(1)開会について
○那須座長より本日の審議事項などについて、説明があった。
- 本日は、第六分科会座長である下山委員より「新しい視点に立った国際的展開」というテーマで第六分科会における議論について、次に、第三分科会座長である西澤委員及び鈴木委員より「高速増殖炉関連技術の将来展開」というテーマで第三分科会における議論について説明をいただく。
- 続いて、森嶌座長代理より資料「新たな原子力長期計画の構成案」について、説明をいただく。
○ | 那須座長より、日本原子力研究所の理事長の交代に伴い、今回の第8回策定会議から、松浦委員に代わり村上委員が策定会議の委員となった旨紹介があった。 |
○ | 今回策定会議委員となった村上委員より、自己紹介を兼ねた意見表明が行われた |
- 40年前の第一回の長期計画の策定会議で事務局の末席に加わって以来、久しぶりに長期計画の策定会議の場に係わることになった。早く勉強して、いささかでもお役に立てるよう努めることとしたい。
○事務局より、本日の配布資料の確認があった。
(2)新しい視点に立った国際的展開について
○那須座長より発言があった。
- 第六分科会座長の下山委員より「新しい視点に立った国際的展開」というテーマで、説明をいただく。
- 第六分科会では、包括的・戦略的な国際協力のあり方及び国際的な核不拡散の強化に向けた原子力平和利用の展開に関する事項について、検討いただいている。本日は、我が国の原子力平和利用及びプルトニウム利用政策への国際的な理解の確保、核不拡散等の国際的課題に関する取り組み等についてプレゼンテーションいただきたい。
○ | 第六分科会の下山座長より、第六分科会における主要論点について、資料2に基づき説明があった。
|
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(鳥井委員)
- 地球規模でのエネルギー及び環境のセキュリティと、日本のそれらとの関係をどのように位置づけるのかを明確に示すことが重要である。このような視点なしでは、世界に対してなぜ日本が原子力利用を行うのかという疑念を招くこととなりかねない。
(吉岡委員)
- 最近の核をめぐる国際情勢は、前回の長期計画のときと比べて、格段に厳しくなっており、そうした認識を明確に打ち出した点で意義がある。各分科会においても、第六分科会の認識をモデルとして、厳しい状況認識に基づき議論を行うような形で、全体を調整していただきたい。
- 核燃料サイクルとFBRも第六分科会の重要なポイントであるが、それらをめぐる現状も厳しく、例えば、スーパーフェニックスの廃止及びフェニックスの近いうちの廃止なども、事実認識として記述すべきである。
- 日本がなぜ核疑惑を招いているかについては、資料2の1頁に「プルトニウム利用政策の意義、根拠について、海外からの問題意識に対する明確な回答を発信する」とあるが、これが十分に実践されていないために核疑惑が消えないのではないか。プルトニウム政策の合理的な説明は極めて困難であると思うが、それに関して高い説得力のある明確な回答を作り出し、発信することができるかどうかを検討しなければならない。これは第三分科会の最重要課題でもある。
(佐々木第五分科会座長)
- 安全性の観点に関連することと思うが、事故や事故に類することが起こった場合に備えて、健康影響について、その予防、治療のための研究をすることが重要と考える。資料2の3頁の4.(2)と関連して、プルトニウムの生体影響についての研究体制をどうするかにつき、議論していただきたい。
(石橋委員)
- 資料2の1頁のプルトニウムバランスについて、米国が日本のプルトニウム利用について包括的同意を行った際には、1987年に軍備管理軍縮庁(ACDA)がプルトニウムバランスに対し厳格なアセスメントを実施したが、当時から現在に至るまでに大きく状況は変わっている。最近、通産省から青森県に提出された資料には、2010年までのプルトニウム供給については記載があるものの、何に使うかは記述されていない。もんじゅやプルサーマルの計画が不透明な中で、2010年までのプルトニウムバランスについても、第六分科会からの問題提起として、第二分科会でも定量的に検討していただきたい。
(黒澤委員)
