新しい視点に立った国際的展開
平成12年 月 日
原子力委員会
長期計画策定会議第六分科会
ver.2000.5.11
目次
第1章 新しい視点に立った国際的展開
1.最近の国際情勢に対する認識
2.国際的課題への主体的な取組第2章 我が国の核燃料サイクル政策の推進に関する取組
1.我が国の原子力平和利用堅持の理念と体制の世界への発信
2.我が国のプルトニウム利用政策に対する国際的理解促進活動の積極的推進
3.国際輸送の円滑な実施
4.使用済燃料の国際的管理の構想への対応第3章 核不拡散の国際的課題に関する取組
1.余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力
2.IAEA保障措置の強化・効率化
3.核物質防護への取組
4.CTBT早期発効及びFMCT交渉開始に向けた努力
5.核不拡散への取り組みに対する我が国のイニシアティブ強化第4章 原子力安全と研究開発等に関する国際協力
1.原子力安全に関する協力の推進
2.研究開発協力の推進
3.放射線利用・放射線医学に係る国際協力第5章 地域別課題への取組
1.アジア諸国との原子力開発分野での国際的取組
2.欧米諸国との取組のあり方
3.旧ソ連、中・東欧諸国との取組のあり方
4.国際機関の積極的活用
1.最近の国際情勢に対する認識
(1)世界各国の情勢
我が国の原子力平和利用の展開に関する国際的取り組みを検討するにあたっては、まず海外の諸情勢に対する正確な理解と把握が重要であることはいうまでもない。
欧米においては、新規の原子力発電開発が停滞している。米国の初期の原子力発電所のいくつかは閉鎖され、全体として欧米に関しては原子炉の基数は減少している。欧州ではスウェーデンのバーセベック軽水炉発電所の閉鎖が決定された。また、フランスのスーパーフェニックス高速増殖炉の閉鎖が決定された。これらの背景としては、エネルギー、電力の分野における規制緩和、市場化の進行、特に欧州においては脱原子力、反原子力を掲げる政党の政権参加、広域的エネルギー供給網の整備等さまざまの状況がある。
しかし、米国においては、電力供給の約20%、欧州においては約30%が原子力であり、稼働率の良い既存の発電所からの発電コストは化石燃料のそれと十分に競争可能とされている。また米国においては新規の大型発電所計画ばかりではなく、火力発電所でも新規建設は20年近くないのであって、その主な理由は低い電力需要の伸びのなかで、大型ベースロード電源への設備投資への躊躇にあると言われ、脱原発、反原発ということではない。また欧州ではEU統合を背景に、近年、電力、天然ガスの供給網の発達は著しく、エネルギー問題は各国別の事情よりも地域全体で把握する必要があり、例えばフランスの原子力発電所からの電力は、周辺各国に出されている。しかし欧州では、チェルノブイリ事故の後遺症を拭い去ることは難しい。
現在、世界全体では約2割の電力が原子力によって供給されているが、その内の約17%は日本を含むアジア地域であり、北米、欧州はそれぞれ約35%、37%である。IEAの予測では、北米と欧州においては減少するものの、その分をアジアがカバーするので2020年における原子力発電の割合は変わらないとしている。この地域ではさまざまな不確定要因はあるものの、中長期的には、依然として高い経済成長とそれに伴うエネルギー需要が予想される中で発電計画を含む原子力研究開発利用の拡大の機運が存在している。しかし、アジア地域の各国の国情はさまざまであり、原子力利用の段階も多様である。既に相当規模の原子力発電所を運転中で今後も積極的に進めていこうとする国では、国民合意の確保、使用済燃料、放射性廃棄物の処理処分があり、今後導入しようとしている国においては産業技術レベル、資金調達等の問題に加え、人材養成や技術、制度面のインフラ整備等課題も多い。また、北東アジアでは北朝鮮の核兵器開発疑惑、南アジア地域ではインド、パキスタンの核保有、核実験などによる核拡散の懸念の現実化が憂慮されている。
旧ソ連・中東欧地域においては、原子力発電は電力供給力に占める役割は大きいが、ロシア製原子炉の安全性確保の問題に加えて、旧ソ連崩壊後に生じている核物質管理の不備による核拡散の懸念が増大している。特に、解体核兵器からのプルトニウムと高濃縮ウランの適切な管理、処分について、その緊急性が高まっている。
