(前田第二分科会座長)
- 第二分科会は、策定会議より、エネルギー政策の中での原子力利用の在り方、放射性廃棄物処分を含む核燃料サイクル政策の明確化、原子力産業の在り方という、3項目の大きなテーマを与えられて審議を行った。
- 合計10回の審議のうち実質5回までは、電力の部分自由化という環境変化や、JCO事故の影響もあって、エネルギー政策における原子力の位置付けについて議論した。また、省エネルギーや再生可能エネルギーの可能性についても、具体的な数値を用いて議論したが、それらは補完的な位置付けを越えず、当面は原子力を基幹電源として適切な割合に維持するべきとの結論となった。
- 自由化の中で電力会社が中心となって原子力を担っていくのかとの議論があり、ストランデッドコストが発生し原子力の推進が困難になるであろうとか、モラトリアムが進む、あるいは短期的な視点を優先するあまり電力供給に支障をきたしているとの米国の例が挙げられ、議論された。結論は、電力会社の経営努力に期待しつつ、国はエネルギーセキュリティや地球温暖化等の観点から原子力について適切な規模を維持すべく、さまざまな誘導策や制度設計を行うべきというものであった。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(吉岡委員)
- 様々な選択肢が存在する場合には、どれが妥当かを議論した上で、国民や国際社会に納得いただけるように論証しなければならないと考えるが、核燃料サイクルについてはこの点が十分に考慮されていないのではないか。
- 第二分科会での重要な論点の二点のうち、一点目の原子力発電を拡大するか、現状維持か、縮小するかとの問題については、結局結論が得られず、「適切な供給割合」という表現が採られた。また、その適切な供給割合の定義についても、結論が出なかったものと認識している。これはこれでよいと思う。
- しかし、二点目の核燃料サイクルについては、報告書の29頁の6~17行目にかけて、一定の結論が示されており、民間事業者に活動を期待するとの若干柔軟な表現に変わっているものの、従来通り全量再処理することが方針とされている。第二分科会では、なぜ再処理-プルトニウム利用路線を選択するのかについて多くの議論があり、批判的な意見も多かったと記憶しているが、その選択を行うことの妥当性に対する論証が十分になされていないのではないか。
- 例えばその重要な一環となるはずの再処理コストの検討についても、報告書31頁の脚注にあるOECD/NEAのコスト評価は、使用済燃料1トン当たり1億円以下の再処理コストという仮定に基づいている。それは英仏の実績を踏まえた数字である。そこでは約4千億円の再処理工場建設費などが前提とされている。だが実際はこの数倍になるものと思われる。
- 第二分科会で核燃料サイクル路線の評価が十分になされなかったのであれば、本策定会議で実施するべきである。
(石橋委員)
- 報告書31頁の24~25行目に2010年までに累計で16~18基でプルサーマルを実施とあるが、BNFLのMOX燃料データ偽造事件により、この計画は開始当初から、予定よりも遅れが生じているのではないか。32頁のプルトニウム需給バランスとも関連すると思うが、この点はどのように評価されたのか。
- 報告書31頁の28行目に将来のプルトニウム本格利用時代に備えてとあり、これはプルサーマル利用を計画的に推進することを前提とした表現と思われるが、この本格利用時代の具体的なデザインは何であるのか示していただきたい。
- 報告書35頁6~8行目のプルトニウムの需給バランスに関して、2010年頃までに海外の再処理で30トン、六ヶ所再処理工場では約25トン発生し、供給は合計で約55トンとなる。一方、需要は、もんじゅがすぐに再開したとして数トン、プルサーマルでは私の試算で27~36トンと推定され、合計30~40トンしかない。供給と需要がアンバランスではないのか。それについて、具体的な議論は行われたのか、根拠などを示していただきたい。
(太田委員)
- 報告書22頁の19~20行目に、電力自由化については「3年後を目途に検証が行われ、自由化の実施範囲、制度等の見直しが行われる」とある。前段は良いが、後段については記述が踏み込みすぎではないか。この部分を省いたとしても、論旨は通じるように思われる。
- 先般の電力部分自由化において、販売電力量の3割については自由化されたが、残り7割の顧客については固定である。報告書にもあるように、原子力は建設に要する期間が非常に長く、費用も膨大にかかる。もし完全自由化された場合には、電力会社は20~30年かけて原子力発電所を作る気になるであろうか。売れるか否か分からないものを、困難な立地交渉をした上で、数千億円かけて建設するだろうか。自由化は原子力に対して否定的な要素になってしまう。