- KEDOの位置づけは、核不拡散問題において非常に重要な視点であり、日本の積極的な協力が必要とされているため、ぜひ議論に入れていただきたい。
(長瀧委員)
- 第五分科会の論点の最初に「1.国際社会への貢献:我が国は唯一の原爆被爆国であり、この体験を踏まえた、『主体性をもって、国際的に貢献できる我が国の役割』の重要性を認識すべき。」と書かれているのに対し、国際協力の第六分科会の主要論点では「4.原子力安全と研究開発等に関する国際協力:(3)放射線利用・放射線医学に係る国際協力の中のサブタイトルとして『原爆被爆国として蓄積した知見の国際活用』」として取り上げられているだけで、余りにも差があり過ぎる感じである。放射線の人体への影響については、日本として国際協力の大きな柱として扱うべきである。放射線の健康に対する影響についての日本の知識は卓越したものがあり、これを国際協力に積極的に利用すべきではないか。
- 日本の知見は国際機関に一旦提出され、それが国際機関から関係省庁を通じて日本の法律などに反映されることとなるが、いわゆる縦割り的な状態にあって、国内での連携がうまくとれていないのではないか。健康影響については、日本が国際的な主導権をとれる状況にあり、国際機関の利用も含めて検討する必要があるだろう。
- 放射線被ばく事故に対して、日本がすぐ対応できる体制を整備することも、非常に大きな国際協力となろう。縦割りを解消せよとはいわないが、現在ある体制の中でどうやって国際的な貢献ができるかを、長期計画として考えるべきである。
(神田委員)
- 日本が被ばく国としてのデータを十分に蓄積しているが、例えば被ばく線量推定方式であるDS86の取りまとめにおいても、アメリカの影響が大きかったことと、広島、長崎の市長の強い意向により、外にデータが発信されなかった。それがなされていれば、放射線審議会の議論も適切なものとなっているであろう。日本の知見を世界へと発信するために、国際的な活用を強調していただきたい。
(秋元委員)
- 核拡散問題について、プルトニウムの状態にかかわらず、最終的には燃やしてエネルギーとすることなしには核拡散の危険はゼロとならない。査察の受け入れなど従来の核不拡散の体制を忠実に履行することはもちろんであるが、発生したプルトニウムを完全にエネルギーに変えていくシステムを作り上げることこそが、核不拡散体制に対する最大の国際貢献である。
- 日本が原子力を推進する以上、プルトニウムをエネルギーに変換し、絶対に軍事セクターには使わせない世界をつくるという、最終目標を提示して問題解決を図らなければならない。従来の核保有国の論理の中での言い訳に終始していたのでは、本当の意味での日本のメッセージは明らかにならないだろう。
(下山第六分科会座長)
- いただいたコメントを十分に念頭におきながら、最終報告書に向け審議を進めることとしたい。
- 鳥井委員の質問の主旨を再度確認させていただきたい。
(鳥井委員)
- 日本のみがエネルギーの確保を行っても、国は成り立たない。前提として、世界のエネルギーや環境のセキュリティを考える必要がある。日本の技術は日本国内で使うことを念頭に開発が進められているが、むしろ世界の中での日本技術開発の果たすべき役割を明確に打ち出すことにより、世界各国の理解が得られるのではないか。
(下山第六分科会座長)
(住田委員)
- 資料2の1頁で「非核兵器保有国であることが、国益にかなうことをより強力に発信する」とあるがそれもひとつではあるものの、原子力基本法において原子力の利用は平和利用に限ることを明示して出発したこと、さらにそれは、反対派の方を含め、国民全体のコンセンサスになっていると考えられることから、国益というよりは、むしろここから出発していることを強調するべきではないか。
(3)高速増殖炉関連技術の将来展開について
○那須座長より発言があった。
- 第三分科会座長である西澤委員及び鈴木委員より「高速増殖炉関連技術の将来展開」というテーマで、説明をいただく。
- 第三分科会では、高速増殖炉とこれに関連する核燃料サイクル技術のあり方、方向性、今後の課題に関する事項について検討いただいている。本日は、高速増殖炉と関連する核燃料サイクルの位置づけ、関連技術開発の方向性と進め方について、プレゼンテーションいただきたい。