このような状況の中で、原子力産業は、国際競争の激化を背景にグローバル化が進展しており、欧米においては、少数のグループへと国際的再編が進んでいる。今や米国では単独の企業はGE一社しか存在しない。これらのグループに共通する特徴はPWR、BWR双方の技術及び核燃料の成型加工、特にMOX燃料製造の技術を保有していることであり、将来のアジア市場での国際競争において、極めて有利な立場をもつことが予想される。(2)核不拡散と核軍縮を巡る動向
原子力の平和利用開発を円滑に実施していくためには、安全性確保とともに、核不拡散体制の維持はその大前提である。したがって、開発の当初から、核物資や関係技術が転用されないために種々の国際的制度が設定されてきたところである。
しかしながら、1990年代初頭からのイラクの秘密裏の核開発計画の露呈や、北朝鮮の核開発疑惑など、「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)」体制の内側からの挑戦に続き、NPT体制の外側からの挑戦として、1998年のインド及びパキスタンによる核実験が実施され、核拡散の現実化という、核不拡散体制に対する重大な挑戦が行われてきている。また、冷戦終焉後の旧ソ連における、不備な管理による核物質の不法流出の懸念も増大しているほか、昨今、利用目的の明確でない民生用プルトニウムのストックの増加を核拡散の懸念の高まりとして指摘する声が強まってきている。
一方、核軍縮の分野においては、戦略兵器削減約(START)交渉の進捗停滞、米国院の包括的核実験禁止条約(CTBT)批准否決など、1995年のNPT再検討・延長会議において採択された「原則と目標」の具体的進展がはかばかしくない状況が続いている。このような状況の下で、核軍縮の進展の歩みも遅く、核不拡散体制の安定性・有効性に好ましくない影響を与えている。
このような状況の下で、米露の解体核兵器からのプルトニウムと高濃縮ウランの適切な管理・処分問題について、緊急性が高まっており、当事国の責任は言うまでもないが、関係各国の国際的協力も求められる大きな課題となっている。(3)地球温暖化問題への対応
地球温暖化問題は、自然の生態系や人類に与える影響の大きさや深刻さから見て、人類の生存基盤に関わる最も重要な地球規模の環境問題であり、その解決に向け、人類の英知を結集しなければならない。その対策として、エネルギー供給面の対応としては、温室効果ガスの排出を極力抑制できるエネルギー源を開発し、普及させていくことが求められている。
このため、我が国においては、再生可能エネルギーの開発・導入促進に向けた努力とともに、発電過程において二酸化炭素を発生しないエネルギー源として、原子力の果たす役割に対する期待が高い。しかし、他方、国際的には、西欧諸国においても米国においても、地球温暖化防止との関係において原子力発電を積極的に進める動きは見られない。
こうした中、京都メカニズムの一つであるクリーン開発メカニズム(CDM)の対象として、原子力を入れるか否かという議論が国際的になされ始めてている。2.国際的課題への主体的な取組
(1)基本認識
原子力はその裾野の広さ、人類社会全般への影響の大きさから、本来国際的な視野に立って取り組むべき技術であり、原子力を将来とも重要なエネルギーの選択肢とするために、その国際的課題に対する正しい取り組みが極めて重要である。したがって、21世紀に向かってこの分野における我が国の果たすべき役割について、その理念と具体的政策を、国が行うべき項目を中心に明確に提示するべきである。
また、資源小国の経済大国日本のエネルギーセキュリティ確保の観点から、原子力は極めて重要であり、プルトニウムを自前のエネルギー資源として利用していく核燃料サイクルの意義を国の政策として確認するとともに、官民協力のもとこれを世界に対してタイムリーに発信していかなければならない。しかしながら、それは単に我が国の平和利用を軍事利用と区別して、その正当性を主張するだけでなく、グローバルな核軍縮と核不拡散体制の強化を目指して、解体核兵器に由来する核物質の管理処分計画に対しても、主体的に取り組んでいく。
今後、我が国の原子力開発を適切に進めていくにあたっては、これまでの対外援助、貿易輸出的国際協力、国際貢献といった視点より、国際的課題への主体的取組と積極的対応という視点が重要である。(2)主体的取組のあり方
