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(第1回)
日時 平成11年9月10日(金)
議題 今後の審議の進め方等
(第2回)
日時 平成11年10月29日(金)
議題 医療全体における放射線利用について
- 医用利用、診断分野、核医学分野、放射薬剤分野の各分野について、招へい者(平岡京都大学教授、隈崎日本医科大学教授、井上群馬大学助教授、佐治京都大学教授、田辺(財)日本アイソトープ協会部長)から、以下のタイトルでプレゼンテーション実施。
- (1)放射線治療の現状と将来展望(平岡教授)
- 放射線治療は侵襲性が低く、QOLの高い治療法で、適応患者範囲も広いという特徴を持つが、我が国では欧米に比して放射線治療の適応症例が多いにも関わらず治療を受けた患者は少ない。
(これに対する議論において、「なぜ少ないか」の質問に対し、患者側の問題として核アレルギー、医師側の問題としてがんの治療体制の遅れが指摘された。)
- 医学物理士(医用物理、医用画像工学等の技術者)などの基礎を支える人材が非常に少ないことが基礎研究や放射線治療分野の発展を阻害する要因の一つ。周辺技術に必要な人材の層の充実が急務の課題。
- 適用範囲の拡大や治療の一層の非侵襲化のためには、放射光等の大型機器の利用、従来技術の次世代化、生物研究の強化等が必要不可欠。技術、人材等に関しても適切な研究支援が望まれ、放射線施設のセンター化等が考えられる。
(2)放射線の医用利用-診断分野における動向-(隈崎教授)
- 放射線診断は形態診断と機能診断に大別できる。
- 放射線診断で得られる詳細な診断情報により、身体の内部を再現できるようになり、手術シミュレーションや、更に、内視鏡を用いない血管診断が実現しつつある。
- 診断技術を応用した治療法でがん及び非がんの疾患に適用できる血管内治療等の21世紀に向けた非侵襲技術が実現しつつある。
- 患者に苦痛を与えない診断・治療法の研究開発を目指すべきであり、放射線診断はその方向に進んでいる。
(3)核医学分野における利用の現状、将来展望等(井上助教授)
- 放射性薬剤の海外依存、核医学診療可能な病院数が限定されていること等により、学会レベルの研究は多いが、臨床現場への応用が少ない。また、医師や薬剤師の人材不足、法的規制による臨床試験の制約等の問題がある。
- 新規放射性薬剤はここ数年認可されず、欧米やアジア主要国に取り残されつつある。また核医学の主要機器の国内製造が中止され、国際競争力も失われつつある。
- 核医学では、より高度な診断治療を目指す上で学際的なプロジェクト研究が必要。これにより世界への先端技術の発信が可能となる。
(4)放射薬剤分野における利用の現状と展望(佐治教授)
- 研究者の層が薄く、専属薬剤師がいないなど医薬品開発や品質管理を取り巻く人的環境は厳しい。今後の人材育成と教育システムの充実が必要。
- 医薬品の供給体制について、体制の複線化、院内製剤の周辺施設への供給などの安定的・効率的な供給を目指す必要がある。
- 新薬開発には幅広い周辺技術を包含した総合的プロジェクト研究、研究基盤整備が必要。
- RI廃棄物処理は、臨床や研究にとって大きな制約。規制の必要性を再度検討することが望ましい。
(5)放射薬剤分野における利用の現状と展望(補足)(田辺部長)
- 体内投与用医薬品市場に関して、新規参入があれば、研究開発が活発化する。
- 医療法、薬事法と放射線障害防止法による二重の規制が管理上の混乱を呼んでいる。
(第3回)
日時 平成11年11月9日(火)
議題 食糧の安定供給の観点からの放射線利用について
- 招へい者(小林全日本スパイス協会理事長)及び碧海委員、加藤委員、林委員、桂委員から、以下のタイトルでプレゼンテーション実施。
- (1)食品照射に関するコミュニケーションのために(碧海委員)
- 食生活で安全性に関心を持つ人が多い反面、安定供給への関心は低い。
- 食品照射に対する賛否両論に対して共通するキーワードは「安全性」と「情報公開」
- 国民に対して食品照射に関する知識や関心を強要するのは逆効果。国民が関心を持っていることに放射線照射を結びつけ、十分な解説や情報提供を行うことが理解促進の近道。総花的、専門的にではなく、相手が求めている情報に沿って説明するべき。
- 日本の食品照射の実用化が遅れているのは、情報提供の不足により食品照射が国民の関心事でないことが原因。
- 沖縄の農産物が全国に流通している背景に放射線利用によるウリミバエ根絶があったことはあまり認知されておらず、国民はその理由について何も関心を持たない。理解増進のためには史実と現状を正確に国民に伝えることが必要。
