6.議事の概要
(1)開会について
○那須座長より、本日の審議事項について説明があった。
- 本日は、長期計画骨子に対する各委員のコメントを踏まえ、森嶌座長代理に原子力研究開発利用長期計画案を用意いただいたので、御審議願いたい。
○審議に先立ち、大島科学技術庁長官・原子力委員会委員長より挨拶があった。
- 私は原子力委員会委員長でもあり、会議の開催にあたり一言御挨拶申し上げる。
- 私の地元、青森県は、原子力と切り離して語れない地域であり、科学技術庁長官、原子力委員長に任命されたことに特別の感慨を覚える。
- 昨年9月の臨界事故等により、原子力に対する国民の不安、不信が高まっている昨今の状況を、厳粛に受けとめていかなければならない。
- 原子力に対する不安は、これが非常に膨大なエネルギーを出すためと考えられるが、人類は英知をもってこれを制御し、人類の富にするとの覚悟をもって使わねばならないと考える。
- 世界のエネルギーを取り巻く状況を見渡すと、途上国を中心とする人口の増加や、温暖化問題等地球環境問題の深刻化への対応が急務である。
- 我が国は資源に乏しく、地政学的に見てもエネルギー供給構造が脆弱であるので、地球環境の保全と社会経済の安定的発展を図るために、どのようにエネルギーを安定的に確保するかについて検討することは極めて重要である。
- 本策定会議においては、原子力を取り巻く現状を踏まえた上で、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入も視野に入れ、原子力開発利用の意義、在り方を議論いただくとともに、放射線利用や、加速器、核融合等の幅広い分野についても、将来を見通した審議が行われていると承知している。
- 本日は長期計画案が示されるという大詰めを迎えている。策定会議におかれては、新たな長期計画により、21世紀の原子力研究開発利用の全体像と長期的展望を広く国民にメッセージとして示すとともに、今後、長期計画に対し、広く国民の御意見をお聞きする機会を設けるなど、国民の原子力に対する信頼回復に向け取り組んでいただけるようお願いする。
- 最後になったが、那須座長、森嶌座長代理をはじめ委員の皆様には、これまでの御尽力に対し御礼申し上るとともに、引き続き精力的に御審議いただくようお願いする。
○事務局より、本日の配布資料の確認があった。
(2)原子力研究開発利用長期計画案について
○那須座長より、審議の進め方について、発言があった。
- 長期計画案の構成が第1部と第2部に分かれているため、各々森嶌座長代理による各部の説明の後に、御審議をお願いしたい。
- 最後に冒頭の「はじめに」の部分及び巻末の図表を含め、長期計画案全般に係わる御審議の時間をもうけたい。
①「第1部」について
○森嶌座長代理より、資料2に基づき、長期計画案の第1部について、以下のとおり説明があった。
- 前回の審議においては、長期計画の骨子について、全体的には御了承いただいたものと思っている。前回の審議での御意見や書面でのコメントに基づいて、骨子に対して相当程度修正を行ったのが、本日の長期計画案である。
- 構成上の変更については、「はじめに」を追加し、第1部第4章の3項を第5章「21世紀に向けて」として独立の章とした。第2部では、(国と民間の役割の基本)及び(研究開発を進めるに当たって)からなる総論的な部分として、第1章「原子力の研究、開発及び利用を進めるに当たって」を新設している。また、(人材確保)及び(原子力供給産業の競争力の向上と国際展開)を合わせて、第7章「原子力の研究、開発及び利用の推進基盤」として独立させている。さらに前回事務局から提案のあったように、読み手の理解の一助として、巻末に「資料」として、各種データを図表の形で添付している。
- 長期計画の策定の進め方についても、複数の委員から御意見をいただいた。一つは、原子力政策の基本について、国会内外の様々な場で議論すべきとの御意見であるが、原子力政策円卓会議の提言でも同様の指摘が述べられており、国会はともかくとして、様々な場で議論すべきとの点は我々も同様に認識している。もう一つは、意見募集に十分に時間をかけて、国民の様々な意見を集約することに努め、その際には分かりやすい資料も同時に提供すべきとの御意見である。原子力委員会の専門部会の報告書の意見募集においては、約30日の募集期間を設けているが、長期計画では40~50日に延長するとともに、新聞広告やインターネットを利用し広く周知することを考えている。また事務局としては、適宜概要版等も用意し、国民の理解の一助とすることも検討している。さらに、長期計画が完成した際には、これを分かりやすいパンフレットなどにして広く周知すべきとの御意見もあり、原子力委員会において配慮していただきたい。
○那須座長より、発言があった。
- 審議に当たり、各分科会の座長におかれては、関連する部分について、分科会での報告内容も踏まえ、積極的に応答をお願いしたい。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(吉岡委員)
- 第1章の「20世紀の科学技術」に関しては、前回よりもプラスマイナスのバランスが良くなった点を評価したい。
- 「はじめに」が入りやや良くなったと思うが、20世紀の科学技術の総論から始まり、20世紀の原子力の総論で終わるのは、第1部として読者の期待を裏切るものではないか。原子力をめぐる状況が、国内的にも国際的にも非常に厳しくなっている。しかも、前の長期計画が破綻をきたしているという状況の下で、長期計画や原子力政策の在り方をいかに見直すのかということを、最初にきちんと総括を行い、従来の政策とどこが変わったのかを明確に示さなければならない。「20世紀の科学技術」から始まるのは、非常に期待はずれとの印象を受ける。これは「はじめに」の内容にも、関連するので、またあとで議論したい。
(太田委員)
- 第1頁の「人々の物質的生活を支えてきたエネルギーは」との表現は、「エネルギー源は」とするのが正確だろう。
- 同頁の「専門家と社会の双方の知恵が」との表現は、専門家には人格があるが社会にはないため並びが悪いとの印象を受ける。より適切な記述を検討していただきたい。
- 同頁の「人類社会が直面する様々な課題解決の要請に対して科学技術の側がいかに応えていけるか」との表現は、「側」が不要であり、単に「科学技術が」とすべきである。
- 同頁の「これまで以上に必要となってくる」との表現は、必要性は従来から変わらないため、「重要となってくる」とするのが適切である。
- 第2頁の「放射線がもつ様々な性質を利用した」及び「核分裂によって放出される莫大なエネルギーの利用」との表現は、利用とは便益を享受するとの意味であり、この部分においては「活用」とすべきである。
- 同頁の「冷戦終了後は、核兵器の大幅な削減がNPT(核兵器の不拡散に関する条約)の無期限延長、CTBT(包括的核実験禁止条約)の合意など核軍縮、核不拡散への取組が進む一方で、」との表現は、「核兵器の大幅な削減が」と「核軍縮、核不拡散への取組が」と主語が2つ存在しているようで、意味が不明確である。「核兵器の大幅な削減が」の部分は削除すべきである。
