(1)開会について
○那須座長より本日の審議事項について、説明があった。
- 本日は「総合科学技術としての原子力」というテーマで審議を行う。最初に、松浦委員よりプレゼンテーションをいただき、次に、第四分科会の永宮座長より「第四分科会の議論」について、最後に、第五分科会の久保寺座長より「第五分科会の議論」について、説明をいただく。
- これらに先立ち、長期計画の策定に向け、今後の審議の進め方について説明を行いたい。
○ | 事務局より、本日の配布資料の確認があった。また、資料5「原子力政策円卓会議モデレーターからの提言を受けて」及び資料6「今後のエネルギー政策の総合的な検討について」について、事務局より簡単な説明があった。
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(2)今後の進め方について
○那須座長より、今後の審議の進め方について、説明があった。
- 策定会議も今回で7回目となり、分科会の審議も結果を取りまとめる段階を迎えつつある。策定会議としても、今後長期計画全体のとりまとめを念頭に議論すべき段階と考える。
- 分科会の議論も含め、極めて広範な審議内容について、計画の形にまとめるには、議論のたたき台が必要であろう。このため、森嶌座長代理に「各分科会座長の協力を得ながら長期計画策定の議論をするためのたたき台を作っていただきたい」旨をお願いし、基本的に了承をいただいた。なお、森嶌座長代理にお願いするのは、策定会議で議論するためのたたき台を用意することであり、長期計画の内容を議論し、判断するのは、あくまで策定会議自身の責任であることは改めて確認しておきたい。
○森嶌座長代理より発言があった。
- 策定会議、各分科会の議論は膨大であるので、長期計画を議論するため「たたき台のたたき台」的なものを用意するよう指示をいただいた。各分科会座長や、場合によっては座長以外の方の協力もいただいて、策定会議で議論いただけるものを作りたいと思うので、是非皆様の協力をお願いしたい。
- 議論のたたき台を作る上で、前提として論点整理を行いたいと考えており、「長期計画のあり方」や「策定会議で議論、整理すべき事項」について、あらかじめ皆様から意見を伺い、これらを踏まえて、次回以降議論できる形のものを用意することとしたい。ついては、意見を出していただく際の参考に、これまでの策定会議や分科会の審議事項を基に、配布資料「原子力長期計画についてのメモ」として、メモの形にまとめた。本日、この場で意見をいただくより、少し考えをまとめていただき、21日(火)までに書面にて事務局まで意見をお送りいただきたい。
(2)総合科学技術としての原子力について
○那須座長より発言があった。
- 今日、原子力は人類文明の発展と共に、エネルギー源としての役割にとどまらず、工業、医療、農業など幅広い分野で利用され、また、科学技術の様々な分野で貢献している。従って、原子力科学技術が、広い分野に関わる総合科学技術として、どのような役割を担い、また、可能性を秘めているのか、さらに将来どのような貢献ができるのかについて考えることは重要であると考える。
- 松浦委員より、総合科学技術としての原子力科学技術の特徴を踏まえ、その将来の可能性などについてプレゼンテーションをしていただく。
○松浦委員より、資料2に基づきプレゼンテーションがあった。
「人類の知的機能の展開」
- 人類は古来より、対象を要素に分解し、それらを新しいシステムとして再構成すことにより、新しい概念、効用の創出を行ってきた。様々な動物の要素を集めたスーパーパワーのシンボル「龍」なども、その例であろう。微細な要素をいかに精緻に、かつ必要に応じて巨大なシステムにまで構成できるかが、文明の発展のひとつの尺度であり、原子力はそれに成功したある種の典型と言えるのではないか。
- 原子力科学技術は、原子的世界像、微視的世界像に基づく、技術先導型というより科学先導型の科学技術であり、これは20世紀に発達したいくつかの科学技術の特徴である。今後、原子力科学技術は、その内から新しい理念の提示、システムの構築を行う可能性を秘めており、それを追求することにより、知的な存在感を高めていくことが期待される。
「人類文明社会の大転換」
- 狩猟・採集から農耕・牧畜への転換は、自然の生産力に頼る不安定な状態から、人知によって食の増殖を図るという、文明の大発展へとつながる大転換であった。「エネルギー」における原子力の導入は、自然の生産力への依存から脱却し、エネルギーの人工増殖、あるいは膨大なエネルギー源の利用の実現を図るものであり、超長期的に見れば、「食」における牧畜・農耕の導入に匹敵する画期的変革といえるのではないか。
「原子力とは」
- 原子力とは、「核エネルギー」に加え、「放射線」と「放射線、放射能、核反応に関する事項」を含むものと考えられる。ここでいう放射線には、電磁波、イオンビーム、素粒子ビームが含まれる。原子力の特徴としては、超高密度かつ膨大なエネルギーの発生の可能性、放射線と放射性物質の発生が挙げられ、その利用にあたっては、この「両刃の剣」の特性に留意し、利器の活用と凶器の刃止めを行うべく、必要十分でかつ合理的な制御を行うことが不可欠である。