○第三分科会座長である西澤委員より、第三分科会における議論について説明があった。
- 高速増殖炉懇談会の報告書の主旨でもあるが、FBR利用を簡単に表現すると「燃えかすを活性化してまた燃やす。またそれを繰り返す。」というものであり、ウランを軽水炉で1回利用する場合に比べ飛躍的に利用効率を高めることができる。ウランを効率的に利用できる、また核拡散につながりかねないプルトニウムをどんどん燃焼させることが可能であるという特徴は非常に魅力的といえる。ただ、ウラン価格の上昇が当初予定された程ではなく、経済的にはその優位性は低下している。
- いずれにせよ、将来に向けて、高速増殖炉がいかに有効に機能し得るものか、研究データを採取すべきであり、できるだけ早期にもんじゅにおいて実験を再開する必要がある。これは、一部の少数意見を除き、高速増殖炉懇談会の委員の大多数の共通理解であった。
- 運転技術、経済性の向上、研究開発の方向性の明確化などに向けて実験を行い、知見を蓄積するのがもんじゅの本来の目的であり、実験終了後については今の段階では何も申し上げられない。
- もんじゅの事故は明らかな人災であり、材料強度に関する基礎的な認識を欠いているばかりか、製造会社の指摘を無視して強行したことも指摘されている。原子力では、ロケットなどとは異なり安全係数に裕度を持たせ得るにもかかわらず、こうした事故を招いたことは、技術者としての心構えが欠けているというほかない。
- もんじゅの事故における当事者の負うべき責任は重大であり、学士の「士」の意味する、周囲に迷惑をかけないという基本的な心構えに欠けており、出身大学の責任も大きい。当該者の出身大学にも、その旨を常々訴えている。また、原子力について学ぼうとしても参考書などが十分に存在しておらず、国民が正しい基礎知識を身につけられるような環境を整備することが求められる。もんじゅの運転再開に向けての前提条件としては、以上の二つが挙げられる。
- JCO事故については、メンタルな面で大きな問題をはらんでいるようであるが、社会人としてしっかりとした責任感を養成することが、緊急の課題として求められているといえよう。
○第三分科会座長である鈴木委員より、第三分科会における議論について、資料3-1及び2に基づき補足説明があった。 |
○那須座長より発言があった。
- 今後の高速増殖炉の開発の方向性はどうあるべきか、また、そのためには何が必要かといった観点から審議いただきたい。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(佐々木第五分科会座長)
- プルトニウム利用においては、安全性の確保が最重要であるが、絶対安全は存在し得ないため、万一に備えて、生体影響の研究の推進や予防・治療体制の整備が求められる。備えあれば憂いなしとの言葉どおり、それが国民の不安の解消にも資するだろう。
(吉岡委員)
- 私は、既設の原子力発電所のうち安全なものの存続を認め、かつFBRサイクルの研究も認めており、反対派ではなく、欧州ではむしろ中道あるいは中道右派と位置づけられる。原子力について、歴史的視点で批判的な考察を加えた著書を書いているが、正確な記述であるとの評価を得ている。これからも、国民の正しい認識に資するよう努めたい。
- FBRサイクルについて柔軟性を重視している点は評価しているが、制度的な柔軟性の確保、すなわち民間は参加もできるが離脱もできることが肝要である。FBRサイクルの意義について高い説得力をもつ明確な回答を示す必要があることは、先に述べたとおりだが、資料3-2の内容では、外国の関係者の同意は得られない。これでは日本がいまだに勝手な「定説」を語っていると、酷評されるだろう。また、「FBRサイクルは核拡散につながるプルトニウムをどんどん燃やせる」などと書いたのでは、かえって国際世論を刺激するのではないか。
(西澤第三分科会座長)
- もんじゅについて、予期せぬ危険が認められる場合には即刻中止し、場合によっては廃炉にすることも含めており、柔軟性を持たせている。また、もんじゅは実用の炉ではなく、危険を防止できる範囲内で積極的に実験を行い、破壊するまで条件を厳しくしてやって見るわけにはゆかぬが、測定によって知見を積み重ねて、経済性の向上にも資することができるはずであり、将来の日本のエネルギーの安定供給に向けた指標とするべきである。