- 国民にとって「食品照射」という言葉はわかりにくく、殺菌技術や発芽防止技術という丁寧な表現をするべき。
(2)食品照射と食の安全-不安と期待-(加藤委員)
- 不安の解消のためには、信頼できる情報源からの安全性に関する科学的説明が必要。WHOや原研(日本原子力研究所)高崎研究所などの公的機関が提供するデータは一般の人向けになっておらず、わかりにくい。企業や行政機関から出される情報は一般の人に信用されにくい。
- 食品照射が社会的に根付いていくためには、照射食品そのものの安全性はもとより食品照射システム全体の安全性に対する理解が必要であり、必要性と便益、他の手法との比較における利点の理解も重要。
- 食品照射が食の安全に役立つ技術として社会に貢献していくためには、不安の解消の他、技術の先行ではないニーズからの出発、技術の押しつけではない自由な選択の尊重が重要。
(3)香辛料の品質保証のための対策(小林理事長)
- 一般消費者と業者との間に意識のズレがある。クリーンなものが売られているのが当たり前という意識が一般消費者にはあり、腐ったものを売るのは小売店の責任と思っている。一方、信用上の問題から小売店はクリーンなものを売るために
仕入れの段階で腐敗したものを排除し、食品メーカーはクリーンな原料を要求している。ここに食品材料の殺菌技術の必要性がある。
- 国際規格の制定や地域的な規制調和(ハーモニゼイション・オブ・レギュレーション)の動きがあるが、日本への影響は不明。照射食品の国際流通が盛んになった場合、日本にもそれが入ってくる可能性は否定できない。
- 照射食品か否かを確認する検知技術の開発とそれを活用する場の定着が課題。
- 食品照射に関するPA(パブリック・アクセプタンス)の議論は、日本は被爆国だから放射線に対しアレルギーを持っているという発想があるため進展しておらず、議論をさらに深める必要がある。
- 馬鈴薯への照射認可以来、食品照射の時間的な空白があったため、過去の経緯やデータを知る研究者が減少し、今後の国際的な動きへの対応を考えた場合、専門家不足が懸念される。
- ソウルで開催されたRCA(原子力科学技術に関する研究・開発及び訓練のための地域協力協定)のワークショップに日本政府代表が参加しなかったのは残念である。諸外国では食品照射の実用化が進んでいるにもかかわらず、世界でも有数の食料輸入国である日本が遅れているのは国際貿易の観点からも疑問である。
- 情報公開の観点から照射食品である旨の表示は不可欠であり、消費者にはそれを知った上での選択の自由がある。照射食品の安全性に関する情報を提供する意味では、照射線量の表示も必要ではないか。なお、外国では照射線量の表示はない。
- これに対し、以下のような議論が行われた。
- 食品照射の実用化には、検知技術や照射技術等の放射線を取り扱う技術に加えて、消費者の理解や安全性等の問題がある。しかし、FAO、IAEA、WHOのデータから判断して安全性の問題はかなり解決されているのではないか。また、検知技術や照射技術に関しては、原研も必要があれば技術開発に取り組むつもりである。むしろ、行政機関の取り組む姿勢に問題があるのではないか。
- 最近の消費者の関心事は食品の安全性だが、安全な食生活を送るためには、食品の安全性が保証されるだけでなく、食べるという総合的な行動の中でいかに安全が確保されるかが重要である。現代は我々の親の時代より食生活の安全性に関する知識や体験が減っており、食品の腐敗に対する感性が劣っているのではないか。昔に比べ衛生状態が良くなったにもかかわらず食中毒が増えているのは、>食生活の安全を自ら守る能力が衰えているのが原因で、消費者の教育と体験を増やすことが解決策である。
(4)放射線育種について(桂委員)
- 放射線により細胞レベルの突然変異体の選抜が可能なため、キクの変色のように優良品種を生み出し、新品種として育てていくことが可能。
- 熱帯諸国における育種技術開発の援助のため、放射線育種場には国際的拠点としての役割が期待されており、従来の放射線育種研究と品種育成の実績を踏まえ、ガンマフィールド(ガンマ線照射施設)の整備による今後の発展を目指している。
- 今後は、放射線育種場、原研、大学等の研究交流を深め、全日本型の放射線育種のアクティビティ強化を図っていく必要がある。
- イオンビームは微細な制御が可能という利点を持っている。ガンマ線についても今後の照射技術の進歩に期待している。
- 消費者は、普段口にしているものが品種改良されたものという認識はなく、自分が生まれる前からあるものは安全、後から科学技術により持ち込まれたものは怪しいという感覚を強く持っている。一般的にその品種が生まれた経緯に興味を持たないため、過去の品種改良の努力が全く理解されていない。放射線育種場の宣伝不足もあるが、消費者との直接対話あるいはマスコミを通じたアピールが必要である。
