昭和48年6月25日
環境安全専門部会 |
放射性固体廃棄物分科会 |
まえがき |
わが国の原子力開発利用は実用化の時期を迎え、広範な分野において利用がすすみ国民生活の中に重要な役割を占めるようになってきた。
今日のように原子力の開発利用が急速に進展するにしたがって、放射性廃棄物の処理処分は、さしせまった問題となっている。
わが国においては、放射性廃棄物の処理処分方策の確立の緊急性、重要性が早くから認識され、原子力委員会の専門部会等において繰返し検討がすすめられてきた。
昭和47年6月に改訂された〔原子力開発利用長期計画」は今後約20年間を展望し、うち前半の約10年間における原子力開発利用の大綱と、その具体的推進計画を定めている。
本分科会は、上記長期計画に示された放射性廃棄物の処理処分に関する計画を実施していくための具体案を作成することを目的として原子力委員会の環境・安全専門部会に設けられ昭和47年7月以来審議を行なった。
なお長期計画にもられている事項以外についてもあらかじめ検討を加えて、その中から選び出された事項について審議を重ねた。
ここに過去12回にわたる審議の結果をとりまとめ報告する。
なお、本分科会の検討にあたり
① 試験的海洋処分の安全評価の考え方
② 試験的海洋処分用セメント固化体の暫定指針
③ 陸地保管の概念については、ワーキング・グループを設け検討を行なった。
本分科会の構成は以下のとおりである。
放射性固体廃棄物分科会委員名簿(50音順)
(主査) 山崎 文男 |
日本原子力研究所理事 |
委員 石原 健彦 |
日本原子力研究所燃料工学部長 |
板倉 哲郎 |
日本原子力発電株式会社技術部次長 |
井上 頼輝 |
京都大学工学部教授 |
角谷 省二 |
荏原製作所原子力部長 |
金子 泰原 |
昭和電工株式会社環境改善対策部長 |
鎌田 勲 |
日本経済新聞社論説委員 |
左合 正雄 |
東京都立大学工学部教授 |
佐々木忠義 |
東京水産大学水産学部教授 |
庄司大太郎 |
海上保安庁水路部参事官 |
多賀 将 |
気象庁海洋気象部長 |
敦賀 花人 |
水産庁東海区水産研究所放射能部長 |
永倉 正 |
電力中央研究所技術第二研究所構造部当任 |
中島健太郎 |
動力炉・核燃料開発事業団再処理部次長 |
松野 久也 |
通産省地質調査所応用地部長 |
森川 稔 |
住友千葉化学株式会社第二製造部長 |
安福 数夫 |
水産庁次長 |
渡辺 博信 |
科学技術庁放射線医学総合研究所環境衛生研究部長 |
和田 文夫 |
通産省公益事業局技術長 |
ワーキング・グループ構成員名簿 |
石原 健彦
板倉 哲郎 |
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*市川 竜資 |
科学技術庁放射線医学総合研究所環境衛生第二研究室長
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金子 泰原
左合 正雄 |
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*猿橋 勝子 |
気象研究所地球化学研究部主任研究官 |
庄司大太郎
多賀 将
敦賀 花人
永倉 正 |
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(*は、分科会委員以外のワーキング・グループ構成員)
旧委員 菱田 耕造 昭和48年3月まで当時気象庁海洋気象部長 |
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放射性固体廃棄物分科会開催日 |
第1回 |
昭和47年 7月14日(金) |
2 |
〃 8月11日(金) |
3 |
〃 9月8日(金)
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4 |
〃 10月12日(木)
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5 |
〃 11月 1日(水)
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6 |
〃 12月15日(金)
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7 |
昭和48年 2月 2日(金) |
8 |
〃 2月 24日(土)
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9 |
〃 4月 6日(金)
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10 |
〃 5月 10日(木)
