全体的な原子力政策転換のリアルなイメージを描いて意見としてお送りします。

○氏名   :中村 融

○ご意見の内容:

委員各位並びに近藤議長&事務局の皆さんご苦労様です。
第19.20回の策定会議の審議をトレースして来ましたが、大変内容のある審議では有りましたが、原子力政策転換の具体的なイメージは残念ながら有りませんでした。
未来に向かっての研究&開発のテーマにも拘らず見るべき審議が遺憾ながら見られなかったのです。
そこで、今回は全体的な政策転換の具体的なイメージをリアルに描いてお送りしたいと考えました。
今迄の審議で現行の原子力政策の問題点として浮かび上がって来ている諸点を指摘してそれが如何にスムースに展望の在るシステムへと転換して行けるかをリアルに描いて見たいと思います。
まず①原発立地の停滞が在ります。次に②使用済燃料の滞留問題が有ります。そして③FBR開発の挫折があります。
①の問題はTMI事故とチェルノブイル事故を経て、万一の場合には原発は回復不可能なカタストロフな大事故を起こし得るかを明確に示して『危険な原子力にエネルギーを頼る事は出来ない』としてドイツの『脱原発政策』導きました。
100%絶対に、この様な事故を起こさない『固有安全炉』への転換が必須です。
IAEAも次世代炉として推奨している液体燃料の溶融塩炉は、固有安全炉なので、都市部に展開出来て、オン・サイトにコ・ゼネで追随運転が出来て、極めて簡単な構造なので殆どメンテ無しで燃料交換の必要も無く随時燃料を追加・補充する事で連続運転が可能です。
燃料はトリウムーウランサイクルに依りますが、問題で在る40トン余にも及ぶ日本の余剰プルトニウムも、核兵器から出てくるプルトニウムも燃料としてMOXに加工する必要も無く、そのままで利用・消滅が可能です。
溶融塩炉は既にアメリカのオークリッジ研究所でMSRE(molten-Solt ReactorExperiment)として一万二千時間の無事故運転がなされていて、その技術は基本的に完成しています。
小型の固有安全炉は、コスト的に成り立たないとされてきましたが、この炉は上記の数々の利点からして経済性は充分に確保され得るのです。
スケール・メリットを追い求めてきた原発を、都市部に展開出来る溶融塩炉に順次転換していく事で①の問題は解消し、ブルトニウム問題もプル・サーマル無しで立派に解消が出来るのです。
②使用済み燃料滞留問題に付いて言えば、この有る意味で言えば「負の遺産」は、いずれにしても処理・処分されなくてはならず、直接処分を選択すれば、その適地に困却する訳で、再処理すれば『ビュレックス法』なら、その安全性の確保が困難な課題であリ、継続的な高い操業率の確保はより困難である上に、出来るプルトニウムは核拡散対策から言っても、国際公約から言って重い課題であり、MOXとして利用するとしても他の様々な困難を無視するとしても、費用対効果の観点から考えただけでも、経済的に成り立たないものである。
そうであるとすれば、アメリカ、フランス、ロシアなどで既に技術的に開発済みの『フリーゲート法』での再処理と言う第三の道が選択されるべきである。
『ビュレックス法』は元々軍事用に純度の高いプルトニウムを得る為に、経済性や安全性を二の次にして開発されたもので、放射能の漏洩量も比較的に多い上に、臨界管理やレッド・オイル問題など安全上の課題も多く、とても費用対効果の評価から経済的に成り立たないもので、MOX製造の困難な過程も考慮すればとても選択すべきものとは到底言えない。
これと対比して『フリーゲート法』による乾式再処理は処理が簡単で、効率的であり、その上迅速な再処理法であるだけではなくて、安全性も遥かに高く、コストは1/10で、プルトニウム純度が些か低い事を除けば問題になる点は無い。
核兵器用で無い限りプルトニウム純度は問題にならない訳で、溶融塩炉では、出来るプルトニウムは、MOXへの加工も必要なく、そのままで溶融塩燃料として利用出来る。
こうすれは余剰ブルトニウム問題が解決するだけでなく再処理で新たに生み出されるブルトニウムも容易に利用し尽くされる。
そして更にもっとも困難で解決の見通しが得られていない『高レベル放射性廃棄物の問題』も溶融塩炉の中に溶かして循環させる事で何の苦も無く『消滅処理』が出来るのである。
地層処分という万年と言う夢想としか言えない管理は必要無いのである。
液体燃料の溶融塩炉を都市部に展開する事で
