第1回長期計画策定会議 議事概要
1.開催日時:1999年6月2日(水)8:00〜9:30
2.開催場所:赤坂プリンスホテル「紺青」
3.出席者
委員: | 那須座長、森嶌座長代理、秋元委員、秋山委員、石川委員、石橋委員、稲盛委員、太田委員、長見委員、桂委員、金井委員、神田委員、熊谷委員、近藤委員、佐和委員、下山委員、鷲見委員、住田委員、竹内委員、妻木委員、都甲委員、鳥井委員、長瀧委員、西澤委員、松浦委員、吉岡委員 |
原子力委員: | 有馬委員長、藤家委員長代理、依田委員、遠藤委員、木元委員 |
科学技術庁: | 青江原子力局長、今村長官官房審議官、坂田政策課長、森本原子力調査室長
森口動力炉開発課長、土屋核燃料課長、青山廃棄物政策課長、
内藤長官官房審議官、千場原子力安全調査室長 |
4.議題
(1)座長の互選について
(2)原子力研究開発利用の長期計画について
(3)その他
5.配付資料
6.議事の概要
- 原子力局長より、原子力委員会決定の紹介、資料の確認があった。
(1)座長の互選について
- 近藤委員及び松浦委員より、那須委員を座長に推薦したい旨の発言があり、各委員より賛意が示され、那須委員が座長に選任された。
(那須座長就任のご挨拶)
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「座長:那須 翔 東京電力会長」 |
- 戦後50年を経て、我が国の経済社会システムは大きな変化に直面している。このような中、国民の幅広い理解と信頼を得ながらどのように我が国の原子力政策の方向付けをしていくか多角的な視点からの検討が求められる。今回の長期計画は21世紀を展望した時に、極めて重要な役割を持つものと認識する。
- 来世紀のアジアの人口増加、地球環境問題等を考えると、我々の来世紀のエネルギー供給に本当に不安はないのかどうか、我々は来世紀の子孫のためにきちんとした準備をしているのかどうか、今更のように思う。米国での原子力に対する新たな動き、IEAの動きその他の全世界の動きとしても今後原子力を含めたエネルギー問題へのコンセンサス作りがグローバルな課題になっている。
- アイゼンハワーの国連総会での「atoms for peace」の演説は、被爆国日本においてもエネルギーの桎梏を解くものとして世界中から熱い眼差で認められ、それを嚆矢として世界で系統的な平和利用が進められた。
- 原子爆弾を受けた日本でさえ、原子力の平和利用というものがいかに我々の血を沸かしてくれたか今更のように思い出される。もう一度原点に立ち返って21世紀が再び熱い眼差しで希望をもって原子力を迎えてくれるようなビジョンを描いていくことが来世紀の人々への努めである。よって、今回の長計は夢のある、しかし地に足が着いたビジョンにしていきたい。
- 那須座長より森嶌委員を座長代理に御指名
(有馬原子力委員会委員長よりのご挨拶)
- 現在の長期計画の策定以来原子力を巡る情勢は大きく変化している。
- 一連の事故、不祥事等により国民の不安感、不信感が高まったことについて原子力関係者は肝に銘じなくてはならない。
- 地球温暖化対策としての原子力の役割が再認識されている。
- 医療をはじめとする放射線利用の広がりと未来の研究開発の展開にも最先端を行く者として大きな期待が寄せられている。
- 冷戦構造の崩壊に伴う国際情勢の変化や近年の国際的な経済情勢の変化に応じた展開が求められている。
このような中、原子力に求められる基本的な理念を再認識し、研究開発利用の全体像と長期展望を明らかにすることが求められている。
- 太陽光発電など新エネルギーは絶対に進めるべきと考えるが、本策定会議では、現実的にどれだけのエネルギーを賄えるのかなど、他のエネルギーの特徴等をよく検討した上で原子力の必要性や位置づけを明確にしていくといった基本的なところから議論されることを期待している。
- また、策定に当たっては審議の透明性の確保や国民の意見聴取を行うことなど、民主的な手続きにより国民に信頼が得られるよう努めていく必要がある。
- アジア全体の人口増加、工業化で、2050年に食料とエネルギーについて危機に瀕しないようにすることが必要である。
- 省庁再編が予定されている2001年1月までには策定したいと考えている。
(2)原子力研究開発利用の長期計画について
- 各委員より長期計画策定に当たっての御意見をいただいた。
- 環境政策に携わった経験によると、原子力利用に対しては、国民の中に異論があり、十分な理解が得られていない。欧州において原子力から漸次撤退するという動きも踏まえ、なぜ日本で原子力利用を進めなければならないか国民に理解してもらう必要がある。そのためには新エネルギーの位置づけを明確にすべきである。
- 循環型社会への転換に関し、不景気にもかかわらず増大しているエネルギー消費を前提とするのか、それとも社会構造の転換を視野に入れて原子力の位置づけを検討すべきなのか、議論すべきである。
- 私は水力派、火力は即時撤廃すべきとさえ考えている。
- エンゲルスは科学技術が人類を救うであろうと言ったが、今こそ、その時ではないだろうか。
