(2)技術的及び経済的検討範囲並びに作業の方法
A 技術的及び経済的検討範囲
1) 核燃料と重水の入手可能性
a) 原子力需要予測,並びに,それに関連付けられた各種核燃料サイクル戦略ごとのウランと重水の需要予測
b) ウランの入手可能性
- 資源及び生産能力の評価
- 合弁事業を含む探鉱及び生産を奨励するための政策と誘因
- 探鉱及び生産に投資する企業に対する市場政策,及び若しくは,売上げ保証
- 電力業者に対する市場政策,及び若しくは,供給保証
- 探鉱,採掘及び製錬の技術開発
c) 重水の入手可能性
d) トリウムの入手可能性
e) 開発途上国にとっての特別の必要性
2) 濃縮の入手可能性
a) 種々の核燃料サイクル戦略ごとの濃縮の需要と入手可能性
- 将来の供給能力に関する共同計画
- 相互投資の可能性
- 自由市場における顧客の選択の自由
b) 種々の濃縮技術の技術的,経済的評価
c) 各種濃縮技術の核拡散の危険性の評価と比較
d) 濃縮に特有な保障措置上の側面
e) 多国間,若しくは地域的な核燃料サイクルセンター又は,同様の仕組み
f) 開発途上国にとっての特別の必要性
3) 核不拡散と相容れる国家的必要性上関心となる,技術,核燃料,及び重水の長期供給と諸役務の保証
a) 需給者間の長期商業契約の奨励
(市場の安定性に影響を及ぼす要因,例えば,供給,需要,及び価格を含む。)
b) 国としての輸入,輸出,及び核不核散政策上の関連での,確実な供給の保証
c) 供給の遅滞,又は途絶が起きた場合に,時宜を得た供給を保証する多国間,又は国際的な機構
d) プルトニウムの,他の核燃料との交換,若しくは,他の核燃料への評価換えの可能性
e) 開発途上国にとっての特別の必要性
4) 再処理,プルトニウムの取扱い,リサイクル
a) 再処理
- 完全な工業規模における再処理の経済上,環境上,及びエネルギー上の側面の研究
- 再処理に特有な保障措置上の側面
- 多国間,若しくは地域的な核燃料サイクルセンター又は,同様の仕組み
- 代替再処理方法
- 諸再処理案が,廃棄物処理処分戦略,及び経済性に及ぼす影響
b) プルトニウムの取扱い
-高純度に濃縮されたプルトニウムの充分な貯蔵,輸送,及び使用のための,可能な条件及び制限
-分離されたプルトニウムの国際的管理(IAEA管理下の貯蔵,及び関連の利用可能諸基準を含む。)
-スパイキング,若しくはプルトニウムを混合酸化物の形又は燃料要素の形で,可能なら予め照射して,移動すること
c) 熱中性子炉へのリサイクル
- 工業規模での本概念の持つ,技術上,経済上,環境上,及びエネルギー上の側面の研究
リサイクルに特有な保障措置上の側面
- ウランのみのリサイクルの可能性
b) 開発途上国にとっての特別の必要性
5) 高速増殖炉
a) 工業規模での本概念の持つ,技術上,経済上,環境上,及びエネルギー上の側面の研究
b) 高速増殖炉に特有な保障措置上の側面
c) 再処理方法:次のものを含む。
- 完全な工業規模での再処理のもつ,技術上,経済上,環境上,及びエネルギー上の側面の研究
- 高速増殖炉再処理に特有な保障措置上の側面
- 多国間,若しくは地域的な核燃料サイクルセンター又は,同様の仕組み
- 代替再処理方法
d) 開発途上国にとっての特別の必要性
6) 使用済燃料の管理
a) 貯蔵の諸戦略と,その費用
- 軽水炉用
重水炉用
- ガス冷却炉用
- 高速増殖炉用
b) 短期的/中間的貯蔵
- 現有貯蔵能力評価
- 使用済燃料貯蔵拡大の諸方法
- 立地及び輸送問題
- 現存使用済燃料貯蔵容量の,より有効な利用
- 制度上,環境上,保障措置上,及び安全上の側面(燃料の健全性問題及びそれに伴うリスクを含む。)
- 費用
- 法律的問題
c) 開発途上国にとっての特別の必要性
7) 廃棄物処理処分
a) 取扱い及び処分のための技術
- 使用済燃料
- 分離された廃棄生成物
b) 貯蔵施設(永久的,又は取出し可能な)
- 立地問題
それ以後の回収の可能性,又はリスク
- 制度上,-環境上,安全上の側面(貯蔵施設の健全性問題,及び地質上のリスク,並びに放射性生成物の漏洩に対する防護を含む。)
