昭和48年5月12日
原子炉安全専門審査会 |
原子力委員会委員長 前田佳都男殿 |
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄
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四国電力株式会社伊方発電所の原子炉の設置変更
(原子炉施設の変更)に係る安全性について |
昭和48年4月3日付け48原委第99号(昭和48年5月12日付け48原委第147号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。 |
Ⅰ 審 査 結 果 |
四国電力株式会社伊方発電所の原子炉設置変更(原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「伊方発電所の原子炉設置変更許可申請書」〔昭和48年3月28日付け四原発第36号をもって申請(昭和48年5月4日付け四原発第42号をもって一部訂正)〕に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保しうるものと認める。 |
Ⅱ 変 更 内 容 |
原子炉の付属設備として海水淡水化装置を設ける。 |
Ⅲ 審 査 内 容 |
本変更は、当初の淡水の取水方法を変更し、海水の淡水化により発電所用水を確保するために、多段フラッシュ型、容量約1,000m3/日の海水淡水化装置2基を設けるものであるが、本装置には以下のような安全設計および安全対策が講じられ、また他の原子炉施設については何ら変更がないので、本変更後も原子炉の安全性は十分確保しうるものと認める。
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1 海水淡水化装置の設計 |
本装置は、現在最も実績のある多段フラッシュ型のものであり、加温した海水を真空の容器内で蒸発させて得られる。水蒸気を凝縮させて淡水を得るものである。得られる製造水の水質は全固形分約5ppm以下と極めて良好である。
本装置の設計、製作については、装置の使用条件に対して十分な強度を有する構造とするほか、その性能の維持のため伝熱部等の腐食およびスケール付着に対して防食塗装の施工、耐食材料の使用、原料 海水の前処理および運転温度制限等の配慮がなされることになっている。また、水質確保のため、装置出口において電気伝導度計による水質監視を行ない、製造水の水質が劣化した場合には適宜ブローすることとしている。
なお、本装置の原料および冷却に使用する海水は、主復水器冷却水の取水路から約0.2m3/秒を取水し、使用後は復水器冷却水の放水路に放水するが、取水した海水の約20分の1が淡水化される設計であるため、放水される海水の塩分濃度は原料海水の塩分濃度の1.05倍程度に上昇するに止まり、さらに主復水器の冷却水により十分に希釈される。
本装置の加熱用等の蒸気としては、所内補助蒸気系から供給される蒸気(発電所運転中は通常、タービン第5抽気を熱源としてスチーム・コンバータを介して得られる蒸気、またその他発電所の停止中等は補助ボイラからの蒸気)を使用する。
すなわち、本装置の造水部は、原子炉1次冷却系とは、3段の熱交換器、すなわち蒸気発生器、スチーム・コンバータおよびブライン・ヒータ、を介しており、原子炉1次冷却系はもとより2次冷却系とも直接にはつながっていない。
また、本装置の設置こ伴なう抽気量の増加は10t/時以下であり、原子炉の運転熱出力もわずかに増加するが、すでに許可を受けている原子炉熱出力(約1,650MW)を変更する必要はない。
なお、スチーム・コンバータおよびブライン・ヒータの伝熱管に破損が生じたまま海水淡水化装置を運転中、蒸気発生器細管破損が生じた場合に原子炉1次冷却系中の放射性物質が4次冷却系に相当する循環ブライン中に移行する万一の場合の対策として、ブライン・ヒーター部において2次側(ブライン側)圧力を1次側(加熱蒸気側)圧力よりやや高めることとしている。
したがって、製造水に1次冷却系からの放射性物質が混入することはなく、これを飲料水として用いる従事者の被ばくについても何ら問題は生じない。 |
2.発電所用水と原子炉の安全性 |
原子炉の安全性の確保に必要な水は、発電所内のタンクに常時蓄えられており、非常の場合にあっても、外部からの補給を必要としない設計となっている。
したがって、発電所用水の取水方法を変更しても原子炉の安全性は何ら損われることはない。
すなわち、平常運転時についてみると、発電所の運転に必要な水量(平均約1,000m3/日、最大約1,500m3/日)が十分確保できるよう海水淡水化装置の容量(約1,000m3/日×2基)および発電所内のタンクの容量(約9,000m3)を定めており、海水淡水化装置のこれまでの運転実績からみても発電所用水の取水方法として十分信頼性を有するものと認められる。
また、万一所要水量が確保できなくなった場合には、原子炉を停止することとしている。
事故時についてみると、原子炉に設備される各種の工学的安全施設のうち、その作動に最も多量の水を必要とするのは、炉心を冷却する非常用炉心冷却系と原子炉格納容器圧力低減系としての格納容器スプレイ系である。
これらに使用する水は燃料取替用水タンク等に常時貯留されており、事故時にあたり外部からの淡水の供給を行なう必要はなく、必要な期間適切な炉心冷却が確保される。
したがって、本変更後における原子炉の災害評価は従来どおりであり、また平常時の被ばく評価も変らない。
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Ⅳ 審 査 経 過 |
本審査会は、昭和48年4月18日第113回審査会において次の委員からなる第97部会を設置した。
審査委員 |
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高島 洋一 |
(部会長) |
東京工業大学 |
村主 進 |
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日本原子力研究所 |
調査委員 |
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私山 守 |
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東京大学 |
同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行なうこととし、昭和48年4月28日第1回会合を開き、以後部会において審査を行なってきたが、昭和48年5月7日の部会において部会報告書を決定し、同年5月12日の第114回審査会において本報告書を決定した。 |