第10章 放射線障害防止および廃棄物処理

§1 概 況

 原子力の平和利用においては,核分裂のエネルギーは,放射線や放射性物質の逸出を適当な装置によって食い止めながら,利用されるので放射線障害を与える可能性はきわめて少ない。放射線への曝射の機会を減少させ,障害の可能性を最小にするには2つの点を考慮しなければならない。
 第1は原子力事業に従事している人々がその作業の過程において過度の放射線を受けないようにすることで,これは原子力施設に保護手段を講ずることによって成し遂げられる。第2点については原子力施設から廃棄される放射性物質の放射線からわれわれを護ることである。われわれは現在でも天然の放射線を受けており,長い間これに順応して生存して来たが,原子力の利用はさらに新しい人工放射性物質を増加せしめ,われわれに放射線障害を起させるかもしれないので,この増加を最小限に止める必要がある。このことは放射性物質の安全な廃棄と環境における不断の放射能の監視によって成し遂げられることができる。
 原子力の利用を行なっている国々では,上述の2点を原子力施設者に完全に遂行させるために法規をもって規制している。わが国においても全般的な障害防止の法律として「放射性同位元素等による障害防止に関する法律」さらに原子炉,核燃料等に関しては「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の運転等に関する法律」等により放射線防護,廃棄物処理を規制している。


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