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11 |
〃 6月 25日(月) |
ワーキング・グループ会合開催日 |
第1回 |
昭和48年 2月 2日(金)
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2 |
〃 2月21日(水)
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3 |
〃 3月14日(水)
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4 |
〃 4月 4日(水)
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5 |
〃 4月25日(水)
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6 |
〃 5月24日(木)
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7 |
〃 6月12日(火) |
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第1章 緒 論 |
原子力開発利用長期計画では、「低いレベルの固体廃棄物については、陸地処分および海洋処分を組合せて実施する方針でのぞむものとする。
前者については昭和50年代初め頃までにその見通しを明確にするものとし、後者については試験的海洋処分を経て、昭和50年代初め頃までにその見通しを得ることとする。」
「イオン交換樹脂等中程度のレベルの放射性廃棄物については、昭和50年代中頃までにその処分の方針を決定するものとし、それまでは当該施設内に保管しておくものとする。」「使用済核燃料再処理施設等で発生する高いレベルの放射性廃棄物については当面慎重な配慮のもとに保管しておくものとする。」との基本的な方針を明らかにしている。
本分科会は、上記の基本的な方針を実現していくための具体案を検討するにあたって
① 放射性廃棄物の処理処分を安全かつ経済的に実施するにはどのような配慮が心要か。
② 放射性廃棄物の処分を、国内的、国際的な合意のもとに実施するには、どのような配慮が必要か。
③ 放射性廃棄物の処理処分方法を早急に確立するためには、研究開発をどのようにすすめるべきか。
④ 放射性廃棄物の処理処分に関し、研究から実施にいたるまでの体制はどうあるべきか。
⑤ わが国の放射性廃棄物の処理処分方法を確立していくためには国際協力をいかに推進すべきか。
の5つの観点から検討をすすめた。 |
第2章 検討をすすめるにあたっての基本的立場
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本分科会は、検討をすすめるに先立って、放射性廃棄物の処理処分の全般について再検討を加え、放射性廃棄物の分類および放射性廃棄物の処分方法を以下のように限定して検討をすすめることにした。 |
2.1放射性廃棄物の分類
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原子力施設から発生する放射性廃棄物の種類は、多種多様であるが、処分方法に注目して分類すると、
① 法令に定められている基準値を十分下まわるよう処理して環境中に希釈放出される極低レベルの液体状、気体状の廃棄物
② セメント、ビチューメン等の固化材を用いて固化し、固体廃棄物として処分される低レベル、中レベルの固体状液体状の廃棄物
③ 処理方法または、処分方法が確立されるまでの間貯蔵施設を用いて一時的に保管貯蔵される低レベル、中レベル、高レベルの固体状、液体状、気体状の廃棄物の3つに大別される。
このうち①の極低レベルの放射性廃棄物については、原子力施設では環境中に希釈放出する放射能の量を低減すべきであるという考え方にたって液体および気体廃棄物の処理施設の増強を行なっているのできわめてわずかな量になっている。
このため②の固体廃棄物として処分されるものが増大することになる。
本分科会は、3つに大別される放射性廃棄物のうち①のものは濃度規制に加えて、総量規制を実施することが別に検討されているので検討の対象から除外することとした。
一方、②③に該当する廃棄物は、放射能レベルによって、低レベル固体廃棄物、中レベル廃棄物、高レベル廃棄物の3つに分類して検討を行なった。
(注)性状が特殊な廃棄物については、処理処分方法に特別な配慮が必要なので、放射能レベルに無関係に個々の廃棄物ごとに検討を行なった。
(注)放射性廃棄物のレベルによる分類については、1967年IAEAによって1つの試みがなされた。
本分科会は、この試みを分類の基礎として採用している。