「綜合科学技術の3つの側面」
- 航空機、自動車が、いろいろな科学技術がタテ糸とヨコ糸をなして作られるように、原子力科学技術も極めて広い分野の科学技術成果が綜合されて科学技術体系(システム)を構築している。綜という字は、タテ糸とヨコ糸を交わらせるとの意味である。
- 原子力科学技術の基本的構成要素は、核反応、放射線、放射線と物質との相互作用であり、これらは多くの分野と認識対象、認識手段、作用手段として共通している。また、科学技術の革命的進歩は観測手段の進歩による視野の拡大が契機となるが、レーザー、X線、イオンビーム、中性子ビーム等による観測技術の出現は、微視的世界の窓を大きく開きつつある。従って、原子力科学技術については、その基本的な構成要素すなわち概念、現象、実体が、広い分野にわたる共通基盤であるタテ糸とヨコ糸を成していると言える。
- 原子力科学技術は、システム解析などの計算機科学技術、セーフティーカルチャーなどの安全工学、安全思想、リサイクルシステムの構築、リスクコミュニケーションなどの危険性と効用の比較による判断手法などと、強い相互影響がある。
「原子力科学技術の進展に不可欠な配慮」
- 今後の原子力科学技術の進展には、国内的にも国際的にも社会との調和を図ること、長期的視野に立った研究開発、評価、及び、技術の確実な継承について、配慮することが不可欠である。研究開発に要するタイムスパン、技術発展のリズムと社会的なニーズの動向とは必ずしも一致しない場合があるが、一旦衰退した科学技術システムは回復が極めて困難となるため、その国家・社会にとって長期的に重要性が高いものに対しては、適切な評価と判断を行うことが必要である。
○那須座長より、発言があった。
- 21世紀の社会において、原子力科学技術はどうあるべきか、また、そのためには何が必要かといった観点から議論いただきたい。
○松浦委員のプレゼンテーションに対する、主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(吉岡委員)
- 科学史の専門家として一言コメントしたい。原子力の今後のあり方を考える際には、第二次世界大戦から冷戦終結に至るまでの過去の歴史を踏まえる必要がある。核兵器開発の成功以降、20世紀半ばから後半にかけては、核エネルギー研究開発はもとより、それに関連する核物理や核化学が実力以上に過大に評価され、膨大な予算を投入されることにより急速な発展を遂げた。米国など原子力を別枠として巨額の予算を投入してきた事実があるが、冷戦末期以後には事情は変わり、他の科学技術分野との優先順位をいかにつけるのか、エレクトロニクスやバイオテクノロジーと比較して巨額の投資に見合う効果が得られているのか、といった指摘や疑問を受けている。そうした観点を抜きにして、総合科学技術としての原子力の未来を考えるのは無意味ではないか。
(松浦委員)
- 科学技術の政治的な側面を検討することは、本日私に与えられた課題ではないと考えており、この場で言及することは避けたい。
(鳥井委員)
- 原子力が総合科学技術として、総合的に他の分野を引っ張ってきたのか。どちらかといえば、他の様々な分野に支えられてきた面が大きいのではないか。様々な分野を引っ張っていけるようにするためには、今後どのようなことを検討する必要があるのか教えていただきたい。
(松浦委員)
- 微視的なものの見方、それに基づいて解釈を行うという理念や、その具体的な手段を提供したという点で、広い意味での原子力科学技術は、他の分野を支えてきたと言えるのではないか。ただし、原子力発電については、新しい科学技術として必要とされたのは、核分裂の発見とそのための核データのみであり、その他は旧来の技術を使うことができたと考える。
- 支えてきたか、支えられてきたかとの問題を掘り下げることは、それほど意味のあることではない。むしろ、原子力科学技術の持つ微視的な視点とそこからのシステム構築を、今後の科学技術の推進にどのように役立てるのかとの視点が重要ではないか。
(太田委員)
- 経済的な側面からも見ておく必要がある。近年エネルギー使用量すなわち需要が膨大になり、化石燃料の有限性が目の前に現れつつある。第一次石油ショックであり、石油価格が4倍に上昇した。また、石油価格は第二次石油ショックでは2倍、昨年来の原油価格の高騰では3倍となり、米国ではガソリンの価格が40%上昇するなど大きな影響が現れた。紆余曲折はあるが、大きな流れをたどれば、結局は量子エネルギーをさらに発展させるべきであるとの結論が導かれるのではないか。
- そのための技術開発については、FBR開発などのように60年にも及ぶ長期プロジェクトにならざるを得ないが、原子力開発のニーズと必然性は今後もさらに大きくなるのではないか。
(佐和委員)
- 松浦委員のプレゼンテーションについて、科学先導型の科学技術とは、ニーズ先行型ではなく、まず科学が存在し、それが従来思いも寄らなかった技術ひいてはニーズをもたらすものであり、バイオに代表されるように、今後の科学技術はそうした傾向が大きくなるが、原子力はいわばその先駆け的な存在と言えるとのご主旨と解釈してよろしいのか。
