2000年10月7日(土) 13:30〜17:35
繊協ビル(福井県福井市大手3-7-1)
豊嶋 美代子 | 福井市くらしの会会長 | |
吉村 清 | 高速増殖炉など建設に反対する敦賀市民の会代表委員 | |
粟野 明雄 | 自営業(福井県) | |
中村 融 | 無職(兵庫県) | |
北條 正 | 敦賀市議会議員(福井県) |
萩原 冨士男 | 会社員(福井県) | |
渡辺 三郎 | 原発問題住民運動福井県連絡会代表委員 | |
菅野 幸雄 | 元公立高校理科教員(福島県) | |
小木曽 美和子 | 原子力発電に反対する福井県民会議事務局長 | |
石黒 順二 | 福井県原子力平和利用協議会事務局長 | |
児嶋 眞平 | 福井大学長 | |
(敬称略、意見発表順) |
栗田 知事
- 本県は、15基の原子力発電所が立地し、国の原子力政策およびエネルギー政策に多大の貢献をしている。この発電所の立地に際しては、「安全性の確保」、「住民の理解と同意」、「恒久的福祉の実現」の三原則を基本に慎重に取り組んできた。
- 「もんじゅ」の事故などにより、県民に原子力に対する不安・不信感が高まり、県のイメージの低下があり、非常に残念である。
- 原子力発電は、重要なエネルギー源として確固たる役割を果たしているにもかかわらず、電力の大消費地において、その意義や必要性、安全性等について正しく理解されず、立地地域の痛みが理解されていない。
- 「もんじゅ」の事故もあり、平成8年に、福島、新潟の両県知事とともに、三県知事提言を行い、この提言を踏まえ、原子力政策円卓会議が開催され、モデレータから有意義な提言が行われた。
- 長計案の策定では、これらの提言を踏まえ、また、審議の過程で外国のエネルギー政策の転換、JCO事故が起こったことにより、原点に立ち返り、広範、多岐にわたる議論が行われたことは評価している。
- 本日の意見等について十分審議し、形式にとらわれず取り入れるものは取り入れ、国民とともに策定したといえるようものにしていただき、今回の長計が、21世紀における我が国の原子力政策のビジョンとなり、国民の理解が深まるようなメッセージになることを期待する。
- MOX燃料のデータ不正が原因で停止しているプルサーマルの問題、「もんじゅ」の問題、敦賀発電所の増設計画、高経年炉や廃炉、地域の恒久的福祉の充実など、さまざまな課題を抱えており、安全性確保、国会内外の様々な場で議論されるなどの国民合意の形成、地域振興の充実について、内閣総理大臣を先頭に政府の総力をあげた取り組みが必要であると考えている。
豊嶋 氏吉村 氏
- 原子力は総発電電力量の40%近い比率を占めており、今後も電気文明を享受するのであれば、発電コスト、二酸化炭素の削減という観点から原子力発電にたよらざるを得ない。
- いろいろ問題があるから止めようという事ではなく、如何にうまく運転し、次のクリーンな自然エネルギーにどうつなげていくかが課題である。
- 周囲を海に囲まれた日本はパイプラインと送電網で結ばれたEU諸国間のように、石炭・天然ガス資源の活用や、電気が足りなければ隣の国から輸入という訳にはいかない。
- 連立政権成立後のドイツは原子力発電を廃止という方向にしているが廃止時期は明確ではない。
- 太陽光・風力といった自然エネルギーの効率よい活用と燃料電池などのエネルギーの開発を世界のエネルギー開発の潮流を見失わずに急がねばならない。
- ごみの固形燃料化による熱源も視野に入れ、無限にある生ごみの熱源としてのリサイクルは環境美化と循環型社会の構築にも寄与する。
- 環境問題やエネルギーの重要性を若い世代に伝えていく事も大きな課題であり学校教育、家庭教育、地域活動の場を生かすよう長計案の中に入れて頂きたい。
- JCOの臨界事故により明るみに出た国の原子力に対する安全施策の無さと、安全とは程遠い対応の仕方に強い不信感と不安感を持っている。
- オフサイトセンター設置を目玉とした「原子力防災特別措置法」等安全対策に期待していた矢先、建設の大幅な遅れが発表された。また既に設置された5ヵ所の中には、最も多く原発を抱える福井県が入っていない。