(都甲委員)
- 国の長期的なエネルギー政策の一環として、核燃料サイクルシステムの方向性については、国が中心となり長期的な視野の下で、透明性のある場で議論し、政策に反映することが必要である。再処理技術とFBRサイクル技術の確立は、国のセキュリティや環境負荷低減に貢献し、21世紀のリサイクル社会に合致するものであると信じている。
- FBRサイクル技術の実用化に向けては、もんじゅの運転経験を最大限に活用するとともに、実用化調査研究においては短・中期的目標を定め、原子力委員会の評価をいただきつつ、2015年頃を目途にして競争力のある技術を提示できるようにしたい。
(秋元委員)
- FBRでプルトニウムを今すぐどんどん燃やすべきというよりも、プルトニウムを燃やしエネルギーとして利用できるような技術的、社会的環境を早期に整備するため、そのための研究開発、戦略が必要ではないかと提案している。日本では核兵器の完全廃絶も強く目指しつつ、原子力の平和利用を完成するとの立場を明確にしている唯一の国であり、それが日本の国益や世界のエネルギー問題の解決に向けた正しい選択であると考える。こうした日本独自の戦略を立て、世界に発信していくべきであり、欧米などの外国の例に倣うのでは長期計画を策定する意義がないだろう。
(石橋委員)
- 2010年までのプルトニウム発生量については、70〜80トンといわれているが、もんじゅを研究炉として位置づけるとして、需要はどの程度見込めるのか、第三分科会では具体的にどのような議論がなされているのか教えていただきたい。
- 第二分科会では再処理について議論されており、2005年までに800トンウラン/年といった体制で六ヶ所村の再処理工場の操業を開始するとの方針もある。再処理費用が欧州の2〜3倍近くかかると予想されるが、電力自由化の流れの中で、どの程度のプルトニウムをいつ頃までに利用するのか、ある程度定量的な数字が示されるべきではないか。
(鈴木第三分科会座長)
- プルトニウム利用のベースは軽水炉でのプルサーマルであり、プルトニウム需給バランスについては、第三分科会として直接御回答すべき事項ではない。高速増殖炉サイクルについては、柔軟性の確保の観点を中心に議論を行いたい。
(神田委員)
- 資料3-2の5頁の表において、第三分科会の議論の部分で、高速炉サイクルから軽水炉プルサーマルへの矢印がないのはおかしいのではないか。
- あかつき丸での輸送の際に科学技術庁より発行されたパンフレット「プルトニウムについて」には、砒素などと並んでプルトニウムの致死量との表現がある。調べてみると、様々な前提条件や仮定に基づき出された数字であるにもかかわらず、そうした断りもなく、また致死量の定義も本来のものとは異なるものであった。プルトニウムの生物学的な影響についても、今一度整理していただきたい。
(鈴木第三分科会座長)
- プルサーマルについては、第三分科会の議論すべき範囲というより、むしろ、第二分科会での検討課題であると理解している。
- 高速炉サイクルから軽水炉プルサーマルへプルトニウムをまわすことも可能であり、むしろ効率的との指摘については、資料3-2では、とりあえずプルサーマル利用を行い、可能となれば高速炉サイクルにまわすとの基本的な考え方を示したものと理解いただきたい。
- プルトニウムの人体影響については、第三分科会においても議論したいが、現実的にはプルサーマル利用に係る部分が大きいので、第二分科会においてもぜひ議論いただきたい。
(前田第二分科会座長)
- エネルギーとしての原子力に関する議論に時間を取っているが、核燃料サイクルについては次回に議論を行う予定としている。日本としてなぜ再処理、リサイクルを進めるのかというメッセージを発信できるようにしたい。プルサーマルについても、その中で議論されるであろう。
(鳥井委員)
- 核燃料サイクル全体を見渡した議論をどこで行うのか十分に明らかでないが、サイクルとは本来整合性の高い逐次プロセスなどでは有り得ず、本質的に冗長度が必要とされるものである。核燃料サイクルについて、どの程度の冗長度を与えれば有効に機能するのか、またそのために何をするべきかを検討するべきである。
(住田委員)