- 総合エネルギー調査会でも、炭素税等を設置してインセンティブを与えればよいとの意見が出されたが、原子力の推進で一番問題になるのは立地問題であり、お金で簡単に解決できるものではない。3年後の自由化の検証時に何をどう見直すかは未だ決まっておらず、本報告書において言及するのは、立ち入りすぎではないか。
(鳥井委員)
- 報告書8頁の地球温暖化に関する先進国と発展途上国の取組の記述では、途上国が排出規制に参加しないので、先進国がもっと削減しなければならないとの印象を受けるが、本来は途上国に排出規制に参加してもらうためにどうすべきかを考えるべきであろう。議論が矮小化されているのではないか。
- 報告書28頁の産業に関する記述について、我が国ではこれまで原子力産業政策というものがなく、この報告書にも記述が見受けられないが、第二分科会では産業政策について議論がなかったのか、それとも産業政策は不要と結論づけられたのか、教えていただきたい。
(千野委員)
- 報告書17頁では、原子力を適切な構成割合に維持していくべきとの結論が示されているが、適切な構成割合とは何を意味するのかが、私を含め国民の多くが疑問とするところである。第二分科会で多くの議論がなされたのではないかと思うが、その一端でも紹介していただきたい。
(石川委員)
- 報告書27頁の人材の維持継承については、かなり専門的な技術者、研究者を念頭に置いておられるようであるが、むしろ末端の現場労働者について記述がなされるべきではないか。東海村のJCO事故は末端の作業者の問題によるところも大きく、職場に対する配慮、職場環境の改善、例えば給与水準の向上を勧告することなども考慮すべきではないか。そのようにしないと、また同様の事故が繰り返されるだろう。
(近藤委員)
- 鳥井委員の地球温暖化に対する先進国と発展途上国の取り組みに関する御指摘であるが、ここは第一に途上国の参加が重要であるとし、段落を改めて第二として、この問題に対する取組は2010年の目標達成で終わりではないということを指摘している。その先にもっと厳しい削減を考えていることが途上国の参加を求める条件との思いを読んでほしい。
- 吉岡委員と千野委員の適切な構成割合に関する御質問であるが、第二分科会では具体的に数値を記述するか否かの議論も当然行われた。しかし、数字については、総合エネルギー調査会がエネルギー政策を数年おきに見直す際に目標年次とあわせて示してきており、数字は本来そういうものではないか。それをなぞる、あるいは別の数字を示すといったことが、果たして原子力委員会のミッションであるか、という議論がなされ、結論として、原子力委員会としては、原子力の供給割合をエネルギー供給の安定性、経済性、環境適合性等の観点から適切なものとするよう、国は気配り目配りをすべしとするのが適切との提案がなされ、各委員が賛同されたものである。意見が一致しなかったから記載していないのではない。
- 再処理路線のあり方であるが、様々な評価を行いつつ決定しなければならないところ、分科会では多様な意見があり、現在進めている事業については着実に進めるべしという意見に対して、経済性についての疑念や前田座長が申し上げたようにストランデットコストになるのではとの指摘はあったが、明日から止めないと何かが困るという迫力のある意見はなかった。そこで、我が国が国際社会にプルトニウム利用に関して約束していることやこうした指摘があることを踏まえて、報告書に記載されているように進めることが適切とした。ただ、事業を進めるためには、環境に応じて柔軟に推進できるよう適切な措置が必要とし、基本的な理念と運用の在り方への配慮の両方が今後は必要という認識を示している。
(前田第二分科会座長)
- 石橋委員のプルサーマルに関する御指摘については、現実にスタート時点で若干つまづいたが、1~2年開始が遅れるとしても、各電力会社では2010年ころには16~18基で実現できるものと考えている。
- プルトニウムの需給バランスについては、今の時点でバランスをきちんと描くのは難しいため、このような記述となった。六ヶ所再処理工場は2005年操業予定であるが、おそらく開始当初は150ないし200トン/年であって、定格の800トン/年の処理を行うまでは数年かかることを考慮すれば、需給は概ねバランスするものと考える。
