2000年9月27日(水) 13:30〜17:00
品川インターシティホール(東京都港区港南2-15-4)
西尾 漠 | 原子力資料情報室共同代表 | |
大山 のぶ代 | 女優 | |
長島 彬 | 会社員(神奈川県) | |
中島 尚正 | 東京大学大学院工学系研究科教授 | |
斉藤 史郎 | 会社員(東京都) |
ふじおか こうたろ | 無職(愛知県) | |
松浦 辰男 | 放射線教育フォーラム代表総務幹事 | |
平野 弘康 | 自営業(群馬県) | |
大間知 倫 | 無職(神奈川県) | |
飯田 哲也 | 日本総合研究所主任研究員 | |
(敬称略、発表順) |
西尾 氏大山 氏
- そもそも「原子力長期計画」は不要。仮に作るとしても、国の施策についてのみ計画をまとめ、民間の計画に言及する必要はない。
- 長期計画案については、放射性廃棄物問題の場合に比べて、広く国民の意見を聴く機会が少なく、その意味では扱いが軽いのではないか。
- 「国民・社会や国際社会に向けたメッセージ」を長期計画策定会議が発することができるのか疑問。メッセージを必要とする者が自らの責任と費用で行えば良い。
- 原発、六ヶ所核燃料サイクル施設、高レベル放射性廃棄物の最終処分計画などは、民間事業者の責任をはっきりさせることが必要である。
- 民間の活動を誘導する施策については、少なくとも国会の議決を要件とすべき。
- 国の役割としては、原子力の軍事利用の防止及び放射能災害・放射線災害の防止があるが、それらの責任の所在があいまい。
- 「もんじゅ」の運転再開の必要性には客観的な根拠がない。
- 再処理工場については、再処理するからプルトニウムが出るのであって、「余剰プルトニウムは持たない」という理由からプルサーマルを実施するのはおかしい。
長島 氏
- 原子力をよりよくするために長期計画は必要であり、また長期的視点が必要となる。
- 原子を使い始めた頃の日本人は「謙虚」であり、人間の英知が及ばない領域があることをわきまえていた。
- 電気を作る人と、電気を使う人が双方歩み寄るべきで、使う側ももっと電気の大切さを感謝しながら使うべきである。一方、原子力を取り扱う人々は、一番大切な謙虚さを取り戻すべき。
中島 氏
- 東電の損益計算書から見積もると、原子力発電の経費は17-18円/kWhとなり、公表されるものと比べかけ離れており、会計検査院などに調べてもらう必要がある。
- 太陽光発電を減反農地に設置することも考えれば、設置面積のことは解決できる。
- 原子力発電所内部からの破壊活動やミサイル攻撃に対するゼロに等しい安全性や、すべての原子炉で応力腐食割れが進行している現実により震度4の地震にさえ耐えられぬ現在の原子炉状態を、国民は恐れる。
- 2万5千人前後の原子力関係者と1億人を越える国民の意識は確実に遊離している。
- 太陽電池、燃料電池が完成目前である今日、電力は集中から分散の時代に変わり、もはや原子力を推進する意味はなく、撤退させていくことが、勇気ある21世紀初頭の長期計画の課題である。
斉藤 氏
- 原子力関係者全体の信頼の回復が、今回の長期計画において重要な課題であり、この観点から原子力分野全体の人材育成や確保の方策を具体化することが重要である。
- 原子力の専門技術者は、広い視野、一般の社会人とのコミュニケーション能力、総合的な知識や倫理観に裏付けられた行動規範を備えていることが必要である。
- 安全管理、危機管理、高い倫理観の維持等に関するマネジメントや技術は、高いレベルを保つことが大切であり、分野横断型の職務に関する資格制度の検討が必要である。
- 技術者教育に関して産学官で活発な意見交換がなされているが、原子力の分野は他分野と比べ先進性がない。
- 大学の原子力分野への専門分化は大学院から行うべき。
- 大学の原子力関連教育施設は、安全管理や危機管理のための人手と経費が高負担になっていることからも、早急に検討を行うことが必要である。
- 高レベル放射性廃棄物が人類史上最悪の負の遺産であるかのように語られるが、他の有害廃棄物、炭酸ガス等も同様に負の遺産であり、負の遺産を残さないというよりも、後世に残す負の遺産をできるだけ最小化することが必要である。
- 高レベル放射性廃棄物の地層処分に伴うリスク、放射性物質が他の有害物質と異なり半減期を有することを科学的に考慮すべき。
