原子力委員会ホーム > 決定文・報告書等 > 原子力白書 > 「令和2年度版 原子力白書」HTML版 > 2-2 原子力のエネルギー利用を進めていくための取組

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2-2 原子力のエネルギー利用を進めていくための取組

 エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合性等の課題に対し、原子力エネルギーは、地球温暖化対策に貢献しつつ、安価で安定的に電気を供給できる電源の役割を果たすことが期待されます。また、電力小売全面自由化により、原子力発電も電力市場の競争原理の下に置かれています。
 このような状況を踏まえ、安全性の確保を大前提に適切に原子力のエネルギー利用を進めていくことが必要です。原子力規制委員会による厳格な審査の下で、使用済燃料の貯蔵・管理を含め、軽水炉を長期的に利用するための取組が行われるとともに、使用済燃料を資源として有効利用する核燃料サイクルの確立に向けた着実な取組が進められています。


(1)軽水炉の着実な利用に関する取組

① 電力自由化の下での安全かつ安定的な軽水炉利用

 2016年の電力小売全面自由化により、従来の地域独占18や総括原価方式19による投資回収の保証制度が撤廃され、原子力発電も電力自由競争の枠組みの中に置かれています。一方で、原子力発電には、事故炉廃炉の資金確保や原子力損害賠償のように、市場原理のみに基づく解決が困難な課題があります(図2-17)。このような課題に対応するため、事故炉の廃炉を行う原子力事業者等に対して、廃炉に必要な資金を原子力損害賠償・廃炉等支援機構に積み立てることが義務付けられています。
 また、電力自由化の下で原子力発電所を長期的に利用するため、原子力事業者等を含む産業界は、安全性向上に係る自律的・継続的な取組を進めています20


自由化の下での財務・会計上の課題への対応の基本的な考え方

図2-17 自由化の下での財務・会計上の課題への対応の基本的な考え方

(出典)総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力システム改革貫徹のための政策小委員会「電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめ」(2017年)に基づき作成


② 使用済燃料の貯蔵

 使用済燃料は、再処理されるまで各原子力発電所の貯蔵プール等で貯蔵・管理されており、2021年3月末時点で、各原子力発電所には合計約16,240tU21の使用済燃料が貯蔵・管理されています(表2-2)。


表2-2 各原子力発電所(軽水炉)の使用済燃料の貯蔵量及び管理容量(2021年3月末時点)

(出典)電気事業連合会「使用済燃料貯蔵対策の取組強化について(使用済燃料対策推進計画)」(2021年)


 一部の原子力発電所では貯蔵容量がひっ迫しており、今後、原子力発電所の再稼働による使用済燃料の発生等が見込まれる中、貯蔵能力の拡大が重要な課題です。このような状況を踏まえ、「使用済燃料対策に関するアクションプラン」(2015年10月最終処分関係閣僚会議)に基づき、電気事業者が「使用済燃料対策推進計画」を2015年11月に策定(2018年11月一部改定)しました。同計画では、発電所敷地内の使用済燃料貯蔵施設の増強(貯蔵用プールのリラッキング(図2-18)、乾式貯蔵施設(図2-19)の設置等)、中間貯蔵施設の建設・活用等により、2020年頃に4,000tU程度、2030年頃に2,000tU程度、合わせて6,000tU程度の使用済燃料貯蔵対策を行う方針を示すとともに、使用済燃料発生量の低減の検討や理解活動の強化に向けた検討等に取り組むとしています。2020年9月には、四国電力株式会社の伊方発電所において、使用済燃料乾式貯蔵施設の設置に対し原子炉設置変更許可が行われました。また、中間貯蔵施設として建設が進められているリサイクル燃料貯蔵株式会社のリサイクル燃料備蓄センターについては、2020年11月に原子力規制委員会から新規制基準適合性に係る事業変更許可が行われました。
 使用済燃料対策に関するアクションプランに基づいて設置された使用済燃料対策推進協議会では、使用済燃料対策推進計画を踏まえた電気事業者の取組状況について確認を行っています。2020年7月に開催された第5回協議会では、計画で示した2020年代頃に使用済燃料貯蔵容量の4,000tU程度の拡大、2030年頃に更に2,000tU程度、合わせて6,000tU程度の拡大に向け、各社の取組の一層の強化と業界全体の連携・協力に取り組む必要性が確認されました。