今後、我が国は、相手国のニーズあるいは国際機関等からの要請に応じて受動的に対応していくばかりではなく、我が国の原子力を巡る現在及び将来における国際的問題は何か、それに対して、どのような準備をして、どう対処するか、もしくは、し得るか、さらに、現時点の国際的課題は何で、将来への動向を予測したとき、どのような選択があり得るか等について、長期的な視点も考慮し、国益の観点も踏まえて十分に検討した上で、適切な戦略を構築し、それに基づいて能動的、取り組んでいく。その際、何が国益に適い、何が適わないのかの見極めを適切に行い、自国の国益の追求が世界の公益の追求と合致し、世界の公益の実現が自国の国益に重なる、いわば「開かれた国益」という方向を目指さなければならない。そのためには、原子力の平和利用の側面のみならず、広く世界の情勢を的確に把握し、我が国全体の外交に反映させていかなくてはならない。
これまで、我が国の原子力技術は先進諸国との国際協力を通じて進展してきたが、今後は科学技術先進国の一員として、欧米やロシア等、原子力に携わる他の主要な国々と密接に連携しながら、世界の原子力研究開発利用をリードしていくことが求められており、そのための主体的な取組が必要である。その際、アジア地域に位置する先進国として、この地域の社会経済のために各国の原子力開発を支援していくことも我が国の国際的責務の一つであり、国際的動向を適切に把握しつつ、各国のニーズに対して、官民それぞれの立場で積極的に対応していく必要がある。1.我が国の原子力平和利用堅持の理念と体制の世界への発信
(1)現状認識
平和利用の原子力開発を推進するに当たっては、安全の確保と核不拡散の担保は必須の要件である。冷戦終了後の現在、5つの核兵器国に加えて、核不拡散条約に加盟していないインド、パキスタンが核実験を行い、イスラエルも核兵器の所有が疑われている。ロシアにおける核兵器解体後の核物質管理の脆弱さから、核物質の不法流出の懸念があり、また、イラク、北朝鮮のように、核不拡散条約に加盟している国においても、核兵器開発の疑いが生じた例がある。
核軍縮は、米露二ヶ国を中心に進んではいるが、必ずしも期待された程の進捗を見せていない。一方、核兵器の政治的・軍事的価値は、これ迄の核兵器国においては減少傾向を示しているものの、紛争地域にある諸国、地域における覇権を狙う国にとっての政治的意味は、今後むしろ増大していく可能性がある。
このような国際情勢の中で、原子力の開発利用、特にプルトニウムリサイクル政策をとっている我が国の原子力平和利用路線に対して、国内外で、パーセプション・ギャップがみられるのは残念なことである。我が国としては、このパーセプション・ギャップが平和利用の原子力開発に対する阻害要因となることを防止しなければならない。
その為には、国内の原子力開発利用政策、開発状況についての一層の透明性を向上させ、内外へ情報を積極的に発信すること、国際核不拡散政策の推進に積極的に貢献することを国の基本的政策として実行しなければならない。(2)今後の対応
我が国は原子力開発の第一歩から一貫して、人道的見地はもちろんのこと、原子力基本法に則り、民主・自主・公開の原則の下、原子力研究開発利用を平和利用目的に限って推進してきた。また、核兵器については、「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を国是とし、また、NPTに加盟し、国際原子力機関(IAEA)によるフルスコープ保障措置を受け入れ、厳重な核物質の計量管理、適切な核物質防護措置を実施してきている。さらに、包括的核実験禁止条約(CTBT)については、1997年に批准し、またIAEA保障措置の強化の為の追加議定書も、1999年に他の原子力先進国に先駆けて締結させたところである。
にもかかわらず、依然我が国が核兵器を開発するのではないかとの疑念が海外の論調等において表明されることがあるのは極めて遺憾である。しかしながら、海外にはこのような見方が存在することを事実として十分認識して、地道に誤解を解く努力を続けていかなければならない。
そのため、自ら率先して原子力平和利用に専心している姿を世界に明らかにし、我が国にとって非核兵器国であることの堅持が国益にかなうことを、より強力に発信することが肝要である。また、世界の核不拡散努力に協力しつつ、原子力を真に人類社会の福利に役立つものにしていくことが重要である。すなわち、我が国は、自らが培ってきた科学技術力により、地球規模の問題として継続的に積極的に対応すべき人類共通の重要課題であるエネルギー問題の解決のために貢献していくことが重要である。
