用 語 解 説

 

【ア行】

RIビーム加速器施設(RIビームファクトリー)
現在の加速器研究施設に2基の超伝導リングサイクロトロン(SRC−4、SRC−6)とRIビーム発生装置(Big RIPS)を新設し、これまで軽い元素に限られていたRIビームを全元素にわたって世界最大強度で発生させるための施設。この施設を用いて、元素の起源の探求や、物性、材料、化学、生物など幅広い分野での応用研究を実施する。

IAEA(国際原子力機関)
米国の提唱を契機に、1957年、国際原子力機関憲章に基づき設立され、世界の平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、増大すること、また、その管理下で提供された援助が軍事的目的を助長するような方法で利用されないよう確保することを目的としている。

アジア原子力協力フォーラム
我が国の原子力委員会が主催する地域協力のための枠組み。1)各分野における具体的な地域協力活動、2)活動の全体調整及び議論の場となるコーディネーター会合、3)大臣級会合により最終決定を行うフォーラム本会合からなる。

アトムズ・フォア・ピース演説
1953年12月の米国アイゼンハワー大統領の有名な「Atoms for Peace」演説は、次のことを訴えたものだった。
 1.国際原子力機関を設立する。
 2.この機関は、各国政府から供出された核物質を平和利用のために保管・貯蔵・防護を行う。
 3.この機関は、原子力の平和利用の促進を行う。

ITER計画
国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor)計画。人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待されうる核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性を実証することを目標として進められている国際共同プロジェクト。1988年より開始され、現在は日本、EU、ロシアの3極が参加。

ウインドファーム
風力発電機が多数集まっている場所。アメリカ・カリフォルニア州パームスプリングスのウインドファームには、約15,000基、設備容量にして約160万kWの風車が林立している。

ウラン加工工場臨界事故
1999年9月30日に、(株)ジェー・シー・オー東海事業所の転換試験棟において発生した臨界事故。原因は、本来の使用目的と異なる沈殿槽に、許認可上の制限値を超える多量の硝酸ウラニル溶液(ウラン溶液の一種)を注入したことによる。事故現場で作業をした3名が重度の被ばくを受け(うち2名が死亡)、前例のない大事故となった。

ウラン濃縮
2種以上の同位体で構成されている物質から、特定の同位体の存在比を高めることを濃縮という。ウラン鉱石から分離したウラン元素には、中性子を吸収して核分裂するウラン235が0.7%程度しか含まれていない。軽水炉用の燃料としては、ウラン濃縮によりウラン235の割合を3〜5%まで高めることが必要になる。主な方法としては、遠心分離法とガス拡散法がある。

ウラン廃棄物
ウラン廃棄物は、ウランの濃縮・転換・成型加工等に伴って発生する。半減期が極めて長いウラン及びその娘核種を含んでいること、放射能レベルが極めて低い廃棄物が大部分を占めること等の特徴を有している。

NPT(核兵器の不拡散に関する条約)
1970年3月発効。核兵器保有国(米、旧ソ、英、仏、中)をこれ以上増やさないために、非核兵器国の核兵器保有への道を永久に閉ざすことによって、核の拡散を防止することを狙って設けられた国際的枠組みである。国家安全保障上の理由から加盟しない国(インド等)もある。条約の期限である1995年に無期限延長が決定された。

温室効果ガス
大気中に含まれる特定の気体成分が、地表から宇宙空間に放射される熱(赤外線)を吸収して大気及び地表が暖められる現象を温室効果と呼ぶ。このような温室効果を引き起こす気体を温室効果ガスといい、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)などが知られている。

 

【カ行】

核不拡散
「核」は「核兵器」を意味し、「核不拡散」とは、これ以上、核兵器を保有する者を増やさない」ということを意味する。
核物質防護
核物質の盗取等による不法な移転を防止するとともに、原子力施設及び輸送中の核物質に対する妨害破壊行為を未然に防ぐことを目的とした措置であり、平和利用に徹し安全に原子力活動を進める上で必要不可欠な措置。

核融合
原子核反応の一種で水素、重水素、トリチウムなどの2つの軽い原子核が核反応の結果、より重い1つの原子核になる現象。反応後の質量和は反応前より小さく、その差分がエネルギーとして放出される。この反応を利用して、エネルギーを取り出そうとするのが、核融合炉の考え方である。また、太陽等の恒星の主たるエネルギー源は、核融合反応である。

加速器
電場や磁場を用いて電子や陽子などの荷電粒子を加速する装置である。加速された荷電粒子は、そのものが放射線であるが、物質との衝突により別の放射線を発生させることもできる。原子核や素粒子物理学などの基礎的研究および理学、工学、医学などの分野における研究や応用に利用されている。