- 科学主導型の科学技術には、テクノロジープッシュ、サイエンスプッシュとの傾向があり、人間が望んでもいないものをもたらし、あるいは押しつける側面がつきまとうのではないか。これについてはどのように考えられているのか。
- 微視的世界像に基づく方法論が広い領域へ展開されたのは、むしろ19世紀から20世紀にかけてのことであると考える。経済学においても、19世紀末に近代物理学の方法論が持ち込まれ、還元論的な理論の構築が始まった。21世紀においては、もうひとつ新しい世界像が構築され、科学を形作るのではないか。
(松浦委員)
- 科学と技術は、互いにスパイラルに影響し合っており、科学先行とはいえ技術が進み微細な加工が可能とならなければ科学は進歩せず、それが可能となることで新しい世界が見えてくるということがある。
- 従来の原子核物理学では解決のつかない問題が幾つも存在している。新しいカオスや複雑系の科学が、どのように科学の進歩につながるかは現在議論されている最中であり、原子力科学技術がこれらの新しい科学に対して、いかに役立つかに注目したい。
(近藤委員)
- 総合科学技術としての原子力という観点はどうも理解しにくい。確かに原子力の特徴として、政府が極めて大規模な投資を行い、科学の成果について、様々な科学技術を動員してその実現化を行ったという点は挙げられる。いわば、ある工学的着想の実用化のために大量の投資を行い、諸科学技術を動員するという、プロジェクト型の研究開発の成功例と言える。ただ、最近の論調としては、直線的な発展を前提とするアプローチは誤りではないか、また、20~30年先に要求される技術を予測するのは困難であり、実用化については常にマーケットの声を聞くべき、市場競争に参入する意欲のある企業家がいる場合にのみ実用化研究開発に投資すべきではないか、といった指摘もなされている。
- 総合科学技術としての原子力といって閉じた物語としてのサクセスストーリーを語るよりは、むしろ、我々が新たな時代に向け、こうした経験から何を学ぶか、政策論的な観点からの分析結果を語るべきではないか。米国などでは予算が少ないこともあり、どういう研究開発課題にどれだけ投資するのか大きな論争を呼んでおり、どれだけの投資が合理的か、受け皿としての科学技術組織はどのような目標をもって研究を進めるべきか、真剣な議論がなされていることを指摘したい。大学は最近基礎研究重視ということもあり、現在多くの研究開発費をいただいているが、20年後には果たしてどのような評価がなされてるのか戦々恐々とし、こうした教訓を勉強することも重要であろう。
(鳥井委員)
- 動燃の研究開発やその成果が、世の中にどのように生かされてきたか調べたことがあるが、もう一工夫すると様々な分野で使えるというものもあるが、材料にしてもある温度範囲しかデータを採取していないとの理由で生かされなかったという事例などが見られた。総合科学として支えようとするのであれば、様々な分野で応用できるようにする努力が必要である。従来の研究開発には孤立的な傾向が見受けられ、それを今後いかに取り払うかが課題となろう。
(千野委員)
- 社会との調和を図るべきとの結論には賛成する。また、一般論として、技術の確実な継承が重要で、一旦衰退した技術システムは回復が困難ということも理解するが、FBR開発を推進すべきか否かなどの議論もあり、社会的なニーズの動向により今は進める必要がないと判断された場合、その技術をフリーズするということは、どのように可能なのか。それともあり得ないのか。また衰退したシステムを回復することは可能なのか。具体的にイメージできるような説明をいただければ有り難い。
(松浦委員)
- 過去の例として、例えば日本刀の鋼の技術はかつては非常に進んでおり、金属学的にすばらしいものであったが、需要がないこともあり、現在日本刀を作る技術はほとんど残っていない。一度衰えると、その回復は困難であると聞いたことがある。身近なところでは、実験に使うガラス細工や分析の技術などについても、次々人を育てていかなければ、ノートに書いた内容で伝えることは非常に困難である。技術のどの分野においてもそれに類する例は見られるであろう。
○那須座長より、発言があった。
- 第四分科会では、加速器、核融合、研究炉等の先端的な研究開発の推進方策、及び我が国全体としての研究開発体制のあり方に関する事項を中心に、検討いただいている。本日は、第四分科会の永宮座長より、「未踏分野への挑戦」と「持続可能な発展」という観点から、先端的科学技術としての原子力のあり方、研究開発の意義等、これまでの審議の内容について、説明をいただく。
○第四分科会の永宮座長より、第四分科会における議論について、資料3に基づき説明があった。
- 検討目標とこれまでの検討項目は、以下のとおりである。
①先端的・総合的科学技術としての原子力
- 原子力は多くの分野で知的、技術的リーダーシップを担ってきたが、今後は、基礎科学の分野との接点を密にした、裾野に広がりを持つ未来像が求められるであろう。本分科会では、これからの原子力科学技術の在り方に焦点を当て、その幅広い可能性を追求し、議論、検討することとする。