- 行政や技術者が事故処理をコントロールできる体制と、現場に精通した専門的知識をもったスタッフが遠慮なくものが言える体制を整えることも長計案に盛りこんで頂きたい。
- 国民への情報公開については、長計案にあるように迅速かつ正確に行って欲しい。
粟野 氏
- ウラン供給に余裕がある現在では、核燃料サイクルの意義はなく、すでに核燃料サイクルが破綻しているにもかかわらず、従来路線を堅持する方針が維持されているのは、残念かつ疑問である。
- 「もんじゅ事故」を契機に情報は公開されるようになったが、一番知りたい内容については隠されたままである。
- 耐震設計の基準を適宜見直すこと、また詳細を公開することが必要である。
- 「もんじゅ」は地震に弱いといわれているが耐震基準を引き上げ、その耐震性を見直すべきである。
- 現行の長計ではFBR(高速増殖炉)とATR(新型転換炉)が中心だったが、ATRの実証炉計画はその後すぐに開発断念に追いこまれた。「もんじゅ」もATRの二の舞になるのではないか。
- 立地の前後では敦賀市を除いて各市町村とも人口が減少しており、原発は地域振興に寄与していない。
- 欧米でのFBR開発からの撤退は、経済的、政治的理由以外に、技術的な問題もある。
- 台湾は廃棄物及び経済的理由から撤退している。このように他のアジア諸国も取りやめとしているのに、なぜ日本だけ取りやめられないのか。
中村 氏
- 長計案において、プルサーマルの意義・必要性として、余剰プルトニウムを持たないこと、ウラン燃料、プルトニウム燃料の有効利用、再生利用等が挙げられており、現行の長計と、何ら変わっていないと認識している。
- プルサーマルは国策として実施することになっているのに、事業者任せになっているのは不満である。
- 高浜町民の国策に前向きに協力していこうという姿勢に対して、国はどのように答えてくれるのか注目しているが、我々の心をスッキリさせてくれるものが今回の長計案に不足している。
- 高浜発電所のプルサーマルに対して、安全性は当然基本であり、データ改ざんなどは起こらないようにするべきであるが、具体的にどのように実施していくのか、方向を早く出されることを希望する。
- 防衛、食料、エネルギーは国が当然責任を持って実施していくべきである。小資源国かつ島国という日本の条件を考えると、原子力という純国産のエネルギーを使うのは当然である。
- 事務局についても民間企業に委託するのではなく、国に直接やっていただきたかった。
- 今回の長計案で、国民の原子力への理解のための環境整備が要求されているのは評価できる。
- 国民はセンセーショナルな報道に左右されず、冷静かつ客観的に様々な情報を判断できるようにならなければならない。
北條 氏
- 今度の長計には具体的な数値が書き込まれていない。具体的な数値を書き込まない、書き込めない事情や、解決できない問題があちこちにあるのではないか。
- 核燃料サイクルはプルサーマル利用が中心のように書かれているが、核燃料サイクルの要はプルトニウムを増殖する高速増殖炉のはずである。
- FBR開発においてセラミック燃料とナトリウム冷却で実用化は不可能であることは原子力先進国の世界的な認識である。
- 再処理は湿式ではなく、コストが1/10であり安全性も高い乾式再処理でおこなうべきである。
- 「もんじゅ」による、高速増殖炉開発は不可能であるから、今後の資金投入などは無駄である。高速増殖炉技術の研究だけならば、「常陽」で十分である。
- 「もんじゅ」はその危険性から廃炉にすべきであり、その再開は長計案から削除し、それにあわせて再処理施設建設も削除していただきたい。
- プルサーマルのメリットは、唯一、余剰プルトニウムを持たないことだけであるはずだが、すでにイギリス、フランスなど国外に20トンもの余剰プルトニウムが生じており、これからプルサーマルを進めても余剰はなくならない。また、プルサーマルは安全余裕を切り詰めることにつながる危険性があり、なんのメリットもないから中止すべきである。
- 原子炉級プルトニウムはMOX製造過程での被ばくの防護が困難なことからも資源とは考えず廃棄がのぞましい。