- 同頁の「各国において積極的な技術開発や改良が進められた」との表現は、「各国において技術開発や改良が積極的に進められた」とするのが適切である。
- 第3頁の「石油危機を機に積極的な原子力発電の導入が図られ」との表現は、「石油危機以来原子力発電の導入が積極的に図られ」とするのが適切である。
- 同頁の「原子力発電所の新設は停滞傾向にある」との表現は不正確であり、正しくは「新増設」とすべきである。
- 同頁の「欧州では、1980年の国民投票以来の様々な議論を経てスウェーデンのバーセベック1号機が1999年に閉鎖され、・・・」との表現は、広く欧州全域で国民投票が実施されたとの誤解を招きかねず、「欧州では、」の部分を削除し、「スウェーデンでは1980年の国民投票以来・・・」とすべきであろう。
- 同頁の「広域的エネルギー網の整備」との表現は、具体的な意味が不明確である。こうした用語を用いるのであれば、定義を明確にすべきであろう。
- 同頁の「石炭、天然ガス火力発電所が専ら電気事業者により採用されるところになり」との表現は、「石炭、天然ガス火力発電所が電気事業者により専ら採用されるところになり」とするのが適切である。
(那須座長)
- 文章の修正については、まとめて後程書面の形にて提出していただければ有り難い。
(佐々木座長)
- 第2頁「原子力の誕生」の「X線が発見された翌年の1896年には放射線ががん治療に使われるなど」との表現は、その通りではあるが、治療に使われる以前にX線はまず診断に採用されており、現在でも診断での利用が行われている。それを踏まえて、例えば「1895年X線が発見された直後から診断に応用され、翌年には放射線がん治療に使われるなど」と修文したほうがよいのではないか。
(千野委員)
- 第2頁の「原子力と軍事利用」で主語が二つあるとの指摘があったが、これは「冷戦終了後は、核兵器の大幅な削減があって、核軍縮、核不拡散への取組が進む」との文章が、NPTの記述が入ることにより分割されてしまったために、主語が二つあるように感じさせてしまったのではないか。「冷戦終了後は、核兵器の大幅削減が」と言う表現は必要であり、「核兵器の大幅な削減が、・・・核軍縮、核拡散への取組を進ませる」という意味ではないかと考える。
(西澤委員)
- これだけの事故を起こしたことに関し責任感の欠如ということが広く言われているが、それに対応した言葉が一言も入っていない点を気にしている。
(長瀧委員)
- 東海村での事故の前後では、国民の感情も我々の対処も異なるであろう。実際に2人の方が亡くなり、周辺の数百人の方が非常な不安な状態にあるとの状況で、長期計画案ができたわけだが、放射線の生体影響や放射線防護の記述は、国民生活に貢献する放射線利用の項目に入っている。あれだけの事故を起こしておいて、放射線の生体影響や放射線防護が安全確保と防災の項目に入らず、国民生活に貢献する放射線利用の中に入るのは感覚的にいかがなものか、何か意図があるのかと考えてしまう。やはり原子力の安全や防災の項目に盛り込むのが適切ではないか。
(草間委員)
- 第3頁の「チェルノブイル原子力発電所の事故以降の安全性への懸念の高まり」との表現について、学生と接してきた経験から言えば、原子力に対する不安は、必ずしもチェルノブイル原子力発電所事故以降に生じたのではなく、むしろTMIの事故以降に学生や国民の間で高まったと感じる。チェルノブイル原子力発電所事故のみならず、TMI事故についても記載すべきだろう。
(神田委員)
- 原子力発電の発電に対する割合はどれくらいが適切かとの議論は、この場ではなされていないが、50%が良いのか、60%が良いのか、それともフランス並に引き上げるべきなのだろうか。
- 第9頁の「我が国では、運転年数を40年間、平均設備利用率を80%等として試算した場合、原子力発電の経済性は他の電源との比較において遜色のないものと考えられている。」との表現は、もっと経済的な優位性を強調して、バックエンドを含めても優れているといった記述にすべきではないか。
- 現在日本では13ヶ月運転し、45日程度の定期検査を行っており、その結果、設備利用率約80%という数字になっている。諸外国では、アメリカはじめ韓国、ヨーロッパにおいて、1970年代は13ヶ月運転をしていたが、現在はほとんどの国が18~21ヶ月を実施している。日本だけがなぜ取り残されて遅れているのかわからないが、一方で4ヶ月に1度保安規定の遵守状況の検査を行うなど規制を厳しくしておいて、定期検査の期間についてはそのままで放置されているのは納得がいかない。長期サイクルを再検討するとの記述を盛り込んでいただきたい。
- 第7頁の太陽光発電の記述については、やや否定的な方向に偏っているのではないか。月別や時間別の電力消費量を見れば、特に夏の昼間が非常に高くなっている。そのため、それに対応する部分で太陽光を利用するなら、多少高くてもかまわないはずである。経済性に劣るとの理由で、切り捨てるのは行き過ぎではないか。
- 原子力発電の割合を50パーセント以上に挙げるためには、海水揚水発電所の実現が不可欠であると考える。第6頁の「一方、長期的観点から、省エネルギー技術、燃料電池等の研究開発に加えて」の部分に記述を加えてはどうか。これが実現すれば、原子力の割合を5割、6割に苦しむことなく引き上げられる。全体として、原子力の割合は3割、4割でよいとの弱気な記述のように見受けられ、二酸化炭素の問題が大きな脅威となっている現状を踏まえれば、そういう社会を目指すのだとの強気な記述が必要だと考える。
(吉岡委員)
- 細部については、後日提出するレポートにて示すが、重要な点について申し上げたい。
- 第4~5頁の原子力発電をどう位置づけるかの基本的考え方について異議がある。1950年代からエネルギーについては、経済性と供給安定性の2点が政策上の重点事項であると世界的に認められてきた。70年代以降は生命及び環境に脅威を及ぼさないという点が第3の重点事項として入ってきた。この3つの基準に加え、原子力の場合は安全性と核不拡散の2つが追加的に重要であるといえる。ところが、第4~5頁の記述には、この3つの重点事項がバランスよく配列されていないのではないかというのが、私の意見である。つまり、規制緩和や自由な市場が必要であるといった、経済性に関する記述がほとんど出ておらず、主に供給安定性しか述べていない。また生命や環境への脅威に関しては、炭酸ガス問題しか取り上げていない。
- 第5頁の我が国の地政学的状況については、島国であることは必ずしも不利にならないと考える。地上にパイプラインがあるより、船舶の方がまだ脆弱性が少ないと思う。地政学的な説明にはあまり説得力が感じられない。
- 第6頁の省エネルギーに関する記述は、全体に少ないと感じる。時間をかければ大幅にエネルギー消費を削減できるし、またそうしなければならないとの記述を行うべきである。時間軸における位置づけが、全体として明確に記述されていないのも気になる。5年では大して期待できなくとも、30年では大きな成果が望めることもあり、何年先の話かを明示した方がよい。再生可能エネルギーについては、長期的には大きな可能性がある。原案では、短期的に期待できないとの部分がいささか強調されすぎているのではないか。
