1.長期計画策定会議の分科会について
2.長期計画策定会議第三分科会構成員
3.長期計画策定会議第三分科会審議経緯(日程・議題等)
4.我が国における研究開発の現状
5.海外における研究開発の現状
6.実用化戦略調査研究の概要
7.「もんじゅ」における研究開発項目
8.高速増殖炉懇談会報告書(1997年12月)のポイント
9.原子力政策円卓会議からの提言(2000年2月)(抜粋)
10.図表・データ集
(1)高速増殖炉の仕組み
(2)各燃料サイクルの天然ウラン利用効率
(3)各燃料サイクルの電気エネルギー発生量と主な廃棄物の負荷
①軽水炉ワンススルーの場合(燃焼度:32GWd/t)
②高速増殖炉サイクルの場合(燃焼度:74GWd/t、リサイクル回数:3回)
③高速増殖炉サイクルの場合(燃焼度:74GWd/t、リサイクル回数:無限回)
(4)各国における核燃料サイクル技術の研究開発について
(5)世界の高速増殖炉開発スケジュール
1.分科会
長期計画策定会議の調査審議を円滑に行うため、同会議に以下の分科会を設ける。
2.合同分科会の開催
分科会は、相互に関係の深い事項を審議するときには、必要に応じて合同分科会を開催することができる。
相澤 清人 | 核燃料サイクル開発機構理事 | |
秋元 勇巳 | 三菱マテリアル(株)社長 | |
粟屋 容子 | 武蔵野美術大学造形学部(一般教育)教授 | |
近藤 駿介 | 東京大学大学院工学系研究科教授 | |
近藤 道也 | (財)若狭湾エネルギーセンター所長 | |
齋藤 伸三 | 日本原子力研究所副理事長 | |
(座長) | 鈴木 篤之 | 東京大学大学院工学系研究科教授 |
関本 博 | 東京工業大学原子炉工学研究所教授 | |
高木美也子 | 日本大学総合科学研究所教授 | |
鳥井 弘之 | 日本経済新聞社論説委員 | |
(座長) | 西澤 潤一 | 岩手県立大学長 |
平岡 徹 | (財) 電力中央研究所特別顧問 | |
宮 慶次 | 滋賀職業能力開発短期大学校長 | |
宮本 俊樹 | (株)東芝専務電力システム社社長 | |
山崎 亮吉 | 日本原子力発電(株)常務取締役 | |
吉岡 斉 | 九州大学大学院比較社会文化研究院教授 | |
ラウ゛ィンニュジャン=ジャック | フランス大使館原子力参事官 | |
若林 二郎 | 未来エネルギー研究協会顧問 |
第2回(1999年10月25日(月))
○ジェー・シー・オー東海事業所の臨界事故について
○高速増殖炉関連技術の在り方(1)
第3回(1999年11月11日(木))
○高速増殖炉関連技術の在り方(2)
第4回(1999年12月20日(月))
○高速増殖炉関連技術の在り方(3)
第5回(2000年1月17日(月))
○高速増殖炉関連技術の研究開発の進め方(1)
第6回(2000年2月15日(火))
○「もんじゅ」及び研究施設の進め方(1)
第7回(2000年3月27日(月))
○「もんじゅ」及び研究施設の進め方(2)
第8回(2000年4月10日(月))
○まとめの議論(1)
第9回(2000年5月8日(月))
○まとめの議論(2)
第10回(2000年5月29日(月))
○まとめの議論(3)
(1)高速増殖炉
我が国における高速増殖炉研究開発は、1967年の動力炉・核燃料開発事業団(動燃、現核燃料サイクル開発機構(サイクル機構))設立以来本格的に進められています。これまでにサイクル機構では、ナトリウム取扱技術、燃料製造技術等の基礎基盤技術の研究開発を踏まえ、実験炉「常陽」、原型炉「もんじゅ」の設計、建設及び運転を行ってきました。また、電気事業者、電力中央研究所(電中研)及び日本原子力研究所(原研)も、炉物理をはじめとする基礎基盤的な研究等を進めてきました。
我が国初の高速増殖炉である「常陽」は、ナトリウム冷却型の高速増殖炉の設計原理を工学的に確認し、燃料・材料照射データを蓄積するための実験炉として、茨城県大洗町に建設され、1977年に初臨界を達成し、その後の運転を通じて、増殖性能等を確認しました(MK-Ⅰ計画)。1982年には、プルトニウム増殖を目的としたブランケット燃料集合体を取り外すとともに熱出力75MWから100MWの炉心への改造(MK-Ⅱ計画)を行い、主に燃料・材料の照射を目的とした運転を行っており、照射データを蓄積しています。今後、熱出力140MWの炉心への改造、冷却系や燃料取替設備の改造等を行い、照射能力を更に向上させる予定です(MK-Ⅲ計画)。
