第2章 国内外の原子力開発利用の状況
3.核不拡散へ向けての国際的信頼の確立

(4)核燃料サイクル計画の透明性の向上

 我が国は核燃料サイクルを国内外の信頼を得つつ、実施していくため、国際的な核不拡散体制から要求される義務に加えて、我が国において計画遂行に必要な量以上のプルトニウム、すなわち、余剰プルトニウムを持たないとの原則の下、毎年分離プルトニウムの管理状況を公表するとともに、適時にプルトニウムの需給見通しを明らかにし、さらに透明性向上のための国際枠組みの構築に向けて積極的に貢献するなど、透明性の一層の向上に努めています。

 我が国のプルトニウムについては、そのすべてがIAEAによる保障措置の適用を受けており、平和目的以外に使用されていないことが常に確認されている。
 さらに、その上で、余剰のプルトニウムを持たないとの原則の下、我が国の核燃料サイクル計画の透明性の向上を図るため、我が国は、1994年から分離プルトニウムの管理状況、すなわち施設の区分ごとに存在するプルトニウム量を原子力白書を通じて公表している。1997年12月末における管理状況は表2−3−5のとおりである。また、長期的な2010年頃までの使用済燃料の再処理によるプルトニウムの回収及びその利用について示している見通し(表2−3−6)は、1995年8月の時点での各々の計画に沿って取りまとめたものである。その後、1995年12月の高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故、1997年3月の東海再処理施設アスファルト固化処理施設における事故など、この見通しに係わる状況の変化があるが、余剰のプルトニウムを持たないとの原則の下、計画的にプルトニウムを利用していくことに変わりはない。即ち、今後利用できるプルトニウムは、海外再処理委託分の約30トンのほか、六ヶ所再処理工場(2000年代後半の本格稼働時には年間800トンの使用済燃料を再処理し、約4.8トンのプルトニウムを回収)及び東海再処理工場において回収されるものがあるが、これらのプルトニウムについては、軽水炉におけるMOX燃料利用(プルサーマル)及び研究開発に用い、プルトニウム利用を進めていくこととしている。(注:本パラグラフにおけるプルトニウム量はいずれも核分裂性プルトニウムの量。)


分離プルトニウム:再処理工場において使用済み燃料を溶解後、抽出工程以降から原子炉に装荷されるまでの状態のプルトニウムをいう。

表2−3−5 我が国のプルトニウム管理状況

核分裂性プルトニウム及び非核分裂性の同位体の合計

表2−3−6 我が国のプルトニウム需給見通し(1995年8月時点の状況に基づくもの)

核分裂性プルトニウム

表2−3−7 国際プルトニウム指針に基づき公表された各国のプルトニウム保有量(1996年末現在)

 また、関係9ヶ国(日、米、英、仏、独、ベルギー、スイス、ロシア及び中国)によりプルトニウム利用の透明性向上等のための国際的枠組みに係る検討が1994年2月から進められた結果、1997年12月には「国際プルトニウム指針」が参加国により採択された。同指針は、参加国が自国の民生プルトニウム利用に関する方針を明らかにするとともに、自国の民生プルトニウムの管理状況、すなわち、施設の区分ごとに存在するプルトニウムの量を共通の形で公表することなどを含む民生プルトニウムの管理の指針であり、我が国はこの指針の早期適用に向け、積極的に努力してきたところである。
 1998年3月には、指針に基づきIAEAに報告された各国のプルトニウム保有量及びプルトニウム利用に関する政策ステートメントについて、IAEAが公表した。(表2−3−7)


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