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2.2 放射性廃棄物の処分方法
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(1)海洋処分
放射性廃棄物の海洋への処分方法は、希釈放出を別にすると。
① 回収または再処分を前提とした、人間の管理下における浅海での保管
② 深海底への永久処分の2つに分けることができる。
①については、わが国の周辺海域はどこをとっても漁場となっており、可能性が少ないので検討から除外し、②の深海底への投棄による永久処分に焦点をしぼって検討を行なった。
(2)陸地処分
放射性廃棄物の陸地における処分方法は、①回収または再処分を前提とした、人間の管理下における陸地の保管施設を用いた保管(以下陸地保管という。)、②地中の施設への永久処分、③地中への直接の永久処分(地中埋没)、④深い地層への圧入の4つに分けることができる。
このうち、④については、技術的問題が十分解明されていないので検討から除外した。
(3)その他の処分方法
海洋処分、陸地処分以外には、①南極大陸の氷冠への永久処分、②宇宙空間への永久処分、③核消滅処理(Transmutation)等が考えられるが、現時点では、安全性、経済性、技術的可能性に関して不確定要素が多いので今回の検討の対象からは除外した。
しかし、これらを含めて今後とも新しい処理処分方法の調査研究をすすめることが必要である。
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第3章 放射性廃棄物の種類別の処理処分の方針
3.1 低レベル固体廃棄物
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本分科会では処分を前提とした低レベル固体廃棄物について現行法規の規定上からみて、原子力施設から発生する液体状固体状の放射性廃棄物をセメント、ビチューメソ等の固化材を用いて固化した固体廃棄物の表面における生体実効線量率が200mrem/hour以下のものであると考えた。
なお、これはIAEAレベル区分では、カテゴリーⅠに該当するものである。
また、化学工場から出てくるウラン廃触媒も低レベル固体廃棄物として処分できる範囲にはいると考えられる。
なお、ウラン触媒の使用は中止されたので、廃触媒の量が今後増加することはないとみられる。
このような固体廃棄物は、固化体の数量が極めて多くなり輸送等の取扱い作業が大きな問題となる。 |
3.1. 1 海洋処分
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低レベル固体廃棄物の海洋処分に関する安全評価としては、(財)原子力安全研究協会の固体廃棄物処理処分専門委員会が行なった試算があるが、ここで用いた条件には不確定要素があるが、安全側にみても一応海洋処分は安全に実施し得るとの見通しを明らかにしている。
この委員会は、この安全評価をより確かなものとしていくためには、容器の耐久性および放射性核種の浸出率、海底土の吸着による放射性核種の保持、鉛直拡散の速度、生物への移行、蓄積等について、調査研究を行なうことが必要であるとしている、なおこのほかOECDで行なった評価があり、十分安全に実施しうるとの見通しを得ている。
このような調査研究の成果をふまえて、前述の長期計画では、処分キュリー数を制限すれば低レベル固体廃棄物の海洋処分を安全に行なう方法を立案することは可能であるとの見通しに立ち、試験的海洋処分の実施を経て、本格的な海洋処分を実施すべきであるとの方針を明らかにしている。
この方針にしたがって、現在わが国では、セメント固化体の耐圧性、セメント固化体からの放射性核種の浸出等について試験研究をすすめるとともに、試験的海洋処分に適当と考えられる4つの海域について海洋環境調査をすすめているところである。
これらの試験研究の一応の成果が得られた段階で、総合的な安全評価を行ない、安全を確認したうえで処分キュリー数を低くおさえた試験的海洋処分を実施し、処分後は海洋調査および固化体の追跡調査を可能な限り実施し、本格的な海洋処分の際の安全評価法を確立していくことが適当と考える。
本格的な海洋処分の実施は、このような試験的海洋処分によって得られた知識と経験をもとに処分量、処分方法、処分環境等について評価検討を繰返し、十分に安全な処分量をきめていくべきであると考える。
本分科会は、現在実施、計画されている。
試験研究を検討した結果、海洋調査が一応終了し、海洋環境のデータ、セメント固化体に関するデータが一応まとまる。
昭和50年度頃から試験的海洋処分の実施のための総合的な安全評価に着手し、昭和52年頃から試験的海洋処分を実施することを目標として、試験研究を一層強力にすすめる等の所要の措置を講ずることが適当であると考える。
