原子力の安全確保に関する当面の施策について

平成11年11月11日
原子力安全委員会決定

 平成11年9月30日に発生したウラン加工工場の臨界事故に関し、11月5日、当委員会のウラン加工工場臨界事故調査委員会(以下「事故調査委員会」という。)は緊急提言・中間報告を取りまとめ、先般その提出があった。
 同報告は、原子力分野の事業者のあり方、安全規制、防災対策等に関し、重要な提言を示しているところ、これらのうち立法の要するものについては、現在政府が準備を進めている原子炉等規制法の改正、原子力防災関連法律の整備により、適切な対応が図られるものと考える。当委員会は、その施策のあり方について、設立直後の昭和53年12月、同57年11月及び設立20年を経た平成10年10月に委員会決定等により明らかにしてきたところであるが、今般提出された同報告が当委員会の活動及び行政庁との関係に関し、重要な問題を提起していることを深く認識するものである。このため、かねて検討中の課題への対応をも考慮し、安全確保の各段階における当委員会が当面推進すべき施策について、下記の通り決定する。なお、事故での被ばく者の健康管理については、「健康管理検討委員会」を設け、当委員会として必要な対応を行っていくこととしている。
また、事故調査委員会からの最終的報告が提出された段階において、改めて当委員会としての考えを示すこととする。

1.設置許可段階の対応
・核燃料加工施設の安全審査に関し、今回の事故を踏まえ、臨界防止の対策及び臨界時の対策を徹底すべく、関係指針類の体系的整備を含め、すみやかに見直しを行う。また安全審査指針全般について、その整備の促進と新知見の取り入れに努める。
・基本設計の審査において、運転管理に関する分野の専門家を加え、その観点からの審査に一層の注意を払う。
・技術的能力の審査に関する指針を策定する。
・安全審査において、設置許可段階以降の安全規制における重要な事項に対する指摘を一層緻密に行う。

2.設置許可以降の行政庁による後続規制に対する対応

(1)建設段階においては、安全審査の際の考え方が的確に実現されていることを確認するため、設置許可の際に指摘した重要な事項を中心に、設計及び工事の方法の認可、使用前検査、保安規定の認可等の各規制段階の進捗を、現地調査を含めた確認により把握する。また新たな技術を採用した事項については、行政庁に報告を求めるとともに、適切な対応がなされていることを、現地調査等により確認する。

(2)運転段階においては、技術的能力が維持されているとともに安全審査の際の考え方が的確に実現され、安全確保対策が適切になされていることを確認するため、保安規定の遵守状況、定期検査の実施状況等について行政庁より報告を受け、現地調査を含めた確認により把握する。

3.緊急事態への対応等
・緊急事態へのより的確な対応のため、緊急技術助言組織構成員の法的地位の明確化が図られており、併せて当委員会としても、訓練の充実、対応に必要な設備等の充実等を図る。
・また、事故・故障の原因究明及び対策の妥当性の調査審議のため、専門の組織を設置し、中長期的対策の検討と水平展開状況の一層適切な把握を行うとともに、内外の事故例の分析・評価を進め、 施策への適切な反映を促進する。

4.委員会の体制
 これらの実施にあたっては、当委員会の事務局体制のすみやかな強化及び専門家の一層の充実が必要であり、そのための努力を払う。