- 高レベル放射性廃棄物だけを特別視するのではなく、国として公平な立場で広く有害廃棄物のリスクを評価し、対策を講じるべきではないか。
《策定会議からの説明および質疑応答》
森嶌 座長代理
近藤 委員
- 長計を作る態度として、原子力に対する不安・不信が広がっている中で、原子力側から一方的に進めていくのではなく、広く国民から意見を募って進めていきたいと考えている。
- 長計の役割については、原子力関係者の具体的な指針にとどまらず、国民・社会や国際社会に向けたメッセージとしての役割を重視することにしている。
- 国の役割として平和利用、安全確保があるが、これらの問題は民間とともに行わなければならない部分があり、民間が国の計画に従っていただくのではなく、民間の自主的判断で行っていただくことを期待するものとして、民間の活動についても記述している。
- 人材育成に関するご意見については、重要な点であると認識して、各分科会でも活発に議論された。
鈴木 委員
- 国会自身が行政計画に期待するところがあるのが現状である。
- 原子力開発利用における国と民間の役割分担については、分科会、策定会議においてもさまざまな議論が行われ現在の記述となっている。
- 我が国がプルトニウム利用を進めるに当たっては、平和利用の原則を厳重に確保することはもちろんのこと、安全確保を大前提とするとともに平和利用に係る透明性の確保の徹底を図ることが重要である。
- 21世紀の循環型社会を目指して、国民のモラルの向上を期待。
- 原子力の経済性の問題については、民間の自主的な活動の中で最適に取り扱われているはず。
- 第二分科会では、原子力発電の位置付けを考えるに当たって太陽電池、燃料電池等の新エネルギーについても審議を進めた。この結果、長計案には、これらの新エネルギーを、中期的観点に立って最大限の努力を払いつつ、合理的導入を図ることが必要である、しかしこれらのエネルギーは当面補完的な位置付けであるとしている。
- 人材については産官学が問題意識を共有して育成に努めなければいけない。
- リスクコミュニケーションの考え方に基づいて、国民と原子力に関するコミュニケーションを図ることが必要である。
秋山 委員
- 欧米の現状を踏まえた上で少資源国である我が国は、高速増殖炉サイクル技術について、不透明な将来に備え、将来のエネルギーの有力な選択肢を確保しておく観点から着実にその開発に取り組むことが重要である。
- 幅広いエネルギー選択肢の中から柔軟に選択する、という観点で考える必要がある。FBRサイクル技術システムを選択肢から捨てることによるリスクも大きい。
- もんじゅの運転再開は、発電プラントとしての信頼性の実証とその運転経験を通じたナトリウム取扱い技術の確立という所期の目的を達成するために必要である。
吉岡 委員
- 大学の果たすべき役割として、人材と基礎・基盤研究が挙げられるが、その重要性については、策定会議においても度々議論があったところ。
- 特に、大学における基礎研究の役割、今後の研究炉の在り方、その使用済核燃料の取扱等について検討することが必要である。
西尾 氏
- 社会としての制御が行き届いた科学技術が必要ではないか。現在の文明は、さまざまな危険物質を排出しており、これらの危険物質は、包括的に管理すべき。
- 原子力発電は民間事業者が責任を持つのは良いが、長期計画案の記述として、国が命令する形から、期待する形に変わっているのは、大いなる改善。
- 大学院から原子力分野へ専門分化すべきであるとの意見には共感。
近藤 委員
- 国民の意見をどうやって受け止めて反映するのかをよく検討してほしい。
- プルトニウムの需給バランスはどのようにとるのか。余剰のプルトニウムを持たない、という原則に対して、研究開発でも使い道があまりないのに、再処理が始まるとどうなるのか。
- 「もんじゅ」再開の理由についてナトリウムの取扱技術を所期の目的としているが、違うのではないのか。
鈴木 委員
- 不確実な未来の中で、プルトニウムの適切なストックが生じることはあるが、我が国の核不拡散の原則に則って取り扱っていくことが確認されている。
長島 氏
- 「もんじゅ」については、単に要素技術ではなく「発電プラントとしての運転経験を通じた」ナトリウムの取扱技術・経験を得るということが重要である。
- さまざまな討論をするためのベースとなる技術的な情報・根拠が必要であり、長計案に示したところまでは技術開発を進めてから、その先を議論すべき。