試験的海洋処分の実施は、4,000m以上の深海へ行なわれることを勘案すると、処分後において固体廃棄物を管理することは不可能なので、慎重に対処することが必要である。
このため、事前の総合的な安全評価は、十分信頼のおけるものでなければならない。
試験的海洋処分の安全評価に対する考え方を付録-1に示す。
以上の点をふまえて、試験的海洋処分の実施計画を立案するにあたっては、以下の5項目に留意する必要がある。
(1)現在海洋調査をすすめている候補海域の中から試験的海洋処分実施海域を選定し、付録-1の安全評価の考え方のような方法で安全評価を行ない、人間と自然におよぼす影響が実質ゼロとなるような処分量を決定する。
このため、各界の専門家で構成される委員会を国に設け、海域の選定、安全評価を行ない、その結果を公表する。
(2)試験的海洋処分の実施が安全性の観点からみて十分可能であるとの判断が得られたならば、処分される放射性核種、キュリー数、実施方法、実施海域等は事前に公表し、IAEA等の国際機関に通告するなど、国内的および国際的な理解のもとに試験的海洋処分を実施する。
(3)試験的海洋処分の経験は、IAEA等の国際機関に公表し、海洋処分に関する国際的な経験の蓄積に貢献する。
(4)試験的海洋処分の経験の積重ねによって、海洋処分が安全であるという見解が得られたならば、国は国内的、国際的な動向を十分考慮して、海域の指定、処分方法、処分量の制限および障審防止等関連する諸法令を整備する。
(5)信頼性のある安全評価を実施するためには、種々の深海調査技術の確立が重要であるので、試験的海洋処分の経験をふまえて、この方面の技術の確立をはかる。
本分科会は、原子力施設ではすでにセメントを用いた固化が行なわれている点に注目して付録-2のとおり、試験的海洋処分用低レベル放射性廃棄物のセメント固化体に関する暫定指針をとりまとめた。
この指針は試験的海洋処分を目標として暫定的にとりまとめたものであるので、試験的海洋処分の実施等により得られたデータを加味して海洋処分用固化体の基準化等をはかるよう国に期待する。
一方、ビチューメンを用いた固化体については、セメント固化体に比べて、放射性物質の浸出がきわめて少ないという特長があり海洋処分に適している面もあると考えられるが、わが国では、試験研究が開始されてまだ日が浅く、技術的蓄積が十分でないため固化体の暫定指針をとりまとめるに至らなかった。
現在、原研および動燃ではビチューメン固化法の研究開発をすすめているところであるので、このような成果をふまえて安全評価に必要な情報を蓄積しつつビチューメン固化体の基準化をはかっていくことが適当である。 |
3.1.2 陸地処分
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(1)陸地保管
現状では、最終処分方法が確立されていないので、原子力施設から発生する固体廃棄物は、主として原子力施設の敷地内に設けられた保管施設に一時的に保管している。
本分科会は、陸地の施設を用いて長期間固体棄物を人間の管理下において保管し、一定期間を経た固体廃棄物は、再び取出して検査を行ない、必要に応じ適当な処理をほどこし、再保管または最終処分を行なうような方式を陸地保管としてあつかうことにした。
このような考え方に基づき、将来、原子力施設の敷地外で、固体廃棄物を集中して保管する可能性を考慮して陸地保管施設の指針を付録-3としてまとめたのでこれを参考として基準の作成を行なうことを希望する。
陸地保管を対象とした放射性廃棄物の固化体は保管施設の構造によって強度、耐久性等の必要条件に柔軟性をもたせることができると考えられる。
一般的には、従来から原子力施設でつくられているセメント固化体は、十分陸地保管のための必要条件を満たすものと考えられるが、これらの固化体は主として海洋への処分を考えて固化されている。
しかし、陸地保管用の固化体としてはより経済的で安全を損なわない方法もあると考えられるので、陸地保管の計画の具体化にあわせて、基準作成の検討をすすめることが必要である。
ビチューメン固化法については、海洋処分用固化体の研究開発の成果を参考として陸地保管用固化体の基準の作成の検討をすすめることが必要である。
一方陸地保管の用地を効率的に利用するとともに、保管施設までの輸送を軽滅する観点からすれば、廃液はセメント、ビチューメン等で固化して容積あるいは、重量を増加させるよりは力焼等の処理を行ない、輸送に適した容器等で保管する方法も有望と考えられるので、このような技術の研究開発をすすめることが必要である。
陸地保管は、施設の設計によって十分安全を確保できるので、適切なサイトを確保し、その周辺地域の水利、地質、気象等の点について調査をすすめ、そこの環境条件に応じた計画を立案することが適当であると考える。
(2)地中の施設への永久処分(以下、地中処分という。)および地中埋没
