6.議事の概要
(1)開会について
○那須座長より、本日の審議の進め方について説明があった。
- 前回までの策定会議で分科会報告は全て終了したが、本日は分科会の報告内容も踏まえ、森嶌座長代理に原子力研究開発利用長期計画の骨子を用意いただいたので、ご審議いただきたい。
- また、長期計画策定に当たり、国民からの意見を求めることを目的としたパブリック・コメントの方法について、ご審議いただきたい。
○ | 那須座長より、日本電機工業会会長の交代に伴い、今回から金井委員に代わり西室委員が策定会議委員となった旨の報告があった。
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○ | 事務局より、本日の配布資料の確認及び資料5に基づく簡単な説明があった。
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○ | 近藤委員より、資料5に関して補足の説明があった。
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- ゴアレーベン岩塩層に関する記述について、「その構造上」との言葉は不適切ではないか。ゴアレーベンの地層それ自体に問題があるわけではなく、むしろ、再取り出しの問題など概念的に解決すべき問題が存在するということである。
(2)原子力研究開発利用長期計画の骨子について
○ | 那須座長より、審議の進め方について、発言があった。
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- 長期計画骨子の構成が第1部と第2部に分かれているため、順番にご審議いただき、最後に骨子全般に係わる御意見をお願いしたい。
○ | 森嶌座長代理より、資料3に基づき、原子力研究開発利用長期計画の骨子について説明があった。資料に対する補足の発言は以下のとおりである。 |
- 骨子案は、第1部と第2部に分かれている。
- 第1部「原子力の現状と課題」は、第一から第六分科会の議論を踏まえて、原子力の研究開発利用の方向性について、主に国民に向けて説明をするという立場で記述を行った。そのため、なるべく平易な記述とするよう心掛けたつもりである。
- 第2部「原子力研究開発利用の将来展開」は、各分科会報告のエッセンスを抽出し、第1部の基本的考え方を踏まえて、いわばアクションプランとして、国は何をなすべきか、また同時に、地方自治体、事業者や国民といった他の主体に対する国の期待について記述を行った。第2部については、時間的にも余裕が無いこともあって、事務局にて各分科会の要旨をまとめていただき、それを各分科会座長によろしいか否か確認していただくとの方法で作成を行った。そのため、担当の部分によって表現に多少バランスを欠いていたり、なるべく避けるよう努めたものの重複する部分が存在する恐れがあり、その点は御了承いただきたい。
- 第2部では、政策に対する方向付けとして、国が何をなすべきかを中心に、アクションプランとしてなるべく具体的に記述を行ったが、各分科会の議論の詳細が全て記載されているわけではない。採用する項目は各分科会座長と調整させていただいた。理念や政策の基本的な方向付けを明確とすることに重点をおいており、個々の課題については、国民に理解いただくとの観点から必要なものを選んで取り上げさせていただいた。
○事務局より補足説明があった。
(興原子力局長)
- 各分科会のエッセンスを抽出するとのことでお手伝いさせていただいた。その際には、政策メッセージをわかりやすく国民に伝えるとの観点から、国民各界各層において、また地域によって関心事項が異なることもあり、一律に理念や政策のみとするだけでなく、必要に応じて具体的な記述も取り入れさせていただいた。分科会報告書をそのまま取り入れた部分もあり、全体として必ずしも整合性のとれた表現となってはいないが、今後、具体的計画の概要、記述の背景となるデータや用語についても、まとめて本文の後ろに記載し、国民へのメッセージ性がでるよう工夫することなども、理解の一助になるかと考えている。
○那須座長より、発言があった。
- 審議に当たり、各分科会の座長におかれては、関連する部分について、分科会での報告内容も踏まえ、積極的に応答をお願いしたい。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(吉岡委員)
- 詳細は書面にて提出することとして、重要な部分を述べるが、第1章の科学技術に関する歴史認識は不適切と考える。科学技術は社会内存在であり、社会とその構成員のニーズに応じて資金や様々の資源が投入されることになる。そのニーズはほとんどの場合近視眼的である。しかし、研究開発の成果が社会の中に投入された場合に、あらかじめ予期できなかったような形で社会秩序や人の心の構造までもが大きく変革される。それを無思慮に行ってきたのが、19世紀以降の科学技術であると考えられる。その結果、人類は様々な形で生存の危機に直面することになったが、その最たるものが核の脅威であり、化学物質の脅威であり、そして生物学的な脅威である。それに対して、社会が秩序だった形で、そのサブシステムとしての科学技術を含めて自らのセルフコントロールを行う仕組みを実現することが、21世紀の基本的課題であると考える。科学技術は怖いものであり、それをいかにセルフコントロールするかという観点で、第1章をまとめるべきである。原案は科学技術のプラスの面を強調しすぎているのではないか。この部分については表現を再考願いたい。
(鳥井委員)
- 第1頁に科学技術が社会の要請にいかに応えていくべきかといった視点が必要と述べられているが、いかにして要請に応えていくかについての記述が見あたらない。
- 原子力研究開発利用長期計画は、その名の通り研究開発に重点をおいたものだと考える。研究開発をどのように進めていくのか、やり方のメカニズムについて、従来はある機関にお金を渡し、いつまでにこれをやれと指示しており、その結果マーケットに関連のない結果が出たり、研究開発そのものが目的化するという事態を招いている。今回はそれに対する反省に立ち、いかに改めていくのかを第1部で述べるべきであるが、そういった記述が全く見受けられない。