- 神田委員の御指摘の原子力発電の経済性の問題について、他の化石燃料と比較して遜色がないという記述には必ずしも同意していない。核燃料サイクルコストや放射性廃棄物の処分費用が過小に見積もられているとの懸念があり、計算の条件を変えれば費用の桁が異なるのではないか。また、政治的にも経済的にも不確実性が高いエネルギーであり、初期投資が高く自由市場になじまないとの点も書かれていない。経済性の議論について、こうした点の記述がないと、議論されなかったと誤解される恐れがある。注意すべきである。
- 第11頁の核燃料サイクルの意義については、骨子の段階よりは改善されているものの、そのプラス面とマイナス面のバランスが悪く、マイナス面は最後の3行にしか述べられていない。私の提出した意見書の第13頁の39番に修文案を示したので、そうした記述を追加していただきたい。
(鳥井委員)
- 以前から申し上げているが、エネルギー源間の競争が生じているという認識はいらないのか。エネルギー源毎に役割を割り振ることはできるのか、それともエネルギー源間で競争が起こっているであろうか。そうした認識をしないと、原子力が何をやっていくのかという決意は現れてこない。原子力はこの役割をやる、石油は、天然ガスはこういう役割があるという物の捉え方で、原子力はこの役割があるので原子力はやろうという話になるのか、それとも競争に負けたら原子力は消えるという認識なのか。そういう視点があっても良いのではないかと感じる。
- 第8頁の放射性廃棄物の記述について、原子力の廃棄物の最大の特徴は、最初からきちんと管理してきたことである。他の廃棄物は最初は全部垂れ流して、問題が起きてからどうするか考えたが、原子力だけは最初から管理してきたことが最大の特色であり、その点ははっきりと記述した方が良いと考える。
(西澤委員)
- 鳥井委員の意見は大変大事であり、現段階で各エネルギー源の割合が幾らかということではなく、エネルギー源毎の問題点を整理している段階である。議論されているもんじゅが動けば、それがその評価にも係わってくることになるだろう。その中で、これこれの問題が最終的な決め手になるといった書き方が必要となろう。
(太田委員)
- 第9頁の原子力の経済性については、吉岡委員の御指摘のとおり、試算の方法も様々に存在し、現状の記述程度が適当と思われる。
- 原子力の供給割合は、資源の賦存状況や環境の破壊の状況が時間の進行で変化することから、容易に記述することは出来ない。むしろ総合エネルギー調査会総合部会での議論に任せるべきだろう。
- 第4頁「平均して年間1.5基程度の原子力発電所」との表現は、「平均して年間1.5基程度の発電用原子炉が運転を開始してきた」とするのが適切である。また、「51基、総設備容量にして4,492万kW」との表現は「51基、電気出力の総設備容量にして4,492万kW」と語句を追加すべきだろう。
(長見委員)
- 第12頁「他方で、例えば食品照射に関しては、我が国では、消費者の照射食品の安全性に対する不安感から、諸外国に比べて普及が遅れている。」との一文に続く文章の流れが、食品照射の理解を深めるためだけに放射線の理解を深める必要があるような印象を与え、誤解を生む恐れがあるのではないか。工業や環境の分野についても、放射線に対する正しい理解がなければ、どこかで国民の抵抗を受けるだろう。この一文は必要ないと感じる。食品照射を進める必然性が述べられていないと唐突な印象を受けてしまう。
(秋元委員)
- 高速炉と高速増殖炉の用語の使い方が混乱しているのではないか。第10頁に「ウラン資源を更に高い効率で利用するには、高速中性子の反応を主とする原子炉(高速増殖炉)」とあるが、これは明らかに高速炉であって、高速増殖炉ではない。高速炉であっても、プルトニウムを増殖しなければ、高速増殖炉ではないのである。
- 高速炉開発では、究極の目的としては増殖炉を目指すが、今の軽水炉時代には、増殖性能よりはプルトニウムを効率的に燃やして軽水炉を助けていく機能が重視される。高速炉開発には様々なフェーズがあることに注意すべきである。
- ロシアや中国も、差し当たって今すぐに増殖目的の高速炉の開発を行うとは言っていない。今の時期に高速増殖炉との表現は、プルトニウムを増やすとの政策を採っているのかとの誤解を受けかねないことに、特に留意すべきである。
- 我々も、プルトニウムを増やすために高速炉開発を行うのではなく、将来のエネルギー源の問題を解決するため、更には軽水炉や解体核から生じるプルトニウムの問題を解決するために行うのである。こうした観点から、表現を再度整理していただきたい。
(鷲見委員)
- 第8頁に放射性廃棄物について、「原子力発電は、他のエネルギー源に比べ同じエネルギーを取り出す場合に発生する廃棄物の量が少ないという特徴があり、100万キロワットの原子力発電所を1年間運転することによって、ドラム缶数百本の低レベル放射性廃棄物と・・・」との表現があるが、一般の人には、ドラム缶数百本が多いのか少ないのか分からないと思う。現状では、産業廃棄物と一般廃棄物合わせて日本国民一人当たり4トン/年程度なのに対し、低レベル放射性廃棄物は84グラム、高レベル放射性廃棄物は4グラムであり、そうした記述を行うことが適切ではないか。単位が異なる、桁が異なるというと、少ないことが印象付けられると思われる。
(河瀬委員)
- 全体として整っているものの、今一つアピールするところがないのではないか。長期計画は原子力行政の正常化を目指すとの大きな目的があり、また、最終的には国民の誰もが理解できるものにしていただきたい。例えば別冊として、漫画や絵を加えたような分かりやすい物を別に作ることも大切であろう。
- 大変暑い時期であるが、省エネルギーの推進を唱えながら、実際はそうなっていないのが国の状況である。私共ではノーネクタイで執務を行っているが、本策定会議では皆さん背広をきちんと着用されている。背広に合わせて冷房がなされるため、風邪を引きそうになる。もう少し省エネルギーを推進するとの姿勢が必要ではないか。
(草間委員)
- 第4頁に「チェルノブイル原子力発電所事故に見られるように、・・・放射能汚染被害」とあるが、汚染や被害が何なのかとの印象を受けるので、「放射能汚染」という表現だけでよいのではないか。
- 第5頁の「後世代にわたる人の健康影響への懸念」との表現は、放射線による遺伝的影響がどうなのかといったことを考えさせる。人間における放射線による遺伝的影響は現在まで確認されておらず、ここで問題とされているのは、後世代へ環境負荷を残すという環境、環境倫理の問題であり、それが明確となるような記述をしていただきたい。
- 第2頁のエネルギーの安定供給についての記述では、まず最初に陸続きでないとの地理的条件、次に国内の天然資源が乏しいと書かれているが、どちらかといえば、資源的条件が先で2番目が地理的条件ではないか。順序を逆にしたほうが一般の方に分かりやすいだろう。
- 第8頁に原子力の廃棄物は量が少ないことが特徴であると述べられているが、他のエネルギー源に対して本当に量が少ないのだろうか。例えば水力の廃棄物とは何を意味するのであろうか。他の資源の比べて廃棄物の量が少ないという表現はいらないと思う。原子力については、放射性廃棄物が発生すること自体が問題であり、量の問題ではないと考える。