放射性固体廃棄物の陸地における最終処分として、諸外国では、地中のトレンチ、ウニル等の人造構築物への封じ込め、岩塩層等の地層中に設けた施設への封じ込め、地中への直接埋没等が、その国の実情に応じて利用されている。
しかし、わが国では国土が狭く人口が多いため適地が少ないうえに気候が湿潤なこと等もあってあまりかえりみられなかった。
しかし最近の試験研究によれば、放射線防護の観点からは、わが国でも十分安全性を確保できるという報告が行なわれている。
本分科会は、地中の施設への封じ込めによる最終処分については、施設による安全対策が比較的容易なことを考慮するとサイトの環境条件が明確になれば、わが国でも十分採用し得ると判断した。
なお、地中処分の安全評価は、付録-4を適用することにより可能なので、処分計画立案にあたっては、これを参考として検討することが適当であると考える。
一方、地中へ直接埋没する方法の実施は必ずしも不可能ではないと考えられるが、現時点では、この方法の実施は困難であると判断した。
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3.2 中レベル廃棄物
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原子力発電所から発生する放射能レベルの比較的高い樹脂、再処理施設から発生する蒸発濃縮廃液等は、表面における生体実効線量率が200mrem/hour以下の低レベル固体廃棄物になるように均一固化するとすれば固化体の数量が莫大なものとなるので経済的な方法とはいえない。
本分科会としては、このような廃棄物は、低レベル固体廃棄物の最終処分方法が確立するのを待って処理処分を行なうべきであると考える。
幸いなことに、このような廃棄物の発生量はそれほど多くないので、一時的に原子力施設内の地下タンク等に貯蔵しておき、ある程度放射能が滅衰するのを待って適当な処理(例えば、樹脂ならば、焼却等)を行なって固化する方法をとることが適当である。
また、二次的に発生する中レベル固体廃棄物は前述の陸地保管の考え方に準拠した陸地保管により対処すべきであると考える。
当面は、このような方法で対処することにしても、動燃の再処理施設においては、運転にともなって発生する蒸発濃縮廃液は、一定期間貯蔵の後、ビチューメン固化法によりり処理する計画であること等を勘案すると、動燃のビチューメン固化パイロットプラントの運転開始前には、中レベル廃棄物の固化体の基準を作成するよう早急に研究開発をすすめる必要があると考える。
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3.3 高レベル廃棄物,α-廃棄物
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高レベル廃棄物とは、使用済核燃料の再処理の第1次抽出工程から発生する廃液のようなもの、および使用済核燃料の付属品、溶解工程から発生する固体状の廃棄物等である。
また、α-廃棄物とはpu等の超ウラン元素のα-放射体が主となった廃棄物をいう。
これら2種類の廃棄物は、管理すべき時間がきわめて長時間にわたること、障害をひきおこす潜在的能力がきわめて大きいこと等の点でその処理処分は慎重を要する。
このような廃棄物の最終処分は、各国とも調査研究の段階であるのでわが国でも研究開発を行ない、この分野での国際協力に資することがきわめて有益であると考える。
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3.3.1 高レベル廃棄物
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固体状の廃棄物は、特別な容器に入れて保管することによって、十分安全を確保する可能性があると考えられる、しかし液体状の廃棄物は、結局は固化して、環境中への逸散を防止することが望ましい。
第一次抽出工程から発生する廃液には、半減期の異なる放射性核種が多数含まれているので、直ちに固化処理を行なうことは適切な処置とはいえない。
むしろ、一定期間液体のままで安全に保管し、短半減期核種の減衰を待って処理する方が放射線防護処理の経済性および処理によってできる固体の除熱等の点ではるかに有利である。
動燃においてはこの考え方にもとづいて再処理施設の建設をすすめているが、固化処理技術については、海外技術の調査に着手した段階にすぎないので、早急にわが国の情勢に適応した高レベル廃液処理技術の確立をはかっていくことが必要である。
このため、海外技術の調査をふまえて、再処理施設内に高レベル廃液固化パイロットプラントを建設し、廃液の処理を行なうとともに、処理技術の研究開発をすすめることが望ましい。