原型炉「もんじゅ」は、実験炉に続く段階として、発電プラントとしての性能確認及び技術的可能性を評価する目的で福井県敦賀市に建設され、1994年に初臨界を、また1995年に初送電を達成しました。しかし、同年12月、約40%の出力試験中に、2次冷却系からナトリウム漏えいを生じ、現在まで運転を停止しています。
さらに、原型炉に続く段階として、電気事業者が中心となって経済性の見通しを明らかにするための実証炉の設計研究及び関連技術開発が進められてきました。
(2)高速増殖炉に関連する核燃料サイクル
高速増殖炉に関連する核燃料サイクルの研究開発は、サイクル機構を中心に行われてきました。
サイクル機構は、再処理技術としてピューレックス法をベースとした高速増殖炉燃料再処理技術の開発に着手し、高レベル放射性物質研究施設(CPF)で実験室規模ながら「常陽」の使用済燃料を再処理しプルトニウムを回収し、その一部をウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)に加工して再び「常陽」で燃料として使用する等小規模ながら高速増殖炉とこれに関連する核燃料サイクル(FBRサイクル)の環を閉じ、一連の技術が実現可能であることを実証しました。
サイクル機構のリサイクル機器試験施設(RETF)は、東海再処理施設の軽水炉燃料再処理技術をベースに高速増殖炉燃料に係るCPFでの研究開発成果等を踏まえ、工学規模での高速増殖炉燃料再処理技術確立に向けた研究開発を行う施設です。2000年半ばには、試験棟建物、電気設備、換気・給排水設備等を建設、設置する第一期工事が終了する予定です。
また、プルトニウム燃料製造施設において「常陽」及び「もんじゅ」のMOX燃料の製造が行われて来ています。
その他、サイクル機構では工程の簡素化を図った湿式再処理技術及びMOX燃料製造技術の開発が行われています。また、電気事業者を中心に、MOX燃料を対象とした乾式再処理法及び振動充填法による燃料製造技術の研究開発がロシアの原子炉科学研究所の協力の下に実施されています。また、電中研が中心となり、アメリカのアルゴンヌ国立研究所と共同で金属燃料の乾式再処理法の研究開発が行われてきました。電中研では、現在も、金属燃料、乾式再処理法及び射出成型法の研究開発を進めています。
窒化物燃料の製造法については、原研が炭素熱還元法やゾルゲル法による顆粒燃料の製造について研究を進めています。
(3)長寿命核種の分離変換技術
高レベル放射性廃棄物等に含まれる放射性核種の特徴に着目し、特定の元素あるいは核種を分離して有効利用する技術及び長寿命核種に放射線を照射して短寿命あるいは安定な核種に変換する技術については、1988年の原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会がまとめた「群分離・消滅処理技術研究開発長期計画」により、いわゆるオメガ計画として基礎基盤的な研究が原研、サイクル機構及び電中研の三機関を中心に実施されています。
マイナーアクチニドと長寿命核分裂生成物の分離法については、これまで、湿式法と乾式法が検討されています。
一方、核変換技術としては、発電用高速炉を用いる発電用高速炉利用型と加速器駆動未臨界炉(ADS)や専焼高速炉(ABR)を用いて発電用サイクルと核変換サイクルの最適化を図る階層型が提案されており、それぞれについて技術的な検討が行われています。
(4)基礎基盤技術
各種機器、構造材料等の開発や設計基準類の整備が各研究開発段階において行われてきました。また、設計に用いる解析コード類として、炉心設計解析、伝熱流動解析、プラント動特性解析、構造解析等が開発され、安全評価に用いる解析手法として、ナトリウム-水反応事象に代表される想定事故解析コード並びにリスク評価のための炉心損傷事象解析コード等が開発されました。これらの成果は、各種模擬試験、性能試験、施設の運転等を通じて検証されるとともに、「常陽」や「もんじゅ」の設計や安全評価に利用されてきました。
(5)高速増殖炉とそれを取り巻く状況の最近の変化