リラッキングの例

図2-18 リラッキングの例

(出典)電気事業連合会「貯蔵能力拡大の具体例」に基づき作成


湿式貯蔵と乾式貯蔵の例

図2-19 湿式貯蔵と乾式貯蔵の例

(出典)資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ「使用済の核燃料を陸上で安全に保管する『乾式貯蔵』とは?」(2019年)に基づき作成


コラム ~海外事例:ドイツとスウェーデンにおける使用済燃料の貯蔵~

 原子力発電所再稼働による使用済燃料の発生等を見据えた使用済燃料貯蔵能力の拡大は、我が国における重要課題の一つです。海外事例として、ドイツとスウェーデンの状況を紹介します。

ドイツ

 ドイツでは、2002年の原子力法改定により、2005年7月以降は再処理を目的とした原子力発電所からの使用済燃料の搬出が禁止されました。そのため、使用済燃料は最終的に直接処分されるまでの間、原子力発電所内外の貯蔵施設等で貯蔵されることとなりました。
 原子炉から取り出された使用済燃料は、原子炉建屋内の貯蔵プールで数年間貯蔵された後、輸送及び貯蔵兼用のキャスクに収納され、強制空冷設備を備えたサイト内の貯蔵施設において乾式貯蔵されています。キャスクは、通常時及び事故時の放射線遮蔽、臨界安全、さらに地震等の外的事象に対しても健全性を維持する基準を満たすものとなっており、許認可上の貯蔵期限は40年とされています。また、一部の使用済燃料は、輸送及び貯蔵兼用キャスクに収納されて原子力発電所サイト外に搬出され、アーハウス(1992年操業開始)とゴアレーベン(1995年操業開始)の集中中間貯蔵施設において乾式貯蔵されています。

スウェーデン

 スウェーデンでは、使用済燃料は再処理せず、直接処分することとされています。原子力発電所で発生する使用済燃料は、最終処分が実施されるまでの間、オスカーシャムにある使用済燃料集中中間貯蔵施設(CLAB)で貯蔵されます。
 原子炉から取り出された使用済燃料は、約1年間それぞれの発電所サイト内に貯蔵された後、CLABに搬出されます。CLABは、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)が運用する施設で、使用済燃料の受入れ・取扱い設備と補助システム等で構成される地上部分と、貯蔵プールを備えた地下部分で構成されています。使用済燃料は、地下約30mの岩盤中に設置された貯蔵プールに保管されます。CLABは1985年に操業が開始され、貯蔵容量は8,000t、年間の受入能力は300tとされています。2021年2月までに、約7,300tの使用済燃料が貯蔵されており、貯蔵容量の上限に近づいています。そのため、2015年に、SKBは関係当局に対し、貯蔵容量を11,000tに引き上げるための許可申請を実施しました。


(2)核燃料サイクルに関する取組

① 核燃料サイクルの概念

 「核燃料サイクル」とは、原子力発電所で発生する使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を再び燃料として有効利用することです。核燃料サイクルは、ウラン燃料の生産から発電までの上流側プロセスと、使用済燃料の再利用や放射性廃棄物の適切な処分等からなる下流側プロセスに大別されます(図2-20)。
 上流側のプロセスは、天然ウランの確保・採掘・製錬、六フッ化ウランへの転換、核分裂しやすいウラン235の割合を高めるウラン濃縮、二酸化ウランへの再転換、ウラン燃料の成型加工、ウラン燃料を用いた発電からなります。
 下流側のプロセスは、使用済燃料の中間貯蔵、使用済燃料からウラン及びプルトニウムを分離・回収するとともに残りの核分裂生成物等をガラス固化する再処理、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の成型加工、MOX燃料を軽水炉で利用するプルサーマル、放射性廃棄物の適切な処理・処分等からなります。なお、再処理を行わない政策を採っている国では、原子炉から取り出した使用済燃料については、冷却後、直接、高レベル放射性廃棄物として処分(直接処分)される方針です。