このプラントは動燃が現在用意している高レベル廃液貯蔵タンクが廃液で満たされる前に運転開始することを目標に54年度頃までに完成することが必要である。
また、固化処理によってつくられる固体または固休状の高レベル廃棄物の一時的な保管法につい ても、パイロットプラントの建設、運転計画と整合性を保って検討をすすめていく必要がある。
原研においては、動燃の計画を側面的に援助しながら、より安全で、効率的な処理方法を確立するため固化済、群分離等の研究開発に着手することが望まれる。
高レベル固体廃棄物の処分方法としては、わが国では、アメリカ等と同様人造の保管施設を用いた保管方式を採用することとし、この面での国際的な技術の進展に注目しつつ研究開発をすすめることが適当であると考える。
高レベル廃棄物の処理処分は、国際的に大きな関心が持たれており、IAEA・OECD・NEA等を中心に活発な情報交換が行なわれている。
このうち、NEAでは、ユーロケミック再処理工場の運転停止にともない、ここに貯蔵されている高レベル廃液の処理処分を共同研究プロジェクトとして運営することを検討しているといわれているが、わが国としても、このプロジェクトの内容を調査検討し、有益であれば、このプロジェクトへの参加を考慮すべきであると考える。
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3.3.2 α-廃棄物
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核燃料の有効利用としてのPuの利用に伴って、α-放射体によって汚染されたいわゆるα-廃棄物の発生量は次第に増加していくことが予想される。
α-廃棄物の量は、目下のところわずかであるので、あまり処理を施こさず、各原子力施設内に特別の保管場所を設けて保管しているが、今後の発生量の増加を勘案して、可燃物の焼却による滅容等、処理技術の確立をはかっていくことが当面の課題である。
現在のところ、α-放射体を含むとおもわれるものは、すべてα-廃棄物として扱われているが、天然に存在するものおよび人工核種であっても、ある一定量以下のものは、α-廃棄物としては扱わずにβ、γ並みの低レベルの廃棄物として扱うことが科学的に妥当と考えられるので、こうした取扱いについて検討をすすめていくことが必要である。
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3.4 特殊な廃棄物
3.4.1 気体状廃棄物
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原子力施設で発生する気体状の廃棄物は、フィルター、滅衰タンク、チャコール、ベッド等により捕捉し、短寿命核種を滅衰させる等の処理を行なった後大気中に放出されている。
将来は、現在大気中に放出している放射性核種についても、捕捉して安全に処分することが望まれており、物理的・化学的に気体状廃棄物を処理する技術の開発がすすめられている。
補足処理によって、分離された、気体状の廃棄物の処分方法としては、当面ボンベ等により保管することも考えられるが、できるだけ固定化して、保管する方向へもっていくことが必要である。
一方、雑固体・有機溶媒等可燃性の廃棄物は滅容化のために焼却処理が今後広く利用されると予想されるが、これに伴う放射性物質の大気中への逸散を防止するため揮発性物質微粒子等の補集除去およびその処分についても研究開発をすすめる必要がある。
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3.4.2 雑固体
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原子力施設の運転、保守管理等に伴って発生する紙くず、ボロ、保温材、フィルター等の雑固体は、汚染レベルは極めて低いにもかかわらず放射線防護の万全を期するため、放射性廃棄物として扱われる。
このような廃棄物は現在のところは、圧縮の可能なものは、圧縮して、ドラム管等につめて保管し、可燃物の一部を焼却処理して滅容化をはかっているにすぎない。
しかし、このような廃棄物の発生量は無視できなくなってきているので、可燃性の紙くず、木くず、ボロ等は十分除染効率のよい焼却炉を用いて焼却し、滅容化をはかることが適当であると考える。
しかし高分子系のものについては、現在の焼却炉には種々の問題があるので、今後この面での技術開発の進展に着目していく必要がある。
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3.4.3 動物性廃棄物
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放射性核種およびこれらで標識した物質を動物に投与する実験が広く行なわれるに伴い、放射能で汚染された動物の屍体および排泄物等の廃棄物が次第に増加している。