- 基礎科学の分野との接点については、そもそも中性子や核分裂の発見の歴史からもわかるように、西欧ではエネルギー、原子力と基礎科学とは密接な関係を保ちつつ進展してきたが、日本では戦後、基礎科学の人間から原子力は敬遠されており、矢内原原則などに見られるように、原子力と基礎科学は区別されてきたという経緯がある。今後基礎科学の分野との接点を密にすることなしには、将来の新たなエネルギー開発は不可能ではないか。
- 今後の原子力科学技術は、世界におけるリーダーシップを発揮することが求められており、世界に発信しうる先端科学技術の領域とは何か議論することとする。
②未踏領域への挑戦
- 原子力の先端技術開発では、光、荷電粒子、中性粒子源の開発等により新たな研究の展開が可能となるため、その手段として、加速器よりの放射光、中性子、荷電粒子などが切り拓く科学を検討し、特に「見る」、「極める」、「創る」との観点からの技術分析を行った。さらに、研究開発の意義、将来展望、国際競争力等の観点からも議論を行った。具体的には、SPring-8からの放射光、原子炉からの中性子のみならず加速器からの中性子などを取り上げた。
③持続可能な技術の発展
- 環境との調和、エネルギーとしての可能性、安心して使える技術という観点から、技術をレビューし、将来の可能性を検討する。特に、核融合の研究開発、研究炉、中小型炉の3つを取り上げ、研究開発の動向、将来展望、国際競争力等の観点から議論を行った。
- 議論の視点と展開(今後の作業)については、以下のとおりである。
- 今後何が重要かを大きな枠組みでとらえ、細部に亘った議論よりは大枠の議論に主眼を置くこととする。
- シーズ開拓型とニーズ先行型、テクノロジープッシュとデマンドプル、科学としてのロマンと技術としての完全性、着実な成果等のバランスをどこに置くべきか検討することとする。
- オリジナリティ、意義、国際競争、経済的効用、発展性、文化的・学術的貢献度等の観点から、検討項目にある程度のPriorityをつけることとすべきと考えている。
- 国全体としての研究体制の在り方、特に、大学・研究所等の役割、連携、産業界との結び付き、国際社会における役割等を議論する。また、巨額の研究費を使うからには誰が最終的な責任を持つのか、大型プロジェクトにおけるリーダーの育成方策も真剣に検討することとしたい。
- プロジェクトの実施においては、曖昧ではなく明解な評価活動を行い、さらに、なされた評価をいかに反映させるかという方策を確立することが不可欠である。
- フロンティア科学技術の継続的発展のため、技術を社会の中に構築する方策についても検討を行う。
- 21世紀の日本の科学技術について、国際社会での役割、リーダーシップ、推進方法等の検討を行う。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(草間委員)
- 総合科学技術としての原子力には、必ず光の部分と影の部分がある。従来の長期計画とは異なり、今回の長期計画は影の部分をしっかりと見据えたものにするべきである。先端技術としての原子力の場合、潜在的なリスクが非常に大きいのではないか。松浦委員のプレゼンテーションにおいて、食の増殖とエネルギーの増殖は同じとの説明があったが、この点は大きく異なると思う。原子力については、その実施の段階で、国民の参加をどう考えていくかを真剣に検討することなしには、長期計画も絵に描いた餅となってしまう。国民の参加をどのように図っていくか、各分科会で検討していただきたい。
(永宮第四分科会座長委員)
- 地域との共生など、国民の参加は重要な問題と考えている。
(鳥井委員)
- 原子力は、どちらかといえばテクノロジープッシュで進めてきた。その場合逆に重要となるのは、営業の努力である。一方、ニーズ先行型で進めると、自らの技術力が一番重要となる。原子力の世界では、あるもののみを考えて、ないものを考えなかった。テクノロジープッシュでいくと営業、すなわちアプリケーションの強化が重要であり、ニーズ先行型で進めるなら、自らの技術力の範囲を把握することが必要である。従来の原子力には、その視点が欠けていたのではないか。
(住田委員)
- 日本は21世紀においても科学技術立国も目指すということは賛成であり、原子力の多様な可能性を強調されるのはよいとして、専門用語が多用されることには混乱をきたしている。
- 大きな原子力予算を使うから、説得力のある様々な目標を掲げなければならないという考え方は本末転倒であり、本来は日本や世界に貢献できる科学技術を開発するために、可能性の検討や応用技術の実用化のプランがあって、始めてその計画に適切な予算が配分されるべきではないか。
- 原子力開発に多大な予算が費やされたことは無駄であるとは思わないし、今後も続けていただきたいが、原子力において、日本の自動車などにみられるような、洗練され欠陥のない良い製品が、本当に作られてきたのかとの疑問がある。
- 原子力や宇宙開発において、どうして、温度計が折れたり、窓がとれたりといった、どちらかといえば周辺の部分での欠陥が生じるのか。原子力では物を作るときに、優秀な人が中心部分にのみ集中し、脇がかたまっていないのではないかという気がする。その結果、全体として信頼性が得られてなくなってしまう。大風呂敷を広げるのも結構だが、一つずつ地道に作り上げるべきではないか。原子力のみならず、関連する部分も含めてシステマチックに製品を作るという方向に向かうべきであり、今のままでは夢ばかり追うようで現実との乖離があまりにも大きい気がしてならない。期待しているがゆえに、あえて苦言を申し上げた。