鈴木 委員
- 核燃料サイクルにそれぞれ必要な年数を明記してもらいたい。それによって、どのような物質が中間在庫としてあるのかを検討することができる。
- 最も時間がかかるのは、天然ウランを調達・加工する段階。軽水炉サイクルでは炉心で3-5年くらい、使用済燃料の貯蔵に概ね10年程度を要し、再処理工場で再処理してMOX燃料を作成する。
- 毎年1,000トン弱くらいの使用済燃料が発生しており、発電所で安全に保管する。
- FBRサイクルでは、炉の中で2-3年燃料として使用され、使用済燃料は多様なケースが想定されるが、10年程度貯蔵する。
ふじおか 氏松浦 氏
- 「ご意見をきく会」は評価できるが、国民の意見を聴く取組としては、まだまだ不十分である。
- イタリア、ドイツでは原子力発電所が廃止されつつある。このまま原子力開発を進めると、日本は世界の重荷になる。
- ギネスブックにも載る津波としてノルウェー沖の360mが7,000年昔にあったこと等がある。南海トラフの500年毎の海底地すべりによる津波・メタンハイドレード崩壊による津波も原発稼働中には来ないというのはあまりにもリスクを知らない。
- 日本の原子力発電所では地震、海辺では特に津波などの影響が非常に大きい。
- 被爆者の視点を忘れない議論をしてほしい。
平野 氏
- 日本のエネルギーの現状を考えると、少なくとも現状を維持した原子力発電への依存は続くであろうが、国民の不安を軽減しなければならない。
- 原子力発電への不安は、目に見えない放射線に対する不安である。しかし、同様に目に見えない電気・電波と同じように必要以上に怖がる必要はないことを知ってもらう必要がある。
- 社会教育におけるマスメディアの役割が大きいので、発信側・受信側両方の知識レベルの向上を図るべき。
- 原子力やエネルギー問題に関する国の政策を教育関係者が積極的に取り入れるように、文部省における学習指導要領の制定やその運用において、原子力委員会や他の省庁、あるいは産業界が希望する意見をできるだけ採用することが望ましい。
- 文部省が先頭に立って、小・中・高校の理科教育において、原子力・エネルギー・放射線などの基礎的知識を深く学習できるようにしてほしい。
大間知 氏
- 原子力の利用には、安全性と経済性は特に必須条件である。
- 理想的なエネルギー源は核融合エネルギーであるが、実現は21世紀の中頃の予定であるため、中継ぎとしての核分裂炉が必要である。
- 廃棄物を削減するためには、沸騰水型軽水炉を改良した新型転換炉と、小型の増殖炉を考えるべき。
- 原子力を砂漠で使うことは、砂漠の緑化と海水の淡水化とを含めた開拓ができるので、放射性廃棄物を砂漠の岩盤に地中処分することの同意を砂漠国から得やすくなる。
- 高速増殖炉は安全性の不安がある。一方、従来の沸騰水型軽水炉は固有の安全性である自己制御性が一番備わっている。これを改良した新型軽水炉では、重水と軽水の混合水を用いることを提案する。
- 新型炉と増殖炉をセットで使うことで、ウラン燃料の効率的利用ができるのでウランの延命も可能である。
飯田 氏
- 原子力施設では、マニュアル無視等の予想外の事態が発生した場合に備えて防災を検討しておくべき。
- 原子力発電所等で放射能洩れ事故が発生し、環境中に影響が及べば、風速毎秒2mでも風下では1時間以内に7.2kmまで放射能は拡散されるので、防災エリアはもっと拡大が必要である。
- 東海村臨界事故を踏まえ、事業所は自治体、国に事故発生と同時に通知するシステムが必要である。
- 住民の安全を考えれば、施設の周囲徒歩1時間以内の居住の禁止も考慮すべき。
- 法改正により原子力安全のための防災専門官、保安検査官の配置があったが、24時間対応が可能か極めて不安である。
- 防災情報の共有化、指揮系統の一本化がされなければ被害は拡大の可能性が高い。防災一元化システムが必要である。
- 原子力防災地域の市町村の対応は大きなバラツキがあり現実に機能していない。
- 長計案は、あまりに一般人の感覚とかけ離れている。現実を見据えるべきである。
- 日本の電力市場も自由化に向かうことは不可避であり、今後は一般電気事業者の「回収不能費用」負担の問題を始めとする原子力の「経済リスク」の責任の所在を明確にすべき。