- 石川委員の人材の維持、継承についての御指摘については、20頁の事業者の責任の部分において、教育や訓練等を通じて必要な人材を育成しなどと記載されており、これらは主として現場レベルの技能者等を念頭に置いたものである。高級な技術者や研究者だけに配慮している訳ではないことを理解いただきたい。
(近藤委員)
- 先の供給割合やプルトニウムの需給バランスなどは、数字ももちろん大切であるが、より大切なのは原則、ポリシーであり、これを明確化し国民と共有すること、そして、それを運用する者が信頼されていることが重要ではないか。第二分科会では、原子力委員会の役割はそういうことを政策として掲げることではないかと、各委員に問い掛けながら、本報告書を作成した。ポリシーについて合意できなければ、数字をいくらつめても問題が残る。本策定会議において別の方向でまとめられるのは差し支えはないが、少なくとも第二分科会では、多くの議論が行われた結果、このように合意がなされ、この記述に至ったと理解していただきたい。
- 産業政策についてであるが、そのような概念、用語は、この報告書では明示的には使っていない。民間の役割については、Ⅲ.4.の官民の役割分担のところで示している。ここでは目的指向の政策を示しており、原子力産業が有る無しの議論が先に立つのではなく、原子力の果たすべき役割があって、その実現のための条件整備の在り方をまとめている。その中で民間が適切な事業を為し、供給力を持つことに対して、必ずしも全て国内での生産が必要ということでもないが、国がこれまで述べた役割が担保されるよう適切に目配り気配りすることを求めているのである。つまり、本報告書では戦略産業論の立場はとっておらず、エネルギー戦略上必要な条件整備の観点から、原子力産業に然るべきものが要求される場合は、これを要求するという立場に立っている。
(鳥井委員)
- 第二分科会では、産業政策はいらないという結論であるのか。
(近藤委員)
- 産業政策という用語は用いていないが、ここに示した施策が結果として産業政策と呼ばれることは否定するものではない。
(鳥井委員)
- 日本にとって原子力産業は極めて重要であるが、そのために国が何らかの施策を採れば、それが原子力政策である。ただ要求すればうまく行くわけではなく、施策が必要である。それについて第二分科会で議論されなかったのか。
(近藤委員)
- 議論は数多くなされ、それらを整理した結果が産業論の部分に記述されている。中身については、御指摘の観点からも読めると考えると申し上げている。
- 各委員がそれぞれの観点から国を思って今後の検討課題として発言されたことは、報告書としてなるべく記録に残すようにするとの趣旨で記述してあることは御理解いただきたい。太田委員の自由化見直しに関する御意見については、分科会での議論がそこまで行われたということで、各委員が真剣に議論されたとの記録を残す必要があるとの判断に立ち、記述している。この記述が将来の論議に対して何かの拘束になるとは考えない。なお、分科会では、自由化が原子力に与える影響について多くの議論があったが、原子力を進めていく上で、律速になるのは自由化よりも立地であるとの意見が多かった。そこで、事業者の努力の範囲や方向性と、原子力の位置付けを踏まえた国の適切な誘導措置の必要性について指摘してある。
(那須座長)
- 昨日の新聞に、鳥井委員の大変明解な論文が掲載されていたが、その内容を十分に頭に入れておきたいと考えている。
(3)第五分科会報告について
○第五分科会の久保寺座長より、資料2に基づき説明があった。
- 分科会報告書に示した提言が実行されることにより、放射線利用に対する国民の理解が進み、放射線の適切な利用による豊かな生活が実現されることを期待する。また、放射線利用は多岐に渡り、担当省庁も複数にのぼることから、省庁横断的な協力や協調を円滑に進めるに当たり、原子力委員会が強力なリーダーシップをとることを望む。
○那須座長より、発言があった。
- 本策定会議における審議は、分科会報告に修正を求めるというより、報告書の内容に関する質疑、並びに、何を長期計画に盛り込むべきかという観点から御意見をいただきたい。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(村上委員)
- 困難な問題等があり、なかなか食品照射に踏み切れないことは理解できるが、日本は規制が厳しすぎることもあり、国際的にみて未だお粗末な段階にあると考えてよろしいのか。
(久保寺第五分科会座長)