- 生産の場と消費の場の乖離が大きな問題である。例えば、花の見かけの色には興味を示すが、生産に関する情報には関心がない。食品の場合にも同様の現象があったが、最近は消費者の危機感もあり、生産者を明示して台所と生産者を直結させる動きがある。これにより品種改良に関する情報提供の促進が期待できる。
(第4回)
日時 平成12年1月17日(月)
議題 環境保全への貢献、工業分野への応用について
- 幅広い利用、新産業創出に向けて、石榑委員、前田委員、渡邊委員より、以下のタイトルでプレゼンテーション実施。
- (1)放射線の工業・環境利用への展開(石榑委員)
- 今後の展望として、高付加価値の高分子材料製品の開発、イオンビームや放射光の特長を活かした高度な利用、環境保全や資源の有効利用などの社会的ニーズに応える技術への応用が期待される。
- 法規制(放射線障害防止法)は、ユーザーにとって場合によっては、放射線利用の障壁になっている。JCO事故もあり、規制緩和が好ましいとは一概に言えないが、技術の進歩に伴い法規制にそぐわなくなっている面における弾力的な運用が望まれる。
- RIの処理・処分は、ここ数年状況が進展しており、処分のための立地に向けた準備が進行中。実際の運用にあたっては、クリアランスレベルの設定と処分費用の負担が問題。
- 基準等の整備として、特に工業用線量の国家計量標準との照合や校正等を目的としたトレーサビリティ制度の整備が必要。
- PAとして、放射線の有用性を理解してもらうための情報公開と放射線に対する正しい理解のための放射線教育が重要。
- 多様化した産業で放射線利用を推進していくためには、産官学の密接な連携を目指した産業コミュニティの形成が必要。
(2)放射線の工業及び環境への利用-より幅広い利用に向けて-(前田委員)
- 放射線は、材料加工、滅菌、環境浄化等に幅広く利用されており、研究開発を進めることにより、さらに国民生活に役に立つ成果を生み出すことが可能。
- 放射線利用には、加工処理がクリーンで省エネルギー、原材料の形状・物性保持が可能などのプラスの面と、設備コストが高く、許認可手続きが必要などのマイナスの面がある。
- より幅広い利用を目指すためには、新しい放射線の利用、新しい利用法の開発、新しいニーズの開発、新しいニーズへの対応についての国としての取り組みが必要
- 放射線利用技術の国際協力においては、地域の特質やニーズを踏まえた技術移転、技術の定着に向けた人材養成、相互補完する協力研究・共同利用が必要。
(3)放射線の工業分野への応用-現状と新産業創出に向けて-(渡邊委員)
- 新産業創出には、①抜本的な技術革新、②幅広い産業へのインパクト、③研究・開発・実用化の長期的な展望、④国民生活への貢献、⑤産官学の協力などの条件が必要であり、これを満たす新産業創出テーマとして、様々な産業分野における新素材開発が挙げられる。
- 従来は、「官」主導で新産業創出を進めてきたが、市場ニーズに関する理解不足、税金のバラマキ行政、「産」の活力が活かされないといった問題点があった。
- 新産業創出に採用されたテーマに関し、産官学が対等でネットワークを構築する。その際、「官」は監督官庁の一元化、集中的な資金投入、「産」への国立研究所の全面開放といった役割を果たし、「学」は基礎研究の担当とベンチャー志向の人材育成を担当し、「産」は幅広い産業に貢献するテーマの選定と開発研究・実用化を行うことが必要。
○プレゼンテーションに対し、以下の議論が行われた。
- RIの処分については、処分施設がないのが現状。国は処分施設の整備を検討しているが、立地が問題。短半減期のRIは、十分に長期間保管すれば普通に処分が可能だが、理解を得ながらの対処が今後の課題となる。
- ユーザー側からすると、放射線取扱主任者をおいて放射線管理を行うことに障壁を感じている。しかし、JCO事故のこともあり、規制緩和を行うという選択肢はないと思われる。PAの観点では、放射線障害防止法の存在が一般市民に安心感を与えることになっていることも考慮すると、法規制のプラスの面を活かした弾力的な運用が必要である。
- 廃棄物については、情報公開が必要。廃棄物の処分に関する検討は原子力安全委員会で進んでいるが、立地での理解が得られていないため、住民の理解を得る努力が必要である。
- 20年前は原子力のエネルギー利用に関する一般市民の理解は必ずしも十分ではなかったが、放射線利用についてはさらに知られていなかったと思われる。放射線利用に投入している予算は、エネルギー利用に比べると微々たるもので「片輪」状態といえる。放射線利用に関する情報提供が不十分なのも「片輪」。