- 高速増殖炉懇談会に参加した当初は、もんじゅの事故があって、こんな危険なものをなぜ巨額の予算をかけて進めるのかとの素朴な疑問から出発した。第三分科会においても、もんじゅ運転再開に向けた前提として、そうした疑問について整理して示していただきたい。
- もんじゅの運転差し止め訴訟について、先日まだ第一審判決ではあるが、司法判断が出たということで、これについても長期計画の議論において何らかの反映がなされるべきである。本件については、新聞報道においても、不当判決あるいは正当判決と意見が割れたこともあり、国民の中にもよくわからないとの疑問があり、何らかの見解を示す必要があるのではないか。
(久保寺第五分科会座長)
- プルトニウム利用に向けてもんじゅで実験を再開する根本的理由のひとつには、日本の地理的条件があることを、国民にもう一度説明するべきではないか。欧州各国には、何らかのエネルギー資源を持つ国が多く、また持たなくとも地続きであり電気を売買し得るのに対して、日本は島国であり、エネルギー資源の確保のため何らかの基盤的な技術の確保が重要である。
- かつて放射線審議会の議論において、米国では比較的短寿命のガンマ線放出体であるプルトニウム同位体の製造技術が確立されており、日本でも法律において一括りにプルトニウムとせずに、同位体毎に区分して規制し、その利用を進めることにより、プルトニウムの人体影響についての研究も進展するのではと提案したが、議事録にもとどめていただけなかった。プルトニウムの人体影響についての研究は重要であり、ぜひ前向きに取り組んでいただきたい。
(西澤第三分科会座長)
- もんじゅの運転で得られるデータは、核燃料サイクルの可能性を計るために必要なデータであり、もんじゅを動かすことが核燃料サイクルの全体像を明らかにすることに資するものだと考える。
- 本来工業製品の製作においては実際に壊してそこまでデータを取るものであるが、人体や原子炉については壊すわけにはいかず、運転を行いながらデータを収集しこの程度であれば大丈夫との知見を得ていくことになる。もんじゅは実用炉ではなく、実用化に向けて研究開発を進めるにあたり、必要な知見を積み重ねていく第一歩であると考えている。
(河瀬委員)
- 地元ではもんじゅの運転再開について、事故からの時間経過や核燃料サイクル機構への組織改革、また地元説明会の開催の成果もあり、議会の中でもいつまでも停止しておくのはおかしいとの意見も上がっており、前向きな動きも見られる。私は、そうしたプラントは安全・安定運転が重要であり、安全審査を受けることが、地元の安心につながるのではと考えるが、立地県全体では厳しい意見も多い。
- 前回の会合以後、もんじゅ運転差し止め訴訟の第一審の判決の発表や、原子力災害対策特別措置法の下での初めて原子力防災訓練など様々な出来事があった。こうした法律については、備えあれば憂いなしとの観点から設けられているものであり、決して発動のされることのない法律であることを重ねてお願いしておきたい。
- 本日、美浜2号機において、36CC/分の一次冷却水漏えいがあったと聞いたが、微量であり安全性については全く心配していないものの、新聞には大きな事故として取り上げられることになり、風評被害につながるとの危惧を抱いている。こうした風評被害対策に加えて、従来から申し上げているように地域振興についても、ぜひ長期計画全体の取りまとめの中に盛り込んでいただきたい。また、原子力発電所の立地地域振興特別措置法についても、制定に向けて努力していただいているところであり、関係者の皆様におかれてはぜひ御協力をいただきたい。
(3)原子力長期計画の構成について
○那須座長より、発言があった。
- 前回の会合において、長期計画全体の取りまとめにあたり、森嶌座長代理に、各分科会座長の協力を得ながら長期計画策定の議論をするためのたたき台を作っていただく旨お願いした。また各委員には、森嶌座長代理から提出されたメモについて、意見をいただくようお願いしたところである。
- 本日、各委員から書面にて提出された意見も踏まえて、長期計画の基本的な構成について審議を行うため、資料「新たな原子力長期計画の構成案」を準備いただいた。森嶌座長代理からの説明の後、審議を行いたい。
○森嶌座長代理より、資料4-1に基づき説明があった。
