FBRサイクル及び返還廃棄物について

○氏名   :池野 正治

○ご意見の内容:

新計画策定会議座長 近藤駿介様
第18回会議の配布資料第1号を拝見しますと、高速増殖炉(以下FBR)サイクルのあり方について、「ウラン資源だけでも数百年間にわたって原子力エネルギーを利用し続けることが可能になる」と記述されていますが、これは第3回「長計」(昭和42年)の記述とほぼ同じ内容です。第1回「長計」(昭和31年)から増殖動力炉の開発が謳われ、既に50年近く過ぎようとし、更に実用化まであと30年以上かかるとすれば、これは単に夢の増殖に過ぎません。FBR開発を先行した諸国ではとっくに撤退したのはその技術の困難性にあったのは周知の事実ではないですか。それにも係わらずFBR開発の継続を決めることは、利権がからんでいるか、責任回避が理由であると議事録から察せられます。
 委員の中には高速炉としての研究開発を主張されている向きもありますが、FBR開発に意味がない以上、再処理も無意味であり、よって核種分離変換(かつては消滅処理ともいったが)も意味がありません。これはフランスのスーパーフェニックスの末路を見れば明らかなことです。「もんじゅ」ですら運転を再開しても5〜10年間データをとり、あとはMAの研究や専焼炉としての利用が提案されています。
 「来るべき」FBRの型としてナトリウム冷却以外に他の型が候補に挙っていますが、消極法としてナトリウムが選択されたのではないですか。もしナトリウム冷却以外の方法が将来選択されるとすれば、「もんじゅ」の原型炉としての役割はありません。
 ダブリングタイムとして理想的な条件で46年(参考資料1)、現実的には90年にもなるとされるFBRリサイクルがどうしてウラン資源の飛躍的利用と言えるのですか。現在の軽水炉がFBRに順次リプレースされるとすれば、全国で日常的にプルトニウム燃料、使用済燃料、核廃棄物が輸送されることになり、これは今以上に管理社会が強化されることになり、相互監視が日常的になります。さる18日に国会に上程された「原子炉等規制法」改正案では、監視社会が杞憂ではなく、現実であることを示しています。
 IAEAにおける専門家委員会が先日、ウラン濃縮と再処理を国際管理下に置くことを提案しましたが、この再処理の先にあるのがFBRサイクルです。核拡散と一体であるFBR開発から手を引くことが日本の将来を少しでも明るくする方策です。
国民を愚弄する当策定会議の決定は、将来に禍根残すことになります。
玉虫色の表現や謙譲の美徳では将来を語れません。

 海外再処の委託に伴う返還廃棄物の内、中・低レベル廃棄物について、当策定会議では英仏の意向や国内電気事業者の安易な考えに同調することなく、「等価交換」の「等価」について議論を深めて下さい。英仏や電力会社にとっては確かに等価交換となれば経済的なメリットは大きく、又、輸送上のリスクは小さくなり、単に商取引上は魅力的な選択となるでしょうが、倫理的にも問題があるのではないでしょうか。
例えば英国のITPによって日本由来の廃棄物によって被る英国民の被曝線量(実効線量)を「計算」することが許されるのかどうか、議論の余地があると思います。
 返還中・低レベル廃棄物に限らず、高レベル廃棄物や、回収ウラン、及びMOX燃料、又はプルトニウム単体の返還など、多くの難題があります。そしてこれらは既に発生した課題であり、引受ける以外に解決法はありません。当策定会議のみなさん、お一人一人にこの覚悟がおありでしょうか。