長計策定会議25回と国際問題検討WGへの意見

○氏名   :池野 正治

○ご意見の内容:

第25回策定会議、及び国際問題検討WGによる「論点の整理」について意見を述べます。
 我が国の原子力平和利用を担保する核不拡散体制として、WG「論点の整理」では基本方針として3点挙げており、策定会議でもこのWGでの論議を敷衍して審議されたようですが、現在ニューヨークで開催されているNPT再検討会議(運用検討会議)が行き詰まっている原因とも関連していますので、問題点を挙げます。
 NPT条約そのものが、核兵器保有国P5を固定し、P5による世界秩序を構築するものとして、従来より批判されてきたことですが、このNPT第3条に基づくIAEAとの包括的保障措置協定や、その後の追加議定書などは、一定の範囲で非核兵器国の監視には役立ってはきましたが、P5に対しては効果がなく、ひいてはこれが非核兵器国への説得力の欠如となってきたのではないでしょうか。P5はIAEAとの「自主提供協定」にて自国の軍事施設への保障措置を回避させ、民生用施設との境界が曖昧であるのを理由に、回避してきました。P5はCTBTやFMCTなどの批准を拒否し、NPTを骨抜きにしています。
 我が国が非核兵器国として唯一プルトニウムの分離が認められていることが、再処理を継続していくとした先の策定会議での中間とりまとめでも「実績」(案)や「国際的合意」(とりまとめ)として堅持していくことを謳っています。しかし我が国がプルトニウムの分離を継続してきたこと、そして今後も継続していくことが他の非核兵器国に再処理の口実を与えていることは、今回のNPT再検討会議でも明らかです、エルバラダイ事務局長は日本のマスコミのインタビューに応じて、日本の(再処理堅持について)かたくなな態度が事態を困難にしており、柔軟な姿勢への転換を求めています。勿論、ブラジルやアルゼンチン、イランなどがウラン濃縮を強く求めている現状はありますが、少なくともプルトニウム分離について日本は率先して凍結すべきではないでしょうか。
 ウラン濃縮やプルトニウム分離の国際管理は、使用済み燃料や放射性廃棄物の国際管理と共に以前より論議されてきたところで、IAEAの懸念が現実化しているのが現状です。策定会議では我が国の「平和利用」が強調されていますが、核拡散の歴史は「平和利用」が虚構であることを示しています。
 IAEAによる保障措置について、我が国は率先してその強化に努めてきましたが、その保障措置費用はやっと1億$にはなりましたが、それでも実際に査察しているのは対象件数の約半数であり、優先しているのは約7%、監視下にあるプルトニウムは約35%、HEUで約1.2%に過ぎません。我が国は東海再処理工場と高速増殖炉を抱えているため、対象となる件数も費用も非常に多くなっています。今後、六ヶ所再処理工場が本格稼働すれば、さらにその件数、費用、ひいては我が国の比率が格段に高まります。限られた人員と予算の中で、日本への比率が高まれば、他国への保障措置が弱体化します。もし他国でも再処理に乗り出せば、押しとどめる理由はありません。
 さる4月下旬に、経済産業省資源エネルギー庁と日本の重電メーカーが官民一体となって中国に原発を売り込みに行った、との報道がありましたが、これは「国際展開」ではなく「海外輸出」ではないですか。昨年の当会議で、プルトニウム利用の理由として、将来のウラン需要の逼迫を挙げていましたが、中国を始めアジア各国で軽水炉がどんどん建設(輸出)されれば、さらにウラン価格は上昇し、その結果として再処理−FBRが導入され、核拡散が加速することになります。また、原発の輸出(機器類を含めて)は放射性廃棄物の処理処分問題の拡散にもなります。かつて我が国でも原発の建設ラッシュの頃、誰も放射性廃棄物の事は考えていなかったのです。そしていまだにこの問題は解決できず、今後も解決できません。輸出するより自国の放射性廃棄物処分について叡智を傾けるべきです。