- 東南アジアから数多くのスパイスが輸入されているが、殆どの国は病害虫を駆除するためなどに食品照射を採用している。にもかかわらず日本はジャガイモ発芽防止以外の食品照射を実施しておらず、また照射を行った食品の輸入を認めていないため、照射されずに輸入され、水際での検査で問題が発見されるなどの弊害が生じている。日本は食品照射に関しては、全くの後進国といわざるを得ない。
(太田委員)
- 放射線ホルミシス効果とまでは言わないが、低線量放射線の人体影響については、世界的にも研究を推進するとの気運が高まりつつある状況であり、報告書ではどのように位置づけられているのか。
(久保寺第五分科会座長)
- 報告書では、25頁に「低線量放射線ばくに対する生体の適応応答」との項目を設けている、また、大きくⅣ.1.「放射線の生体への影響」において、疫学調査や動物実験のデータを引用しつつ記述を行い、低線量放射線の生体影響の研究を総合的に推進すべきと結論づけている。
(住田委員)
- 子供をもつ母親として放射線教育に大きな関心があるが、報告書38頁に「放射線教育が適切に行われているかどうかは、理科教育が適切に行われているかの指標でもある」とあり、放射線教育が理科教育の中でも重要な位置を占めているとの記述がある。また、先日は「学力崩壊」とのタイトルでの雑誌記事の中で、理科の学力を図る指標のひとつとして、放射線に関する設問が用いられていた。やはり、原子力や放射線を含め、日本の教育はバランスを欠いているのであろうかと感じる。教育の中での放射線の位置づけについて、何か客観的な裏付けがあれば教えていただきたい。
(久保寺第五分科会座長)
- 過去においては、理科及び社会の両方の教科書で放射線が危険であるとの記述がなされていた。一方では、エネルギーに関する記述として、原子力が一定の割合で利用されている旨が記載されており、基礎的用語の定義など、教科書の記述を正しく理解いただくために必要な内容については、義務教育の範囲内で教育を行うべきであろうという趣旨で、報告書を書かせていただいた。
(鳥井委員)
- 放射線医学総合研究所が実施している重粒子線を用いたがん治療は、良い成果をあげているようであるが、そのような日本から始まった良い芽を、何とか工夫して世の中で使えるものにしていく、オリジナリティを大切にしてそれを育てていくとの視点も必要ではないか。
(久保寺第五分科会座長)
- 様々な研究に関してプレゼンテーションを受けたが、高度先進医療ということで文言の中に折り込んだつもりでいる。ただ各論として、個々に提示することはしなかった。国民が広くそのような先端医療を受けられるような体制づくりもしていただきたいとお願いしている。
(鳥井委員)
- 従来、日本という国は、諸外国より遅れていると言えば、予算がついた社会であった。これからは、むしろ進んだところに予算をつけて、支援していくことが重要である。長期計画を作るにあたっては、そうした視点を強く望むものである。
(神田委員)
- 参考資料の中の年表に成功例と失敗例が混在しているが、整理した方がよい。
(久保寺第五分科会座長)
- 付録の図表については、詳細についてさらに推敲する必要があると考えており、その際にはぜひ御協力をいただきたい。また、本第五分科会報告書については、将来小冊子にしたいという希望が委員の中に存在しており、その方向で検討している。
(吉岡委員)
- 付録の年表については、書き手の歴史認識が出てくるものだという印象を受け、面白いと思った。本策定会議でも歴史認識を投影するものとして、年表の作成が重要なのではないかと感じた。
- 放射線をむやみに怖がらずに正しく理解するべきという意見は基本的によいと思うが、本当に怖がる必要がないのか。放射線の研究においては未だ明らかになっていない部分も数多く存在するのではないか。分からないとの部分を強調された方がより良いものとなっただろう。例えば、報告書26頁のホルミシスについても、その原語となったホルモンについては、数年前まではプラスのイメージであったものが、環境ホルモンとの関係で現在はむしろ非常に強いマイナスイメージである。微量化学物質の安全性については、我々は数桁甘く見ていた可能性があり、評価は定まっていない。
(久保寺第五分科会座長)
- ホルミシスは環境ホルモンとは全く異なる概念である。ホルモン様のアクションではないかという意味で最初にこういう名前をつけたが、例えば、あらかじめある線量の放射線を当てたネズミに、肝臓に障害を与える毒物を注射しても、肝障害が発生しないなどの事例をホルミシスと呼ぶのである。低線量の照射が、生体の中で活性酸素を除去する等の生体防衛機能を作動させて、悪い方向に向かうことを防御するきっかけ、いわばトリガーになる、これらの機構を明らかにすることがホルミシスの研究の命題である。