- 今の原子力利用は核拡散と表裏一体でもあり危険性がゼロでなく、コスト的にもCOP3の要請にも応えられないのであるからやはり「段階的脱原子力」を政策化して対応すべきである。
- これまでの長計は、原子力発電の安定供給により石油問題などのエネルギー危機の回避、技術開発、産業の発展などに大きな影響を与えてきた。今回の長計案を見ると原子力長期計画の意味合いが薄れてきたことを痛切に感じさせられた。
- 今回の長計案では、これまでを反省し、専門家だけでなく、多様な意見が集まった反面、骨太の政策と実現に対する情熱が失われ、また欧米の動向を参考にするといった「調整型」の案になっており、分かりにくく、明確な戦略性は読み取れない。
- 日本は、東アジアの地政学的な位置付けやこれまでの歴史、安全保障なども考慮した骨太のエネルギー政策の中で、原子力の位置付けを明確にすべきである。
- 長計案では、原子力発電を「基幹電源として最大限活用する」という基本姿勢を示しているが、なぜ自信をもって計画が描けないのか。国民感情や世論を意識しすぎるあまり中途半端なわかりにくい長計案ではないか。
- 国として方向性や時期を明確にすること、選択肢の明記などが必要ではないか。
- 適宜、適切な間隔で評価を行い、柔軟性をもって、長計を見直していくことが必要ではないか。また、国会で議論をしながらその方向性を定めていくことも必要ではないか。
- JCO事故などをみると原子力における教育不足を感じる。骨太の長計をつくり、国の意志を明確にすべきではないか。
《策定会議からの説明および質疑応答》
森嶌 座長代理
太田第一分科会座長
- 長計案について、具体的数値目標が欠け、時期・プロセスが明確でないとのご意見をいただいた。これは今回の長計案では、第一部においてどのような考え方で長計について議論したかを述べるとともに、国民の原子力への不安、不信に答えること、国民・社会及び諸外国へのメッセージとしての役割を重視したことによるものである。
- 第二部では、それぞれの分科会で議論されたことを基に基本的な方針を明らかにしている。
- エネルギー源としての原子力は、我が国の基幹的なものとして位置付け、現時点ではエネルギー源の一つの重要な選択肢とした。また、将来の状況の変化に応じて適時適切に見直し、その時点で最も良い選択ができるようにしている。
- 具体的な数値等の記述は、分科会の報告書には記載されており、ご指摘のように、腰が引けている、隠し事があるというわけではなく、長計本体は骨太なものとした。
- 三菱総研は、科学技術庁の人員が少ないことなどもあって事務作業を委託しているだけで、あくまで事務局は科学技術庁が担当している。
近藤第二分科会座長
- 長計案は日本における原子力利用の基本方針をはっきりと示そうという方針で議論した。
- 長計は5、6年間は改められないが、数値を設定してしまうとその信憑性が問題となることを危惧し、数値目標を設けないことを基本とした。
- 原子力を正しく理解してもらうために、教育の専門家からもご意見をいただきながら検討を進めた。学校においても「総合的な学習の時間」を利用していただくこと、その際用いる教材についても検討を行った。
- オフサイトセンターについては、JCOの事故を教訓に設立が決定された。センターの設置に際しては、詳細な設計について見直しを行った結果、作業が少々遅れている。
- 地域振興については、福井県の昭和40年における立地4市町村の人口合計を100とすると、現在は117まで増えており、県全域の伸びより高い。
- 原子力施設の立地を契機に地域が発展していくようなビジョン、振興策を検討する必要があり、電源三法交付金なども実態に合わせて見直しながら進めていくこととしている。
鈴木第三分科会座長
- エネルギー選択については、再生可能エネルギーなどについてもメリット・デメリットなどについて専門家からもご意見をいただき、長計案に反映させた。
- 中長期的にはさまざまなエネルギーの活用を考えるものの、再生可能・新エネルギーは分散型電源としては有効であるが、しばらくの間は水力を除き電力供給としては補助的な役割と言わざるを得ない。