①平和利用と言いながら軍事利用であるプルトニウムによる核兵器生産と実際には表裏一体であったものが、プルトニウムの利用・消滅によって軍事利用と手を切れるのである。
②トリウムーウランサイクルによる溶融塩炉の優れた諸種の炉特性により世界的に展開される事で、世界的に『高レベル放射性廃棄物』の困難な課題が消滅・解決するのである。
③ある意味で『負の遺産』である使用済み燃料問題、余剰そして核兵器からのプルトニウムの問題も完全に解決されるのである。
地球温暖化防止の為に化石エネルギーの代替エネルギーがどうしても必要な事に関しては、その事態の深刻さからあらゆる手段が尽くされる必要があり、原子力か自然エネルギーかでは無くて共にあらゆる手段を尽くして利用し尽くさなくてはならないという見解に大方の意見は落ち付くものと言える。
しかし原子力に関してはウランープルトニウムサイクルを取る限りウラン238をプルトニウム239に変える増殖炉を実用化しない限り天然ウランのたった0.7%を占めるに過ぎない235を燃料とする原発に頼る限り、石油とほぼ等しい資源量しか期待出来ず、軽水炉サイクルと言われているエセ核燃サイクルを利用しても、高々15%のウラン235の節約効果しか期待できない事は現策定会議で確認された所である。
どうしても高速増殖炉(以下FBR)開発が要請される訳である。
策定会議第18回議事録の参考資料1に『FBRサイクル開発の実現性に付いて』と言う参考資料があり、これを読むとIAEAのGFIⅣに依拠しながらフェーズⅡの開発課題に即して50年のレンジでNa冷却FBR、鉛合金冷却炉、ガス冷却炉、水冷却炉などが見通し得る開発課題に従って図表化されている。
これを見ると開発可能な増殖の倍増年はNa冷却FBRの45年が最も短い。あくまで50年レンジでの『見通し』に過ぎないが、仮にこの開発が実用化したとしても、45年の倍増年ではFBRの商用化としては落第である。
FBRニ基では45割る2で倍増年22.3だとか軽水炉サイクルとの共存などが一部で言われているが所詮絵空事と言うしかない。
根拠の在る資料からNa冷却FBRの商用化は所詮夢想に留まると言うしかないと断じる事が出来る。
IAEAのGIFⅣには次世代炉として三番目に溶融塩炉が上げられているにも拘らず、先の参考資料には、なぜか溶融塩炉は上げられていない。
溶融塩炉だけがウランープルトニウムサイクルで無く、トリウムーウランサイクルで核兵器と無縁である事がその理由であるとすれば、誠に不当な事で平和利用といいながら核武装のオプションを確保する為に原理的に核武装と無縁なトリウム-ウランサイクルを拒否していると非難されても止むおえない事態である。
液体燃料であるから腐食問題で開発が不可能だと言う科学的に謂れの無いデマに依拠して開発課題に挙げていないとすれば、オークリッジ研でフリーベと名付けられたフッ化リチュム(LiF)とフッ化ベリリウム((BeF2)のニ元系溶融塩を溶媒とした一万二千時間に及ぶ腐食問題を問題無しに無事故でクリャーした溶融塩炉の実績を見るべきであり、否応無く納得せざるを得ないはずである。
古川和男氏提唱の『大電流陽子加速器増殖炉』に依ればスポレーション反応を利用する事で、20年のレンジで何等の原理的な困難無しに、増殖の倍増年10年と言う増殖炉の開発が可能である事か理解出来る。これは商用化可能て、全世界に日本が主導して展開可能な増殖炉である。(詳しくは専門文献は別にして「原発」革命、古川和男著、文春文庫参照)
こうして
①ひたすらスケール・メリットを追い求めて限界に来ている原発の新設を止め、40年の耐用年数で原発漸次廃炉として、固有安全で極めて単純な構造のなので四年はメンテ無しで連続運転が可能な溶融塩炉を都市部でコ・ゼネで、追随運転でオン・サイトで利用する様に転換していくべきである。当然全世界的に展開すへきである。
②高レベル放射性廃棄物を溶融塩炉内で消滅させ、地層処分は必要が無くなり、余剰ブルトニウムはMOXに加工するまでも無く溶融塩炉の中で利用・処分され、滞留する使用済み燃料は『フリーゲート法』で『ビュレックス法』と違って1/10のコストで迅速安全に処理され,出来たプルトニウムは溶融塩炉でそのままで利用され尽くして核拡散の危機は世界的に解消される。
③大電流陽子加速器増殖炉の開発によって倍増年10年と言う増殖が可能となり、全世界的に地球温暖化防止の課題か達成可能となる。以上。