- 研究開発の際に重要なのは、マーケットを重視する姿勢と競争的環境の確保であろう。ところがマーケットの議論、一体誰が次の技術のユーザーとなるのかとの議論が全くなされていない。電力会社がそのユーザーたりうるかが全く不明確な現状も踏まえ、今後検討を行うべきである。
(佐々木第五分科会座長)
- 第2章に「レントゲン・キュリーなどによる放射線・放射能の発見」とあるが、ベクレルの名前を記載する必要があろう。キュリーを加えることはさしつかえない。また名前を「・」でつなぐのはおかしいのではないか。
(桂委員)
- 国民の原子力に対する一番の不安は、原子力が果たして人間の制御できる範囲に入っているかとの疑念が根底にあると考える。制御は可能であり、なおかつ原子力に頼らざるをえない我が国あるいは世界の現状を踏まえて、調和をとりつつ進めるべきだとの記述が必要ではないか。第3頁にチェルノブイル事故の記述があるが、その後などに記載してはどうか。不安は実際に存在するものの、制御できるのだと述べなければ、国民の不安に応えたことにならないのではないか。
(石橋委員)
- 用語の使い方について、第1頁では「第二次大戦」、第2頁では「第二次世界大戦」というように統一がとれていない部分が見受けられる。また「など」と「等」の使い分けについても、明確でない。後ほど書面にて指摘させていただきたい。
(佐和委員)
- 第3頁に「他方で、アジア地域においては、・・・原子力発電を拡大する方向にある。」とあるが、言い切ってしまってよいものか。東南アジアなどは原子力利用について、一歩も二歩も引いているのではないか。
- 同箇所の「中長期的に高い経済成長とそれに伴うエネルギー需要が予想される」との記述は、エネルギー需要の後に「の増大」との言葉を補う必要があるだろう。
(近藤委員)
- 第1頁の科学技術史観について、20世紀の科学技術を1頁にまとめるのは困難な作業であることは承知しているが、最初に読まれる部分でもあり、丁寧に精査するとともに、最低限国民へのメッセージとして何を記述するかについて整理すべきであろう。用語など十分に整理されていないような印象を受けた。
- 第2頁の「世界の原子力発電の停滞」に関連して、ドイツでなされた合意については、その本文は事務局が用意した資料5に比較してはるかに長く、交渉のあとが伺える非常にニュアンスに富んだ内容となっていることを指摘させていただきたい。例えば、法的運転期間の32年についても、30年とする緑の党と35年とするミュラー連邦経済大臣の双方の主張の間をとった形となっているが、発電量の計算においては、稼働率は過去10年間の内で高い5年分の平均を取り、なおかつ将来の技術の進歩も見込んで5.5%の上乗せを行っており、これらの取引の結果、過去のトレンドに照らせば約34年分に相当するところで合意がなされた。現実を踏まえた取引がなされていることが、一面の真実として存在する。原子力に対する不安は確かにあるものの、一方で原子力技術の現状及び将来に対する評価が適切になされており、それらに基づいて合意がなされていることを十分に踏まえて、本骨子の記載がなされるのがよろしいと考える。
- 多くの方が読まれると思われる第17頁の「21世紀に向けて」について、国民へのメッセージとして何を記載するか。現在の記述は前回までの長期計画同様に全人類的な意味合いが強く、場合によっては鳥井委員の指摘なども記載するのであろう。全人類に対してというより、むしろ国民や地域住民へ向けたメッセージ、現実に原子力発電所がある地域を念頭においたメッセージがあってもよいのではないか。それらも21世紀に向けて重要ではないかと感じる。長期的な視点と並んで、短期的視点、身の廻りのことをきちんとやることも重要であり、視点を少し区分して記述してもよいだろう。
(森嶌座長代理)
- 用語の統一については、書面にて指摘をお願いしたい。
- 吉岡委員の科学史観については、そのような考え方があることは承知しているが、本会議での大方の考え方を記載させていただいた。科学技術が怖いものであれば、コントロールするより捨ててしまうのが一番の早道であるが、そうしないのはそれが人類に対して貢献をなしうるからである。表現が十分であるかは別として、科学技術が人類の発展に貢献してきた、もちろん無条件にプラスではなく様々な問題が発生しているが、それらをどのように解決するかが今後の課題であるという現在の記述は変わることはないであろう。
- 鳥井委員御指摘の研究開発に関する記述については、第2部の第34頁に記載がある。総論に入れるべきか否かについては、研究開発のメカニズムは、国や関係者の役割であり、国民に向けてのメッセージとしてはそぐわないと判断したものである。その他については、出来るだけ御指摘に沿うように努めたい。
(鳥井委員)
- 総論は総論として既に一つのまとまり方をしていると思うが、読み手の国民の側からすると、前の長期計画とあまり変わらない印象を受ける。確かに人類的な視点は多く存在するが、ほとんどの記述は前回の長期計画にも見受けられる。その後色々なことを引き起こしてしまったが、読み手の側はそれらを受けて、今度は何を反省し何が変わったのかとの意識で文章を読む。ところがその疑問に対しては全く記述がない。これで果たして十分なメッセージになるのか。反省しているのだという認識があって、はじめて国民にもう一度信頼してみようとの意識が生じるのではないのか。
(森嶌座長代理)
- 過去の研究開発に対して、きちんとした評価と反省という視点を入れるとの御指摘は理解した。
(神田委員)
- 第1部第3章「我が国の原子力研究開発利用」の項目立てを見ると、あくまで動力炉、発電炉への取り組みをもって研究開発利用としており、放射線については利用のみが述べられている。原子力の研究開発は、様々な方向に目が向いているとの視点が欠落しているのではないか。