- 第12頁の放射線利用の部分については、医療などについて、もっと広く記述するべきである。また、「放射線の人体影響とその治療等」との表現は、本来治療を要するような影響は出ないようにするべきであり、表現を検討する必要があろう。この部分は、長瀧委員、佐々木座長、久保寺座長などと相談して少し修文させていただきたい。
(佐和委員)
- 第6頁の省エネルギーについて、「近時のエネルギーの需要面を見れば、民生、運輸部門は一貫して伸び続けている」とあるが、ここ一両年では伸びはかなり鈍化しており、こう言い切るのは乱暴な印象を受ける。また、産業部門が経済不況で省エネルギー投資の低迷が見込まれるというのは変な話であり、不況であっても省エネルギー投資が必ずしも低迷するわけではない。本来、エネルギーの価格が高ければ省エネルギー投資が進むものである。
- 第1頁の冒頭の「科学技術の進歩は、20世紀に入ると飛躍的に発展を遂げ」との文章について、進歩が発展を遂げるというのは国語的におかしい。
- 同頁について、科学史の観点からは、18世紀から科学技術の進歩が始まっていたという解釈は適切ではない。科学の有用性が社会的に認知され、科学者が職業化し、国が研究を支援するという、いわば科学の制度化が行われたのは、19世紀の後半からである。18世紀の科学はサロン的なものであり、科学者はサロンの人気者であったというのが事実である。冒頭の言葉なので特に気に懸かったため申し上げた。
(村上委員)
- 放射線利用について、特に食品照射の問題については、日本は諸外国に比べて普及が遅れているというのは事実であるので、修文の際にはそうした認識をお忘れにならないようお願いしたい。
(太田委員)
- 第4頁の「放射性廃棄物処分の問題が生じている。今後これらの諸問題を社会が受容できるよう人類が管理し、あるいは解決することができるのかが、今日社会から改めて問われている。」との表現は適切ではない。問題を解決することなしに、管理するだけで社会に受容されるかとは考えられず、認識が甘いのではないか。
- 第5頁の「エネルギー効率の向上を図る」との表現は誤りであり、「エネルギー利用効率」とすべきである。
- 第6頁の「一方、長期的観点から、省エネルギー技術、燃料電池等の研究開発に加えて、・・・」との文章は、7行にも渡るため読みにくく、2~3行で区切るように修文していただきたい。
- 第7頁の「原子力発電は、他の燃料に比べて燃料のエネルギー密度が高く」との表現については、「他のエネルギー源に比べて燃料のエネルギー密度が高く」とするのが適切である。
- 第9頁の「様々な規制的及び誘導的手段を通じて」との表現は不適切ではないか。誘導的手段の中に、若干規制的なものが混じる程度が、正確なところだろう。したがって、「規制的及び」との語句は削除してはどうか。
(近藤委員)
- 第5頁の「エネルギー供給を考えるに当たって」の記述についていろいろ意見があったが、ここは第二分科会報告に関係しているので、若干コメントしたい。私どもは、国は、経済性、供給安定性に優れ、環境負荷の少ないエネルギー供給構造を実現する責任を担っていると考えた。そして、その方策としては、エネルギー供給は基本的には市場に任せるのが効率的と考えるが、しかし、市場はルールがあってこそ成立するところ、国はそのルールを定めなければならない。そこで、そのルールの一部として上の責任を効果的に果たす観点から適切な誘導や規制、それには当然、原子力誘導策もこの責任との整合性に応じて含まれるが、これを市場に導入していくべきとしたのである。ただ、この部分の記述は、そのような考察の結論を書いていると思料するが、そういう経緯が省略され、結論だけをつないでおり、分かりにくいことは確かなので、このような趣旨で記述にメリハリをつけていただければありがたい。
- 地政学的な理由はサブではないかとの御指摘があったが、私は、地政学的観点こそ国が留意せざるを得ない重要事項であると考える。例えば、欧州において天然ガスパイプラインが整備されているのは、オランダからガスが出たことに端を発して市場原理でメッシュが拡がっていった結果という面もあるが、やはり、当時西ドイツのシュミット首相が冷戦構造の中で前任者の東方外交推進を引き継ぎ、当時のソ連との間で相互依存関係を構築していくことの相互裨益性を見据えて、エネルギー分野でも限度を定めて依存していくという地政学的制約条件を踏まえた高度な政治選択を行ってきた、その積み重ねに負うところが大きいことは、配管の分布をみてもわかる。
- 我が国について言えば、国境を越えるガスパイプラインや送電線が無いのは、島国であるからだけではなく、東西冷戦のいわばフロントに位置していたこと、つまり、まさしく地政学的な条件の結果である。この状況は、冷戦の終結、サハリンにおけるガス開発の進展、海底パイプライン技術の進歩、朝鮮半島の政治情勢の急速な変化、さらにはタンカー航路の安全確保における関係諸国の海軍の役割の変化によって、変わり得るもので、我が国におけるパイプラインの敷設コストは欧州の3~4倍と試算されていて、欧州のような絵姿が合理的かどうかは検討を要するが、そうした送電線やパイプラインが設けられる可能性は十分あり得る。しかし、この長期計画の計画期間を10年とすれば、それが利用できない状況における最良の方策とそうした可能性を並行して追求すると言う方策を提言するのが妥当である。将来の不確定性や可能性に目をつぶるべきではないが、それに浮かれて現在おかれている厳しい状況に対する認識を忘れてはならない。
- 第6頁の省エネルギーに関する記述に対する佐和委員の御指摘であるが、確かに市場原理に従えばエネルギー価格が高いときにこそ民間の省エネルギー投資は進みやすいのであろうが、他方、経済団体連合会の自主行動計画のように、民間事業体が共同して公共目的に寄与しようとする活動でこれがなされる場合には、必ずしもエネルギー価格が低いからではなく、不況でお金が回らないから進んでいないと理解している。なお、こうした民間事業者の活動を政策にどう位置づけるかと言う点について第二分科会で議論をいただいたが、小生としては、その後もいろいろ文献を当たった結果、これに一定の役割を期待する、そうした条件を整備して、それを誘導していくことを政策メニューに加えることは妥当との認識を深めている。
- 放射性廃棄物の量の記述については、確かにこれで何を伝えたいのかという御疑問をもたれるであろう。例えば、産業あるいは民生廃棄物量を注記するとかの工夫により、意図するメッセージが伝わるようにしたらよいと思う。もとより、放射性物質の量と非放射性物質の量をどのように比べればよいのかと問われることも踏まえておく必要がある。
- 第9頁の原子力の経済性の評価についての記述は第二分科会でも話題になったが、小生としては、他の委員からも御指摘のあった点を踏まえて、この報告書としてはこの程度の記述が適切であると考えている。また、この結論に至る過程が明確でないという御指摘に対しては、40年間の資源・経済情勢の安定性やこの間のプラントの安定運転、将来使用される技術特性の現在の予測が実現することを前提にしているという説明を、場合によっては例示を入れて行うなど正確を期すことがあってもよいと考える。