ガラス固化
再処理工程において使用済燃料から分離される高レベル放射性廃液を、ガラス繊維と一緒に加熱することにより水分を蒸発させるとともに非結晶に固結(ガラス化)し、物理的・化学的に安定な形態にするプロセス。廃液はステンレス製の堅牢な容器(キャニスター)に閉じ込められた状態でガラス固化され、人工バリアの構成要素の一つとなる。ガラス固化体は放射性物質を安定な形態に保持し、地下水に対する耐浸出性に優れることが特徴。

クリアランスレベル
当該物質に起因する放射線の線量が自然界の放射線レベルと比較して十分小さく、また、人の健康に対するリスクが無視でき、「放射性物質として扱う必要がないもの」を区分する値のこと。

経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)
1958年、原子力平和利用における協力の発展を目的とし、原子力政策、技術に関する意見交換、行政上・規制上の問題の検討、各国法の調査及び経済的側面の研究を実施するために欧州原子力機関(ENEA)として設立された。1972年、我が国が正式加盟したことに伴いNEAに改組された。

軽水炉
減速材及び冷却材に普通の水(軽水)を使っている原子炉をいう。これには沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)がある。発電用原子炉としてアメリカ、フランスを始め世界で最も多く使われている原子炉。

原子力基本法
1955年(昭和30年)12月19日公布された日本の原子力に関する最も基本的な法律。原子力の研究、開発及び利用を推進することにより、人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与するとの目的や、民主・自主・公開の三原則のもとに行うとの基本方針などがうたわれている。

原子力災害対策特別措置法
1999年9月のウラン加工工場臨界事故の教訓から、原子力防災対策の抜本的強化を図るために、1999年12月に成立した法律。原子力災害での初期動作の迅速化、有機的連携の確保、国の緊急時対応体制の強化、事業者の役割の明確化等が図られた。

原子力政策円卓会議
1995年12月の「もんじゅ」事故を契機に、国民の間に原子力に対する不安や不信が高まりつつある状況を踏まえ、原子力委員会では、国民各界各層から幅広い参加を求め、多様な意見を原子力政策に反映させることを目指して1996年3月に原子力政策円卓会議を設置した。また、当該会議からの提言を受けて、1998年には新たな原子力政策円卓会議が設置され、2000年2月に提言が出された。

原子炉等規制法
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の略称。原子力基本法の精神にのっとり、製錬、加工、再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制等を行うことを目的としている。

高温岩体発電
地下の乾燥した高温の岩体を破砕し、人工的に貯留槽をつくり、そこに注水を行い蒸気または熱水を取り出して行う発電。

国際熱核融合実験炉計画
「ITER計画」の項を参照。

コージェネレーション
ひとつのエネルギーから電気や熱など複数のエネルギーを同時に取り出すシステムをコージェネレーションシステムという。発電機の稼働時に発生する排熱を暖房や給湯に利用することにより、エネルギー利用効率を約70〜80%にまで高めることができ、大幅なエネルギーコストの削減や省エネルギーが可能となる。

混合酸化物(MOX)燃料
「MOX燃料」の項を参照。

 

【サ行】

CTBT(包括的核実験禁止条約)
締約国の義務として、核兵器の全ての実験的爆発、及び他の核爆発を禁止しており、仮に、これらの実験的爆発、及び他の核爆発が行われた場合には、国際監視制度による監視活動と現地査察による査察により、核爆発の事実を確認する仕組みを規定している。CTBTは、1996年(平成8年)9月10日の国連総会で圧倒的多数の賛成で採択され、9月24日には条約が署名開放された。日本は、核兵器を保有する5か国に続き、同日、署名を行った。また、日本は、1997年(平成9年)7月8日に条約の批准書を国連に寄託し、4番目の批准国となった。

使用済燃料の中間貯蔵
原子力発電所で使い終わった燃料(使用済燃料)を、再処理するまでの間、使用済燃料貯蔵施設において、貯蔵すること。
食品照射
発芽防止、殺菌・殺虫、熟度遅延などの目的で、食品や農作物にガンマ線や電子線などの放射線を照射する技術。

人工バリア
埋設された廃棄物から生活環境への放射性物質の漏出の防止及び低減を期待して設けられる緩衝材、コンクリートピットなどの人工構築物、廃棄物の固型化材料及び処分容器。
高レベル放射性廃棄物の地層処分の場合、ガラス固化体、オーバーパック及び緩衝材からなる部分をいう。

スリーマイルアイランド原子力発電所事故
1979年3月28日、米国のスリーマイルアイランド(TMI)原子力発電所2号機で原子炉内の一次冷却材が減少、炉心上部が露出し、燃料の損傷や炉内構造物の一部溶融が生じるとともに、周辺に放射性物質が放出され、住民の一部が避難した。

 

【タ行】

大強度陽子加速器
世界最大級の強度を持つ陽子ビームを標的にぶつけることにより、中性子を始めとする多くのの二次粒子を取り出す装置。生命科学、物質科学、材料科学、原子核・素粒子物理、未来型原子力システムなどの分野での研究が行われる。