- 第1部の記述においては、「大学」という言葉がほとんど出てこない。例外は、廃棄物処分を共同で行う問題と高速増殖炉開発における協力の部分の2箇所のみである。従来、大学が原子力を表に出せなかった背景には、大学は原子力、エネルギー開発には手を出さないとの矢内原原則が存在しており、文部省も原子力に予算をつけることをためらっていた。それが今回の行政改革で、晴れて大学で原子力の基礎研究ができるようになることとなった。従って、本骨子においては、大学に期待するとの記述をもっと書いていただきたい。
- 多くの大学が、原子力工学との看板を下ろしたのは、二つの原因がある。ひとつは原子力に対する否定的な報道のため優秀な学生が集まらない、もうひとつは原子力ということで研究を申請すると予算が落ちるということが挙げられる。予算が付けば、大学の先生方は研究をやるし、研究が行われれば優秀な学生が集まるであろう。今後のためにも、大学の役割に期待するとの記述をもっと書いていただくよう、重ねてお願いしたい。
(森嶌座長代理)
- 大学についてはどこに盛り込むか、後ほど御教授いただきたい。
(佐和委員)
- 温室効果ガスとの用語は、一般の方には理解しづらいため、最初に出てきた際に括弧書きで「二酸化炭素、メタンなど」といった説明を加えるとともに、それ以降は文脈に応じて二酸化炭素と表現したほうが適切であろう。
- 第6頁の「その実施にあたっては、設備の更新を要する場合が多く、その効果が発現するまでに時間を要する」との表現は、「その効果」が何を受けているのか明確でない。
- 第7頁の再生可能エネルギーの「最大限合理的導入」との表現は、意味が不明確である。
- 同頁の「高速増殖炉など、・・・エネルギー選択の技術的な選択肢を拡大させることになる。」との表現は、婉曲的で意味が不明確である。
- 第8頁の「経済性」については、表現が簡潔すぎており、我が国ではどのような要因で化石燃料発電と遜色がないのか、説明していただきたい。
- 第9頁の「我が国の温室効果ガス削減」との表現は誤りであり、「温室効果ガス排出削減」とすべきである。またこの部分は、温室効果ガスを二酸化炭素としたほうが明解となるだろう。
- 第11頁の「石油の賦存量」との表現は誤りであり、「石油の可採年数」とすべきである。
- 同頁の「途上国の経済成長の権利」との表現は耳慣れず、「経済発展」とするのが適切である。
- 同頁の「中長期的重要な問題」との表現は、「中長期的に重要な問題」とすべきである。
- 同頁の「長期的戦略的判断」との表現は、「長期的かつ戦略的判断」とすべきである。
- 第15頁の「地域住民が立地に関連して直接意見を表明することができる機会を設けることがますます重要となる。」との表現は、住民投票を肯定しているような印象を受けるが、そのように解釈してよろしいのか。
- 第15頁の「事業者と地域社会が相互に発展するという共生の考え方」とあるが、これが共生の定義であると解釈してよろしいのか。
- 第17頁の「原子力発電大国」との表現は、原子力が極度に肥大化してバランスを欠いているとの印象を与える恐れがあり、不適切ではないか。
(那須座長)
- 文章の表現については、再度検討し適切なものとしたい。
(石橋委員)
- 第10頁の「欧米諸国は、様々な理由から、一定の成果を上げた上で、開発を中止したり、方針の転換を図っている。」との部分について、私の記憶によれば、例えば、EFR(欧州型高速炉)は概念設計の段階で断念しており、またドイツや米国の状況を踏まえると、一概に「一定の成果を上げた上で」とする表現には異論がある。第三分科会においても、欧米諸国の高速炉開発の成果については、必ずしも十分に議論されていないと認識しており、再考の必要があると考える。
- 第14頁の「今後とも、明確な情報開示の基準に基づいて、・・・情報公開を行う」とあるが、これは第一分科会の報告書を受けており、方向性としは適切かもしれないが、現実の問題として、今後国が明確な基準を作れるかどうか懸念をもっている。
(長見委員)
- 第一分科会などでも取り上げられたが、第11頁の「放射線利用の現状と課題」の部分などに、安全性を確認しつつ進めることについて、記述していただきたい。
- 放射線を利用する施設が増加するのに伴い、放射性物質が各所に分散されることとなり、放射性物質の管理が適切になされるのかが、国民の心配の一つとなる。長期計画は、専門家のみならず、そうした事業に従事する方も読まれることとなると思うので、それについても記述していただきたい。
(鈴木委員)
- 第1部のまとめに当たる部分が第17頁の「21世紀に向けて」であり、最初の項目で20世紀の原子力の状況を総括しているようであるが、原子力に係わる諸問題について「管理できる見通しが得られつつある」と結論づけている。ところが、第3頁の「20世紀の原子力の状況」においても、同様の記述があり、結論としてはある意味で正反対のことを述べている。その間の記述において、結論を変化させるような論理展開も見受けられない。このままでは不適切であろう。私の認識では、記述のヒントが第13頁の「国民・社会と原子力」にあり、原子力が社会に受け入れられるためには開発のプロセスを透明な存在とすべきであり、そうした記述がなされるべきである。
- 第17頁の「21世紀に向けて」の2番目の項目では、原子力の優れた特徴について述べられているが、さらに重要なこととして、市場の自由化などによりコスト意識が重要とされる中で、なお研究開発に取り組む意義について示すことが挙げられる。それについても記述を行うべきではないか。
- もう一つ「21世紀に向けて」において考えるべきことは、冷戦終了に伴い原子力に対する国際社会の見方が大きく変化しつつある中で、日本の原子力開発についてどのように考えるのかということではないかと思う。非核保有国として原子力発電を安定的かつ長期的に進めていくとの姿勢を、世界に向けて示していくことが重要であり、核保有国の独占でなくできるのだという考え方を示すとの意義がある。そうしたことは、ある程度第1部第4章においてまとめられているが、最後に総論として記載するとよいだろう。
(千野委員)