- 第9頁以降の原子力発電の位置づけについての記述では、原子力なり、他のエネルギー技術に固定した役割を考えているように読めるが、そう理解してよいかとの御質問があったが、ここの記述の基本的立場は、エネルギー技術は市場において競争的にシェアを獲得していくべきということである。だから、コジェネ市場に原子力が進出していけないとは少しも思っていない。ただし、それに小型ガス炉で挑戦するのか小型軽水炉で挑戦するのかわからないが、挑戦するのは先見の明ある民間の仕事であって、国はその気がある者があれば、それが公益の観点から妥当である限りにおいて、支援することになる。ここでは原子力技術の利用に係る公益性を踏まえたそういうフレームワークを述べているつもりなのであるが、そう読みにくいと言われると確かにやや視野狭窄に陥っている面がないわけではないと感じた。そこで、字数が多少増えるのは辛いが、条件として市場原理を大前提とすること、しかして、国は望ましき供給構造実現を国民から附託されていて責任があること、そのため、原子力の多様な活用策をその期待される効果に応じて支援していくのが合理的とする記述を加えることを提案したい。
(久保寺座長)
- 第11頁の放射線利用に対する長見委員から御指摘について、第五分科会のまとめをした一人として、意見を述べさせていただく。食品照射のみが強調されているとの御指摘であるが、今日では自動車の部品、おしめ、生理用品にいたるまで、様々な製品に放射線が照射されている。それらについては一般に知らされてはいないが、食品照射については、実施した方が良い、安全性についての知見が数多く提出されているにもかかわらず、法的に制限されているとの現状がある。それらを踏まえ、この部分の記述がなされており、背景を全て述べると長くなるので、このようにまとめられているのであろう。現在の記述ではむしろ足りないくらいであり、個人としては修文を行うつもりはない。
(吉岡委員)
- 第1頁の「18世紀」は誤りであり、「19世紀」が正しいとの佐和委員の御指摘に関しては、科学史家として、その通りであると考える。
- 第13頁に研究開発に対する評価が新たに書き加えられているが、核融合や研究炉といった部分の文脈だけで取り扱われていることが問題である。研究開発に関する評価は全体に係るものであり、むしろ第4章に移してその位置づけを明確にすべきである。
- 第18頁で文明的考察をしているようであるが、内容がやや稚拙であり、エネルギーセキュリティのようなせせこましい話題が唐突に入っていたりする。全体として格調が低く感じられる。後で私から代案を示させていただきたい。
- 同頁の「21世紀に向けて」についていうと、冷戦が終結した今こそ平和利用を実践して行くべきだ、という主張は説得力に乏しい。原子力の将来は可変的であるというニュアンスも入れて、全体を書き直すべきである。前回に提出した私の修正案は、全体を削除し修正するとの立場で書いたが、本案を基本とした修正案を、後で示すこととしたい。
(村上委員)
- 第1部のまとめとして、第5章を独立して立てられたことに敬意を表する。第18頁の「21世紀に向けて」において、「原子力の多様な可能性を最大限引き出す研究開発を行い、その成果を着実に将来の世代に引きついでいくことが、現世代の責務である。」と記載されていることは、高く評価するものである。
(長瀧委員)
- 第20頁の「安全確保と防災」の部分に、放射線の生体影響と放射線防護に関する記述を持ってきてはどうか。第34頁の「国民生活に貢献する放射線利用」と放射線防護とは性格が異なる。一方で放射線利用の良い点は堂々と主張すべきである。放射線利用の光と陰として無理に一緒にしないほうが趣旨がはっきりするのではないか。
(佐和委員)
- 先ほどの近藤委員の御指摘に関連して、一言付け加えたい。経済学のABCを述べるようであるが、いわゆる市場主義が席巻するようになったのは1980年代以降であり、1970年代には経済学者は、市場の失敗ということを盛んに言っていた。例えば、市場に任せておけば、環境が破壊されるとか、所得分配で格差が広がるとか、市場は視野が短期的で20年30年先のことを考えるのは無理であり、空間的な視野も狭いといったものである。だから政府の役割が必要であると主張していたのである。
- 実際、政府が長期計画を立てる事自体、本来は市場主義に反するわけである。それが、昨今の日本においては、市場主義に何かクレームをつけると「守旧派」と言われがちであり、そのためか本報告書でもそういった文言をあえて避けているようにも見える。しかしながら、そこを整理しないと筋の通らないものになるだろう。
(草間委員)
- 第2部の第7章には人材の確保の項目が設けられたが、50年近くにわたって培われてきた安全技術を継承していくという観点からも、人材の確保が重要である。第14頁に「安全確保と防災」の項目があるが、やはり安全技術を継承するためにも人材確保が必要であるとの記述を、ここに追加していただきたい。
- 第17頁の「21世紀にむけて」においても、人材確保を積極的に進めるべきであるとの表現を追加し、第1章の総論としてそうした観点を取り込むようにすべきである。
(神田委員)
- 第9頁の原子力発電の経済性の部分に対する先ほどの指摘は、むしろ長期サイクルの検討の必要性を強調したものである。最近法律が改正され、年に4回の保安規定の遵守状況の検査が義務づけられ、例えば私のところでは、原子力保安検査官が週に3回やってきて立入検査を行っている。これでは安全性が保てないと思うほど頻繁に検査がなされている。これだけ検査の頻度を上げる一方で、長期サイクルは世界で一番遅れており、1970年代のまま年13ヶ月である。諸外国を見渡すと皆18~21ヶ月、あるいはアメリカなどは24ヶ月まで可能という状態である。それがアメリカの経済性、設備利用率が向上している一つの要因となっている。それに比べて、日本は「あつものに懲りてなますを吹く」で吹きまくる状態であり、これでは安全性が保てないというのが現場の実感である。長期サイクル運転について、もう少し真面目に検討していただきたい。それにより全体として経済性も、さらに向上するであろう。
(河瀬委員)
- 第15頁や第22頁に地域との共生について記述され、地域に原子力発電所があって良かったと思われるような地域づくりをお願いしたい。自然との共生との言葉をよく聞くが、ただ「共生」、共に生きるというだけではまだ少し甘いのではないか。電力会社が発展すれば、町も発展するのであり、地域と「共存共栄」するというのが立地地域の願いである。長期計画においても、そのようにうたっていただければ有り難い。
(桂委員)
- 第9頁の「安全性」について、国民がこの長期計画に期待しているのは、このような状況下でもやはり原子力が必要であることを納得したいということであり、そうした方向性を打ち出していただきたい。そういう観点から、安全性に関する記載は非常に重要である。