今後、我が国が原子力平和利用に専心する国であることへの国際的理解を促進するためには、原子力基本法、非核三原則、NPTに基づく義務の完全履行について説明を尽くすのみならず、我が国にとって非核兵器国であるということが国益にかなうことを明確に示すことが重要である。現下の複綜する国際情勢の下においてはそれは必ずしも容易なことではないが、日本の原子力平和利用堅持の理念と体制について、十分に世界へ発信し理解を得るよう努力することこそ、原子力委員会の最も重要な責務である。以下にこの点について、我が国のいくつかの主張を試みる。@原子力平和利用を堅持する我が国の国益
i)高度海外依存国家
エネルギーや食料等の多くを海外に依存している我が国が、国際社会において平和裏に生存していくためには、世界が政治的、経済的に安定していることが極めて重要である。
このため、我が国は、国際社会から信頼される国として、世界の自由貿易体制の中で、国際協調を基調として繁栄を享受していく道を選択している。核兵器開発によりもたらされるものは、日米同盟関係の崩壊、アジアを中心にした国際的緊張と反発、総合安全保障の喪失、国際的孤立とそれに伴う国内経済の破綻に過ぎず、得る物はなく失う物のみである。ii)日本国民の原爆体験
核兵器使用の悲惨さを身をもって体験した我が国は、自らが核兵器による加害者となるような政策は国民感情として受け入れられない。そもそも我が国の原子力平和利用は、このような国民感情のコンセンサスの下で始まったものであり、それは現在も受け継がれ、我が国の原子力平和利用の厳守と核兵器廃絶への願いの原動力となっている。
このように我が国国民は核兵器に対して、特別な感情を有しており、原子力平和利用活動には高い透明性と緊張感が求められ、何らかの秘密活動を行うことは官民いづれにおいても不可能である。A国際的な管理システムによる透明性確保
i)IAEAフルスコープ保障措置の受入
NPT締結国の義務として、IAEA包括的保障措置協定を締結し、国内の全ての核物質についてIAEAの保障措置を受け入れている(IAEA査察業務の約20〜30%が我が国の査察に当てられていると推定される)。これまでIAEA保障措置は我が国において十分有効に働いており、平和利用核物質が核兵器に転用された事実がないことが常に確認されている。
ii)IAEA追加議定書の受入
未申告の核物質や原子力活動の探知を目的として、1997年5月にIAEA理事会で合意された追加議定書の作成に積極的に協力するとともに、追加議定書に基づく拡大申告及び補完アクセスの試行を行い、1999年12月、この追加議定書を世界で8番目に締結した。
本来追加議定書は未申告の核物質の軍事利用が懸念される国々を念頭に作成されたものであるが、原子力平和利用に専心している我が国が、大規模な原子力活動を行っている国としては最初に追加議定書を発効させた意義は大きい。iii)二国間協定に基づく国際的監視
我が国の保有している主な核物質の7割強(濃縮ウラン:73%、プルトニウム:75%。1998年末現在)は日米原子力協定の対象物であることから、これらの核物質の取扱及び管理状況についての適切な情報が米国に提供されており、原子力活動の主要部分に係る情報は米国の監視下にある。
さらに、英国、フランス、カナダ、オーストラリア等の核燃料物質供給国との協定により、我が国に存在する核物質の殆ど全ては関係各国の監視下にある。B我が国の原子力平和利用イニシアティブ
プルトニウム利用の透明性向上を図るため、1992年から97年にかけて日本・米国・ロシア・イギリス・フランス等が協議の上策定した「国際プルトニウム指針」については、我が国は極めて積極的にその策定に参画した。これは、我が国がプルトニウムの民生利用に何ら他意を有していないことの証である。
また、ロシアの余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力について、我が国が培った原子力平和利用技術を基に主体的な貢献を果たしている。