- 第1部第4章の記述について、長期計画は5年程度毎に改訂がなされ、その間の内外の変化を反映させることが大前提になると考えるが、今回、その間に国内では一連の事故が発生し、国民にも大変深刻に受け止められている。骨子案の記述では、事故に触れた部分が多いことは評価するが、不安があるものの努力してやっていくのだとの、事故に対する国民の疑問に応える文脈とはなっておらず、もどかしさを感じる。こうした問題意識を踏まえて、文章を再考して頂きたい。
- 第14頁の「信頼の確保」の部分について、マスメディアについての言及がなされていない。第2部には記述があるものの、良きにつけ悪しきにつけ、各委員からマスメディアに関する発言がなされおり、いずれにせよ報道の役割が無視できないことは確かである。それについて何らかの言及はあってしかるべきであろう。
(鳥井委員)
- 第5頁に「エネルギー源を石炭、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーといった石油代替エネルギーに代えていくことが重要である。」との記述があるが、原子力の最大の競争者である天然ガスに関して、その後の記述が無く、天然ガスではなくなぜ原子力をやるのかという理由が記載されていない。それについては、何らかのメッセージが必要であろう。
- 同頁に「二酸化炭素回収技術」とあるが、具体的には何を考えているのか。植林であればそのように記述されればよい。地球再生計画でそのような話題が出ていることは承知しているが、あまり現実的な話とは思えない。
- 第11頁の「我が国独自の長期的戦略的判断」との表現は、何を意味しているのか明確ではない。具体的に記述された方がよい。
- 第13頁「国民・社会と原子力」の論調からは、社会は原子力を理解してそれを受け入れればよいのだとの印象を受ける。せっかく冒頭の第1頁で、科学技術は社会の要請に応え、それを満たすような技術を作り出さなければならないと述べているにもかかわらず、具体的な記述になると従来の論調に戻ってしまっている。技術が社会の要請に応じて変わっていくのだというのが、非常に重要な視点であることを認識していただきたい。
(鷲見委員)
- 石橋委員の欧米における高速増殖炉の研究開発についての御指摘であるが、高速増殖炉懇談会での英国の方の発言によれば、ドンレイでの研究の成果はドキュメンテーションとしてきちんと保存されているとのことであり、またドイツでも研究のドキュメンテーションはきちんと残されていようである。また、アメリカでもアイダホでEBR−2が2O年程度運転されていた実績もあり、研究が一定の成果をあげたとの記述は適正であると思われる。
- 石橋委員の指摘のとおり、情報公開の基準を作るのは非常に困難であろう。また、この部分と核不拡散の部分においてのみ「べき」との表現がなされているが、「必要がある」、「重要である」との使い分けはどうなされているのだろうか。
(吉岡委員)
- 第17頁「21世紀に向けて」の記述については、第1頁において指摘したのと同様に、科学技術や原子力の功罪をいかに考えるかという点で、森嶌座長代理の考えが強く反映されているように思う。文学的にいえば、科学技術のプラス面が9であり、マイナス面が1というのが森嶌座長代理の考えである。先ほどの私の発言では、プラス面を一方的に強調した議論を引き戻すために、あえてマイナス面を強調したが、人類にとって科学技術の功罪の収支決算は未だなされておらず、現状では希望を含めて考えても、全体としてプラス6マイナス4程度とするのが妥当ではないか。ただし分野毎に異なるのは当然で、原子力については、プラスが2でマイナスが8と考える。バランスシートにおいて、どこに位置づけるのかが問題であり、複数の文案を用意するなどして検討していただきたい。
- 第1部の特に第3章及び第4章と、第2部との関係について一見したところ、かなり重複が多いように思われる。記述をもう少し絞り込み、それで生じた紙面の余裕で、国民あるいは国際社会へのメッセージを正面から打ち出すべきではないか。その具体的内容については、配付資料「長計策定会議委員からのご意見」の中の私のペーパーで、国民や国際社会へのメッセージについて提案しているので御参照いただきたい。原案のままでは、まず原子力の推進ありきの姿勢で、前回の長期計画とあまり変わらない。重要なのは、原子力発電の拡大や使用済核燃料の全量再処理などの基本政策も、決して不変ではなく状況変化によって変わりうるとの認識に立ち、政策を柔軟に考えるという視点であり、その点を明確に打ち出すべきである。
(佐々木第五分科会座長)
- 第8頁「安全性」の記述について、一般の国民が健康影響や安全確保の仕組みを十分理解していないため、すでに安全が確保されているにもかかわらず、さらに取り組みを進めなければならないとの、国民に責任を押しつけるような論調に読まれる恐れのある表現となっている。放射線の健康影響については、未だに未知の部分があり、専門家の間でも放射線防護にいかに反映させていくかについては議論がある。この件では決して国民に責任があるわけではなく、慎重を期して修文していただきたい。
(長見委員)
- 情報提供のあり方に関連するのか定かではないか、情報発信に関して他力本願的なところが見受けられる。原子力に関する研究や原子力産業に携わる人からの情報発信が望まれる。私の子供のころは、物理学者の方々が色々な夢のある著書を書かれており、社会的発言もなされていたように思う。ところが現在は、個人としての魅力のある情報の発信が少なく、形式的なものにとどまっているようである。研究に従事する人や利用する人が、もう少し楽しく、今の技術や将来の技術を紹介されるように努めていただきたいと考えている。どの部分に入るのか分からないが、どこかで記載していただきたい。
(佐和委員)
- 単純な誤植であると思うが、第19頁の「研究者・技術者対して」及び第21頁の「基本的役割を果たすため必要な」との表現は、両者とも「に」が抜けているのではないか。
(千野委員)
- 第2部第1章の「情報提供の在り方」や「マスメディアの役割」において、「タイムリーに」、「分かり易く」、「正確に」報道することとあるが、これらも重要であるが、同時に、今の時代「迅速に、速く」も極めて大事である。拙速であってはならないが、「迅速」という言葉もどこかに入れていただきたい。