- 放射線のよい面だけでなく、悪い面をも明確に説明していく必要がある。
- 遺伝子組み換え作物と放射線育種作物は、現在PAに関して取り扱いが異なっている。放射線育種は、突然変異により自分が持つ遺伝子を改変して劣性遺伝を引き起こすもので、自然突然変異の加速と見なせる。確率は小さいが安定した作物も得られており、既に世の中に出回っている。最終的に遺伝子組み換えと放射線育種が同じものかについては議論する機会が必要。
○また、前田委員から提案のあった「原子力利用に伴う放射線や放射性物質の環境影響」について、以下の議論が行われ、今後の審議項目として取り上げることとした。
- 第五分科会の主たる役割は、放射能や放射線に関わるものの利用を促進し、国民の理解を進めることにある。原子力施設の外にいる住民の多くは施設に大きな不安を抱いている。環境中の放射性物質がどのように移行し、人のリスク管理がどのようになるのかを明確にする必要がある。
- 環境研究は30-40年という長期の測定期間を必要とするため、研究機関の相互の協力が不可欠。この研究分野には、数多くの研究機関、研究者が関わっている。従って、ある研究機関がセンター・オブ・エクセレンス(COE:中核的研究拠点)になり、全日本的にこの研究分野を束ねてデータや情報をまとめていくことが必要。それによって得られる研究成果は、国民の理解増進の点で大いに役立つもの。
- 全日本的な研究体制を実現していくためには、関連研究機関が集まって議論する場を設けるべき。長期計画はある特定の研究機関のためのものではなく、幅広く研究分野の学問の推進を図り、それを通じた国民の安心の確保と情報提供していくことが目的。
- 健康影響の観点からも放射性物質の環境影響は重要な問題。線量と病気の頻度の相関を示さないと環境汚染との関係は証明しにくい。
(第5回)
日時 平成12年2月29日(火)
議題 放射線の健康影響等について
- 放射線の生体影響、被爆体験を踏まえた我が国の役割等に関して、武部委員、土肥委員、山下委員及び招へい者(甲斐大分県立看護大学教授)から以下のプレゼンテーションを実施。
- (1)放射線の生体影響(武部委員)
- 低線量被ばくの影響については、十分なデータがないのが現状であり、実験も難しい。しかし、広島・長崎のデータや、ショウジョウバエなどのデータから、被ばく線量とがんや遺伝などの障害の発生量とは直線関係で表される。なお白血病に関してはしきい値がある。
(2)被爆体験を踏まえた我が国の役割(土肥委員)
- 放影研では、広島・長崎の被爆者に関して12万人の調査集団を有しており、寿命調査や遺伝調査を行うことにより、貴重なデータをもたらしている。また、北南米在住被爆者等に対しても検診等を実施。
(3)被爆体験を踏まえた我が国の役割-唯一の原子爆弾被災医科大学からの国際被ばく者医療協力-(山下委員)
- 被爆国であり非核保有国である我が国の責務として、チェルノブイリ、セミパラチンスクの国際医療協力を実施しており、現在、長崎大学とセミパラチンスクの間をネットワークで結び遠隔診断を行っている。
(4)放射線防護と健康リスク(甲斐教授)
- リスク論は、がんや遺伝影響がしきい値論では対応できないことから現れた。しかしながらリスク論は社会的不安の増大などの問題もあり批判もある。一方で他の有害物質などとの比較など、幅広いコミュニケーションを可能とする。
- リスクとは社会的な合成物で当然価値を伴うものであり、自然科学的な実態のあるものではなく、その意味で健康影響とは異なる。リスクは影響防護を決めるために、将来を予測する判断基準といえる。
○主な議論は以下のとおり。
- 被ばく者医療協力では、日本チームの情報は信用してもらえる傾向にある。同じ被ばく民という感情があると思われる。
- 我が国はこの分野において高いレベルをもっており、COEになりうると考えられる。また国際貢献は価値のあるものである。重要なのはデータベースをもっていること。
- これまで日本の原子力はリスク論は取ってこなかった。しかし、低放射線など残留レベルではリスク論でよいと思う。しかし、学者レベルと一般レベルで捉え方が異なるということに注意する必要がある。
----今後の予定------
(第6回)
日時 平成12年3月21日(火)
議題 横断的事項等
- 放射性物質の環境影響
- 技術移転と地域への技術展開
- 放射線教育について
- RIの利用について
(第7回)
日時 平成12年4月20日(木)
議題 機関連携のあり方について、報告書骨子案の検討
(第8回)
日時 平成12年5月中旬(予定)
議題 報告書のとりまとめについて