(吉岡委員)
- 微量放射線の影響についてはまだまだ分からない点がある。また、言葉の選び方には注意されたほうがよいのではないか。
- 医療目的の放射線利用についても、それに伴う被曝は必要最低限度内に留めたほうがよいとの記述が一部見受けられるが、もっとしっかり書いた方がいいのではないか。むやみに怖がらなくてもよいが、怖がらなさ過ぎるのはやはり問題である。バランスをとることが重要である。これは、国民がどのような安心感をもつのが適当かにもかかわる重大な問題であり、策定会議でも議論されるべきである。
(河瀬委員)
- 第五分科会の放射線利用の報告について、放射線の利用について理解がなされることは、立地地域としてもイメージアップにもつながると考えている。20年ほど前のアトムポリス構想の実現として、関係者の御力で福井県には若狭湾エネルギー研究センターが設立された。そこには加速器なども設置され、様々な研究が進められることになる。原子力は怖いもの、放射線は恐ろしいというイメージがこういう施設によって変わってくると思う。
- 久保寺分科会座長から報告のあるようにそうした機関が多く設置され、国民の健康管理の増進にもつながっていくことを、立地地域としても期待している。長期計画にこうした視点を取り入れ、国として真剣に取り組む体制ができれば有り難い。
(那須座長)
- 今まで原子力の問題といえば、こういった平和利用への強調が非常に薄かったが、国民生活に貢献する放射線利用としてまとめあげられたことに感謝したい。考えてみると、原子力は、原子爆弾を受けて10年経った昭和30年頃にその平和利用が始まり、当時の日本人は大変強い期待と熱意を抱いたものである。原子力の平和利用にはエネルギー利用と放射線利用の両面が存在するが、前者のエネルギー利用の側面のみが先走ってしまった感がある。策定会議の場において、原子力のエネルギー利用と同時に、放射線利用がこれだけの話題になったということは、その努力に対して敬服しなければならない非常に大きな出来事と考える。全体の責任者である座長として、心から御礼を申し上げたい。
○那須座長より、有意義な報告をまとめて頂き、感謝する旨の発言があった。
(4)第六分科会報告について
○第六分科会の下山座長より、資料3-1及び3-2に基づき説明があった。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(神田委員)
- 第3章の核不拡散について、保障措置と核物質防護については記述があるが、三本柱のひとつである貿易管理について述べられていないのは、抜けではないか。現在、ミサイル、生物化学兵器、核兵器について、貿易管理が行われているが、核兵器分野の貿易管理は日本が最も国際的に貢献している分野のひとつである。核物質が動いても、それだけでは核兵器はできず、技術が動くことが怖いのである。
- CDM(Clean Development Mechanism)とは、自国が炭酸ガスを放出する代わり、他国で、木を植えたり、石炭発電所の発電効率を高めれば、その分が考慮されるとの仕組みであり、ハーグで予定されているCOP6における最重要課題のひとつであるが、ベトナムやタイをはじめ、アジア諸国に関して、こうした問題は議論されなかったのか伺いたい。
(下山委員)
- 貿易管理については、御指摘のとおり重要な課題であり、考慮することとしたい。
- CDMについては議論がなされたものの、CDMそのもののメカニズムが未だ明確でなく、また、地球環境問題に対する原子力の貢献について正式に議論されていないこともあり、報告書に記載するまでには至らなかった。
(鳥井委員)
- 第六分科会に期待していたのは、新たな視点に立った国際展開を考えたとき、日本の原子力技術開発はこうあるべきという方向性を示してもらうことだった。かつて中国の原子力発電所を視察した経験から申し上げれば、中国といった大国の原子力発電所のマーケットにおいて、日本がある程度のシェアを占めることは、情報の確保や日本の安全保障の確保の観点から、非常に重要なことである。そういった視点から、日本の原子力技術開発の在り方を考えていかなければならないのではないか。
- 日本の核燃料サイクルについて、プルトニウム利用の意義を世界に発信すると述べているが、例えば韓国がプルトニウム利用を行いたいと主張した場合、協力できるのか。発展途上国が核燃料サイクル技術を使いたいといった場合に、日本が供与できるような技術開発を進めてきたか。そうであって初めてプルトニウム利用の意義を世界に発信すると言えるのではないか。第六分科会では、国際展開の在り方からフィードバックして、技術開発の方向性について示していただきたかった。今後の議論では、こうした視点も重要であり、各委員にも十分に認識していただきたい。