このような我が国の核不拡散政策へのイニシアチブについては、核拡散リスク低減のための国際的技術開発協力、プルトニウム透明性の一層の向上施策、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)プロジェクトへの積極的協力、「核不拡散研究センター」の設置構想の検討、などに向けて、今後一層の努力をすべきものと考える。なお、いずれにせよ我が国の原子力政策は、世界で最も強い反核感情と、世界の中でも特に原子力エネルギーを必要とする国情、という相反する2つの事情を背景に特有なものにならざるを得ない。これに対する国際的理解を得るためには、厳に平和利用目的に限った原子力研究開発利用を前提としたエネルギー政策についての我が国の政策の理解を促進するよう努力することが考えられる。
2.我が国のプルトニウム利用政策に対する国際的理解促進活動の積極的推進
(1)現状認識
現下の国際情勢は、ソ連崩壊による核拡散の懸念の増大、余剰兵器プルトニウムの管理・処分問題の緊急性の高まり、インド、パキスタンの核実験実施、民生用プルトニウムのストックの増加等を背景として、国際的に核不拡散に関する関心が高まっている。こうした中、これまでも述べたごとく、我が国が今後プルサーマル等の本格的なプルトニウム利用を円滑に進めていくためには、世界の国々から理解と信頼を得ることが極めて重要である。そのため、プルトニウム利用の必要性、安全性、経済的側面及び我が国の核不拡散の姿勢について重ねて説明し、各国の理解と合意形成を国際的に展開していく必要がある。
我が国は、核燃料サイクルを国内外の信頼を得つつ実施していくため、国際的な核不拡散体制から要求される義務に加えて、利用目的のない余剰プルトニウムを持たないとの原則の下、毎年分離プルトニウムの管理状況を公表するとともに、適時に「プルトニウム需給見通し」の試算を明らかにし、さらに国際プルトニウム指針の策定に積極的に貢献するなど、プルトニウム利用計画の透明性の向上について、これまでも積極的に努力してきたところである。なお、1998年末現在、我が国は国内に約5トン、海外に約24トンのプルトニウムを保有している。(2)今後の対応
@プルトニウム利用の意義についての発信
世界で例のない非核保有の原子力発電大国である我が国のプルトニウム利用政策、すなわち、プルトニウムをエネルギー資源として利用していくという核燃料リサイクルを前提とした原子力平和利用政策の意義・根拠、必要性、安全性、経済的側面等について、環境保全の観点も含め、海外からの問題意識に明確な回答を発信していく必要がある。
各項目について詳述することはこの報告書の役割ではないが、例えば必要性については、資源小国の我が国にとって使用済燃料中のプルトニウムは数少ない準国産エネルギー資源であること、循環型社会の形成に向けて原子力は資源リサイクルの視点からも重要であること等、安全性については、国内の安全規制当局により、常に適切に安全性の事前確認が行われていること、また特に軽水炉におけるMOX燃料の利用の安全性については、既に欧州等で長期にわたる実績があること等、また、経済的側面については、それを判断するに当たって様々な側面があり、海外に十分に理解できる形で正確な根拠を示して説明すること等、である。Aプルトニウム需給見通しの説明等、プルトニウム利用の透明性の向上
プルトニウム利用に関しては、平和利用の堅守について海外に無用の懸念を抱かしめないよう、計画的にすすめていくことが必要である。しかしながら1995年8月に「プルトニウム需給見通し」の試算を公表して以降、関連計画の進捗状況は以下のとおり色々変化している。
すなわち、まず、供給側の計画に関しては、六ヶ所再処理工場の建設が遅れて、竣工が2003年から2005年へ変更され、また東海再処理工場は、1997年より停止中という状況にある。次に需要側の計画に関しては、BNFL社のMOXデータ不正問題の影響で、軽水炉によるプルサーマル計画の開始の遅れが生じるとともに、大間のフルMOX炉心ABWRによるプルサーマル計画は、当初より2年遅れて2007年運開予定となっている。また、高速増殖原型炉「もんじゅ」は、1995年より停止中である。なお、高速増殖実証炉計画については、今後のFBR研究開発の状況等を踏まえ柔軟に対応することになっている。
このようにプルトニウムの利用に関しては、需要と供給双方の側に不確定要素が常に存在するが、その場合においても、全体のプルトニウム需給に適切に配慮しつつ、柔軟なプルトニウム利用をはかることとし、その利用の透明性を向上させる努力を続けつつ、国際的理解を促進する目的に合致する。