- 欧州と異なり、日本は島国のためエネルギー政策の考え方も異なる。
- 民間活動の占める割合の増大、エネルギーの市場経済化の流れも踏まえて国と民間の役割を検討した。原子力開発利用において民間のメリットを最大限に生かしつつも、民間の事業は短期的な利益活動が中心になりがちであることを踏まえるべきである。一方で国は安全規制、循環型社会など新しい社会の実現、防災対応、研究活動の支援などの役割を担うべきである。
- 地震については立地の際、断層がないことを確認しつつも、断層があると仮定した耐震設計をしている。
- 循環型社会を目標とするためには、核燃料サイクルの整備を図ることが合理的であり、また、これまでの知見を踏まえれば、まず、プルサーマルを実現することが合理的であるとしている。
秋山委員
- 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクルは、長期的な観点から不透明な将来に備える技術的選択肢として位置付けられる。これを放棄することのリスクも大きい。
- 省資源の観点からFBRが重要であり、柔軟かつ着実に進めることが重要である。MOX燃料、ナトリウム冷却方式の「もんじゅ」はさまざまな方式を評価する上でのベースとなるものであり、早期の運転再開が必要である。この点は、円卓会議、新円卓会議などでいただいたご意見ももとにした。
- 「もんじゅ」は発電プラントとしての性能を実証することが使命であるが、多様な技術的可能性について実規模で試験できることから原型炉を超えた役割も期待している。
- 高速炉について本質的な技術的課題のために、各国が開発を中止しているとは理解していない。その証拠に中国やロシアでは着実に研究を進めている。
- ATR実証炉とFBR「もんじゅ」とは位置付けが違う。ATRは民間事業でプルサーマルと競争関係にあるが、「もんじゅ」はその次の段階の技術であり、国の計画である。
- 核兵器解体に伴う余剰プルトニウムをどうするか、という国際的課題に対しては、高速炉の特徴としてプルトニウムを消費することが可能であることから、「もんじゅ」の成果は核軍縮にも貢献できる。
北條 氏
- 小型分散型炉等、次世代軽水炉については、炉の規模、方式にとらわれないで多様な方式を検討することを長計案に盛り込んだ。
中村 氏
- 初期の原子力長計は戦略的であったと思うが、今の長計案には戦略性がない。原子力委員会は原子力政策のアクセル、安全委員会はブレーキの役割を担っているがアクセルの視点が欠けているのではないか。
- 再処理事業などは、民間、事業者の取組みだけでは衰退していき、人材が減っていく。実際、技術者が減っている。国による計画策定、支援が必要である。
吉村 氏
- 長計はエネルギー政策の一環と位置付けられるので、エネ庁との連携を取って欲しい。
- 大型原子炉をつくようなことはやめて、中小型炉の方向で検討して欲しい。
- 廃炉も盛り込んで欲しい。
粟野 氏
- ロシア、中国では高速炉開発を行っているというが、技術的な問題がFBR先進国であるフランスでも顕著になっていることをよく検討してもらいたい。
- ATR実証炉は原子力委員会では推進する立場であったものの、事業者の方で中止することになった。この点について十分反省し、長計案に盛り込んで欲しい。
- 地域振興は、バラまきである。電源三法交付金にさらに上乗せして一般会計からも金を出すのでは、事業者、一般国民は納得できるのか。
- 原発がなかった時代と今の人口を比較すべきである。昭和40年では、原発立地はすでに決まっていた。敦賀市でも空洞化が進んでいる。電気料金が安いにもかかわらず大企業はやってこない。大企業がやってこないのはデメリットを考慮しているからではないか。
吉村 氏
- 例えば高浜では人口は増えており、立地により人口が減少するとの指摘は当たらない。
- 公益性と市場経済とのバランスを考えてもらいたい。
豊嶋 氏
- 人口についてはちゃんと調べて発言している。
- オフサイトセンターの設置については、もっとしっかりとした計画を立ててから公表すべきである。再設計が必要なプランのまま発表するのは、民間からみれば考えられない。
