第1章 原子力のあゆみ
§2 34年度におけるおもな発展
§2 34年度におけるおもな発展
2−9 法規の整備
原子力委員会はかねて原子力開発利用を円滑に推進させる上に不可欠の条件である原子力災害補償制度について検討を行なっていたが,33年10月「原子力災害補償についての基本方針」を決定し,専門的事項を審議するための原子力災害補償専門部会を設置した。この専門部会は原子力賠償責任,原子力責任保険,国家補償等の重要問題を検討審議のうえ,34年12月委員会へ答申を行なった。
原子力委員会はこの答申をもととして35年2月「原子力災害補償制度の確立について」なる方針を内定し,その後関係各省との間の意見調整をはかり法案化のための準備が行なわれたが,35年4月27日には「原子力損害の賠償に関する法律案」の閣議決定がなされ,次いで5月2日に正式に法案として国会に提出された。
一方,原子力委員会の機能を強化するため,原子力委員会の委員の定数を増加する必要があるとの主旨から,35年5月「原子力委員会設置法の一部を改正する法律」が制定公布された。これによって委員会の定数は委員長を除き,従来の4名から6名に増加されることとなった。
また,33年4月1日から全面的に実施されている 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」は,わが国における放射性同位元素の利用が緒についた当初に制定されたものであり,現在においては法律制定当時に予想された事態とも若干の相違が生じ,規制の方法をより合理的な姿に修正することが要望されてきた。このような情勢に対処するために法施行後の経験に照らして改正を行なうこととなり,種々検討を行なった結果「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律」として35年5月に公布された。そのおもな改正内容は放射性同位元素と放射性同位元素装備機器との規制の一本化,使用についての届出制の採用,廃棄業者に対する新たな規制,放射線取扱主任者制度の改正等である。
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