このような廃棄物は現在のところ腐敗防止のためにホルマリン溶液中に保管した後に集荷されるため、比較的焼却処理の容易なものまで処理しにくくしているとともに、ホルマリン処理が不十分なものは、保管の間に腐敗がすすみその後の処理をますます困離なものにしている。
今後は、発生もとで保管管理を完全に行なうとともに、これに適合した処理法の開発を急ぐ必要がある。
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3.4.4 廃炉、大型機器等
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耐用年数をすぎた原子力施設の大型の機器の解体については、わが国でも小規模のものについては、原研等で経験が得られており、技術的な見通しも得られている。
廃炉とそれ以外の大型機器は必ずしも同一の議論はできないが、廃棄物管理の観点からすれば、完全に解体して処分を考えるよりは、解体を一部にとどめ、施設内七保管することの方が現時点では妥当な方法と考えられる。
しかし長期的には完全な解体処分が計画される可能性もあるので、適当な事例があれば、それを研究対象として、技術の確立に努めること、設計時において、解体処分を検討しておくことが必要である。
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第4章 研究開発のすすめ方
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第3章でのべたように、低レベル固体廃棄物、中レベル廃棄物、高レベル廃棄物およびその他の特殊な廃棄物はそれぞれ今後5~10年以内にその処理処分方法を確立することが必要となっている。
第3章で提示された研究開発項目は、わが国の放射性廃棄物の処理処分の方策を決定するうえで、重要かつ緊急度の高いものである。
このような研究、開発は、関連する分野がきわめて広範多岐にわたっているので、円滑かつすみやかに目標を達成していくためには、国の指導のもとに官学民が一致協力して総合的、計画的かつ効率的にすすめるため必要がある。
このため、国は研究開発体制を整備強化するとともに、放射性廃棄物に関する専門家を養成する等総合的な対策を講ずるべきであると考える。
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第5章 処分体制のあり方
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わが国の原子炉等規制法の体系においては、放射性廃棄物の処理処分は事業者の責任に委ねられている。
このため、現在、原子力施設から発生する放射性廃棄物はそれぞれの敷地内の保管施設、格納タンク等に保管されている。
他方、放射線障害防止法で規制される。放射性同位元素等で汚染された廃棄物については、日本アイソトープ協会により集荷された後原研の廃棄物処理施設で処理し、廃棄物施設に保管廃棄している。
しかし、放射性廃棄物の、最終的な処理処分については、下記のような観点から一元的に行なう機関を設立し、責任体制を明確にして実施する必要があると考えられる。
① 処分後においても処分された廃棄物は、人間の生活環境から隔離されるべきであり、処分を実施する者も未来永劫にわたって責任を有する組織でなければならない。
② 経済性の観点からみて、個々の事業者が処分を実施する場合には、無駄があり、エネルギー、コストの上昇を招く一要因となるおそれがある。
③ 個々の事業者が処分を実施するよりは専門の機関が行なった方が、統一のとれた安全性の確保をはかるうえで望ましい。
④ とくに海洋処分の場合には、国際社会に対して、責任を明確にし、国際的な理解を得る必要があるので、個々の事業者による処分の実施は望ましいものではない。
処分の実施にあたっては、一般公害の場合と同じく原則として汚染者負担の考え方を採用するものとするが、エネルギー供給の一翼をになう原子力開発利用の調和のとれた発展が社会的要請となっている現在、その前提となる廃棄物の処分を行なう事業はきわめて公益性が高いと考えられること、莫大な費用がかかること国際的な責任のかかる事業であること、国民の安全確保に大きな貢献をすること等を考えれば、この一元的な機関の設立には国が積極的な役割を果すことが望ましい。
またこの機関は、研究開発を自からも実施する性格をもたせ、処理処分技術の開発と処分の実施とを一貫して行なうことにより一層の安全確保をはかるようにすることが望ましい。
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第6章 国際協力のすすめ方