(鷲見委員)
- 原子力には、エネルギーと核物理すなわちミクロの世界の科学という、二つの道があったのではないか。これは人類が初めて手にするものではなかったか。
- 研究開発においても社会性を考えることは鉄則であるが、立地地域の人々に原子力について尋ねれば、必ず心配だという答えが返ってくる。ところが消費地では不安など感じることなく、どんどん電気を消費している。立地地域と消費地での意識の差は大きい。本来、日本中どこでも、原子力発電所を設置し、電気を供給するのが理想であるが、社会的な問題がある。
- 東京でも理論的には大型原子力発電所は建設可能であるが、耐震設計上困難な面があり、そこで中小型炉という発想が登場するのであろう。中小型炉については、スケールメリットが働かないため、単純化、マスプロ化や発展途上国への輸出を図ることにより、コスト低減を図るべきであろう。
- 発展途上国への輸出については、核不拡散という問題があり、燃料取替不要なシステムとすることなどを目指すべきあろう。中小型炉の目指すべき方向性についても議論していただきたい。
(神田委員)
- 武蔵工業大学や立教大学の原子炉は首都圏にあるが、私学であり国の十分な支援が得られないため、閉鎖に追い込まれようとしている。従来果たしてきた役割や今後のポテンシャルを考えれば、新規に設置するより、これらにてこ入れして維持する方が、地元の受け入れや予算的にも有利ではないか。その点について踏み込んで議論してほしい。
- インドでは、核不拡散条約の外の国として、世界で唯一ウラン233の利用を推進しており、研究炉から発電炉まで実用化してきている。ロシアや米国では、インドの研究成果について、追従試験を行っているが、日本は指をくわえて見ているのみでよいのだろうか。ウラン-プルトニウムサイクルを推進するとの国策に反するとの理由から、トリウム-ウラン233サイクルの研究開発を進めると大きな声で言えない雰囲気があるが、研究開発としてウラン233の核データを整備することぐらいは必要ではないか。言いたくはないが、高速炉に失敗すれば、ウラン233に頼らざるを得ない場合がないとも限らない。エネルギーセキュリティーの観点上、ある種の保険的な要素でもよいから、研究の場所を国内に設けていただきたい。
(佐和委員)
- 2ページ目下の「文化的原子力フロンティア技術の推進」とはいかなる意味か教えていただきたい。
- 原子力で発電するのは、バターをノコギリで切るようなものであり、適正技術論の立場から見れば、不適切ではないかとの指摘に対してはどう考えられるか。
(近藤委員)
- 原子力研究開発は、今動いているシステムや技術のメンテナンス、長寿命化を図り、それらを効率的に利用するための短期的視点に立った活動、将来の様々な可能性を提案する長期的視点に立った活動、それらの中間に位置する設備更新時に導入すべき新実用技術を開発する中期的視点に立った活動の三つに区分される。それらに、なぜどういうバランスで研究開発投資を行うべきかという戦略的な議論を行うことが必要である。今問われているのは、美しい物語ではなく、むしろ適正なコストの議論であろう。
- いかに自由経済に基づくといっても、マーケットはあくまで技術を取り引きする場であり、技術を生み出すのは、賢明なる政府の長期的ビジョンに基づく、人、技術、インフラ整備の三要素への投資である。このことを踏まえて我が国の将来の国力を確保することに、原子力分野での研究開発が貢献できるところを明らかにするべきである。
- 研究開発を進めるにあたっては、原子力内外の基礎から応用にわたるネットワークを構成し、相互学習を行うことにより、開発資源の効率的な運用を図るべきといった観点の様々な分野の議論もいただけるようお願いしたい。
(那須座長)
- 第四分科会の審議は今後も継続するので、本日の議論や指摘を踏まえつつ、より議論を深めていただきたい。
- 国策を作るためにここで議論していると認識しており、国策に反することも言っていただき、それも議事録にとどめ、どのように結論づけるか検討していただきたい。
- 人間は知恵をつけるにつれて、人間のためになる良いものばかりではなく、多くの命を奪う巨大な兵器をも作るようになった。科学の進歩に伴い、両方の可能性が現れるが、いかに人類の役に立つ方向へ向けていくかという前向きの議論を行うべきであり、悪しき可能性があるからやめるという主張はおかしいと考える。それも国策であるとすれば、国策として議論を行い改めていくべきであろう。
(永宮第四分科会座長委員)
- いただいたご指摘は全て参考にさせていただき、今後の議論に反映させることとしたい。
○那須座長より、発言があった。
- 第五分科会では、国民に身近な放射線利用のあり方、及び推進方策に関する事項について検討いただいている。本日は、第五分科会の久保寺座長より、「国際社会への貢献」及び「放射線利用の現状と問題点」という観点から、説明をいただく。