- 前回、長期計画の策定についての原子力委員会決定や、各分科会での議論を参考にしつつ、長期計画に盛り込むべき項目等について示した「原子力長期計画についてのメモ」を提出した。
- 本日は、資料4-2に示したそのメモに対して各委員から出された意見を踏まえて、資料4-1「新たな原子力長期計画の構成案」を作成した。
- 資料で示した項目は必ずしも章となるわけではなく、複数の項目がひとつになることや、ひとつの項目が分けられることも考えられ、あくまで主な柱立てを提案させていただいたものと理解いただきたい。
○森嶌座長代理より示された長期計画の構成案の項目は、以下のとおりである。
- 20世紀の原子力の研究開発利用の成果と課題
- 21世紀社会の潮流
- 原子力研究開発利用の意義・役割
- 原子力開発利用の進め方
- 国民・社会と原子力政策の新たな関係
- 国際社会と我が国の原子力政策の関わり
- 国の役割と民間の役割
- 原子力開発利用の将来展開
- 原子力発電と核燃料サイクル
- 基本的考え方
- 国民の信頼と安心の確保の取組
- 立地地域との共生
- エネルギーとしての原子力利用
- 核燃料サイクル
- 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル
- 原子力産業
- 先端的研究開発
- 放射線利用
- 国際対応
○森嶌座長代理より発言があった。
- 各分科会において、順次報告書をまとめていただくが、長期計画の文章については、それらに基づき策定会議として議論を行い、作成することとする。長期計画は、国民にわかりやすくかつ適切な分量の文章として、原子力政策の方向性を示すものとすべきである。
- 分科会の報告書はできるだけ早期に取りまとめていただき、策定会議にて議論を行うこととしたい。分科会報告書は、策定会議に資料として提出されるため一般に公開されることとなるため、そうした認識の上で作成いただきたい。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(妻木委員)
- 実際に原子力発電所の立地に携わる立場として申し上げると、巻町の例のように住民投票に関して困難な問題が発生した場合、国と民間の役割分担はどこにあり、どのように解決するのかについて、記述が欠落しているのではないか。立地の推進に向けて努力を行うべき一員ではあるが、地域住民の声により立地が進まない場合、長期計画に対する疑念につながりかねない。
(森嶌座長代理)
- 策定会議において、立地にかかわる住民合意に関する直接的な意見は出ていないが、地域との共生は原子力行政の最大の問題と考えており、項目「国民・社会と原子力政策の新たな関係」において、地域との共生を図りパブリックアクセプタンスを得ることについて、今後十分な議論を行うこととしたい。
(鳥井委員)
- 原子力の安全が問題となっている現状にあって、何をもって安全と考えるのか、また、国民合意とはどういうものか、生産地と消費地の問題をいかに解決するのか、そうした国民の疑問に対してメッセージが明確に提示されなければ長期計画の意義はないのではないか。長期計画において、国民の疑問に明示的に答えていることが極めて重要な要件である。
- 技術開発は供給者と利用者があってはじめて意味があるのであり、利用者の立場を無視した議論はあり得ない。その観点から、電力自由化は大変大きな問題であり、その分析なくしては原子力の将来は語り得ないのではないか。また、原子力産業を日本としてどのように考えるのかも、重要な問題である。
(石橋委員)
- 第一分科会において、国民合意や住民参画について議論がなされており、報告書においては相当の記述がなされるだろう。
(鷲見委員)
- 資料4-1の2頁において、安全確保における自己責任原則とあるが、自己責任原則は全ての活動に係るものであり、なぜ安全についてのみ強調されるのだろうか。
- 原子力の持つ3つの特色は、エネルギーが膨大であること、放射線の発生を伴うこと、核不拡散対策が必要となることであると考える。原子力は宇宙のエネルギーであり、膨大なエネルギーをいかにコントロールするのかが課題となる。また、放射線を伴うため、安全に配慮し、廃棄物対策を行い、社会の合意を得る必要が生じる。放射線の発生を抑制するよう努めてきたこと、低レベルの放射線の人体影響、国際社会において核不拡散について今後どのように取り組むのか、これらの課題について国民にメッセージを発信しなければならない。構成案はやや難解であり、この3つの面を強調しつつ平易に語りかけることが、国民の理解につながるのではないか。
