用 語 解 説  


【ア行】


RIビーム加速器施設(RIビームファクトリー)
理化学研究所において整備が進められている加速器(「加速器」の項を参照。)施設。高速に加速した重イオンビームの核反応を利用して、水素からウランまでの全元素にわたる不安定核(RI)ビームを世界最大級の強度で発生させ、様々な科学分野にわたる実験に利用する。

国際原子力機関(IAEA)
世界の平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献の促進増大と軍事転用されないための保障措置(「保障措置」の項を参照。)の実施を目的として1957年に設立された国連と連携協定を有する技術的国際機関。2000年4月における加盟国は130ヶ国。

アジア原子力協力フォーラム
原子力平和利用に関する地域協力の推進のため、原子力担当の大臣レベルの戦略的対話を行う枠組み。現在、9ヶ国の参加により、研究炉利用、放射線利用等、7つの分野でワークショップの開催等の地域協力を推進。第1回会合は、2000年11月にタイにて原子力委員会とタイ科学技術環境省との共催により開催された。

アトムズ・フォア・ピース演説
1953年12月国際連合第8回総会において米国アイゼンハワー大統領により行われた演説。主な内容としては、
  1.国際原子力機関を設立する。
  2.この機関は、各国政府から供出された核物質を平和利用のために保管・貯蔵・防護を行う 。
  3.この機関は、原子力の平和利用の促進を行う。
があげられる。

ウインドファーム
風力発電機が多数集まっている場所。米国、カリフォルニア州パームスプリングスのウインドファームには、約15,000基、設備容量にして約160万kWの風車が林立している。

ウラン加工工場臨界事故
1999年9月30日に、(株)ジェー・シー・オー東海事業所のウラン転換試験棟において発生した臨界事故。原因は、本来の使用目的と異なる沈殿槽に、制限値を超える多量の硝酸ウラニル溶液(ウラン溶液の一種)を注入したことによる。事故現場で作業をした3名が重度の被ばくを受け(うち2名が死亡)、我が国で前例のない大事故となった。

ウラン濃縮
天然ウランにはウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%含まれているが、軽水炉用の燃料として利用するため、核分裂しやすいウラン235の割合を3〜5%まで高めること。主な方法としては、遠心分離法とガス拡散法がある。

ウラン廃棄物
ウランの濃縮、転換、成型加工等に伴って発生するウランを含んだ放射性廃棄物。半減期が極めて長いウラン及びその娘核種(ウランの壊変により生成した核種)を含んでいること、放射能レベルが極めて低い廃棄物が大部分を占めること等の特徴を有している。

温室効果ガス
大気中に含まれる特定の気体成分が、地表から宇宙空間に放射される熱(赤外線)を吸収し大気及び地表が暖められる現象を温室効果と呼ぶ。このような温室効果を引き起こす気体を温室効果ガスといい、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF)などが知られている。

【カ行】


核物質防護
核物質の盗取等による不法な核物質の移転を防止するとともに、原子力施設及び輸送中の核物質に対する妨害破壊行為を未然に防ぐことを目的とした措置であり、核拡散や核物質の悪用を防ぐ上で必要不可欠な措置。

核兵器の不拡散に関する条約(NPT)
核兵器保有国(1967年1月1日の時点で核兵器保有の米、旧ソ、英、仏、中の5ヶ国)の増加を防止し、保有国が非保有国に核爆発装置や核分裂物質を提供しないことを目的とする条約で1970年3月に発効。1995年に無期限延長が決定された。

核融合
原子核反応の一種で2つの原子核がより重い1つの原子核になる現象。その際、中性子等とともに大量のエネルギーを放出する。水素、重水素、トリチウム等の軽い元素を用いてこの反応により、エネルギーを取り出そうとするのが、核融合炉の考え方である。なお、太陽等の恒星の主たるエネルギー源は、核融合反応である。

加速器
電場や磁場を用いて電子や陽子などの荷電粒子を加速する装置。加速された荷電粒子は、そのものが放射線であるが、物質との衝突により別の放射線を発生させることもできる。原子核や素粒子物理学などの基礎科学分野や医療、工業などの分野で利用されている。


ガラス固化
再処理工程において使用済燃料から分離される高レベル放射性廃液を、ガラスを形成する成分等と一緒に加熱することにより水分を蒸発させるとともに非結晶に固結(ガラス化)させ、物理的・化学的に安定な形態にするプロセス。廃液はステンレス製の堅牢な容器(キャニスター)に閉じ込められた状態でガラス固化され、人工バリアの構成要素の一つとなる。ガラス固化体は放射性物質を安定な形態に保持し、地下水に対する耐浸出性に優れていることが特徴。

クリアランスレベル
当該物質に起因する放射線の線量が自然界の放射線レベルと比較して十分小さく、また、人の健康に対するリスクが無視でき、「放射性物質として扱う必要がないもの」を区分する値のこと。