1995年12月の「もんじゅ」2次系ナトリウム漏えい事故(もんじゅ事故)及び1997年3月に発生した東海再処理施設アスファルト固化処理施設における火災爆発事故を受けて設置された動燃改革検討委員会の報告書を踏まえ、1998年10月に動燃を改組してサイクル機構が設立されました。
また、もんじゅ事故後に、原子力委員会が開催した原子力政策円卓会議での提言を受けて、1997年に高速増殖炉懇談会が設置され、「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉研究開発の在り方についての審議が行われました。同年12月にまとめられた同懇談会報告書「高速増殖炉研究開発の在り方」においては、FBRサイクル技術について、「将来の原子力ひいては非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、高速増殖炉の実用化の可能性を技術的、社会的に追求するために、その研究開発を進めることが妥当」とされ、また、「原型炉「もんじゅ」は、この研究開発の場の一つとして位置付けられる」とされました。さらに、実証炉については、「もんじゅ」の研究開発及び電気事業者が実施した設計研究の「成果等を十分に評価した上でその決定が行われるべき」とされています。原子力委員会は、同報告書を踏まえ、高速増殖炉研究開発の推進を決定しました。なお、「もんじゅ」の運転再開に当たっては、国の審査を通じて「もんじゅ」の安全性を確認し、その後の所要の改造工事を実施する等順次所要の手続きを遅滞なく進めることが必要です。
1999年7月には、サイクル機構を中心に電気事業者と国内研究開発機関が結集し、既存技術の改良・応用だけでなく、革新的な要素技術も取り込む形で、FBRサイクルに関する各種概念を対象とした幅広い検討(実用化戦略調査研究)を開始しました。
1999年9月に㈱ジェー・シー・オー東海事業所において我が国で初めての臨界事故(JCO臨界事故)が発生しました。この事故は、作業員の重大な被ばくや周辺住民の避難や屋内退避を招き、原子力利用に対する国民の信頼を大きく損ねた点で重大なものでありました。
2000年3月、福井地方裁判所は、内閣総理大臣が行った「もんじゅ」の原子炉設置許可処分の無効を確認する訴訟及びサイクル機構が行う「もんじゅ」の建設・運転の差し止めを求めた訴訟の両方について、原告の請求を退ける旨の判決を行いました。本判決においては、国とサイクル機構が行った「もんじゅ」の安全性についての主張が認められています。これを受け、原告は名古屋高等裁判所金沢支部に控訴しました。
アメリカにおいては、原子力開発当初から高速増殖炉研究開発に着手しており、実験炉としてFermi炉、EBR-2、FFTF、原型炉としてCRBRの設計、建設が進められました。CRBRについては、核不拡散政策により一旦計画が中止され、その後建設計画が復活したものの、経済性の観点等から計画が中止されました。現在アメリカはプルトニウムの民生利用を行わないとする核不拡散政策から、高速増殖炉を含む核燃料サイクルに関する研究開発を中止しています。昨年から行われている新たな原子力研究計画「原子力エネルギー研究イニシアチブ(NERI)」においては、核拡散抵抗性、経済性、安全性及び環境負荷低減性の向上を目指した研究が始まっています。
フランスにおいては、1997年の政権交代に伴い、経済性の観点等から、実証炉スーパーフェニックスの放棄を決定しました。しかしながら、原型炉フェニックスを用いて長寿命核種の分離変換技術の研究開発、プルトニウム燃焼試験等を実施する計画であり、そのため2004年まで運転する予定となっています。また、冷却材としてナトリウムの他にも、ガス、鉛-ビスマス等を用いる多様な高速炉に関する研究開発も始めています。
イギリスにおいては、実験炉DFR、原型炉PFRの設計、建設、運転等に関する成果を蓄積してきました。特に、原型炉PFRは約20年間運転され、高速増殖炉技術に関する多くの知見を蓄積しましたが、豊富な国内石油資源の開発に成功したことを背景に、原型炉を閉鎖するとともに、実証炉以降については、独自の計画を有していません。
ドイツにおいては、実験炉KNK-2を約15年間にわたり運転した他、原型炉SNR-300を建設しましたが、立地している州政府が安全性を理由として運転に反対しました。連邦政府は運転を目指しましたが、1991年ドイツ統一に伴う著しい財政逼迫を理由に計画を中止しています。