核燃料サイクルの概念

図2-20 核燃料サイクルの概念

(出典)一般財団法人日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」(2016年)


② 核燃料サイクルに関する我が国の基本方針

 エネルギー資源の大部分を輸入に依存している我が国では、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、核燃料サイクルの推進を基本方針としています。この基本方針に基づき、核燃料サイクル施設や原子力発電所の立地地域を始めとする国民の理解と協力を得つつ、安全の確保を大前提に、国や原子力事業者等による中長期的な取組が進められています(図 2-21)。


図2-21 我が国の核燃料サイクル施設立地地点

(出典)一般財団法人日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」(2017年)


 このうちウラン濃縮施設や使用済燃料の再処理施設は、核兵器の材料となる高濃縮ウランやプルトニウムを製造するための施設に転用されないことを確保する必要があります。我が国は、原子力基本法において原子力利用を厳に平和の目的に限るとともに、IAEA保障措置の厳格な適用を受け、原子力の平和利用を担保しています。また、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持し、プルトニウムの適切な管理と利用に係る取組を実施しています22
 なお、2020年7月の日本原燃六ヶ所再処理工場の新規制基準適合性に係る事業変更許可を受け、同年10月に「核燃料サイクル協議会」が10年ぶりに開催されました。同協議会では、原子力・核燃料サイクル政策の推進、特定放射性廃棄物の最終処分23、原子力人材育成・研究開発について、三村青森県知事と加藤内閣官房長官・関係閣僚等による意見交換が行われました。また、核燃料サイクル政策を我が国の基本的方針として引き続き堅持し、六ヶ所再処理工場やMOX燃料工場の竣工を進めるとともに、地元の理解を得ながらプルサーマルを推進すること、最終処分の実現に向けて国が前面に立って取り組むこと等が確認されました。


③ 天然ウランの確保に関する取組

 天然ウランの生産国は、政治情勢が比較的安定している複数の地域に分散しています(図2-22)。また、ウランは国内での燃料備蓄効果が高く、資源の供給安定性に優れています。冷戦構造の崩壊後、高濃縮ウランの希釈による発電用燃料への転用が開始されたことにより生産量は一時落ち込みましたが、需要はほぼ横ばいで推移しており、2011年の東電福島第一原発事故以降も一定量の生産が維持されています(図2-23)


ウラン生産国の内訳(2018年)

図2-22 ウラン生産国の内訳(2018年)

(注)インドと南アフリカは、OECD/NEA及びIAEAによる推定値。
(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium 2020: Resources, Production and Demand」(2020年)に基づき作成


ウラン需給の変遷

図2-23 ウラン需給の変遷

(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium 2020: Resources, Production and Demand」(2020年)に基づき作成


 国際的なウラン価格は、2005年以降、大きく変動しています。スポット契約価格24は、2007年から2008年にかけて急上昇した後、2009年には急下落しました。一方で、長期契約価格は2012年頃まで上昇を続けましたが、その後は下降傾向にあります。近年では、スポット契約価格が75米ドル/kgU程度、長期契約価格が100米ドル/kgU程度で推移しています(図2-24)。


ウラン価格の推移

図2-24 ウラン価格の推移

(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium 2020: Resources, Production and Demand」(2020年)に基づき作成


 ウラン資源量について、原子力委員会は、2018年12月に公表した「高速炉開発について(見解)」において、枯渇が懸念される石油や天然ガス等の資源と同様に、ウランも資源量は探査技術、採掘技術の進歩とともに増加してきたとの見方を示しています。OECD/NEAとIAEAが共同で公表した報告書でも、2019年末における発見済の既知資源量は1997年に比べて増加しており、中長期的に見るとウラン資源量は増加してきたといえます。
 一方で、今後の見通しについては、中国やインド等、世界的に原子力発電が拡大してウラン需要が高くなるケースでは、中長期的にウラン需給ひっ迫の可能性が高まると予測されています(図2-25)。天然ウランの全量を海外から輸入している我が国にとって、安定的に天然ウランを調達することは重要な課題です。資源エネルギー庁は、資源国との関係強化に資する探鉱等について、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC25)への支援を実施し、ウラン調達の多角化や安定供給の確保を図っています。