経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)
原子力平和利用における協力の発展を目的とし、原子力政策、技術に関する意見交換、行政上・規制上の問題の検討、各国の原子力法の調査及び経済的側面の研究を実施するための国際機関。1958年、欧州原子力機関(ENEA)として設立され、1972年、我が国が正式加盟したことに伴いNEAに改組された。

軽水炉
減速材及び冷却材に水(軽水)を使っている原子炉。これには沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)がある。発電用原子炉として米国、フランス、日本を始め世界で最も多く使われている。

原子力基本法
日本の原子力に関する基本的な考え方を法制化したもの。原子力の研究、開発及び利用を推進することにより、人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与するとの目的や、民主・自主・公開の三原則等の下に原子力利用を行うとの基本方針などがうたわれている。1955年制定。

原子力災害対策特別措置法
1999年9月のウラン加工工場臨界事故の教訓から、原子力災害対策の抜本的強化を図るために、1999年12月に成立した法律。原子力災害での迅速な初期動作と国、地方自治体の有機的連携の確保、国の緊急時対応体制の強化、原子力防災における事業者の役割の明確化等が図られた。

原子力政策円卓会議
1995年12月の「もんじゅ」事故を契機に、国民の間に原子力に対する不安や不信が高まりつつある状況を踏まえ、原子力委員会では、国民各界各層から幅広い参加を求め、多様な意見を原子力政策に反映させることを目指して1996年3月に原子力政策円卓会議を設置した。また、同会議からの提言を受けて、1998年には新たな原子力政策円卓会議が設置され、2000年2月に提言が出された。

原子炉等規制法
「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(1957年公布)の略称。原子力基本法の精神にのっとり、製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制等を行うことを目的としている。

高温岩体発電
地下の乾燥した高温の岩体を破砕し、人工的に貯留槽をつくり、そこに注水を行い蒸気または熱水を取り出して行う発電。

高速増殖炉
 高速で動く中性子(高速中性子)を使う原子炉は、燃えにくいウランをプルトニウムに転換してウラン資源の利用効率を高めることができるとともに、プルトニウム、マイナーアクチニド等多様な燃料組成や燃料形態にも柔軟に対応し得る。中でも、燃えてなくなった以上の燃料が転換によってできる(増殖する)よう設計された原子炉を高速増殖炉という。

国際熱核融合実験炉計画(ITER)
国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor)計画。人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性を実証することを目標として進められている国際共同プロジェクト。1988年より開始され、現在は日本、EU、ロシアの3極が参加(1999年まで米国も参加)し、共同で設計活動が進められている。

コージェネレーション
電気(または動力)や熱などを同時に供給するシステム。発電時に発生する排熱を暖房や給湯等に利用することにより、電気需要と熱需要の適切な組み合わせが可能な場合、総合エネルギー効率を約70〜80%にまで高めることが可能である。

混合酸化物(MOX)燃料
「MOX燃料」の項を参照。

【サ行】


使用済燃料の中間貯蔵
原子力発電所で使い終わった燃料(使用済燃料)を、再処理するまでの間、当該発電所以外の使用済燃料貯蔵施設において貯蔵すること。1999年6月原子炉等規制法の改正により中間貯蔵に関する事業、規制等が定められた。

食品照射
発芽防止、殺菌・殺虫、熟度遅延などの目的で、食品や農作物にガンマ線や電子線などの放射線を照射すること。

人工バリア
埋設された廃棄物から生活環境への放射性物質の漏出の防止及び低減を期待して設けられる緩衝材、コンクリートピットなどの人工構築物、廃棄物の固型化材料及び処分容器。
高レベル放射性廃棄物の地層処分の場合、ガラス固化体、オーバーパック及び緩衝材からなる部分をいう。

スリーマイルアイランド原子力発電所事故
1979年3月28日、米国のスリーマイルアイランド(TMI)原子力発電所2号機で発生した事故。原子炉内の一次冷却材が減少、炉心上部が露出し、燃料の損傷や炉内構造物の一部溶融が生じるとともに、周辺に放射性物質が放出され、住民の一部が避難した。

【タ行】


大強度陽子加速器
日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構とが共同で計画している加速器施設。世界最大級の強度を有する陽子ビームを標的に照射することにより、中性子を始めとする多くの二次粒子を取り出し、生命科学、物質科学、材料科学、原子核・素粒子物理、未来型原子力システムなどの分野での研究が行われる。

チェルノブイル原子力発電所事故
1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイル原子力発電所4号機で発生した事故。急激な出力の上昇による原子炉や建屋の破壊に伴い大量の放射性物質が外部に放出され、旧ソ連と隣接する欧州諸国を中心に広範囲にわたる放射能汚染をもたらした。