- 従来の長期計画は供給側の計画という側面が強いが、これは改めるべきである。
- 21世紀の文明の存続のためには原子力は欠かせないが、社会的受容の動きは遅々としている。循環型社会の立場での原子力システムは未だに完成しておらず、21世紀に向けて供給側と需要側が一体となって考えていく場として欲しい。
- 一般に長期的展望、計画を考える際には、自己充足的な考え方が参考になる。これは、こうあって欲しいという将来像を描くのと、淡々とこうなるだろうと予測するのと二面性をもつ。この場では、前者に重点を置いて、未来を開拓し将来の成果を確保していくよう努力しなければならない。
- エネルギー利用、放射線利用に加え、先端科学技術の開拓及び幅広い分野とのコミュニケーションが重要である。
- 審議の内容が、どのような表現で国民に伝わり、理解していただけるのかが重要な課題である。例えば、安全だと強調するのではなく、本来危険なものだがそれを技術の力で十分に防護することができるという、逆算的表現も必要である。
- 21世紀に向けてと言いつつ、関係者の多くは、昭和62年、平成6年の長期計画の頃の思いと夢を色濃く残している。プルトニウム利用、「もんじゅ」と六ヶ所再処理工場の問題については、時のアセスの適用が必要であり、またその時期にきている。
- 原子力委員会のあり方も併行して論議すべきである。
- 化石燃料は将来の材料等への活用のために残すべきである。原子力については、安全神話を前提とするのではなく、どうすれば安全に利用できるのか丁寧に説明するとともに、太陽光発電など再生可能エネルギーの開発に最大限の努力を払うが、それでもなお文明社会の存続には原子力が必要なのだという説明を行うことが必要である。
- 原子力を取り巻く状況は大きく変化しつつあるが、原子力はエネルギーセキュリティの確保、温暖化対策に大きな役割を果たしており、またすそ野の広いシステム技術であって工業技術力の向上にも寄与している。こういった観点から、基幹エネルギーとして長期的視点からとらえるべきである。
- 軽水炉の継続開発、信頼性、経済性の向上を進めるべきである。また、使用済燃料処分対策、放射性廃棄物処分対策の条件整備を早急に行う必要がある。
- 長期的視点では、経済性に優れ、発電炉と原子燃料サイクルとの整合性のとれた高速増殖炉システムの開発が必要である。実用化を目指した基礎基盤技術開発については国が主体となった取り組みを期待するとともに、官民一体となって開発を行っていく仕組みを検討する必要があると考える。
- 国会などで議論し、国民の合意を得た包括的エネルギー政策の下で原子力を推進して欲しい。また、長期計画の策定に当たっては、関係者だけでなく広く国民の意見を聴取して欲しい。
- 基本理念と実行計画は明確に区別し、実行計画については複数の選択肢を設け、適時チェックアンドレビューを行うことにより、ローリングできるような柔軟性を持ったものとして欲しい。
- 原子力については、表現の貧しさ、独特の用語、安全神話型の情報提供といった問題が挙げられる。また、地球環境との調和の視点から、放射性廃棄物とプルトニウムの増大を危惧している。こういった点を長期計画の中で解決していかなければ、国民の理解と共感は得られない。
- 品種改良においては、遺伝子組み換えと放射線育種によってこれまで大きな成果をあげている。21世紀の食料とエネルギーの確保が大きな問題である。
- この分野も原子力と同じように消費者からは反対の意見もあり、市民との対話を抜きには存在し得ない。
- 科学技術に対する国民の信頼が失われつつあり、科学技術そのものの内包するリスクを正当に評価するとともに、国民に対する表現方法について議論していきたい。
- 前回の長期計画策定時からの経済構造改革、独立系発電事業者(IPP)等電力の自由化等の変化を踏まえて、産官学の役割分担を明確にしていく必要がある。
- 基礎に戻って、原子力を他の分野へ応用を広げていくことによる寄与についても議論してもらいたい。
- 3年前からエネルギー政策学の教授になり、これまでと違って原子力について外部から見ることができるようになった。
- 外部では、必ずしも適切でないと思われる議論もなされており、その点も踏まえて議論を深めていきたい。
- 社会的受容性の観点からも、エネルギー問題全体の中での原子力発電を議論していかなくてはならない。
- 長期計画策定の前提として、考え得る主要なエネルギー源及び各種発電方式について、徹底的に比較評価することが必要である。
- 我が国のエネルギーシステムを100年単位で科学的根拠に基づいた議論をしていく必要がある。
- 長期計画として、短期的には軽水炉の経済性、安全性の向上を目指すことが中心となるが、長期的な視点からは新エネルギー等の様々なエネルギーとの競合を踏まえた議論が重要であり、その議論の中で原子力もこれらに負けないものにしなくては必然的に敗退していくことになる。
- 自己責任を原則として、原子力固有の特徴に踏み込んで分析しなくてはならない。
- 政府のこれまでの計画立案手法とは相反するが、日本もようやくエネルギー増加を伴わない経済成長の可能性も考えられるようになってきており、それも踏まえた議論が必要である。