- 費用
- 法律的問題
- 安全性の問題
c) 開発途上国にとっての特別の必要性
8) 新しい核燃料サイクル及び原子炉の概念
a) 現在の熱中性子炉のための,核燃料の使い捨て利用
- 使い捨て核燃料の利用度を増加する方法
・・・最適化された核燃料及び出荷設計
・・・タンデム・サイクル
・・・スペクトラル・シフト
- 使い捨て核燃料の利用のエネルギーバランス,並びに,経済上,保障措置上,及び環境上の側面
・・・軽水炉用
・・・重水炉用
・・・ガス冷却炉用
b) その他の原子炉及び核燃料サイクルの概念
- 動力炉用の高濃縮ウランの生産利用,及び保障措置
- 研究炉(高濃縮ウランの使用,並びに,その代替策)
- トリウムU233-サイクル
- 軽水トリウム増殖炉の概念
- 高温炉
- その他の改良型原子炉の概念(核融合,加速器増殖炉を含む)
各ケースにつき,該当する場合には,
・・・核兵器に使用され得る物質が分離されうる核燃料サイクルの各段階,並びに,拡散の危険性を最小にしうる方法の確認
・・・経済上,環境上,及びエネルギー上の側面
・・・商業化のリードタイム
・・・安全性の問題
c) 開発途上国にとっての特別の必要性
B 組織
1) 前述の各章ごとに,そこでの作業に対して貢献することを希望する全ての国から構成される,一つの国際的作業グループが設けられる。これら8グル-プの共同議長国に指定されたのは,次のとおりである。
第一グループ 共同議長国-カナダ,エジプト,インド(3か国)
第二グループ 共同議長国-仏,西独,イラン(3多か国)
第三グループ 共同議長国-豪,フィリピン,スイス(3か国)
第四グループ 共同議長国-日本,英(2か国)
第五グループ 共同議長国−ベルギー,イタリア,ソ連(3か国)
第六グループ 共同議長国−アルゼンチン,スペイン(2か国)
第七グループ 共同議長国−フィンランド,オランダ,スウェーデン(3か国)
第八グループ 共同議長国−韓国,ルーマニア,米国(3か国)
2) 各グループは,適宜,関連のある他のグループの共同議長と協議した後,同グループの下にサブグループを設けるか否か,決めることとなる。本研究のための共通資金はなく,議長提供国を含め各参加国が自己の参加の経費に責任を持つ。各グループ又はサブグループは,作業を各参加国間で分担する。参加国の政府機関間,又は産業界との共同研究が,可能な範囲で組織される。参加国からのいかなる貢献も歓迎される。
3) 各々のグループが,それぞれ当該分野において完全且つ現実的な情報を収集することを可能とするため,全ての参加者は,本評価計画の完遂のために必要なデータの交換を促す。
4) 各々のグループは,少なくとも年1回開かれる参加国総会に報告する。次の総会は,約1年後に,ウィーンにて開催する。本研究は2年以内に完了されなければならない。これら研究及び報告書は,第一義的に,技術的かつ分析的なものである。ある立場が合意された場合には,その合意を表明するものの,各参加者は,そう希望する場合には,反対意見又は個別意見をもつ権利を有し,それは作業部会報告書に含められることとなる。参加者最終総会は,約2年後に開催される。
5) 作業部会の共同議長により構成される技術調整委員会が,技術的観点から諸グループの作業を調整するために,6カ月毎,又は,他の合意された頻度で,開催される。他の参加者は,オブザーバーとして参加できる。技術調整委員会の第1回会合は,ウィーンのIAEA施設において,昭和52年12月12日に開催される。技術調整委員会は,総会に対して報告する。
6) 評価作業においては,IAEAの能力を活用する。IAEAは,本計画の全てのグループ,及びサブグループ,並びに技術調整委員会に出席することができる。特に,IAEAには,事務局機能を提供するよう,求めることができる。関連のある他の国際的及び政府加盟の機関は,本作業グループに参加するよう招かれている。
注)IAEA・・国際原子力機関
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