地球温暖化防止京都会議(COP3)
1997年12月に京都で開催された国連の気候変動枠組条約第3回締約国会議。この会議では、2008〜2012年に先進国から出される温室効果ガスの1年間の平均排出量を1990年レベルより少なくとも5%削減することなどを規定した「京都議定書」が採択された。各国の削減目標は、日本が6%、米国7%、欧州連合(EU)8%などとなっている。

地層処分
人間の生活環境から十分離れた安定な地層中に、適切な人工バリア(「人工バリア」の項を参照。)を構築することにより処分の長期的な安全性を確保する処分方法。「地層処分」という用語の「地層」には、地質学上の堆積岩を指す「地層」と、地質学上は「地層」とみなされない「岩体」が含まれている。

朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)
北朝鮮に対する軽水炉の供与、軽水炉建設までの間の代替エネルギー(重油)供給等を実施するために1995年に設立された国際機関。

追加議定書
イラクによる秘密裏の核兵器開発計画の発覚等を契機として、IAEA保障措置の実効性を強化し及びその効率を改善することにより核兵器の不拡散体制を強化するための協定。IAEAに提供する情報の拡充、IAEAによる補完的なアクセス等について規定している。我が国では、1999年12月に発効。

電源三法交付金
1974年に創設された電源三法(電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法の総称)に基づく交付金・補助金。発電施設等立地地域において公共用施設の整備を行うなど、電源立地の円滑化を図るための中心的施策として位置付けられている。

天然バリア
人工構築物又は埋設された廃棄物の周囲に存在する土壌や地層など。埋設された廃棄物から漏出してきた放射性物質の生活環境への移行の抑制などが期待できる。

【ナ行】


ニュークリアセイフティーネットワーク
ウラン加工工場臨界事故を受け、電力、燃料加工、プラントメーカー等の原子力産業に携わる企業及び研究機関等を会員として、1999年12月に設立された団体。原子力業界全体の安全意識の高揚、モラルの向上及び原子力の安全文化の共有化を図ることを目的として、原子力の安全文化の普及、相互評価(ピアレビュー)、情報交換・発信の3つを主要業務としている。

燃料電池
天然ガス、メタノール等の燃料を改質して得られた水素と大気中の酸素を電気化学的に反応させることによって直接電気を発生させる装置。

【ハ行】


バイオマス
バイオマスエネルギーとは生物体を構成する有機物を利用するエネルギーであり、太陽エネルギーが植物により変換され生物体に蓄えられたもので化石燃料と異なり再生可能なエネルギーである。

プルサーマル
使用済燃料の再処理により回収されるプルトニウムを、MOX燃料(「MOX燃料」の項を参照。)として一般の原子力発電所(軽水炉)で利用すること。

兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)
核兵器その他の核爆発装置用のプルトニウム及び高濃縮ウランの生産を禁止するために検討されている条約。CTBTに続く多数国間の核軍縮・核不拡散措置の一つと位置付けられる。

包括的核実験禁止条約(CTBT)
核兵器の全ての実験的爆発、及び他の核爆発を禁止した条約であり、仮にこれらの実験的爆発及び他の核爆発が行われた場合には、国際監視制度による監視活動と現地査察により、核爆発の事実を確認する仕組みを規定している。1996年9月の国連総会で圧倒的多数の賛成で採択された。

放射線
法令上、放射線とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接に空気を電離する能力をもつものであると定義されており、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線、重荷電粒子線、エックス線などが含まれる。

放射線育種
放射線を照射することにより、細胞レベルでの突然変異の頻度を高め、形質が様々に変化した突然変異体の中から人類にとって有用な形質を持つものを選別する育種(品種改良)法。

放射線防護
放射線利用に伴う健康影響の発生を防ぐこと。放射線源の管理、環境の放射線管理、人の被ばく管理等を通して目的を達成する。

放射能
原子核が別の原子核に壊変し、アルファ線、ベータ線、ガンマ線などの放射線を出す性質。放射能の強さを意味する場合もある。

保障措置
原子力の平和利用を確保するため、核物質(IAEA憲章第20条で定義された原料物質、特殊核分裂性物質)が核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを検認すること。なお、「核兵器の不拡散に関する条約」(NPT)を締結している非核兵器国は、同条約に基づきIAEAとの間で保障措置協定を締結し、全ての平和的な原子力活動に係る全ての核物質について保障措置を適用することが義務づけられており、このような保障措置を包括的保障措置という。

【マ行】


マイナーアクチニド
原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムまでのアクチノイド元素のうち、アクチニウムを除いた元素群はアクチニドと呼ばれている。マイナーアクチニドは、使用済燃料の中に生成するアクチニド元素のうち、生成量の比較的多いプルトニウムを除いた生成量の比較的少ない元素の総称で、ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムなどが含まれ、いずれも放射性核種である。

MOX燃料(混合酸化物(Mixed Oxide)燃料の略)
使用済燃料などから回収されたプルトニウムをウランと混合して作られた核燃料。