○第五分科会の久保寺座長より、第五分科会における議論について、資料4に基づき説明があった。
- 我が国は唯一の原爆被災国であり、この体験を踏まえ、主体性をもって、国際的に貢献できる我が国の役割の重要性を認識しつつ、論議を行うべきである。
- 本分科会では、身近な生活の中で放射線がどのように利用されているか、またその問題点を議論すべく、医療、産業、農業分野で幅広い利用がなされている実態について、プレゼンテーションしていただいた。さらに、利用と防護・安全管理の調和、国際的な動きとの調和についても、議論をいただいた。
- それらを踏まえて、放射線利用が国民社会に受け入れられるとことが課題であると考える。既に受け入れられていること、これから受け入れられるべきことを整合性をもって示すべきであろう。
- エックス線の例に見られるように、放射線の利用は、発見当初からその光と影の両面を我々に示してくれている。そのプラス面、マイナス面を明確にしながら、いかにプラス面を引き出し、マイナス面を抑えるかについて、議論を行うべきである。
- 受益者としての視点から放射線利用をとらえ直すとの試みや、国民に受け入れられる前提としての青少年に対する放射線教育のあり方も、論点として挙げられる。
- JCO事故を契機とした国民の不安の増大に対して、どのように取り組み、また対処すればよいのか、検討を行うべきである。特に、原爆被災国である我が国には、低線量放射線の健康影響について膨大なデータが存在しているが、こうした知見を積極的に国外へ発信することはなされていなかった。今後、我が国が国際社会においてどのような貢献ができるか、検討すべきであろう。
- 放射線利用については、医療への利用、工業利用及び環境保全への利用、食料の安定供給に区分され、これらに関連する項目として、放射線の健康影響、放射線防護に関する研究、国際協力、海外支援や国際貢献が挙げられる。
- 医療利用は、放射線の利用と放射性物質の利用に分けられ、双方とも治療と診断に区分できる。診断は原因を的確に見分け適切な治療を可能とするため非常に重要であるが、近年には放射性薬剤を用いた苦痛を伴わない診断が可能となり、また、放射線医学総合研究所において重粒子によるがんの治療が行われるなどなど、国民生活に大きく役立っている。
- 放射性薬品は厚生省が管轄しているが、年商600億円規模の市場があり、年間約300万人がその恩恵を受けている。非密封の放射性同位元素の9割が医療用に使われており、その内9割が、約6時間の半減期の核種であるTc-99mである。技術的な目処はあるものの、国内の供給はなされておらず、現在はカナダから輸入している。これは、今後の核医学の発展のために大きな問題ではないか。
- いずれにせよ、今後患者に苦痛を与えない診断と治療を目指すべきであり、放射線診断はその方向に着実に進展していると考えられる。問題点としては、医師、薬剤師、パラメディカルと呼ばれる従事者の人材不足や、法的規制における臨床試験の困難が挙げられる。また、使用する物質により管掌省庁が異なり、医療法、薬事法、放射線障害防止法といった異なる法律に基づく規制を受けるという、多重規制の問題があり、より管理に難儀をきたすこととなっている。これらの点が、今後関係省庁の努力により改善されることをお願いしたい。また、放射線を業として扱う、医師、薬剤師、放射線診療技師などに対する放射線教育が十分に行われているか、ライセンスを与える関係省庁においてもう一度見直しを行っていただきたい。
- 食料の安定供給のために放射線がどう使われ、何が問題かを議論した。問題として、ウコンを例に、現在同じ物質を輸入しても使途により法規制が異なることを資料にまとめている。
- より問題なのは、日本は原爆被災国であり放射線アレルギーが強いために、現在食料安定供給に役立つ照射食品は、唯一ジャガイモが認められているのみだということである。近年日本でも多用されるスパイスは、寄生虫が多いため放射線照射して発展途上国から欧米に輸出される。しかしながら、唯一日本は照射を認めておらず、寄生虫の卵のついた状態で輸入し、くんじょう処理などをしているが、それにより価値が下がるなどの問題が発生している。厚生省などは放射線は全て駄目だとの姿勢ではなく、安全性と危険性を見極めた上で何が必要か考えるべきではないか。また、食品照射の研究者が底をついているということが非常に大きな問題点である。
- 放射線育種については、相当昔の食糧事情が悪い時代に、例えば稲の品種改良などがなされており、既に解決済みである。その当時農水省と厚生省の間の綱引きなどがあって、省庁間の様々な課題も残っているようだが整理するべきであるとの発言もあった。
- 放射線の工業利用は、おしめから自動車部品に到るまで幅広く導入されているものの、放射線のお世話になっていることが国民の目に見えてこない。放射線が行っている貢献を見ていただけるようにする必要がある。
- JCO事故に関連し、被ばく線量が1mSv/yという基準を超え、1.1や2となると放射線被ばく者とみなすべきかとの論議もある。今後様々な議論を行う必要があるであろう。
○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。