(村上委員)
- 第2部の章立ての構成について、研究開発長期計画でその3本の柱が、核燃料サイクル、放射線利用、先端的研究開発になっているとの観点からすると、3分野毎の重みづけや厚みというものが十分に調整がされていないようである。特に第3章の先端的研究開発については、今少し手厚く記述していただけるようお願いする。具体的な提案の中身については、書面にて提出させていただきたい。
(吉岡委員)
- 高速増殖炉サイクル技術の位置づけに関し、本文全体としての整合性がないように思える。例えば、第22頁の「将来の非化石エネルギーの有力な技術的選択肢」というのは、高速増殖炉懇談会の結論である。ところが一方で、第29頁では「資源節約型エネルギー技術を開発する」にあたり「技術的選択肢の中でも潜在的可能性が最も大きいものの一つ」と位置付けが変化している。この位置づけは第三分科会のものである。後者に合わせて、前者を見直した方がよい。
- 第三分科会報告書の第20〜21頁においては、もんじゅはプラントとしての技術的信頼性の確立を目的としており、それ以外の目的については後で再度検討することとしている。第30頁の「もんじゅ」の部分も、それに合わせた記述とするよう再度検討すべきである。
- 第24頁のウラン濃縮について、「生産能力を1500トンSWU/年規模」とあるが、現在この方針は揺らいでいる。この箇所に限らず、長期計画の作成途上で次々とそれに盛られた計画が崩れていくのは困るので、アップ・ツー・デートにしていく必要があるのではないか。ウラン濃縮については1050トンのままになるとの可能性もあり、そういった点も十分に配慮していただきたい。
(久保寺第五分科会座長)
- 人材育成や技術の継承・発展についての記述が、原子力供給産業のところだけに記載されていることに対して、意見を申しあげたい。先ほどの長見委員からの指摘にもあるように、原子力利用が膨らみ施設が増えたとき、安全確保に対する不安が生じることは必然である。利用の拡大と安全規制というものは相交わることのない2本のレールのようなものであり、お互い枕木のような連携をきちんと保つべきである。利用が進んでいくとき、国はどのように安全規制を向上させ、対策を講じていくのかとの観点を、どこかに盛り込む必要がある。総論的に第19頁に示しているのかもしれないが、具体的にもっと記述していただきたい。
(佐々木第五分科会座長)
- 第2部の作成の際の事情は座長代理や事務局の説明で承知しているが、中でも第2章の内容と書き振りは他の章と異なっている。他の章は統括的に理念に主体をおいて簡潔に書かれているが、第2章はかなり具体的に詳細に渡り、特定の機関が特定の装置や事柄を特定の期間内に実現すべきという文章になっており、全体を見渡すとアンバランスとなっている。第2章の表現が詳細に渡るため、かえって国民に理解しづらいものとなっており、第2章を他の章に合わせ簡潔な表現にすることにより、全体の調和をとるべきであると考える。
- 一つのセンテンスが非常に長く、意味がわかりにくい箇所が見受けられる。これは第2章だけの問題ではないが、特に第2章において多く見られる。さらに推敲して簡潔で分かり易い文章にすべきである。
(秋元委員)
- 吉岡委員の御指摘に対して、第三分科会の報告書の第7頁でも、高速増殖炉は非化石燃料源の重要な技術的選択肢の一つとして位置づけることが記載されており、高速増殖炉懇談会での結論を第三分科会も裏書きをしていると認識している。資源節約型エネルギー技術の開発という位置づけは、高速炉が持っている一番大きな特徴というものをクローズ・アップして、今後の発展の一つの方向性を打ち出したものである。基本的スタンスが変化したわけではないので、誤解のないように願いたい。
(太田委員)
- 吉岡委員、佐々木第五分科会座長の御発言に関連して、第24頁のウラン濃縮工場の生産能力について、吉岡委員は将来の可能性の評価はむしろマイナスであると考えられておられるようであるが、私は、この報告書にあるように「経済性の高い遠心分離機を開発導入し」ということが重要であり、大いに発展させていく必要があると考えている。ただ、「1500トンSWU/年」との数字は無くともさしつかえないであろう。
- この策定会議の進め方として、基本的な方向性の追求を重視し、個別の記述はできるだけ避けるものとの方針のもとに当策定会議は出発したはずである。詳細な記述が理解を深めるとの観点もあるが、少なくとも本文のこの部分では、他との並びもあり具体的な数字を書くのはいかがなものか。
(熊谷委員)
- 第27頁に「我が国では、再処理で使用済燃料からウラン等の有用物質を分離した後に残存する高レベル放射性廃棄物は」との表現で、高レベル放射性廃棄物の定義が記載されているが、これは正確かつ妥当であると考える。長期計画の中では、このような説明を統一して使用すべきである。例えば第10頁に「再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物」とあるが、この表現は再処理によって新たな放射性廃棄物が発生するような誤解を招く恐れがある。一般の人は、新たに高レベル放射性廃棄物が発生するのであれば再処理は止めてしまえと感じるだろう。日本原子力文化振興財団が新聞に掲載しているコラム「原子力の話」でも、繰り返し「再処理によって新たに発生する高レベル放射性廃棄物」の表現がなされているが、そういう説明であれば止めた方がよいと思う。多少長くなっても正確な表現にすべきである。
- 第24頁の「利用目的のない余剰プルトニウムを持たない」との表現も、核爆弾を作るという利用目的があれば持ってよいのかとの解釈が可能であり、「平和利用目的以外の余剰プルトニウム」というのが正確である。この表現は第17頁やその他にも見受けられるので、整理して改めていただきたい。
(佐和委員)
- 第23頁の「技術基準の機能性化」という表現は、意味が不明確である。
- 第24頁の「当面の間」という表現は不適切であり、「当分の間」という表現とすべきである。
- 第26頁の上から2行目の「再処理も可能にすることも考えられる」との表現は、「も」が並び、「再処理を」とすべきではないか。