(太田委員)
- 国民合意の問題などについては、第一分科会で踏み込んだ議論がなされている。長期計画をまとめるため、各分科会では大勢の委員が努力されているのであり、分科会の報告書は十分に尊重していただきたい。
(森嶌座長代理)
- 太田委員の御指摘のとおり、長期計画は分科会の報告を十分に踏まえて作成される。
(太田委員)
- ウラン238を有効に活用する手段については、プルトニウムをもんじゅタイプに代表されるFBRで燃やす方法以外にも、小型炉や金属燃料を含めて多様な方法が提案されている。長期計画において大きな方向性を示していくにあたっては、研究開発の将来をがんじがらめにしないように、様々な方向性を展開できる余地を設けておくべきである。その際の研究開発の評価の方法についても、併せて検討が必要であろう。
- 鳥井委員の指摘は重要であり、膨大な資金と時間が必要な研究開発と、事業化して経済的に成立し得るものと、渾然一体として語られるのは問題である。常に主語を明確にして語られるべきである。
(森嶌座長代理)
- 私は全体取りまとめを仰せつかっているが、各分科会座長などにおかれては、担当部分について御協力をお願いすることとなる。御指摘に関しては、皆様我がこととして認識していただきたい。
(近藤委員)
- 原子力研究開発利用の意義・役割について論じる前提として、国とは何ぞや、国は何のために存在するのか、人類文明のために日本の国が貢献できることは何か、といった視点が必要なのではないか。グローバルな自由な経済活動の中では、この日本列島という地がイノベイションセンターたりえなければ、現在の豊かさを維持、発展していくことはできない。日本がイノベイションセンターであるために必要な要件、エネルギー、資源、技術、何より人材などを確保し整備することこそが国の責任であろう。また、ノルム(規範)としての価値、例えば循環型社会など21世紀に向けた未来の価値体系についても、展望を述べる必要があろう。
- そういった枠組みの中で検討した結果、原子力の果たし得る役割が大きいため、開発推進を行いましょうという結論に至るのであり、国民に語りかける方策として、そうした説明が有効であると考える。国や安全保障や国力といった用語は語感が強いといって嫌われる傾向があるが、国の役割を明確にしないと、国自体が漂流することになりかねない。
- 短期的視点、中期的視点、長期的視点に区分するなど、計画の論理を明確にするべきである。科学技術の将来展開など、時間軸で区切ることにより将来の不確実さが自ずと認識され、柔軟性の確保に大きな貢献が期待できるのではないか。
- 安全の問題については、自己責任のみでは不十分であり、第三者の評価や規制が必要ではないか、規制が何より重要であるという考え方が国際的にも主流である。長期計画の場においては、規制の問題に深入りしないのが不文律なのかもしれないが、少なくともある程度の記述があるほうがわかりやすいのではないか。
(太田委員)
- 従来は自己完結型の核燃料サイクルを目指してきたが、そもそもウラン鉱石を輸入するところからして、自己完結していない。グローバル化の中で、相互依存関係にある国同士で助け合うのが、国際社会の主流の考え方であり、この点も検討するべきである。
- 低レベル放射線の人体影響に関して、ホルミシス効果の研究が進展しつつあり、長期計画においても研究推進の方向性を示すべきである。人類に対する貢献となり、またALAPの原則に基づき必要とされている経済的負担も合理化されるのではないか。
(秋元委員)
- 原子力を選択することは、石油やガスあるいは石炭かといった相対的な選択とは異なり、技術のパラダイムをひとつシフトさせることを意味する。科学や技術の成果により、かつては地上では不可能であった、いわば宇宙のエネルギーが取り出せるようになったとの意義がある。原子力は、エネルギー密度が高い、放射線を伴う、核兵器への転用の危険の3つ側面を持つが、それらの課題を解決して人類社会にシステムとして取り込むことができるか、それに挑戦するかという意味がある。長期計画においては、こうした長期にわたる大局的な視点を示した上で、各論があるべきだと考える。