図2-25 ウラン需給の見通し

(出典)OECD/NEA & IAEA「Uranium 2020: Resources, Production and Demand」(2020年)に基づき作成


④ ウラン濃縮に関する取組

 原子力発電所で利用されるウラン235は、天然ウラン中には0.7%程度しか含まれていないため、3〜5%まで濃縮した上で燃料として使用されています(図2-26)。初期にはガス拡散法というウラン濃縮手法が用いられていましたが、現在は、遠心分離法が主流になっています。我が国では、日本原燃の六ヶ所ウラン濃縮工場(濃縮能力は年間75tSWU26)において、1992年から濃縮ウランが生産されています。2012年からは、日本原燃が開発した、より高性能で経済性に優れた新型遠心分離機が段階的に導入されています。
 なお、世界のウラン濃縮能力は表2-3のとおりです。


ウラン濃縮のイメージ

図2-26 ウラン濃縮のイメージ

(出典)内閣府作成


表2-3 世界のウラン濃縮能力(2020年)
事業者 施設所在地 濃縮能力
(tSWU/年)
フランス オラノ社 ピエールラット 7,500
ドイツ ウレンコ社 グロナウ 14,900
オランダ アルメロ
英国 カーペンハースト
日本 日本原燃 青森県六ヶ所村 75
米国 ウレンコ社 ニューメキシコ 4,700
ロシア テネックス社 アンガルスク、ノヴォウラリスク、ジェレノゴルスク、セベルスク 28,663
中国 核工業集団公司(CNNC27 陝西省漢中、甘粛省蘭州 10,700+
その他 アルゼンチン、ブラジル、インド、パキスタン、イランの施設 170

(出典)世界原子力協会(WNA)「Uranium Enrichment」(2020年)等に基づき作成


⑤ 濃縮ウランの再転換・ウラン燃料の成型加工に関する取組

 濃縮ウランから軽水炉用のウラン燃料を製造するためには、六フッ化ウランから粉末状の二酸化ウランにする再転換工程と、粉末状の二酸化ウランを成型、焼結し、ペレット状に加工し、被覆管の中に収納して燃料集合体に組み立てる成型加工工程の2つの工程が必要となります。
 再転換工程については、国内では三菱原子燃料株式会社のみが実施しています。なお、東電福島第一原発事故前は、海外で濃縮し再転換されたものの輸入も行われていました。
 成型加工工程については、国内では三菱原子燃料株式会社、株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン及び原子燃料工業株式会社の3社が実施しています。なお、東電福島第一原発事故前は、加圧水型軽水炉(PWR)用と沸騰水型軽水炉(BWR)用ともに、国内で必要とされる量の大部分をこの3社で賄っていました。


⑥ 使用済燃料の再処理に関する取組

1) 使用済燃料再処理機構の設立

 再処理等が将来にわたって着実に実施されるよう、「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」(平成17年法律第48号。平成28年法律第40号により改正。以下「再処理等拠出金法」という。)に基づき、2016年10月に使用済燃料再処理機構(以下「再処理機構」という。)が設立されました(図2-27)。なお、再処理等拠出金法の附帯決議において、経済産業大臣が再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画を認可する際には、原子力委員会の意見を聴くものとされています28