萩原 氏渡辺 氏
- 大飯町では昭和44年、原子力発電所の誘致を決議した。しかし、その後の歩みは順調ではなく、町外からの原発反対運動に巻き込まれ、町内も賛成・反対に二分された。昨今起こっているリコールや住民投票条例請求も、大飯町ではすでに経験している。しかしながら、これらの困難を克服し、今では日本有数の大飯発電所ができている。
- 過疎化の緩和、農業・工業の整備、CATVの整備、総合公園の整備などが行われ、地域との共生について一定の成果を遂げてきた好事例である。
- しかしながら現在の延長線上に我が町の繁栄を望むのは困難であり、地域経済の構造転換に向けた支援策の充実を要望する。地域社会との共生のための費用と電力事業者のコスト削減努力との両立を図る方策を考慮すべきである。
- 減価償却資産の耐用年数の見直しや、電源三法交付金の使途や、恒久的財源確保の問題など、国には努力してもらいたい。
- 他地域との交流なしにこの地域の発展はありえないので、公共交通網の整備をお願いする。優先的かつ継続的な投資をお願いする。
- 大飯町では将来に向けて若者が定着する豊かな町づくり「若狭大飯マリンワールド計画」を推進している。国においてもこのような地域の発展について目に見える形で支援をしていただくことを望む。
菅野 氏
- 長計案に示されている原発設置の推進、「もんじゅ」再開は多くの国民の考えとは違うのではないか。福井ではこれ以上の原発設置を望まない署名や「もんじゅ」不再開の署名が人口の1/4にも及んでいる。
- 「原発に不安を感じる」との声はどの世論調査でも圧倒的多数であり、ドイツの原発全廃方針をはじめ、アメリカやカナダ、ヨーロッパの各国では原発を減らす方向に向いている。
- 今日の原発は、いつ、大きな事故を起こすかわからない。ひとたび地震が起これば、配管等の欠陥が一挙に顕在化する。大地震と過酷事故の同時多発は起こり得る。
- 現行の耐震設計は、阪神大震災のレベルに照らし合わせれば落第点となる。
- 長計案では、プルトニウム需給バランスの数値的裏付けが出されていない。
- プルトニウムを普通の原発で燃やすプルサーマルは、現在の原発の危険を一層増大させる。核燃料の繰返し利用は現実にはできず、プルサーマルは一回しかできない。さらにその使用済み燃料の中には、特にやっかいな超ウラン元素が多くできる。核燃料の再利用は現実にはできない。害あって益なし。
- 「もんじゅ」運転再開の強行は危険である。ナトリウム漏れに対処するため建屋を窒素ガスで充てんしても地震で建屋にひびが入ればだめである。
- FBRの開発も欧州は断念している。残っている中国、ロシアの技術力は評価できない。
- 英仏の再処理工場の顧客は日本だけである。六ヶ所再処理工場もうまく動かないだろう。
- MOXデータねつ造もいまだに解決していない。
- 原発の新規増設はするな、危険な「もんじゅ」は動かすな、プルサーマルは止めなさい、長期的には原発の廃止こそが求められる。
- 長計案では、原発は段階を踏んで廃止する、新エネルギーの開発に力を注ぐ、現存の原発の安全性を確保する、原子力防災についてはっきりと計画を立てることを記すべきである。
小木曽 氏
- 福島県には10基の原発が立地しているが、様々な事故、トラブルが報道され県民の関心も高く、また、JCO事故以来、不安、不信が広がっている。
- 安全性、エネルギーとしての原子力の位置付け、プルトニウム利用、放射性廃棄物問題、JCO事故等について長計案の記述には苦労の跡がみられるが、この方針を国民にいかに納得してもらえるかが重要である。
- 長計案の教育に関する記述は不十分である。教育の現場では、臨界事故の際に高校3年生に「臨界」について問うと、ほとんど誰も「臨界」の意味を知らなかった。文部省等とも連絡をとって、化学も物理も勉強しないで卒業できる現状を改めるべきである。
- コスト削減ばかりを訴えると、環境や安全を軽視することにならないか。
- 柔軟性をもって技術開発に取組んでほしい。特に安全性確保には力を注ぎ、例えば防災ロボットの開発などには積極的に取組む必要があるのではないか。