(石橋委員)
- 1987年の日米原子力協定の際にも、韓国及び台湾の再処理問題について議論がなされたことを指摘しておきたい。
- 報告書の16頁に国際輸送について記述があるが、必ずしも十分ではないのではないか。1982年国連海洋法条約は海洋環境の保護、保全を目的としており、事前の通知と協議の責任がある。条約は我が国でも最近批准されたが、南太平洋諸国の関心と懸念は、むしろ海洋の汚染にあるのではないか。我が国のこれまでの対応は、IAEAやIMOの規則や基準に依拠しているが、もう一歩踏み込んで、こうした海洋環境の視点も取り入れていただきたい。
(下山委員)
- 鳥井委員の御指摘については難しい問題である。アジアの原子力発電計画への対応については、第六分科会で十分議論した結果を報告しているが、策定会議で可能であれば、アジアの問題についても取り上げていただきたい。
- 石橋委員の御指摘もごもっともであるが、報告書ではそこまでの記述は行っていない。
(吉岡委員)
- 日本が核燃料サイクル政策を進める理由と根拠を明確に示すという命題は、第二分科会の課題であるが、必ずしも十分に成功しているとは言えない。それが簡単なことではないとの第六分科会報告書の記述は、正直で適切であると思う。
- 最終の第六分科会会合で、私は従来の長期計画と今回のそれとの基本的スタンスにおける大きな違いについて発言させてもらった。そこで私は、前回までの長期計画は全ての事業を推進するという立場をとり、目標が達成できない場合は目標を繰り延べてきた。しかし本長期計画においては、将来の原子力をめぐる情勢は不確定要素に満ちており、エネルギー選択肢のひとつとしての原子力の評価は可変であるため、柔軟に対応すべきだとまとめるのが適当であろうと申し上げた。第六分科会報告書の53頁の「変えることの出来ないものを受け入れる冷静さと、変えることが出来るものを変える勇気と、そしてその両者を識別する智慧」との記述は感慨深い。この策定会議では、可変であるものと、そうでないものが何であるかについて、集中的に議論すべきである。私としては、可変でないものは、日本は核武装を行わないという一点のみであり、その他は全て可変であると考えている。
(那須座長)
- R.ニーバーという方は、どんな場面で、どのような趣旨でこの発言をなさったのか。
(下山委員)
- R.ニーバーは神学者であって、この発言は神に対して祈ったものである。
(遠藤原子力委員)
- 米国政府の明確な方針として、韓国及び台湾については再処理を認めていない。また、韓国は1992年の南北共同宣言で、再処理と濃縮は行わない旨を発表している。従って韓国については、内外両面から見て、再処理を行うことについて公の場で話題に上ることはないと考えてよい。
(鳥井委員)
- 遠藤原子力委員の御発言は、日本の技術開発は現状の路線で良いとの趣旨と理解してよろしいのか。
(遠藤原子力委員)
- 台湾や韓国への再処理技術の展開は、考慮しなくてさしつかえないとの意味で申し上げた。
(鳥井委員)
- 国際政治は大変短期的視野で変わりうるものであるのに対して、技術開発は30~40年といった長い期間を必要する。国際的な約束事に依ってしまい、技術開発を見直すことをしなくて、果たしてそれでよいのか。日本の原子力が今後世界に貢献していく、プルトニウム利用の意義を世界に対して発信していくと主張するのであれば、世界で広く共有できる技術を開発していくようにすべきではないか。国際展開を考え、それをどのように技術開発の方向にフィードバックすべきかについて、検討する必要があるとの趣旨で発言申し上げている。
(鈴木委員)
- 鳥井委員の御指摘の視点については、報告書25頁の5.(2)①「核拡散リスク低減のための国際的技術開発協力」の項目において、核拡散抵抗性の高い核燃料サイクル技術の開発を行い国際協力に取り組むなどの記述として、既に取り入れられていると思われる。
(5)閉会について
○那須座長より、発言があった。
- 各分科会の座長及び分科会委員の皆様には、長期にわたり審議を行い、報告書を取りまとめていただき、誠に感謝している。
- 分科会座長には、引き続き森嶌座長代理とともに、長期計画の骨子の作成に協力いただくようお願いしたい。
- 次回は、森嶌座長代理に長期計画の骨子を用意いただき、審議を行う予定としている。
○事務局より、次回の会合について、以下のとおり開催したい旨説明があった。