原子力発電における使用済燃料の再処理等のための拠出金制度の概要

図2-27 原子力発電における使用済燃料の再処理等のための拠出金制度の概要

(出典)第20回総合資源エネルギー調査会基本政策分科会資料2 資源エネルギー庁「使用済燃料の再処理等に係る制度の見直しについて」(2016年)に基づき作成


2) 使用済燃料の貯蔵及び再処理の推進

 軽水炉でウラン燃料を使用することにより発生する使用済燃料は、中間貯蔵施設等において貯蔵された後、再処理によりウラン及びプルトニウムが分離・回収されます。
 リサイクル燃料貯蔵株式会社のリサイクル燃料備蓄センター(むつ中間貯蔵施設)は、最終的に5,000tの貯蔵容量拡大を計画している中間貯蔵施設です。原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査の結果、同施設は2020年11月に使用済燃料の貯蔵事業の変更許可を受け、竣工に向け取組を進めています。
 日本原燃再処理事業所の六ヶ所再処理工場(再処理能力は年間800tU)では、2000年12月から使用済燃料の受入れ・貯蔵が開始され、2021年3月末時点で約3,393tが搬入されています。また、そのうち約425tがアクティブ試験29において再処理されています。原子力規制委員会は2020年7月、新規制基準への適合性審査の結果、同事業所における再処理の事業変更許可を行いました。これを受け、安全性向上対策工事(図2-28)の工程見直しが行われ、施設の竣工時期は2022年度上期に延期されています。


日本原燃六ヶ所再処理工場の冷却塔移設工事(竜巻対策)の様子

図2-28 日本原燃六ヶ所再処理工場の冷却塔移設工事(竜巻対策)の様子

(出典)日本原燃「再処理工場の主な安全性向上対策のための準備工事状況について」


 我が国では、原子力機構の東海再処理施設を中心として再処理及び再処理技術に関する研究開発を行い、1977年から2007年まで累積で約1,140tの使用済燃料の再処理を実施しました。この過程を通じて得られた技術は、日本原燃への移転がほぼ完了しています。2018年6月には東海再処理施設の廃止措置計画が原子力規制委員会により認可され、高放射性廃液のガラス固化等を最優先で進めることとしています。なお、ガラス固化作業については、2019年7月から機器の不具合により処理が中断されており、原子力機構において、処理再開に向けた作業等が進められています。
 なお、我が国の使用済燃料の一部は、英国及びフランスの再処理施設で再処理されてきました。世界の再処理能力は表2-4のとおりです。


表2-4 世界の主な再処理施設(2020年)
国名 運転者 所在地(施設名) 再処理能力
(tU/年)
営業開始時期
フランス オラノ社 ラ・アーグ 1,700 1966年
英国 セラフィールド社 カンブリア・シースケール (ソープ) 900 1994年(2018年閉鎖)
(マグノックス) 1,000 1964年(2021年閉鎖予定)
ロシア 生産公社マヤーク チェリャビンスク 400 1977年
日本 原子力機構 茨城県東海村 120 1981年(廃止措置中)
日本原燃 青森県六ヶ所村 800 2022年度上期竣工予定

(出典)一般財団法人日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」(2020年)、英国セラフィールド社ウェブサイトに基づき作成


⑦ ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料製造に関する取組

 再処理施設で回収されたウラン及びプルトニウムは、MOX燃料へと成型加工されます。我が国では、日本原燃が商用の軽水炉用MOX燃料加工施設(最大加工能力は年間130tHM30)の建設を進めています(図2-29)。原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査の結果、同施設は2020年12月に加工事業の変更許可を受けました。これに伴い、安全性向上対策のために必要な工事工程の精査が行われ、同施設の竣工時期は2024年度上期に延期されています。


図2-29 日本原燃MOX燃料加工施設の建設工事の様子(2021年1月)

(出典)日本原燃「MOX 燃料工場の建設状況」


 なお、原子力機構を中心として、高速増殖原型炉もんじゅ(以下「もんじゅ」という。)、高速実験炉原子炉施設(以下「常陽」という。)等の高速増殖炉、新型転換炉等に使用するためのMOX燃料製造(成型加工)に関する研究開発の実績があり、2010年までに累積で約173tHMのMOX燃料が製造されました。また、海外の再処理施設で回収された我が国のプルトニウムは、MOX燃料体に加工された上で我が国に輸送されています。世界のMOX燃料加工能力は表2-5のとおりです。