- 第9頁の文脈では、「原子力発電所は十分な安全対策がとられているが、一般の人々は危険の度合いが分からない。ところが実態としては重大な事故が起こっている。」との記述であり、結論は「原子力事業においては安全確保に最優先で取り組む」となっている。その後の表現で、安全確保について見れば、倫理や安全文化の確立に加えて、一部に技術開発の必要がうたわれている。安全確保の論拠をどこに置くのかという記述が当然必要とされるが、昨今の原子力施設での事故の原因がどこにあったのか、それへの技術的対応が可能か否かを総括し、その結果として、これこれを改めればやっていけるのだとの記述が求められることになる。この文章の目的を、そうした方向へ持っていってはいかがなものか。
(石橋委員)
- 第16頁、第17頁、第18頁、第36頁等で「非核兵器国」、「非核保有国」、「非核兵器保有国」といった用語が使われている。核兵器国と核兵器保有国とは違うし、また核保有国というのとも微妙な違いがあり、英語に直すのは難しい。NPTを前提にした使い方であれば、核兵器国、非核兵器国というように統一した方が良い。そうした観点から検討していただきたい。
- 第13頁から第15頁にかけて、第一分科会での議論に関連して、政策決定過程での国民参加を進めることや、国民の視点に立った情報提供、国民との対話を促進することについて提言が述べられているが、これは従前の長期計画にはない新しい問題提起であり、積極的に評価したい。
- 今回の長期計画は、数値目標を示すものとはなっておらず、国が原子力の施策を計画的に遂行するということになっているが、長期計画も原子力委員会も従来とは変わってきたように思われる。そうした観点からは、国民の参加や国民、社会の支持は、原子力政策の中では最大のポイントである。本長期計画の信頼性の観点から、原子力委員会が内部においてこの長期計画がきちんと遂行されているか確認する必要がある。特に国民の視点から見た前述の諸問題については、新しい政策提言であり、これが今後何年かの間に実施されているか否か確かめるため、評価機関のようなものを設置していただきたい。私は、原子力委員会にはもっと力を持ち、もっと指導力を発揮していただきたいと考えるが、そのために国民の信頼が第一に関わってくるだろう。
(秋山委員)
- 第13頁の「我が国のこれまでの研究開発は、欧米の原子力先進国の成功、失敗例に学んで、開発スケジュールや関係機関間の役割分担を重視し、資金、人材を集中して取り組んできた。」との表現について、前段と後段は必ずしも直列的につながるものではないのではないか。例えば宇宙開発など、欧米における大型のプロジェクトでは、我が国以上に組織的かつ役割分担をきちんと見定めながら、資金や人材を圧倒的に投入した例もあるので、この記述は変更していただきたい。
- この部分の趣旨は「我が国のこれまでの研究開発は、欧米の原子力先進国の成功、失敗例に学びながら、いわば効率的な2番手として一定の成果をあげてきた。このため新しいアイデアを取り入れる意欲に乏しいという指摘もなされている。」というもので、これで一つ完結している。
- 「開発スケジュールや関係機関間の役割分担を重視し、資金、人材を集中して取り組んできた。」や「時として市場の動向を離れ、技術のための技術開発に陥ったり」との部分について、私のとらえ方は逆であり、我が国の研究開発の従来の一般的傾向として、むしろ市場の動向に沿いながら製品開発や利益の獲得の部分に極めて集中してきたのではないか。そのため技術のための技術、科学のための科学といった基本的なところに、むしろ遅れがあったと認識しており、この部分については若干文章を修正していただきたい。
(鷲見委員)
- 第14頁の「安全確保と防災」の項目に「一人一人が最大限の緊張感を持って業務に当たること」とあるが、皆さんも御経験がおありでしょうが、現場的な観点から述べると、緊張すればするほど、ヒューマン・エラーが起こりやすくなる。この語句は削除した方がよい。まず安全文化を醸成し、仕組みを整備した後、心にゆとりを持って仕事に臨めば、ヒューマン・エラーは起こらないであろう。
(千野委員)
- 第15頁の「政策決定への国民参加」について、「前向きに検討する」とは何もやらないという意味であるとの解釈が、一般的に広く存在している。ここに「意見集約の場の在り方を検討する。」とあるが、円卓会議では議論が集束せずあまり意義がなかったとの話も聞いており、文章の趣旨としては、円卓会議に変わる新たな意見集約の場を作るかどうかを検討するのか、意見集約の場を作るのだがその在り方を検討するのか、そのあたりが曖昧である。この報告書には検討するという文言が少なく、ここに「検討する」とあるのが非常に目立つ印象を受ける。
(永宮座長)
- 漠然とした意見であるが、秋山委員の御指摘の効率的な2番手との部分については、もう少し明確に言っていただきたかった。今世紀の日本は、その場しのぎ的ではあるが、外国の例を見ながら効率的にやってきたが、それに対する反省として、私自身は原点に戻り、原子力を支える科学技術をもう一度見直すべきであると思っている。また、それは本長期計画のポイントでもあるとも考えている。
- 長期計画全体を眺めると、21世紀の新たな長期計画として長い時間をかけて議論されており、21世紀に向け日本が発信する一つの提言として、注目されていると思う。これが英訳され外国に出たと考えた場合に、日本がエネルギー源としてして原子力を今後積極的に30%以上に進めようとしているのか、それとも他の様々な問題点を解決しようとしているのかが、十分に明確ではない。鳥井委員の御指摘のように、ドイツなどは自然エネルギーなどの他のエネルギー源と比較しながら、原子力について議論しているのではないか。
②「第2部」及び「長期計画案全般」について
○ | 森嶌座長代理より、資料2に基づき、長期計画案の第2部、長期計画案冒頭の「はじめに」及び巻末の図表の部分について、以下のとおり説明があった。 |
- 長期計画案は、各分科会での議論を前提として、各委員の御意見を踏まえて修正しているが、各委員の御意見が必ずしも十分に反映されていないのは、それだけ多様な御意見が存在するからであることを御理解いただきたい。また、私としては偏見を持たずにできる限り多くの御意見を反映したいと考えているが、ある程度意見を整理し、幾つかの中からより多数の方の御意見と思われるものを分科会の報告書に従って選択する場合があることについて、御了解いただきたい。
- 本長期計画案の基本的考え方は、従来とは異なっており、数値目標を設定し何年までに何をするといった記述を行うことはなるべく避け、国や事業者の果たすべき役割について、基本的な方向性を示すものである。
- 第2部は各分科会の御意見の上に立って、今後の原子力の研究、開発及び利用について、それぞれ国、事業者等に向けて、メッセージを発信するものである。
- 分科会報告については、本長期計画案がパブリックコメントにかかるまでに、冊子とすることになっており、第2部に十分に記載できなかった部分は、これをもってカバーされるのではないかと考えている。
- 理解の一助として、用語解説を今後新たに付け加えることとしたい。
- 「はじめに」では、本文を読んでいただく前提として、長期計画の位置づけを明らかにするとともに、今回の長期計画の特色について示している。
- 長期計画は策定会議の作品ではあるものの、原子力委員会が決定するとの位置付けとなっており、「はじめに」の部分は、今後原子力委員会の立場も加えて若干の修正を行うことを前提にして記載されている。