- 新設原子力発電所の経済的な費用責任を明示すべき。また、再処理プラントも、今後経済的に破綻していくのではないか。
- アメリカ、ドイツ、フランスも撤退している高速炉サイクルを、なぜ日本が継続していくのか。
- 軽水炉技術はすべて外国から輸入した技術であるのに、高速炉については日本独自技術のみで進めていけるのか。技術と市場のトレンドへの逆行などから、限られた研究資源の投入を正当化し得る理由は見当たらず、廃炉が妥当である。
- 長計案などに携わった有識者は、自分達が提案した内容について知的な責任を果たすべき。
《策定会議からの説明および質疑応答》
神田 委員
近藤 委員
- JCO事故に関して多くの時間を割いて審議を行った。
- 事故発生の可能性を100%排除することはできない前提で、先般制定された原子力災害対策特別措置法は作られており、責任を総理に集中させている。
- 安全規制と防災は別のものという認識を持つことが必要である。
鈴木 委員
- 津波災害、地震災害については、発電所の設置許可のプロセスにおいて当然考慮されている。
- 原子力の位置付けと官民の役割について、これまでにいろいろ議論した結果は長計案に盛り込まれている。
- 長計案では、自然エネルギーの現実について、可能な限り専門家の意見を聴いて記述した。諸外国の事情を踏まえつつ、我が国の地理的・資源的な状況をかんがみれば、適切な割合で原子力発電を維持していく必要があるとしている。
秋山 委員
- 新型炉の在り方について、多様な可能性を追求するという考えは大切であり、IAEAでは、新型炉の活用法について議論している。
- 技術体系は欧米の借り物ではないか、という御指摘は重要であり、重要な技術については自前のノウハウを蓄積していく、という考え方が必要である。
森嶌 座長代理
- 新型炉について、安全性・経済性を向上していくという観点でさまざまな議論が行われた。
- 「革新的原子炉」として新型炉に対する考え方を提案している。炉の規模を多様化し、エネルギー効率を高めることを目標として、高温ガス炉、溶融塩炉などについても検討した。
長瀧 委員
- 国民にとって、マスメディアの役割は重要であり、特に第一分科会で重点的に審議が行われたところである。
- 学校教育については、教育関係者の原子力に関する正確な資料や情報の提供、教員への研修の充実の重要性が長計案にもうたわれている。
吉岡 委員
- 被爆国としての立場から、放射線が、人間に対してどのような影響があるかにつき今回の長計案では、今までよりも更に考慮されたものとなっている。
- 放射線の人体影響など、科学的・医学的なデータはできる限り広く公開し、社会に正確に伝えることが重要である。
佐々木 第五分科会座長
- 東海村JCO事故は、長計案全体に満遍なく反映されていると考えているが、個別の具体策については記述されていない。
鷲見 委員
- 放射線は有用であるが、取扱いを間違えると有害である。放射線の利点・欠点も含めて放射線に対する知識を共有することが必要である。
- 放射線事故など、万一の事故に備えた体制を整えることが重要であり、放射線医療に関する緊急被ばくネットワーク体制が整備されている。
ふじおか 氏
- 市場の自由化における原子力について、経済性、環境への配慮、エネルギーセキュリティ、安全性等を総合的に勘案して議論した結果として原子力の必要性を書いたもの。
飯田 氏
- 地質は原子力の設置基準に本当に反映されているのか不安である。まず原子力推進ありきという考え方があるのではないかとの疑いがある。
松浦 氏
- 50年間できなかった独自技術を、これから可能であるとするのは無理がある。
- 自由化が進展すれば、IPP等が先に経営が苦しくなる。電力が売れなくなった場合、卸売電気事業者はどう責任をとるのか。
近藤 委員
- 教員の中にも放射線教育への取組に熱心な方もいるが、これまではなかなか実行できなかった。しかしながら、放射線教育の取組は始まりつつある。
鷲見 委員
- 原子力発電所の設置に関しては、津波の専門家の知見も十分に考慮されている。
- 今後電力シフトが進み、電力需要は伸びる。現在の実際の原子力発電コストは5.9円/kWhと試算され、今後の不安定要因を取り入れたとしても、6−7円/kWhとなり、経済的に成り立つ。
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