- 原子力の安全の問題について、原子力も光と影の部分を持ち、近年残念な事故も続いているが、他のエネルギー源と比較してみると、この一ヶ月をとっても、日本で二箇所しかない炭坑のひとつにおいて火災で人命が失われ、また東欧では石炭鉱山での落盤事故で数百人もの死者が発生しているのが現状である。今後も安全確保に努めることはもちろん必要であるが、単位エネルギー当たりでみれば、原子力が安全性に優れていることは、統計的に明らかである。こうしたことが社会に冷静かつ公平に認められるような仕組みを確立することが重要である。
- 原子爆弾は実際に使えない兵器となりつつあり、資料4-1にあるとおり「原子力の影の部分については、人類の英知で管理すること」は、実績として十分可能であり、また今後もその可能性を高めていくべきである。
- 市場主義は、時間的にも地域的にも限定されたある範囲を越えることはできない。新しい技術が社会に定着する過程においては、国の明確な戦略に基づく指導や関与が必要であり、単に市場主義に任せていては進展は望めない。米国の唱える市場主義については、その本質を十分に見極める必要がある。原子力の問題は長期的なものであり、原子力で現在実用化しているのは軽水炉発電とその周辺の一部に過ぎず、そこだけで市場主義を振りかざすべきではないと考える。
(吉岡委員)
- 全体の調整をいかにとるかが、重要な問題である。今まで各分科会の審議を傍聴してきたが、分科会毎に、かなりニュアンスの異なる報告書が出てくるおそれがあり、その調整は本会議で行わなければならない。また本会議の判断が、各分科会と同じになるとも限らない。さらに本会議が報告書案をまとめたあとに国民意見を募集し、その一部を採用した結果、各分科会の結論が否定されることもあろう。そうした場合、各分科会が最終段階で報告書の記述の修正を行う機会をもつことが必要となるかも知れない。なお、前回の長期計画までは、本会議では実質的な審議が十分行われず、各分科会の結論にお墨付きを与える役割に甘んじていたと聞く。今回は各分科会の報告を尊重しつつ、多くの回数をかけて徹底した議論を本会議で行っていただきたい。
- 森嶌座長代理の報告書の構成案には大筋で同意するが、その最初の章では、歴史的な視点を含めた現状分析が行われることとなろう。私は歴史家であり、このテーマは得意なので、ぜひ私にここの草案を書かせてもらいたい。
- 長期計画は原子力関係者の綱領ではなく、国民や国際社会に提示して点数をつけていただくものであるとの観点から、鳥井委員が例示したような基本問題については、ぜひ十分な議論が行われ、明確な回答が示されるべきだと思う。
(長瀧委員)
- 安全の根本は、国民の健康にどのような影響があるかということであり、放射線の人体への影響の検討が重要である。特に低線量の放射線影響の見直しについては、国際的にも真剣に取り上げられており、米国においても原子力の今後の方向性を占う意味で大きく取り上げられつつある。長期計画においても、こうした視点をぜひ取り入れていただきたい。
○審議を受けて、那須座長より、発言があった。
- 長期計画の基本的な構成について、建設的かつ有意義な意見を数多くいただき感謝している。予備日である4月24日には、森嶌座長代理において、骨子の作成に向け論点を整理いただき、それを基に審議を行いたい。
- 本日の議論に関して、時間の都合上十分に御発言できなかった委員におかれては、書面にて事務局までご意見を提出いただきたい。
(3)閉会について
○那須座長より、今後の策定会議のスケジュールについて、資料5に基づき提案があった。
- 原子力委員会から本年末までに長期計画を取りまとめたいとの希望が出されているが、現在の各分科会の進捗状況を踏まえると、資料5に示したような予定で進めていけばいかがかと考えている。
○ | 事務局より、5月から6月にかけて各分科会の最終報告をいただき、次に、7月から8月の間に長期計画(案)を策定し、以降国民の皆様からの意見をいただき、その後は策定会議としての取りまとめを行うとの予定である旨の補足説明があり、了承された。 |