- 100万kwの加圧水型原子炉に天然ガス燃焼を組み合わせたサイクルの出力は270万kwという試算があり、この分野の研究を進めて欲しい。
- 放射性廃棄物の中間貯蔵は時間稼ぎではないか、といわれる。早く具体的な計画を出してその疑いを晴らすべきである。
- 「はっと」、「ひやり」報告のように、現場の事故を隠さず報告する体質を作らなければならない。
石黒 氏
- 長計案は、原産会議の意向を強く反映されたメンバーによって作成されており、委員の選定についても各界・各層から広く選ばれているとは思えない。
- 長計案作成の最終段階のみで意見を聞くということでは、国民が意見を出す時期としてはとても遅い。また、3ヵ所でしか意見を聞かないのでは、国民の意見の聞き方としては不十分ではないか。また、この機会に述べられた意見はどのように策定会議で扱われるのか。きちんと取り扱われることを望む。
- 「もんじゅ」の意義は高速増殖炉原型炉としての役割を果たすことことにあったはずである。燃料や炉型は、「もんじゅ」とは異なる選択の研究が提示されており、「もんじゅ」に続く実証炉計画はまったくない。実証炉計画のない原型炉は意味がない。
- 「もんじゅ」型の炉はFBR実用炉につながらないとすると、「もんじゅ」とは何なのか、位置付けをはっきりしてもらいたい。曖昧な形での運転再開は許されない。
- 「もんじゅ」は停止中にも様々なトラブルを起こしており、運転技術についても不信感を持たれている。
- 諸外国で起きた高速増殖炉の安全解析上の問題で解明されていないものもある。「もんじゅ」再開の結論は早期に出すべきではない。
- 放射性廃棄物の地層処分は外国でも計画の段階である。目の届く地表で管理すべきではないか。技術的に確立されていないので、保留にすべきである。
児嶋 氏
- FBRには様々な可能性があり、情報提供により世界に貢献することも可能である。将来FBRが必要となる時がやってくる。
- 原子力発電所の立地から30年、これまでいくつものトラブルが起こってはいるが、多重防護による安全対策が機能し、外部の環境に著しい影響は一度も与えてきていない。いわゆる「止める、冷やす、閉じ込める」が大枠で実証されてきたと考えている。
- 「もんじゅ」の事故も、環境には影響がなかった。ただし、情報隠しについては、国民に不安、不信を与えた。
- 仮想事故のシミュレーションにはきりがない。すみやかに安全審査に入るべきである。
- 「ふげん」の問題では、一方的に運転が取りやめになり、地元に大きな影響を与えた。「もんじゅ」については、敦賀の地で研究開発の実績を積み重ねてもらいたい。
- 長計に関心があるのは推進・反対あわせてもごく一部にすぎないため、原子力にまつわる問題は広がりを見せない。国は長計の報告書を作るだけでなく、表に立って進めてもらいたい。
- また、地元を最優先した危機管理体制の構築を徹底してほしい。
- 将来に備えて高速増殖炉の研究開発を進めるのは必要なことである。
- 長計案には曖昧、婉曲な表現が多く、計画の意図がわかりにくい。なぜ高速増殖炉が将来必要になるか、具体的な数値がなく、説明がはなはだ不十分である。国策としての強い意欲が感じられず、物足りない。すなわち、ウラン235が尽きた21世紀後半からは、人類が高度な文明を維持していくためには、ウラン238から転換したプルトニウムを、高速増殖炉で燃料として最大限に利用することが、どうしても必要になる。そのことに関する強い説得力がこの長計案にはない。
- 長計案には、ウラン235の資源量に関する記述が全く見当たらない。ウラン235がいつ頃尽きてしまうのか、本案には現時点での最も確かと思われる数値を当然示すべきである。
- 日本の軽水炉では、一年にどのくらいのプルトニウムがウラン238から転換されるのかを予測したデータを明記すべきである。
- なぜ高速増殖炉が必要なのかを十分に説明することが必要であり、さらに、高速増殖炉「もんじゅ」の安全総点検が平成10年に終了していることに触れることが、「もんじゅ」再開の裏づけとなるであろう。また、今後「もんじゅ」の再起動に向けて取組むべき課題についても詳しく記述することが必要である。