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昨年6月のストックホルム会議以来環境問題をめぐる国際情勢はますます厳しいものとなって来た。
ストックホルム会議の精神をうけて、昨年11月には海洋投棄による海洋の汚染を防止する目的で、海洋投棄規制条約の仮調印が行なわれた。
本条約は、本年末頃までには発効する見通しであり、わが国も近々この条約に正式調印する予定である。
このような情勢のもとで海洋処分を実施するには、国際社会の理解に基づいて行なわなければならない。
このため、わが国としては、IAEA、NEA等の活動に積極的に参加し、処分海域の条件、処分可能量、処分に関する技術的基準、処分方法の要件等について国際的な意見の統一に努力するとともに、わが国が広範に海洋資源を利用している海洋国であるという特殊性をふまえて、わが国の意向を国際社会に反映していくよう努めることが必要である。
また、今後は、国際的な処分事業の実施についても注目していくことが必要である。
他方、処理処分技術については、各国に共通する問題が多いので、研究開発をすすめている国々と適宜技術、情報の交換を行なったり、国際的な共同研究プロジェクトに参加したりすることにより、わが国の処理処分技術の確立に資することが必要である。
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第7章 要約
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本分科会の結論を要約すると次のとおりである。
(1)低レベル固体廃棄物の海洋処分については、現在実施されているセメント固化体に関する試験研究、処分候補海域における海洋調査等の結果をもととして昭和50年度から安全評価に着手し、安全性の観点からみて十分可能であるとの判断が得られたならば、昭和52年頃から試験的海洋処分を実施するという目標を置くことが適当であると考える。
安全評価に関して本分科会は付録-1のとおり「試験的海洋処分の安全評価の考え方」をとりまとめたが、処分に対して国民の正しい理解を得るため、安全評価を行なうにあたっては、国に各界の専門家によって構成ざれる評価機関を設けて検討を行なうとともに検討の内容および結果を公表する必要がある。
本分科会は、「試験的海洋処分用セメント固化体に関する暫定指針」を付録-2のとおりとりまとめたので、今後の試験的海洋処分はこの暫定指針にそって遂行されるよう希望する。
(2)低レベル固体廃棄物の陸地保管および地中の施設への処分については、安全な施設を設計することは可能であると考えられるので、早急に適切な地点を確保し、その周辺地域の環境条件に応じた実施計画を立案することが適当であると考える。
本分科会は、「放射性固体廃棄物保管施設に関する指針」を付録-3のとおりとりまとめたので、国においてはこれを参考として早急に基準の作成に着手するよう希望する。
(3)低・中レベルの可燃性廃棄物の焼却あるいは廃液の燃焼、高レベル廃液の固化処理等解明されるべき点が多々あると考えられるので、これらの研究開発を強力に推進すべきである。
とくに、動燃事業団の再処理プラントの操業計画を考慮し、再処理プラントから発生する高レベル廃液については昭和54年度から固化処理に着手することを目標に、動燃事業団にパイロットプランの建設を行ない、研究開発を強力にすすめる必要がある。
処理処分に関する研究開発は、関連分野が多岐にわたるため、総合的、計画的かつ効率的にすすめる必要がある。
このため、国は研究開発休制の整備強化、専門家の養成等総合的に対処すべきである。
(4)放射性廃棄物の処分については安全性を十分に確保しつつ計画的、経済的に実施するとともに、処分にともなう責任を明確にしておくため、一元的に行なうことが必要である。
このため、これを専門に実施する機関を設立し、国が積極的役割を果す処分体制を確立する必要がある。
(5)放射性廃棄物の処理処分の問題は、原子力開発利用を推進している各国に共通する問題であるので、国際的な事業への参加、IAEA、NEAを通じた技術、情報の交換等の国際協力を推進して、処理処分の技術の確立をはかっていくことが必要である。
また、わが国は広範に海洋資源を利用している海岸国であることをふまえて、国際社会にわが国の意向を反映させるよう努力すべきである。
なお、本分科会は現時点において一応の実現の見通しが得られている技術に着目して検討をすすめてきたが、高レベル廃棄物の氷冠への処分、核消滅処理等の新しい処理処分方法、法制の整備等については、今後検討をすすめていくべき必要のある事項であると考えられるので、適宜検討が行なわれることを希望する。
*付録は省略します。
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