ロシアにおいては、ナトリウム冷却型の高速増殖炉の研究開発を積極的に進めており、実験炉BR-10、BOR-60、及び原型炉BN-350(在カザフスタン)、BN-600等の豊富な運転実績を有しています。これに続くBN-800も設計を終え、建設計画中です。一方、原子力潜水艦で鉛-ビスマス冷却炉の運転経験があり、将来技術の選択肢として、窒化物燃料・鉛冷却型の高速炉の研究開発も行われています。また、乾式再処理法と振動充填法による高速炉用MOX燃料の製造技術の研究開発を行っています。
アジアにおいても高速増殖炉に対する関心が伺えます。インドは高速実験炉を運転しており、将来のウラン233を用いるトリウムの燃料サイクルを目指した研究開発を行っています。中国においても高速実験炉を建設する段階に至っています。また、韓国では基礎基盤研究が行われています。
2.実施体制
1999年より核燃料サイクル開発機構と電気事業者(※)が一致協力して実用化戦略調査研究を実施しており、電力中央研究所と日本原子力研究所も参加しています。
さらに、国内外の大学、研究機関、メーカ等を対象とし、革新的なシステム概念、またはその要素技術の概念についての研究計画を含めたアイデアを公募しており、その研究開発成果を実用化戦略調査研究に反映させていきます。
※実用化戦略調査研究に参加している電気事業者
(1)安全性
○高速増殖炉
○関連する核燃料サイクル
(2)経済性
(3)資源の有効利用
(4)環境負荷低減
(5)核不拡散性
4.進め方
実用化戦略調査研究は、フェーズⅠ(1999年度~2000年度)、フェーズⅡ(2005年度頃まで)と段階を踏み、各フェーズ毎に研究開発の計画及び成果についてチェックアンドレビューを受けながら進めます。フェーズⅠ、フェーズⅡの実施内容を以下に示します。
(1)フェーズⅠ(2000年度まで)
2.エネルギー情勢と原子力
3.高速増殖炉研究開発の意義
○高速増殖炉の特性と内外の研究開発状況
○高速増殖炉研究開発の進め方
4.今後の課題
今後、研究開発を遂行していくにあたっての留意事項は以下の4点。
○安全の確保
5.「もんじゅ」による研究開発の実施
6.実証炉以降の開発
7.おわりに
「もんじゅ」は、研究開発の手段としては依然として重要なものです。もんじゅの維持コストが大きいことも考慮すると、関係者が、運転安全に関して万全を期した上で早期の運転再開へ向けての努力を行うことをのぞみます。
なお、「もんじゅ」のその後の処置については、以下のようないくつかの選択肢から選定することをのぞみます。
(1)高速増殖炉の仕組み(2)各燃料サイクルの天然ウラン利用効率
(3)各燃料サイクルの電気エネルギー発生量と主な廃棄物の負荷
①軽水炉ワンススルーの場合(燃焼度:32GWd/t)
②高速増殖炉サイクルの場合(燃焼度:74GWd/t、リサイクル回数:3回)
③高速増殖炉サイクルの場合(燃焼度:74GWd/t、リサイクル回数:無限回)(4)各国における核燃料サイクル技術の研究開発について
(5)世界の高速増殖炉開発スケジュール
燃えない(核分裂しない)ウラン(→解説)に中性子を当てると、その中性子を吸収して燃える(核分裂する)プルトニウムに変換されます。
核分裂によって生じる中性子の数は、高速増殖炉では約2.8個、一般の原子炉(軽水炉)では約2.4個で、高速増殖炉で核分裂を起こさせた方が、たくさんの中性子を発生させることができます。
このため、多く発生する中性子を、燃えないウランからプルトニウムへの変換に利用することができ、より多くのブルトニウムを作り出すことができます。
このように、核分裂を持続させながら、燃えないウランをプルトニウムに変換していくことにより、結果として、消費した量以上の新しいプルトニウムをつくり出すことができます。これが増殖です。高速増殖炉とは高速で動く中性子(高速中性子)を使ってエネルギーを発生させながら、プルトニウムを増殖させる原子炉という意味です。
(解説)燃えないウラン:天然ウランの中には、燃えるウランと燃えないウランがあります。天然ウランの中で、燃えるウランは0.7%だけで、残りの99.3%は燃えないウランです。