調査を行なっている。
 さらに日本原子力研究所周辺に対しては同研究所および水戸地方気象台が,大気,土壌,食品および海洋の調査を行なっている。


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