原子力安全委員会・ウラン加工工場臨界事故調査委員会
緊急提言・中間報告のポイント

1.はじめに
本委員会は、必要な対策が適時・的確に講じられていくことが重要との視点から、現在までの事実関係の把握から直接的に出てくる対応策を緊急に提言。

2.事故の状況とその影響
平成11年9月30日、我が国初の臨界事故が発生。臨界事故は、初期の変化の大きな部分に続き、比較的なだらかに長時間にわたって継続。放射性物質の放出は周辺住民・環境に影響を及ぼさない程度。農作物も安全性確認。社会的・経済的には大きな影響。

3.事故への対応(防災関係)
加工施設での臨界事故を想定した防災準備なし。事故状況の正確な把握が遅れ、的確な初期動作が困難。国、県、村の情報伝達ルート等が有効に機能せず、迅速な対応が十分ではなかった面あり。

4.事故の原因とそれに関係する状況
国が許認可した設備及び方法による作業とは全く異なる作業がなされたことが直接的原因。
その背景には、①作業員の臨界に関する認識不足、②企業における人員の配置、教育等のマネージメントの問題、③企業における設備改善の努力等の不足、等があった可能性あり。
株式会社ジェー・シー・オーの安全管理は、国から許認可を受けた作業手順とは異なる「手順書」の作成・使用等、問題の多いもの。
国の規制のあり方については、①安全審査のあり方、②チェック体制のあり方、という2点について、結果として今回のような事故が発生しており、改善策の検討が必要。

5.緊急提言
(1)事故現場の安全確保
現場に残存するウラン溶液について、国は適切な処理がなされるよう万全を期すべく、株式会社ジェー・シー・オーを指導し、また関係機関の協力を要請する等の取組みを行うべき。

(2)住民の健康対策
長期的な健康管理のため、住民の不安に対する心のケアを含めて、国、自治体、事業者が適切な役割分担と連携の下、遺漏なく取り組むべき。

(3)原子力関係事業者における安全確保の徹底等
安全確保の第一義的な責務は事業者。当面、以下のような所要の措置を講じるべき。

①企業内部における有効な監査体制の確立や、ISO9000取得等の社外の制度を通じた安全確保
②従業員への安全教育の徹底、能力の認定制度や資格制度の創設
③安全確保に関する文書の作成や管理について、核燃料取扱主任者等の安全管理に責任を有する者が確実にチェックするシステムを構築
④安全確保のために必要なコストを適正に負担し、所要の防災関連の組織や資材を整備
⑤発注者側にあっても、受注者側に対して安全性についても品質保証の一環として要求
⑥原子力関係事業者全体として、相互に協力して安全管理の水準の向上に資するような体制を、国とも協力しつつ、構築

(4)国における安全規制の再構築等
安全審査については、「誤操作等」とはいえないような原因による臨界事故が起こりうることを念頭において、見直し。
国による検査機能を強化するため、例えば、①原子炉等規制法第68条に基づく立入検査等について、より効果的に実施するよう運用すること、②加工事業等に係る規制項目を追加し、定期検査等を義務づけること、③運転管理の状況や従業員の教育の状況について、効果的な検査制度を導入すること、といった方策を取るべき。
原子力災害に際して、例えば以下の点について早急に対策を講じるべき。
①的確な情報把握に基づく迅速な初期動作と国、都道府県、市町村の有機的連携の確保
②原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化
③事故に際しての迅速な通報等、原子力防災における事業者の役割の明確化
④モニタリングシステム、情報通信設備の整備
原子力安全システムを健全に機能せしめるためには、必要な人員や資材等を整備することが必要。

6.今後の調査検討課題
今後、事実関係の調査を深めて事故原因を徹底究明するとともに、国と事業者の適切な役割分担に基づく安全規制体制の整備・強化のあり方、「安全文化」の創造、原子力産業のあり方等、事実の背後にある構造的な問題にまで踏み込んで調査検討し、再発防止策についての基本的な考え方をとりまとめ。