(太田委員)
- 技術開発は、利用可能な物理現象が発見され、いわば技術の種が見つかったとき、その用途や必要性に応じて実施される。原子力の必要性があることから、より安全かつ有効に利用するための研究開発が行われている。研究開発については適切な評価を行ってきており、無駄な事をやっているとは思えない。これは、国も民間もおなじである。
- 原子力船「むつ」やもんじゅの問題では、設計ミスが原因である。このことで、日本の技術はだめだとの判断を行うのはいかがなものか。社会に致命的な影響を及ぼしてはいけないが、不具合が起きればそれを改善していくのが試験研究である。もちろん好ましいことではないが、商業化されたものではない研究段階での施設で、仮にトラブルが発生したとしても、温かい目で見守っていきたいと思う。技術開発は試行錯誤の繰り返しで成果を出していくものである。
(神田委員)
- 第五分科会で食品照射が議論されているのはうれしいが、がん治療のひとつである中性子捕そく療法が論点として欠落している。この方法は、武蔵工業大学で99の実施例があり、現在300名以上の治療例がある。JCO事故で中性子は危険なものだという意識が広がったが、その中性子でがんを治すということで注目され、新聞各社の取材を受けた。中性子はそのエネルギーによって人体に対する影響が異なり、低いエネルギーでの中性子はがん治療に非常に有効であって、特に転移がある場合に圧倒的な力を発揮している。日本で始まったこの方法は、米国、EU、フィンランド等、現在5カ国で行われている。この中性子捕そく療法は中性子のもつイメージを変え得るものであり、ぜひ欠落しないようにお願いしたい。
- もうひとつ抜け落ちているのが、中性子ラジオグラフィーであり、通常のエックス線の分析とは逆に、重い金属は透明となり軽い水素が写るので、工業界で使われている。原研のJRR-3は世界一の素晴らしい装置であり、もう少し中性子線の利用をクローズアップしていただきたい。
(久保寺第五分科会座長)
- 粒子線の中に陽子線、中性子線を含めており、決して外した訳ではない。
- 1W級の原子炉が、終戦直後に晴海で展示されたことがあるが、その際昭和天皇がチェレンコフ光をご覧になった事実がある。チェレンコフ光が見えるということは、国民の方に原子力を理解していただく上で非常に重要なことであると考えている。研究炉の火が消えないように努力していただきたいと願っている。
- 中性子回折については、DNAの水素解析を含め次回に議論される予定である。その際の報告にも、世界に発信する日本の技術として、詳細に取り上げられることとなるであろう。
(吉岡委員)
- 唯一の原爆被ばく国との表現は使うべきでない。それは第五分科会だけでなく長期計画全体に言えることである。日本は、軍事利用では米国と協力しており、かつ民事利用では世界で最も原子力利用を積極的に推進している、いわば核愛好国でもあるからである。日本人は決して核アレルギーではない。日本は唯一の被爆国であると刷り込むような教育を子供に行えば、原爆はを絶対悪であるという固定観念がつくられて思考が停止し、核軍縮の現実的な議論を世界の人々と力を合わせて進めることが不可能となる。また、日本のプルトニウム利用が世界に脅威を与えるといった側面の理解が出来なくなりかねない。
- 放射線利用のプラス面とマイナス面の両方を指摘するのは適切だが、資料4の図にプラス面ばかりが描かれ、マイナス面が描かれていないのは問題である。マイナス面を資料に明示することが必要ではないか。
- せっかく国策を議論しているのであるから、単に放射線利用の促進を唱えるのでなく、まずい点をどう改めるかを重点的に議論するべきである。例えば、日本の放射線治療が欧米に比べて普及していないと言われているが、医局内で外科がのさばっており放射線科の立場が低いなどの問題についても、具体的な検討を行えばどうか。
- 資料4の食中毒に関する記述では、消費者に責任を押し付ける傾向が見受けられる。行政機関あるいは事業者の方が、むしろ最近の食中毒増加傾向について責任があり、制度の整備を含めて議論すべきではないか。
- 低線量被ばくについて、最近の原子力関連機関のパンフレット等では、50mSv以下の被ばくの影響は確認されていないと書かれているが、これは誤解を招くのではないか。過去の日米共同の原爆効果調査によれば、それ以上の被ばくをした者だけを調査しており、50mSv以下の被ばくについては、データ自体が存在しないのではないだろうか。影響が確認されていないのは当たり前で、それを指摘する意味がないと考える。低線量被ばくについては、様々な仮説があるが、安全側に立った影響評価を行うべきである。
(西澤委員)
- 太田委員の発言について、大切な仕事であるから多少の失敗にこりずに推進するとの主旨には賛成だが、もんじゅの失敗は相当深刻なものであり、それを暖かく見よといわれると、国民の感情としてはカチンとくるであろう。当事者が、特権階級意識にとらわれ、自らの非を認めて反省することをしないと、今後もトラブルは増加していくのではないか。国民に正当に理解していただくためには、非は非として率直に認める姿勢が不可欠であろう。
(竹内委員)