- 学校教育でも、原子力の平和利用について、正しく、科学的に、積極的に教えていかなければならない。
- これまでは徹底した情報公開とは言えず、虚偽の情報や、情報への不信感が極めて強かった。また公正な報道が行われなかったため、風評被害を呼んだこともある。徹底した改善が必要である。
《策定会議からの説明および質疑応答》
森嶌 座長代理
鈴木第三分科会座長
- 策定会議は各方面の専門家、様々な意見の者からなっている。分科会の議事録、資料は公開されている。長計案に対しご意見をきく会の回数は十分でないかもしれないが御理解頂きたい。
- 伺った意見は策定会議に持ちかえり、どのように反映するか審議する予定である。
近藤第二分科会座長
- 「もんじゅ」の事故以降、様々な視点から専門家が検討し、その結果、「もんじゅ」に本質的な技術上の問題はないと認識している。フランスの動向を考慮して、第三分科会ではフランス人を委員に加えて審議した。また、高速増殖炉懇談会でもフランス人の専門家を招いて議論した。
- 各国の動向の違いは技術的な問題というよりも、むしろ、各国の考え方に基づいたものである。
- 研究開発である以上、課題があり、それを解決していくことによって技術を身につけていく。
- 原型炉、実証炉、実用炉という一本槍の計画はわかりやすいが、技術の進歩の中で柔軟性も重要であり、何十年も同じという前提をおくのはおかしいのではないか。「もんじゅ」で得られた成果が次の展開に活かされることが大切であると認識している。
- 資源の問題は、石油価格の高騰にみられるように物理的な資源の量によって左右されるのみではなく、経済的情勢にも依存する。ウラン価格も将来高騰することもあり得る。いずれにしろ、不透明な将来に備えて技術的選択肢を用意すべき。
太田第一分科会座長
- 安全に係わる諸問題についての議論を紹介したい。まず、国の規制については原子力安全委員会でさまざまな基準が作成されているが、その過程では、パブリックコメントを求める機会があるので、ご意見等がある方は活用していただきたい。
- 次に、民間においては自主保安活動やニュークリアセーフティネットワークによる事業者間の情報交換が行われている。
- また、国では、万が一に備えて防災体制を整備したり、保安規定がきちんと守られているかを確認するようにしている。
- 原子力でも「ひやり」、「はっと」が活用され始めている。
- その他、高レベル放射性廃棄物の処分については、現世代が処分制度を用意し、事業主体を設置することが重要であり、また処分方法についても内外の知見から地層処分がもっとも合理的である。しかし今後とも研究開発をすること、国民に理解を求める活動を引続き行っていくことが重要である。
- ヨーロッパでは、発電能力に余裕があり、エネルギーに関する課題は政治的に先送りされている。他方、スウェーデンでは、一旦廃止を決めながらその実施を先送りせざるを得ない状況も生じている。
- また、天然ガスへの関心が高まっているが、日本がそれに習えるかどうかはよく検討しなければならない。サハリンからの天然ガスパイプランなどについて検討はするべきだとは思うが、それにすべてを依存できるとは思えない。
森嶌 座長代理
- 原子力の教育の問題、地域振興、情報公開は、第一分科会報告書に詳しく記述されている。
- 児嶋先生のご指摘の点は、かなり抽象化した形ではあるが長計案の前半に入っている。
吉岡 委員
- 分科会レポートは科学技術庁に請求すれば入手できる。
児嶋 氏
- 長期計画の審議は全て公開されてきたものの、なお透明性が欠けるのではないか。例えば、一部の分科会については、議事録に発言者名がないなど次回以降改善すべき点がある。
- 多様な意見があった中で、どのような議論が行われ、このような結論になったのかが報告書では見えにくい。また、案の段階で複数意見を併記すべきか、また、最終案でそれらをどう扱うかなど、次回以降の課題である。
- 国の政策策定も過渡期にあり、その中で自分としてはできるだけ前向きに進めるよう努めた。