- 第27頁の「放射性廃棄物の中のうち」との表現について、「の中」は必要ないのではないか。
- 第30頁の高速増殖炉の経済性について「軽水炉や他電源と比肩し得る経済性を達成」とあるが、この達成は実現可能な範囲内にあるのか否かとの懸念をいだいてしまう。ここにいたるまでに、開発の意義については十分に述べられており、それらを前提として経済性を追求するとの記述であればよいが、比肩する経済性の達成が目標となると、これが達成できないとだめなのかとの議論になりかねない。ここまでの表現とすべきなのか疑問である。
(住田委員)
- 第23頁の「安全規制に関しては、国はリスク評価技術の進歩を踏まえ」とあり、例として「リスクを有意に変えない範囲での定期検査の柔軟化」が挙げられているが、この表現だとちょっと手抜きをしてもいいのだとの印象に受け取られかねない。まず、リスク評価技術の進歩を踏まえ、合理的な安全規制のあり方について更に検討することを述べて、その中で「定期検査が形式的に安易な方向に流れないように、こういうふうなリスクを有意に変えない範囲で」と例示すべきである。
- 第9頁に「原子力発電と他の電源の間との適切な構成割合を維持することが適切である。」との表現があるが、適切なものを適切というのでは何も答えていないも同じではないか。適切な構成割合を維持するということは重要なことであり、この「適切さ」をどう考えるかは重要な論点であろう。長期的な展望を持つとともに随時必要に応じて見直すといった趣旨を、取り入れていただければと考える。
(竹内委員)
- 第2部の第2章の書き方については、冒頭からいろいろ意見があったが、国民へのメッセージを主体にした方が良い。第2章についてはかなり細目に渡って記述している。濃縮、再処理、廃棄物の事業を実際に現場で進めている人間である私のような立場から申し上げると、長期計画の内容にどういう意味合いがあるかを国民に理解していただくのに必要な程度の表現にとどめていただいた方がよろしいと考える。それについては、佐々木第五分科会座長、太田委員の御意見もあった。
- 熊谷委員の御指摘については、やはり再処理事業をやるものとして、新たに高レベル廃棄物ができるということではないことを御理解いただき、高レベル廃棄物を扱わなければならない背景を国民に理解していただくような表現を、随所に入れていただきたいものである。
(都甲委員)
- 第26頁の「処分に向けた取り組み」の4番目の項目に「以下に示す区分に応じ」との表現があるが、「以下に示す処分方法の区分に応じ」と具体的に記述していただきたい。分科会でもそのように議論されたと聞いている。
- 第28頁の「人間による管理が期待できる期間内に生活環境に影響を与えないレベルにまで放射能の減衰が期待できる放射性廃棄物」との記述について、その他に減衰が期待できない長寿命核種についても言及が必要ではないか。文章としては、長寿命核種を含んでいる廃棄物でもその濃度が十分低い場合には、適切な人工バリアーと天然バリアーの組み合わせで管理できるという趣旨のことを入れていただきたい。
- 第31頁の実用化戦略調査研究について、第25頁に再処理工場の操業開始2005年、第26頁には2010年頃から検討を開始と具体的年次が入っていることも受けて、この実用化研究の目標となる具体的年次についても、ぜひ記述していただきたい。具体的には、2015年頃を目途に実用化の可能性が最も高い高速増殖炉サイクル技術の見通しを示すとの趣旨を明記していただきたい。
- 同頁の実用化調査戦略研究等の3番目の項目の「各機関は、」の後に、「常陽の他国内外の研究開発施設を活用して」などとの記述を追加し、常陽の活用を明記していただきたい。
(鳥井委員)
- 第三分科会の報告書の「高速増殖炉及び関連する核燃料サイクルの研究会の将来展開」において、第19頁には「社会的要請への柔軟な対応」との項目が立てられている。ところが骨子案では、第31頁の実用化戦略調査研究の部分にはこれに近い表現が取り入れられているものの、第29頁の「高速増殖炉サイクル技術の研究開発の方向性」には、そういった視点は明確には取り入れられていない。高速増殖炉の研究開発においては、社会的要請に応えるとの姿勢が最大のメッセージだと思われるので、基本的な考え方として、それに類するような記述がなされることを要望する。
- 第三分科会の報告書には中小型炉との表現が何箇所か入っているが、なぜここでは抜けてしまったのだろうか。技術の方向性として、中小型炉という選択肢は大いにあり得ると思う。記載がないのはいかがなものか。
(村上委員)
- 第2章と他の章のバランスの問題であるが、少なくとも第2章については分科会での意見がここに現れているので、佐々木第五分科会座長の御提案もあるが、無理に記述を減らす必要はないのではないか。一例を挙げると、第34頁の「革新的原子炉」との記述は、このような簡潔すぎる表現で国民へのメッセージとして成り立つかどうかとの懸念があり、むしろこのような分かりにくい部分の記述を強化するとの方向で、調整いただければ有り難い。その他にも同様の部分があり、後ほど書面にて提出したい。
(太田委員)
- 昨年この策定会議をスタートさせた際の方針は、先程座長代理も申されたが、基本的な方向性を示すメッセージとするということであり、具体的な工程であるとか、規模、数字のような詳細な記述は避けたいということではなかったかと認識している。例えば、都甲委員の御指摘などは、サイクル機構の業務計画などに記載するならば適切であると思うが、この長期計画のレポートに書くべきことであろうか。また、具体的な記述で1〜2年後に齟齬(そご)をきたすようなことになると、そこで長期計画全体の信頼性が失われる恐れもある。従って、とりまとめの方針は、座長代理が今日の審議の冒頭に申されたような考え方でよろしいのではないか。
(神田委員)
- 研究開発利用なのだから、研究ということについて、もっと力点があってしかるべきである。学術会議では、矢内原原則や文部省と科学技術庁の合併の話題について議論がなされた。文部省の行政改革委員会でも、原子力を取り込むことになったら省がどう変わるかということを繰り返し検討した。そういったことが記述に反映されていない。
