平成19年版

原 子 力 白 書
     
平成20年3月

原子力委員会





平成19年版 原子力白書 概要(789KB)





はじめに


  我が国は、原子力委員会が平成17年に決定した「原子力政策大綱」に基づき、核不拡散、原子力安全及び核セキュリティの確保、放射性廃棄物の適切な管理を大前提に、国民との相互理解活動を進めつつ、エネルギー安全保障や地球温暖化対策に果たす原子力エネルギー技術の役割を一層充実・強化すること及び放射線の高度な利用を一層広汎に推進することを目指して、原子力発電所の建設・運転や核燃料サイクルの確立に向けての取組及び学術、産業、医療分野における放射線利用の取組を着実に進めています。同時に、新型原子炉や核燃料サイクル技術、原子炉熱利用及び核融合技術等の研究開発を、基礎・基盤研究や放射線利用技術の高度化を目指す研究開発活動とともに着実に進め、さらに、次世代を担う原子力人材の育成にも力を注いでいます。そして、これらの取組を効果的で効率的に進め、あるいはこれらの活動を通じて人類の福祉の向上に貢献する観点から、国際社会とも多面的に連携しています。

 しかしながら、我が国の原子力発電は、平成13年度に我が国電力供給の35%を担ったものの、その後、いくつかのプラントで事故・故障への対応や保全工事のための停止期間が長期化したため、その稼働率は80%台を割り込んでいます。また、昨年3月に電気事業者は、経済産業省の指示に従い、過去にさかのぼって組織内に隠ぺいされていた違反行為や報告対象事象を公開しましたが、これは事業者に対する国民の信頼を揺るがしました。さらに、現在は、昨年夏の地震の影響で大規模な原子力発電所が運転を停止しており、エネルギー安定供給や地球温暖化対策に貢献する原子力発電という国民の期待に十分に応えているとはいい難い状況にあります。高レベル放射性廃棄物地層処分施設の立地に関しても、これまでの経験を厳しく評価した結果、この処分の安全性や処分場立地に係る利益の衡平性の確保の在り方についての国民との相互理解が未だ不十分であると判断されましたので、取組の再構築をお願いしている状況にあります。

 一方、国際社会においては、地球温暖化の進展を緩和するために大気中に排出する温室効果ガスの削減に全地球的規模で取り組むべきとする機運がこのところ急速に高まってきており、多くの国々がこの取組の一環として再生可能エネルギーと並んで原子力発電の導入や規模の増大を計画、構想しています。そこで、我が国としては、これまで平和目的に限定して原子力発電所を継続的に建設・運転して蓄積してきた経験と産業力に基づいて、人類の福祉の向上に寄与する観点から、各国においてこうした活動が核不拡散、原子力安全及び核セキュリティの確保を前提に着実に推進されるよう、協力していくべきと考えます。

  今年度の原子力白書は、第1章において、こうした状況を概観して、我が国が、国際社会に貢献する原子力研究開発利用を目指して今何をなすべきか、取り組むべき課題について述べ、第2章から第6章において、原子力の研究、開発及び利用に関する国と民間の活動の最近の動向を、「原子力の研究、開発及び利用に関する基盤的活動の強化」、「原子力利用の着実な推進」、「原子力研究開発の推進」、「国際的取組の推進」、「原子力の研究、開発及び利用に関する評価の充実」の各分野について、冒頭で分野ごとの全体概要について記述しつつ、網羅的かつ具体的に説明しています。記述は、原則として平成19年1月1日から平成19年12月末日までの動向に限っていますが、一部については平成20年の動きも記述しています。また、これに続く資料編では、平成19年における原子力委員会の決定、原子力関係予算、年表等をまとめています。ただし、関連データは原子力委員会のウェブサイトの原子力白書のページ(注)に設けた「関連データ集」の欄に掲載することとし、そこに掲載されるデータのリストのみを本書巻末に掲載しています。

 なお、原子力の研究、開発及び利用に当たっては、安全の確保が大前提であり、原子力安全委員会、安全規制当局、研究開発機関、電気事業者、メーカーなどがそれぞれの立場で安全の確保に努めています。これらの取組については原子力安全委員会がとりまとめる「原子力安全白書」に記載されますので、本白書は、これに関することを除いた、原子力委員会の所掌する原子力政策全般についてとりまとめています。

高度技術社会の持続可能な発展は、これに寄与できる技術システムの実現目標とそれを達成するための取組を明確に定め、遭遇する困難を克服し、それを通じて得た知見を技術システムの設計や運営に適切に反映するサイクルを繰り返しつつ、これを進めていくことによって実現されるものと考えます。我が国の政府と民間は、将来のエネルギー源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与するという原子力基本法が定める原子力研究開発利用のビジョンを実現すべく、それに伴うリスクを十分に小さく管理して実現していく責任を国民に対して負っていることを自覚し、原子力政策大綱に示した「原子力政策の基本的な考え方」に則って、直面している諸課題の解決に向けて、透明性と公開性を確保しつつ、丁寧に取り組んでいます。

 本書が、国民の皆様にとって、このような認識で行われている原子力研究開発利用活動を身近に感じ、理解を深めていただく一助となれば幸いです。

平成20年3月
原子力委員会委員長 近藤駿介






目  次


第1部 本編

第1章 概観〜国際社会に貢献する原子力研究開発利用を目指して〜(1,616KB)
第2章 原子力の研究、開発及び利用に関する基盤的活動の強化(5,506KB)
第3章 原子力利用の着実な推進(8,890KB)
第4章 原子力研究開発の推進(3,516KB)
第5章 国際的取組の推進(2,646KB)
第6章 原子力の研究、開発及び利用に関する活動の評価の充実(961KB)


第2部 資料編

1 原子力委員会及び原子力関係行政組織
(1)原子力委員会(1,398KB)
(2)原子力関係行政組織(1,326KB)
2 原子力委員会決定等(957KB)
3 平成19年度原子力関係予算総表(925KB)
4 その他
(1)我が国の原子力発電所の現状(1,072KB)
(2)我が国の原子力発電所の時間稼働率及び設備利用率(958KB)
(3)各国のエネルギー計画(998KB)
(4)各国及び地域の原子力発電所の設備利用率(929KB)
(5)我が国における核燃料物質保有量一覧表(869KB)
(6)原子力関連年表(990KB)
(7)NPT締約国とIAEA保障措置協定締結国(2008年1月22日更新)(1,112KB)
5 世界の原子力基本政策と原子力発電の状況(2,150KB)
関連データ一覧(916KB)