チェルノブイル事故
1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイル原子力発電所4号機で、急激な出力の上昇により原子炉や建屋が破壊される事故が発生、大量の放射性物質が外部に放出され、旧ソ連と隣接する欧州諸国を中心に広範囲にわたる放射能汚染をもたらした。

地球温暖化防止京都会議(COP3)
1997年12月に京都で開催された国連の気候変動枠組条約第3回締約国会議。この会議では、2008〜2012年に先進国から出される温室効果ガスの1年間の平均排出量を1990年レベルより少なくとも5%削減することなどを規定した「京都議定書」が採択された。各国の削減目標は、日本が6%、アメリカ7%、欧州連合(EU)8%などとなっている。

地層処分
人間の生活環境から十分離れた安定な地層中に、適切な人工バリア(「人工バリア」の項を参照。)を構築することにより処分の長期的な安全性を確保する処分方法。
なお、英語の"geologicaldisposal"に対して用いられている「地層処分」という用語の「地層」には、地質学上の堆積岩を指す「地層」と、地質学上は「地層」とみなされない「岩体」が含まれている。

中間貯蔵
「使用済燃料の中間貯蔵」の項を参照。

朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)
北朝鮮に対する軽水炉の供与、軽水炉建設までの間の代替エネルギー(重油)供給等を実施するために設立された国際機関。

追加議定書
イラクによる秘密裏の核兵器開発計画の発覚等を契機として、IAEA保障措置の実効性を強化し及びその効率を改善することによる核兵器の不拡散体制を強化するための協定。IAEAに提供する情報の拡充、IAEAに対する補完的なアクセスの提供等について規定している。我が国は、1999年12月16日に発効。

電源三法交付金
1974年に創設された電源三法(電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法の総称)に基づく交付金・補助金。発電施設等立地地域において公共用施設の整備を行うなど、電源立地の円滑化を図るための中心的施策として位置付けられている。

天然バリア
人工構築物又は埋設された廃棄物の周囲に存在し、埋設された廃棄物から漏出してきた放射性物質の生活環境への移行の抑制などが期待できる土壌や地層など。

 

【ナ行】

ニュークリアセイフティーネットワーク
ウラン加工工場臨界事故を受け、電力、燃料加工、プラントメーカー等の原子力産業に携わる企業及び研究機関等を会員として、1999年12月に設立された団体。原子力業界全体の安全意識の高揚、モラルの向上及び原子力の安全文化の共有化を図ることを目的として、原子力の安全文化の普及、相互評価(ピュアレビュー)、情報交換・発信の3つを主要業務としている。

燃料電池
水素と酸素を電気的に反応させることによって直接電気を発生させる発電装置。燃料としては、石油、天然ガス等の炭化水素の使用が可能である。

 

【ハ行】

バイオマス
バイオマス(生物体)エネルギーとは、光合成によって太陽エネルギーを貯えた植物をエネルギーとして利用するもの。

プルサーマル
使用済燃料の再処理により回収されるプルトニウムを、MOX燃料として一般の原子力発電所(軽水炉)で利用すること。

兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)
核兵器その他の核爆発装置用のプルトニウム及び高濃縮ウランの生産を禁止する条約のことで、CTBTに続く多数国間の核軍縮・核不拡散措置の一つ。

放射線
法令では、放射線とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接に空気を電離する能力を持つものであると定義されており、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線、重荷電粒子線、エックス線などが含まれる。

放射線育種
放射線を照射することにより、細胞レベルでの突然変異の頻度を高め、形質が様々に変化した突然変異体の中から人類にとって有用な形質を持つものを選別する育種(品種改良)法。

放射線防護
放射線によって引き起こされる人体障害を防ぐこと。従事者の職業被ばく及び一般公衆の被ばくを考慮した防護を行う。

放射能
原子核が別の原子核に壊変し、アルファ(α)線、ベータ(β)線あるいはガンマ(γ)線などの放射線を出す性質をいい、強さをベクレル(Bq)で表す。放射能をもっている物質を放射性物質といい、自然界にある元素ではウラン、ラジウムなどがある。

保障措置
原子力の平和利用を確保するため、核物質(IAEA憲章第20条で定義された原料物質、特殊核分裂性物質)が核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを検認すること。なお、「核兵器の不拡散に関する条約」(NPT)を締結している非核兵器国は、同条約に基づきIAEAとの間で保障措置協定を締結し、全ての平和的な原子力活動に係る全ての核物質について保障措置を適用することが義務づけられており、このような保障措置を包括的保障措置という。

 

【マ行】

マイナーアクチニド
原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムまでのアクチノイド元素のうち、アクチニウムを除いた元素群はアクチニドと呼ばれている。マイナーアクチニドは、使用済燃料の中に生成するアクチニド元素のうち、生成量の比較的多いプルトニウムを除いた生成量の比較的少ない元素。ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムなどが含まれ、いずれも放射性核種である。

MOX燃料(混合酸化物(Mixed Oxide Fuel)の略)
使用済燃料などから回収されたプルトニウムとウランを混合して作られた核燃料。