- 例としては、鳥井委員が前回指摘された我が国で開発した重粒子線の技術について、放射線医学総合研究所で始まった重粒子線の研究というのは議事録に記載されている。その際には中性子線についても言及されたと思うが、議事録にはその記述はなく、大学で始まった治療というのは消えてしまう。大学はたいしたことはしてなかったかも知れないが、今後省庁再編を迎えるので、このあたりはつないでいただき、バランスをとった記述としていただきたい。
- 以前トリウムサイクルの研究に大学は熱心であるとの話を紹介申し上げた。大学でのこの種の研究について、従来は科学技術庁の示す国策になじまなかったので取り上げられなかったのかもしれないが、今度は文部省と科学技術庁が一緒になり、今までの国策とは異なることとなるので、その種の記述もあった方がよい。要するにあまり壁を作らないということである。
- 表現の問題であるが、第37頁に「極めて重要」との言葉が2箇所でてくるが、この部分だけが極めてなのか。適切な表現とすべきである。
(那須座長)
- 言葉についても、細かいことだからと言わずに、考えていただければ有り難い。書面でも提出いただきたい。
(鈴木委員)
- 第21頁に「国の役割と民間の役割」、第32頁に「人材確保と技術の継承・発展」の項目があるが、これらは各分科会にまたがる課題でもあり、事務局が配置を苦労されてこのような原案になったのだろうが、本来技術の継承や人材の確保育成等については、国も民間も当然役割があるわけで、これらがもう少しうまくまとめて記載されるべきだと考える。
- 第三分科会で議論したのは、鷲見委員からも指摘があったが、技術的な研究開発の成果をいかにまとめて、国の財産として蓄積していくかが重要であるということであり、我々はそれを技術情報データベースと呼んでいる。これらは第四分科会や第五分科会にも関係することであろう。
(鷲見委員)
- 放射性廃棄物について多くの記述があり、第7頁に「100万キロワットの原子力発電所を1年間運転することによって、ドラム缶数百本の低レベル放射性廃棄物と、・・・高レベル放射性廃棄物がガラス固化体にして約30本発生する。」とあるが、一般の人々が読んで見てこれらが他の廃棄物と比較して多いのか少ないのかが分からない。発電電力量当たりの廃棄物の量がいくらであるとか、国民一人当たりでは他の産業廃棄物の何百分の1であるとか、量的な問題についても、数字を記載とまでは言わないが少し言及した方がよい。
(妻木委員)
- 第21頁に国の役割と民間の役割が記載されており、国の指導性の発揮が求められているように思う。一方で、今後は地方分権化が進められることも考えると、地方行政、特に首長の役割に期待する部分がかなりあるということも課題ではないか。国と民間事業者の役割だけでなく、地方に期待する部分をどこかに入れるか、もう少し書いていただきたい。
(永宮第四分科会座長)
- チャドウィックによる中性子発見の後、中性子線は電荷がないとの特徴を用い、原子核反応を引き起こす手段として、基礎科学の中で様々な研究に利用された。そのうちの一つとして、中性子をウランにぶつけると核分裂を起こすという現象が偶然発見された。第四分科会の論議の出発点もそれに近いところがあり、20世紀の追い付き追い越せの時代から、21世紀は今一度原点に戻って、原子力の裾野を広げ、夢とロマンに満ちた科学を育てることも必要だと考える。このことを第1部第1章の最後「21世紀に向けて」にもう少し書き加えると、我々の哲学が現れるのではないか。今後新しい核融合方式などが生まれてくる可能性もあるので、これについては強調していただきたい。
(鳥井委員)
- 第19頁に安全研究の話題が簡単に記載されているが、安全研究についてはもっと詳細に記述する必要があるのではないか。例えば、「原子力安全委員会が決定する安全研究年次計画」とあるが、一般の人には理解し難く、もっと具体性を持たせた表現とすべきである。
(那須座長)
- 極めて大事であり言うまでもないことだという認識かも知れないが、御指摘の通りである。
(秋元委員)
- 第17頁の「21世紀に向けて」において「20世紀における原子力は、・・・軍事利用や平和利用の際の放射能放出を伴う事故など人類の生存を脅かすものともなった。」との表現があるが、原子力がその発展に伴い人類を脅かすものになったのではない。確かに、核兵器が究極の兵器として軍拡競争の対象とされていた時代の原子力は、人類の生存を脅かすものであったが、その後情報兵器の進歩や核兵器の非道徳性への世界的な認識の高まりとともに、平和利用が進み、今や核兵器は使えない兵器となりつつある。一方エネルギー源としての原子力は、どのエネルギー源をもしのぐ安全実績を実証してきており、これは数度の事故によっても崩れていない。すなわち軍事利用の衰退と平和利用の推進によって、かつて脅かす存在であった原子力が脅かさない方向、貢献する方向に進んでいると理解すべきである。
- また、事故による放射能放出については、軍事利用の脅威とは全く次元の違うものであり、両者は書き分ける方がよいのではないか。
- 原子力は、他のエネルギーと比べ桁違いに大きなエネルギーを持つ点で、メリットとともにリスクを持ち、そのリスクを人類の英知でコントロールできるか否かが課題である。様々な課題が存在するが、コントロールできるし、また努力していくのだとの表現を採用するのが適切であろう
(石橋委員)
- 第27頁の「処分事業の実施主体の設立」との表現は、この報告書が完成された時点で設立されている可能性があると解釈してよろしいのか。
(熊谷委員)
- 長期計画の非常に重要な課題のひとつは、高速増殖炉の今後のあり方について、国や国民がどういう意見を持つかということであろう。だとすれば高速増殖炉自体の説明が非常に重要となる。第三分科会報告書の参考資料に、高速増殖炉の仕組みの説明があり、そこでは「消費した量以上の新しいプルトニウムをつくり出すことができます。これが増殖です。高速増殖とは・・・プルトニウムを増殖させる原子炉です。」と記述されているが、これを読んだ一般の方は、高速増殖炉とは消費した以上のプルトニウムを新しく作り出すもので、しかも、それが高速に作られるとの印象を受けるだろう。増殖率は1以上にも以下にも制御できると認識しており、プルトニウムを消費することもできると思うが、そうしたことをなぜ記述しないのか、以前から疑問に思っていたが、これは重要な問題であり、ぜひ検討願いたい。