- 長期計画との言葉が古くさいとの御意見もあるが、長期計画は原子力基本法等に由来するものであり、軽々に名称を変えるわけにはいかない。それに代わるアイディアとして、副題を設けることが考えられ、副題を設けることの是非及び副題案について、別途議論いただく機会を設けることととしたい。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(秋元委員)
- 第30頁から第31頁にかけて、高速炉の持つ多様性について述べられていることは大変良いと考えるが、多様性が具体的にどう現れてくるかの記述はまだ不十分である。例えば「高速増殖炉サイクル技術の位置づけ」の部分に、一つのポイントとして「潜在的危険性の高い超ウラン元素の量を少なくする」とあるが、それ以外にも高速増殖炉はプルトニウムを非常にうまく燃やすことができ、軽水炉から発生するプルトニウムを効率的にエネルギー化することを可能にする。また、廃棄された核弾頭から出るプルトニウムをエネルギー化して、核不拡散や核軍縮に貢献するといった機能もあり、国際貢献にもつながる。そうした視点を追加していただきたい。
- 次の「高速炉サイクル技術の研究開発の方向性」の部分について、この方向性の基本は、現在我々は軽水炉時代にあるが、やがては高速炉時代に移行していくところにある。軽水炉時代においては発生したプルトニウムを速やかにエネルギー化することを目標とするが、高速炉時代に入れば、初装荷用のプルトニウムの確保が必要となってくる。時代に応じて、高速炉に対して要求される性能も変化する。時代の進展にともなって開発の重点も変わってくるとの視点も、ここに記述していただきたい。
(秋山委員)
- 研究用原子炉について、分科会報告では、その実績について整理を行い、今後の展望について将来の夢を交えて議論された旨が記載されている。第34頁の「研究環境の整備」においては、それらを踏まえて、例えば「研究用原子炉については、その役割に照らしながら今後の在り方について検討を行う」などと、バランスのとれた記述にしていただけると有り難い。
- 第33頁の「革新的原子炉」については、多くの意見を集約して記述いただいたことには感謝するが、さらに中小型という規模を含め、革新的原子炉のイメージを、直接的な表現で分かりやすく示していただきたい。例えば「このため多様なアイデアの活用と出力規模も含めた多様なニーズに留意しつつ」などのように、語句を追加していただけないか。
(石橋委員)
- 第24頁から第25頁にかけてのウラン濃縮についての記述であるが、ここでの表現では民間が国の核燃料サイクル開発機構の開発を踏まえて高度化機械の開発をすると解釈できるが、ウラン濃縮の現状からすれば正確ではなく、政策としても妥当性を欠いていると考える。
- 現状では、欧米と比較して、相当価格的に劣っているのは明白である。第三分科会の報告書では、経済的合理性や経済性の追求も重要であると述べられている。核燃料サイクルをやるからには高度化機械の開発、導入は不可欠であるが、六ヶ所、サイクル機構のプラントとも故障トラブルが頻発している状況である。本文では「民間事業者は、核燃料サイクル開発機構によるこれまでの遠心分離機の開発成果や知見、人的資源を着実に集約して有効に活用する・・・」となっているが、これまでのものを幾ら活用しても、高度化機械の開発には繋がらないのではないか。国の方で抜本的にサイクル機構の開発体制を改めて再度やり直すのか、あるいは電気事業者が主体的に実施するとしても、国として民間を支援するといった記述を盛り込む必要があるのではないか。先ほどの市場論ではないが、欧米の物を買った方がはるかに安いのである。前々回、前回の長期計画でのATR導入論はナショナルエネルギーセキュリティの観点から行われたが、このままではその過ちをまた繰り返すのではないかと危惧される。
(太田委員)
- 私共も苦慮している。六ヶ所の商業用の濃縮事業は順調にいっているとは言えない。これは旧動燃で技術開発が行われたものであるが、私共から反省点を述べると、十分な技術移転が行われなかったことが挙げられる。技術開示も機微な情報であるとの理由で十分に行われなかった。これからは民間で新しいものを開発してそれを商業化することが一番良いのではないか。長期間に渡り膨大な資金を要する技術開発であり、その場合には、国においては資金的な面でのバックアップをお願いしたいが、研究の主体とその事業化については、あくまで民間でやらせていただきたいと考えている。本長期計画はそうした趣旨で記載されており、この文章でさしつかえないだろう。
(河瀬委員)
- 長期計画全体の問題となるかと思うが、防衛、外交、エネルギーは、国の重要施策であると考えている。長期計画もその重要な問題の計画の一つとして、国民合意の言葉も度々出てくるが、やはり国会での議論が必要であると思われる。その具体化についても検討すべきではないか。
- 第22頁の立地地域との共生との標題について、文章の中味については、電源三法の見直しを含め立地地域の意見を反映いただき感謝しているが、「共生」よりは、やはり「共存共栄」としていただきたい。原子力発電所があってよかったと思われる地域づくりを、自らの努力が必要なことは当然基本として十分承知しており、進めていきたいと考えている。立地地域にとって、素晴らしい長期計画が出来たと思われるようなものとしていただけると有り難い。
(神田委員)
- 前回お願いした教育や輸出の問題に関して、第7章が新設され大変喜んでいる。研究で大学が重要な位置を占めるということが述べられているが、国の原子力に関する研究開発予算の中で、大学が持っている割合は微々たるものである。予算が少ないためその研究をしない、従って人材が育たないという悪循環に陥っている。例えば京都大学の研究所では、全国から毎年40人程度の学生を集め臨界実験を実施しており、2000人近い学生がこれまでに単位を取得している。そういった予算は年々縮小され、非常に苦しい状態に追い込まれているが、社会的意義があるため毎年学生の教育に努めている。このように大学が人材を育成するための予算が非常に不足している現状があり、予算的なことも少しは記述していただきたい。
- 将来のエネルギーを確保するという観点から、核融合や革新的な原子炉について記載があるにもかかわらず、既にインドにおいて動いているトリウムサイクルについて触れられていない。トリウムはウランに比べて保有国にはるかに広がりがあり、実用化の可能性も核融合より高いので、大学の研究くらいはやらせていただきたい。トリウムとの言葉を入れる方が、将来のセキュリティにも貢献するのではないか。
- 国際機関に日本人が行かない理由は、既に指摘されているように、戻ってきた際に身分がないためである。官庁をはじめ、最近は原研やサイクル機構からも良い人材を出されていることは承知しているが、大学や民間では優秀な人材の参加が少ない状況である。第39頁の「国際機関の積極的活用」の項目に、帰国後の受け入れについても検討するといった語句の追加も考えていただきたい。
- 同じく第39頁の「国際機関の積極的活用」について、輸出管理の分野において日本が大きな貢献をしており、EUや米国から高い評価を受けている。それについての記述も追加してよろしいのではないか。