- 数値目標が記されていないのは、これまでの長計では、計画を立てたとたんに現実と相違することが多かったこと、また民間の事業については自主性に委ねるべきであるとしたことによるが、さらに原子力の他のエネルギーに対する絶対的優位性が崩れ、将来についても柔軟性を持たせるための数値目標を立てる意味がなくなったとも考えられる。
- 今回の長計では、様々な選択肢についての総合的評価は不十分であり、次回以降本格的評価をしたい。ただし、長計全体のスタンスとして、評価の上で進めるべきとの私の主張は取り入れられたと思っている。
石黒 氏
- ウランの資源量などについて、具体的な数字がないことを指摘しただけである。
- 「もんじゅ」の再開は、もっと早くすべきであると思うが、国民にきちっと説明が必要であり、その再開のステップを案の中に明確に記述して欲しい。そうしないと説得力がない。
小木曽 氏
- プルトニウムは核兵器の材料になりやすいため、世界的に神経質になる。
- 余剰プルトニウムの管理、削減について具体的なイメージが記述されていない。
- 一般社会人については、日常の生活に追われる中でエネルギーや原子力について考える余裕がない。学校教育段階でエネルギー・原子力についての教育をしっかり行う必要がある。
菅野 氏
- プルトニウムの需給バランスの記述がないなど、プルトニウム利用について透明性がない。。
- 使わないプルトニウムは持たない、といっても現実にあるプルトニウムをどうするのかについて具体的な記述がないと世界の信頼は得られない。しかしながら、「もんじゅ」、「常陽」で消費できるプルトニウムはたかがしれている。またプルサーマルで使うとすれば、プルサーマルの意義は資源問題の解決ではなく余剰プルトニウムの消費ということになるのではないか。
渡辺 氏
- 使用済燃料の中間貯蔵について、国民に対して具体的かつわかりやすく説明するというが、どう行うのか。
- 総合的学習では、現場の教師は環境問題に比べ、エネルギー問題への関心は低い。また原子力の問題は避けてとおる風潮がある。
萩原 氏
- 「もんじゅ」再開に関し、福井県民の立場として、実証実験の場として欲しくない。高速増殖炉が有効であるということは認めるが、実現の見込みがなく、そんなものを実物実験してもらっては困る。
- 高速増殖炉は地震に弱い。またその重要な耐震性や振動に関するデータは未だに隠されたままであり、早急に情報の開示を求める。
- 高速増殖炉は、プルトニウムを燃やして、燃やした以上にプルトニウムを生成するものであるが、核兵器からの解体プルトニウムがたくさん出てきているいま、そのような必要があるのか。また、「もんじゅ」でそんなことをする必要があるのか。
鈴木 委員
- 日本は原子力に頼らざるを得ないという意見が出ている。
- 既設の立地地域が魅力ある場所であれば、新規立地の可能性が高まるのではないか。
石黒 氏
- 第三分科会では「もんじゅ」を中心とした高速炉サイクルを議論したが、児嶋氏からご指摘いただいた再開のスラップを明確に示すような記述はなかった。ぜひ貴重な意見として参考にさせていただきたい。
- 日本では、プルトニウムの在庫がたまっているというが、これは元々利用計画があるものであり、必要なことはその量を正確に公表することである。プルトニウムを増殖させるかどうかは社会的な状況を見極めて判断していくべきである。重要なことは、必要ならば増殖できる技術を持っていることであり、そのためには「もんじゅ」で増殖性能を確認する必要がある。
- 私も情報公開を求める立場である。外国の技術を導入した部分は、情報公開が難しいこともあり、できる限り自国の技術を開発する必要がある。
鈴木 委員
- 「もんじゅ」はプルトニウムの専焼炉になる可能性があるのか。
- 専焼炉ということではない。プルトニウムを増殖させるかどうかは、ブランケットをどうするかの問題である。
- また、ロシアでは兵器からのプルトニウムを高速炉で燃焼させることも検討されており、社会的状況に柔軟に対応していく問題である。
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