表2-5 世界の主なMOX 燃料加工施設(2020 年)
国名 運転者 所在地 MOX燃料製造能力
(tHM/年)
営業開始時期
フランス オラノ社 バニョルーシュルーセズ 195 1995年
日本 原子力機構 茨城県東海村 4.5 1988年
日本原燃 青森県六ヶ所村 130(最大) 2024年度上期竣工予定
ベルギー FBFCインターナショナル社 デッセル 200 1960年(2015年閉鎖)

(出典)一般財団法人日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」(2020年)、日本原燃「MOX 燃料工場のしゅん工時期の変更について」(2020年)に基づき作成


⑧ 軽水炉によるMOX 燃料利用(プルサーマル)に関する取組

 MOX燃料を原子力発電所の軽水炉で利用することを、「プルサーマル」といいます。我が国では、第5次エネルギー基本計画において、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、プルサーマルを着実に推進することとしています。
 また、2018年7月に改定された原子力委員会の「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」では、プルトニウムの需給バランスを確保し、プルトニウム保有量を必要最小限とする方針が明示されています31。これを踏まえ、電気事業連合会は2020年12月に、新たなプルサーマル計画を公表しました。同計画では、プルトニウム保有量の適切な管理のため、自社で保有するプルトニウムを自社の責任で消費することを前提に、図2-30に示す対応を行い、引き続きプルサーマルの推進を図るとしています。加えて、電気事業連合会は、2021年2月に新たなプルトニウム利用計画を公表しました32


新たなプルサーマル計画で示された対応

図2-30 新たなプルサーマル計画で示された対応

(出典)電気事業連合会「新たなプルサーマル計画について」(2020年)に基づき作成


 海外では1970年代からプルサーマルの導入が開始され、2020年1月時点で、約7,300体のMOX燃料の利用実績があります。我が国では、表2-6に示す5基においてプルサーマルを実施した実績があります。このうち東電福島第一原発3号機を除く4基は、2021年3月末時点で、新規制基準への適合審査に係る設置変更許可を受けて再稼働しています。また、建設中の電源開発株式会社大間原子力発電所を含め、6基が原子力規制委員会の審査を受けています。大間原子力発電所では、運転開始時には全燃料の約3分の1をMOX燃料とし、その後5年から10年をかけてMOX燃料の割合を段階的に増加させ、最終的には全てMOX燃料による発電を行う予定です。


表2-6 我が国の軽水炉におけるMOX燃料利用実績
電力会社名 発電所名 装荷33開始 MOX燃料の
累積装荷数
状況
九州電力(株) 玄海3 2009年 32体 再稼働
四国電力(株) 伊方3 2010年 16体 再稼働
関西電力(株) 高浜3 2010年 28体 再稼働
高浜4 2016年 20体 再稼働
東京電力 福島第一3 2010年 32体 2012年4月廃止

(出典)一般財団法人日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」(2020年)に基づき作成



  1. 特定地域の電力販売をその地域の電力会社1社が独占できる枠組み。
  2. 総原価を算定し、これを基に販売料金単価を定める枠組み。
  3. 第1章1-2(4)「原子力事業者等による自主的安全性向上」を参照。
  4. ウランが金属の状態であるときの重量を示す単位。
  5. 第4章4-1(3)「政策上の平和利用」を参照。
  6. 高レベル放射性廃棄物及び一部の低レベル放射性廃棄物を地層処分すること。第6章表6-5を参照。
  7. 長期契約等で定めた価格ではなく、一回の取引ごとに交渉で取り決めた価格。
  8. Japan Oil, Gas and Metals National Corporation
  9. 天然ウランから濃縮ウランを製造する際に必要な作業量を表す単位。
  10. China National Nuclear Corporation
  11. 第4章4-1(3)④「プルトニウム・バランスに関する取組」を参照。
  12. 再処理工場の操業開始に向けて実施される試験運転のうち、最終段階の試験運転として、実際の使用済燃料を用いてプルトニウムを抽出する試験。
  13. MOX燃料中のプルトニウムとウラン金属成分の質量。
  14. 第4章4-1(3)①「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」を参照。
  15. 第4章4-1(3)③「プルトニウム利用目的の確認」を参照。
  16. 原子炉の炉心に燃料集合体を入れること。



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