- 第40頁の二国間協定について、環境整備をするための技術指導が行われている。アジアの方からは、アジアの文明に立脚した日本の法体系などは欧米とは異なる部分があり、そうしたことを学びたいという要望がある。原子力に関する技術系の研修は盛んに実施されているが、法体系や規制の在り方などといった文系の研修も充実させる必要がある。そうした体制の整備に協力するといった記述も追加してはどうか。
(草間委員)
- 第21頁にリスクに関する情報提供について記載があるが、これは大変重要な問題である。ところがこの部分は、健康リスクや工学的なリスク、マネージメント、アセスメントやコミュニケーションが、全部一緒になって一文で書かれているため、非常に分かりにくくなっている。整理してもう少し分かりやすく記述していただきたい。
- 第35頁の「生体影響と放射線防御」について取り上げていただいたのは有り難いが、第2章では具体例を挙げることとしているそうなので、この部分にも必要なキーワードを入れて書き直していただきたい。
(住田委員)
- このような審議会において、ヒアリングを受け、プレゼンテーションなされた方の御意見を伺うと、自分の発言がどのような形で反映されているのか、消えてしまっているのではないかという御不満を聞くことがある。この長期計画は、いきなり出てきたのではなく、これまでの議論の積み重ねの上で出てきたものであろう。これまでの議論、特に様々な立場の国民の方に御意見を伺ってきたことが根っこにあるのだということを、どこかに記述していただきたい。例えば、円卓会議ではあれだけ多くの議論が行われたものの、「はじめに」の部分では「原子力政策円卓会議での議論及び提言を踏まえるとともに」といった程度しか記載されていないが、審議の経過や提言に至る過程について、もっと触れていただきたい。
(竹内委員)
- 電気事業連合会会長である太田委員が、先ほど濃縮事業について述べられたことについては、全く同感である。これまでの運転実績や開発状況に問題があることは十分に承知しているが、技術開発であるのでこれまでの失敗を新しい機種では繰り返さないことが重要であろう。
- 開発をやめるか否かの問題については、物作りの国日本としては放棄すべきではない。続けるべきとの大方の御意見を反映して、現在の記述があるのだと承知している。私共は、これを絶対的な方向性として死守していきたいと考えている。
- 開発に係わる金と人の問題であるが、専門性の非常に高い、国際的な機微技術であり、サイクル機構の人材を決して飛散させてはならないと考える。私共の研究センターにおいて、人材を大同団結することについて話を進めている最中である。
- 研究開発は成果が出るまで時間のかかる行為であるが、適切な時期に成果や情報の開示、公開を行うとともに、国をはじめ関係各所と相談しつつ、御支援をいただきながら事業を進めていくこととしたい。
- 第27頁の「廃棄物の処理及び処分」について、前回の長期計画の際には海外からの返還廃棄物の取り扱いの論議が行われた。現在でも、高レベル放射性廃棄物以外にも、返還廃棄物として、雑廃棄物の問題が残っており、括弧書きで(海外返還廃棄物を含む)などの語句を追加していただきたい。
(都甲委員)
- 濃縮事業について、民間への技術移転が必ずしもスムーズに進まなかったことについては、お詫び申し上げたい。サイクル機構設置法では、ウラン濃縮は整理縮小事業と指定されており、竹内委員の御指摘の通り、人を含めて技術が全面的に移管できるように努めているところである。
- 「はじめに」の第1~2頁を読むと、長期計画は概ね5年程度で見直すと読みとれるが、これについては明示した方がよいのではないか。そうすれば本日なされた議論の幾つかは不要となったであろう。
(鳥井委員)
- 第33頁の「革新的原子炉」に対する秋山委員の御指摘については、私も強く支持したい。
- 質問であるが、第32頁の「高速増殖炉の実証炉の具体的計画については、・・・その決定が行われることが適切であり」とあるが、誰がこの決定を行うのか教えていただきたい。決定するものが責任を負うのであり、誰が決定するのかが非常に重要であると考えるが、それが読みとれない。
(西澤委員)
- 放射性廃棄物の残留放射能については、今後重要な問題となると思われる。受益者負担で始末すると書かれているのみであるが、どういう炉であればどの程度残留放射能が増えるのか、もんじゅもその一つとなるが、そうした問題についても調査し、比較の対象になるよう基礎データとして記載していただきたい。
(村上委員)
- 第19頁の「国と民間の役割の基本」について、エネルギー供給、核燃料サイクル事及び放射線利用の3点について、国と民間の役割が書かれるべきであると考えるが、エネルギー供給と核燃料サイクル事業については国の果たすべき役割の記載があるが、放射線利用についてはない。放射線利用についても、放射線の影響の研究開発や食品照射などの分野をはじめ、国の果たすべき役割は未だに大きい。「核燃料サイクル事業についても、その円滑な推進が図られるよう所要の措置を講じていく」との部分に、核燃料サイクル事業と並んで「放射線利用」との言葉を追加していただきたい。
(吉岡委員)
- 「はじめに」及び第2部第1章が追加されたことについて、私の意見を採用していただき、報告書が引きしまったことを評価したい。「はじめに」はもっとテンションを高くして、国民や国際社会に大上段で説明してもよかったと思う。森嶌案のようにさらりと記述するのもよいが、その場合には、「はじめに」に国民、国際社会に訴えるメッセージを数行折り込むとともに、副題として、例えば「エネルギー及び科学をめぐる状況を的確に反映する柔軟な原子力政策」などと付けてはどうか。全体の趣旨がよく伝わると思われる。
- 第2部第1章の部分では、将来可変的である政策と不変である政策との書き分けが、まだ十分になされていない。例えば「国と民間の役割」の第1段落は、原子力推進の場合も撤退の場合も有効な記述であるが、第2及び第3段落は推進が前提となっている。また「研究開発を進めるに当たって」の部分は、冒頭から推進が前提となっている。これらについては代案を提出することとしたい。
(長見委員)
- 第35頁の「食品照射の実用化を図ることが必要である」という表現については、この報告書が一人歩きすると、読み手に対して強い印象を与えてしまい誤解を招く恐れもある。「検討する必要がある」との記述の方がよいのでないか。第五分科会の報告書は基本的には非常に良くできていると考えるが、それを省略することにより、一部のみが利用され誤解を生むことを危惧している。
○本日の審議を受けて、那須座長より発言があった。
- 本日の審議では各委員から多くの意見をいただいた。森嶌座長代理には、それらを踏まえ、長期計画案を修正したものを用意いただき、次回、引き続き長期計画案について御審議をお願いしたい。
- 本日の長期計画案に対し追加の御意見があれば、7月27日(木)までに、具体的な修正案を事務局まで提出いただきたい。
- 次回はパブリック・コメントの方法について、具体的な案を提示したいと考えている。
(3)閉会について
○事務局より、次回の会合について、以下のとおり開催する予定である旨説明があった。