- 第五分科会においては、放射線の利用が様々な分野で広く行われていることを、国民に大きな声で言っていただきたい。国民は、放射線、放射能について、いわゆる日のあたるものと、事故などの不安をよびおこすものを、全く別のものと考えてしまっている。放射線に対する理解が不足しており、天然の放射線でも悪いものと考えることさえある。こうした認識を改める必要がある。
- 特に、低線量の被ばくについては、数字や単位について一般の人は理解できないために、大きいのか小さいのか分からない、出たか否かだけが問題とされてしまう。例えば、動燃のアスファルト固化事故では、線量は天然の地域差の何分の一であり、全く影響のないレベルであったが、報道では大きく取り上げられてしまった。ぜひ国も含めて放射線のバックグランド教育の充実に努めていただくようお願いしたい。
(草間委員)
- 第五分科会では、放射線利用と放射線影響を区別して議論しないと混乱をきたす恐れがある。医療利用以外の放射線利用は被ばくを伴わないものであるが、それを明確にしなければ、被ばくを伴わないものまで被ばくが起きるかのように誤解されてしまう。
(木元原子力委員)
- 消費者、利用者側への教育はもちろん必要であるが、例えば、放射線利用をしている企業の側に、「タイヤに対して照射していると説明してないのか」と聞くと、「消費者の理解がなされていないため誤解を招くので、今の段階では言えない」との答えが返ってくる。企業の側への教育についても、ぜひ充実していただき、「放射線を利用しているが全く安全です」「放射線を照射して非常に強度が増しました」などと、企業に放射線を利用しているという事実を隠さずに言っていただける環境をつくってほしい。
(長見委員)
- 第五分科会では、利用者を招いてヒアリングを行うようお願いしたい。また、資料4の第2頁の表については、日本の現状と展望とあるが、両者を明確に区別して記述する必要があるだろう。
- 放射線技術をよく理解されている方が議論されているので、メリットが強調されている傾向がある。食品照射については、もう少し慎重に説明を行うべきではないか。遺伝子組み替え食品などは、やや無理押しして性急に導入したため、逆に不信を招き、苦況に陥っている現状がある。遺伝子組み替えと食品照射とは同じものではないが、最初の提示のやり方は一方的であってはならず、慎重に提案しないと受け入れられないであろう。
- 工業利用、医療利用などは、メリットが明確であるため、どのように利用されているのかもっと提示していただきたい。しかし、食品照射については、何故必要なのかという観点が十分に明確ではないため、まず事業者が利用に二の足を踏んでいるような状況である。また、導入された際には当然その旨を製品に記載することが求められるであろう。そうした事情を十分に理解した上で議論を行い、それらを報告書に反映すべきである。
(太田委員)
- 放射線ホルミシス効果については、どのように扱われているか。また、報告書には反映されるのか。
(久保寺第五分科会座長)
- 広島、長崎での被ばく者の調査や米国での動物実験の結果などについて、報告をいただいており、低線量放射線に対する生体応答は全くないのではなく、むしろあると言われている。報告書への反映については、委員の方々と相談して決めたいと考えている。
(太田委員)
- 直線仮説やALAPの原則では、被ばく線量はなるべく低い方が良いとしているが、そうすることには限界もあるため、申し上げた。
(久保寺第五分科会座長)
- 環境基準を設定する基準は、10万人に1人の発がんのリスクが発生するとの確率論的評価に基づいている。世の中で2千種類以上の発がん性の化学物質が知られているが、それらのうち幾つかについては、環境基準の設定にあたり直線理論を採用している。それでベンゼンは1ppmを環境基準としているが、だからといって2ppmを吸入しても必ずベンゼン曝露腫になるわけではない。環境基準において別個に、どの程度吸入すればどのような症状が現れるか、明確に記載している。
- 放射線についても、将来はベンゼンなどと同様に、「環境基準の1mSv/yについてはこういう根拠で決めたが、一方、広島、長崎の被ばく者の調査結果解析からはこの線量ではこういう障害は発生しません」との二本立てで、説明を行うべきであろう。1mSv/yだけで議論を行うと、世の中は混乱をきたすのではないか。
○審議を受けて、那須座長より、発言があった。
- 本日の議論を踏まえ、第五分科会で、より議論を深めていただきたい。
- 本日の議論に関して、時間の都合上十分にご発言できなかった委員におかれては、書面にて事務局までご意見をお送りいただきたい。
(3)閉会について
○那須座長より、次回の審議の進め方について、説明があった。
- 次回は、第三分科会「高速増殖炉関連技術の将来展開」及び第六分科会「新しい視点に立った国際的展開」における議論について、説明をいただく予定としている。
- 次回には、今後の長期計画策定に向けて、議論のたたき台を作っていただくよう、森嶌座長代理にお願いすることとしたい。
○事務局より、次回の会合について、以下のとおり開催したい旨説明があった。
第8回 日時:4月7日(金)14:00~17:00
場所:KKRホテル東京「瑞宝」