- 電力自由化と原子力の問題に関し、IPP等電力自由化と原子力の推進とは共存可能かについても検討が必要である。
- 温暖化防止に対する原子力の寄与であるが、原子力が対策コストとして最も安価なのかについても、数量的な検討が必要である。
- アメリカの原子力政策の転換に関する報道等もあり、改めて世界の潮流について的確な評価が必要である。
- 時間的視野をどの程度考えるかについても、整理する必要がある。
- これまでは、原子力に携わる者は原子力の側からしか考えない、国内への視点に偏るといった傾向があった。今後は特に、日本とアジアとの関係もどう議論していくかが課題である。
- 理念と具体的計画を分けなくては、個別の計画の問題で理念そのものが疑わしいものと思われかねない。
- リスク対応や選択肢を設けることも検討が必要である。
- エネルギー全体の中での原子力を考えなくてはならない。
- 高速増殖炉(FBR)を含んだ、大きな原子燃料サイクルの問題を今後検討していただきたい。
- 電力自由化の中で経済性についても議論しなくてはならない。
- 原子力は社会的存在であり、透明性、地域共生が重要である。
- 宇宙の根源のエネルギーは原子力であり、人類はやっとこれを利用できるようになった。このエンジニアリングを大事にしていかなくてはならない。
- 原子力関係の審議会に初めて参加した時、最初は、脱原子力の流れではないのか、もっと新エネルギーを推進しないのか、専門家は都合良く進めているのではないか、といった疑問を抱いてたが、議論を深めていくにつれて原子力の必要性が理解できるようになった。しかしながら、国民はこのような素朴な疑問を今も持っている。策定会議ではこの疑問に答えるとともに、国民からの意見をもらえるような会議にしていきたい。
- 今後日本は少子・高齢化社会になる。長期計画においてもしっかりと勉強していきたい。
- 長期計画を現実的で実効性のあるものにしていきたい。また、議論の内容を社会にオープンにしていき、国民一人一人が核燃料サイクルを自分の問題として受け止めるような意識改革につながる議論にしていきたい。
- 廃棄物処分のような幾世代にもわたる超長期的な問題では、民間だけではやっていけず、国の安全担保が必要と考える。
- 今後電力業界は、電力自由化による競争時代に取り組んでゆかなければならない。
- 長期計画は誰のためにあるのか、原子力は電気事業で働く者にとってどれだけ荷物になっているのか、その点の議論を正確に伝えるように努力してゆきたいと考えている。
- 最近はオイルショックを知らない世代が増えてきて驚いている。日本の資源の状況とエネルギーの重要性について伝えていきたい。
- 昨年動燃は、新たな経営理念と基本方針を持ってサイクル機構として再出発した。それに沿って中長期事業計画を策定し、東海再処理工場や「もんじゅ」の運転再開、高レベル廃棄物処分に関する2000年レポートの策定などに努力している。
- 長期計画策定後には、サイクル機構の中長期事業計画を見直すこととしている。
- 狭い視野で考えると原子力の役割は低下しており、不要だということにもなる。日本のみならず、世界の問題に貢献するといった視点で考えていくことも必要である。
- 長期計画策定に当たっては、若い世代との対話のメカニズムが必要である。
- 技術と社会との関係が変わって来ている。社会が技術に合わせる時代から、これからは社会の要望に技術が応えていく時代になる。
- 長期計画の策定に当たっては、今まで原子力に大きな投資をしてきたが、それに捕らわれることがないようにすべきだ。
- 科学的調査に基づく、放射線の人体に対する影響の研究は日本が世界の中心である。どのように日本国民に正しく伝えていくかを考えていきたい。
- 日本の核アレルギーの大半は健康に関するものである。放射線に対する健康影響の問題は真正面から取り上げるべきだと考える。また、そのような問題を取り上げる時には、省庁の枠を超えて取り組んで欲しい。
- 長期計画を議論していく時、放射線利用や教育の問題も含めて原子力関連の科学技術を広い視点に立って考えて欲しい。
- 核拡散抵抗性のある原子力システム開発に関しては、日本がトップランナーとなり得る。この観点から世界への貢献を議論していきたい。
- 現時点では核燃料サイクルの実用化路線から撤退し、技術を凍結保存すべきである。軽水炉では新増設を凍結すべきと考える。これらの問題については、選択肢を立てて、科学的に検討していくべきである。
- 次回の策定会議では、原子力委員会の長期計画策定に当たっての基本的考え方について策定会議がどのように受け止めるか、従来の長期計画策定の歴史的な反省に立って今回の長期計画の基本性格をどうするか、制度改革に関する分科会の設置するなど分科会の構成をどうするか、の3点について議論するよう提案する。
- 録音テープによる記録の保存や、詳細議事録の作成が必要である。
(3)その他
事務局より、出席いただけなかった澄田委員及び千野委員から意見をいただいた旨紹介があった。また、次回の策定会議を、7月2日(金)8:00〜10:30に開催する方向で調整したい旨発言があった。
以上