研究開発分野についての意見

○氏名   :池野 正治

○ご意見の内容:

第20回策定会議で検討されている研究開発分野について、資料を拝見しますと、特に資料4「軽水炉サイクルの技術開発」において、再処理を前提とした研究開発が謳われています。しかし核物質をエネルギー源として利用する時代は既に過去の遺物ではないでしょうか。
 例えば軽水炉にての全炉心MOX燃料装荷は、エネルギー収支からも、経済的にも、安全性からも非現実的です。誰が受け入れるのですか。毎年、この全炉心MOX燃料技術開発費が補助金として計上されていますが、どこの電力会社も全炉心MOX燃料装荷は「計画」すらしていません。電気事業者連合の試算ですら、MOX燃料は25.5億円/tとされ、ウラン燃料の1.5〜2.5億円/tに比べ、桁が違います。電源特会で支出し続ける理由はありません。
 軽水炉の再処理技術を高度化も謳われていますが、日本原燃のためにまだ税金を投入するのですか。先進再処理技術や乾式再処理など、FBRサイクルの研究も続いていますが、国内における第2再処理工場を誰が建設して、誰が再処理をして、誰がプルトニウム燃料を使うのですか。もし再処理に理由があったなら、第1再処理工場の規模は1200tU/年であったはずです。また第2再処理工場の建設は、少なくとも2010年には稼働するはずだったのではないですか。意味のない第1再処理工場がいい例ではありませんか。
 ウラン濃縮技術の高度化は既に言われ始めてから10年経ちます。144億円もの税金を使って遠心分離機を開発して、結果を誰が引き受けるのですか。日本原燃のウラン濃縮工場は国内需要の10%強に過ぎません。米国や欧州では濃縮工場の増設が計画されており、更に国内濃縮は不利となります。JCO事故の後、国内に再転換工場が建設されないのがその好例ではないでしょうか。「動燃」人形峠の「成果」が今日の六ヶ所ウラン濃縮工場の姿ではないですか。
 低レベル廃液の固定化ROBEも高レベル廃液のガラス固化も、その処分場を「誰」が引き受けるのですか。高ベータ・ガンマ廃棄物やTRU廃棄物、ウラン廃棄物、RI廃棄物も「誰」が引き受けるのですか。高速炉や加速器で核種を分離・消滅処理(変換)しても、廃棄物を増やすだけで、エネルギーの無駄です。
 かつてFBRがもてはやされた時代がありました。現在誘致合戦をしている核融合も「かつて」と言われる時代は目の前です。核分裂エネルギーも核融合エネルギーも完璧には制御できないことに謙虚になるべきではないでしょうか。所詮原爆開発の延長線であり、この宿命から逃れることはできません。これが核拡散の真実ではないでしょうか。
 核エネルギーには核廃棄物がついて回ります。研究開発を主張している研究者、及びその賛同者はご自分でその排出する核廃棄物を引き受ける覚悟がおありでしょうか。覚悟(末代までの)がないのなら、核拡散から手を引くべきです。貴会議で核エネルギーの推進を主張される方には是非ともNIMBYではなく、ご自分の庭、又はベランダで核廃棄物を保管していただきたい。それが「原子力研究開発」の目的です。