(鳥井委員)
- 危機の要因として、環境、資源や食糧が取り上げられているが、おそらく一番早く問題になるのは水資源であろうと思われるので、そのような認識は持たれていた方がよいであろう。
(吉岡委員)
- 文筆家として、起承転結がないとおさまりが悪く感じる。原案のままでは尻切れとんぼなので、最後に総論的なものとして結論をつける必要があろう。分科会横断的なテーマなど、大きいテーマについての判断を、最後に取り上げたらいかがか。私の提案として、配付資料の中の私のペーパーに示したテーマ3「エネルギー政策全体の中での原子力政策の扱いをどうするか」、テーマ7「事業・政策の評価方法とその資源配分への反映方法」、テーマ9「研究開発機関、メーカー、ユーザーの三者の関係」などを、総論的セクションとして付けたらよいのではないか。
(村上委員)
- 長期計画が国民に対するメッセージならば、「計画」との標題ではなかなかメッセージであるととらえられにくいので、ぜひとも素晴らしい副題を付けていただきたい。
(近藤委員)
- 既に産業として自律的に活動している原子力発電に係わる部分と、国がカバーしなければならないものとを、そろそろメリハリをつけて区別してもいいのではないか。第2部に「国と民間の役割」との項目があるが、この問題は、どちらかといえば第1部的なものとも思える。切り離すべき部分と切り離してはならない部分が存在するので、第1部と第2部にまたがって、構成を含めて整理、検討いただきたい。
(興原子力局長)
- 平成6年の長期計画以降、もんじゅのナトリウム漏えい事故が起き、プルサーマルの問題について3県に申し入れなども行われた。そうした過程の中で、地域社会における様々な問題があり、原子力開発利用については、民間が行う事業ではあるが、それらの問題に対して、地域社会にどのように関与してもらうかが重要な課題であるとの、妻木委員の御指摘もあった。しかしながら、前回の長期計画においては、地域社会の声は必ずしも十分に取り入れられてはいない面もあった。もんじゅ事故後、三県知事提言を受けて、平成8年に原子力委員会の下に原子力政策円卓会議が設置された。また、本策定会議委員として、原子力発電関係団体協議会会長や全国原子力発電所所在市町村協議会会長に御参加いただいている。国策として国が政策を明確に打ち出してほしいというのが、地域の強い気持ちであり、それがなかなか見えないことを憂慮されているのである。冒頭申し上げたように、全体のバランスで整理は必要であるが、地域の声をきちんと聞いた上で取り扱いを検討していただきたい。
- 村上委員などの御指摘の研究開発機関の役割については、原子力基本法に基づき、国が研究開発利用をきちんと進めるために、日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構を設けて、研究開発を実施してきたものである。従って、国や両機関の役割は他とは異なるものがあるとの観点からの御指摘であったように思うので、補足させていただきたい。
○森嶌座長代理より発言があった。
- 鷲見委員御指摘の、必要、重要、べきの使い分けについては、「重要」とは優先順位が高い、「必要」とは必ずしも政策として具体化されていないが今後やっていかなければならない、「べき」は積極的に法律や施策を設けていくとの意味で判断している。しかしながら、必ずしも十分に整理されていないため、今後配慮することとしたい。
- その他の点、特に第2部に関する御指摘については、第2部の作成においては各分科会座長に十分に御意見をいただく余裕がなかったとの面もあり、各分科会座長におかれては、今後全体を見渡した上で構成についても御提言いただきたい。
- 神田委員などが御指摘になった大学との関係については、本日はじめて聞かせていただいたことも多い。私としては、私にわからないものは国民にもわからないのだから、それは報告書の方が悪いといった程度のつもりで、分科会報告を読ませていただいた。専門家の立場から見れば、理解が十分でない部分もあるかと思うが、その際は御指摘をいただきたい。
- 専門的になりすぎないようなるべく平易な記述としたい。その際には私に理解できるか否かが、いわばリトマス試験紙となるだろう。
- 各委員におかれては、用語について、書面による意見提出をぜひお願いしたい。
- 近藤委員の御指摘については、科学技術振興計画を策定しているのではなく、まさに原子力の研究開発利用を検討しているのであり、既存のものと将来どうするかの両方が盛り込まれねばならず、多少方向性の違ったものが入るのはいたしかたないだろう。書き方等について工夫すれば、将来性の問題と既存の条件に縛られつつ施策を遂行する部分とを区別することが出来るかもしれないが、完全に分けるのは困難である。
○本日の審議を受けて、那須座長より発言があった。
- 本日の審議では各委員から多くの意見をいただいた。森嶌座長代理には、長期計画のドラフトを用意いただき、ご審議をお願いしたい。
- なお、骨子に対する追加の御意見があれば、7月5日(水)までに書面にて事務局まで提出願いたい。
(3)その他について
○那須座長より、発言があった。
- 長期計画については、骨子についてご審議をいただいている段階だが、今後長期計画を策定するに当たり、国民各界各層からの意見を求め、長期計画策定会議における審議の参考としたいと考えている。
- ついては、意見募集と「ご意見をきく会」の開催について案を用意したので、事務局から説明したい。
○ | 那須座長より、本件については森嶌座長代理と共に具体化についての検討をまかせていただきたいとの提案があり、各委員より了承された。 |
(4)閉会について
○事務局より、次回の会合について、以下のとおり開催する予定である旨説明があった。