我が国のプルトニウムの利用の見通しについては、「利用目的のない余剰プルトニウムは持たない」原則を踏まえて、状況に対応した説明を適時に行うことが肝要であり、上述した状況について積極的に海外に説明をしていく。その上で、プルトニウムはプルサーマルによる発電と高速増殖炉などの研究開発に利用する方針に変更はなく、適切にプルトニウム利用を図っていくことを、明確に発信していく必要がある。3.国際輸送の円滑な実施
(1)現状認識
我が国のみならず、原子力利用を行う各国が円滑に原子力発電を行っていくには、核燃料物質、放射性廃棄物の国際輸送が円滑かつ着実に実施されることが不可欠である。なかでも、近年、輸送ルート沿岸諸国をはじめ国際的に注目を集めている英仏から我が国への高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)及び混合酸化物(MOX)燃料の返還輸送については、政府としても国際的な理解促進のため関係各国に働きかけを行ってきている。
これまで、我が国から英仏への使用済燃料の輸送が1969年以来、160回以上実施され、我が国の電気事業者と英仏の再処理事業者との現在の契約分の輸送については既にほとんど終了しており、今後は国内で再処理することを原則としている。今後は国内で再処理することを原則としている。高レベル放射性廃棄物の返還輸送については、1995年以来5回実施済みであり、今後十数年間にわたり、年1回程度の輸送が行われる見込みである。また、MOX燃料については、1999年に第1回輸送を実施したところであり、今後約10年にわたって輸送が行われる見込みである。
これらの輸送の実施に当たっては、国内の諸法令はもとより、国際的な安全基準等が遵守されていることは勿論、特にMOX燃料については、さらに、日米原子力協力協定等の二国間協定上の関連する規定や核物質防護条約等に合致した方法で、確実かつ安全に行われてきているところである。(2)今後の対応
こうした中、国際間輸送の回数を重ねるに従い、カリブ諸国や南太平洋諸国等の沿岸諸国を中心として、輸送に対する懸念や万一の事故時の補償についての関心が示されている状況となっている。大部分が原子力利用国でないこれらの諸国の理解を得ることの困難性に加え、近年の原子力を巡る不祥事の悪影響も相俟って、これらの諸国との関係悪化が懸念されるようになってきている。このような現状において、我が国の事情、輸送の安全性等の情報発信による理解の増進、万一の事故に対する沿岸国の不安を減少するための方策の検討、多様な輸送ルートの確保、輸送回数の減少方策の検討など、取り組むべき課題が多い。
このため、政府及び事業者においては、関係する英仏の政府及び事業者とも緊密に連携しつつ、輸送の必要性と今後の見通し、また安全性や万一の場合の補償についての説明を行うことにより、理解を促進する努力を重ねてきているが、今後、我が国の核燃料サイクル諸政策を進めるに当たっては、こうした動向をも十分考慮することが必要である。
言うまでもなく、国際間輸送は機微な核物質が対象であり、政府間の調整手続が不可欠である。したがって、今後とも外交努力による理解活動はもちろん、政府及び事業者が密接に連携し、これまでのどちらかと言えば状況対応的な、Defensiveなやり方ではなく、今後は沿岸国の立場や不安を考え、例えば、沿岸国と共同して環境やエネルギーの問題にまで取り組んでいくといった積極的なアプローチでこの問題に対応していくことが肝要である。
また、これまでは専ら我が国と欧州の間での核物質の国際輸送が問題となっているが、今後は解体核の処分を巡って、欧州と米国との間に行われることも考えられる。従って関係各国が共同して、核物質輸送の必要性の理解向上に努力しなければならないグローバルな課題となろう。4.使用済燃料の国際的管理の構想への対応
(1)現状認識
昨今、韓国、台湾等の原子力発電所の使用済燃料貯蔵量の増大と貯蔵容量の逼迫の見通し等を背景として、使用済燃料の貯蔵について、国際会議等の場においても国際共同貯蔵構想が論じられるようになって来ている。韓国、台湾は、これまでのところ再処理政策はとっていない。
我が国においては、使用済燃料は再処理するまでの間、国内において適切に貯蔵管理することを基本方針としており、原子力発電所敷地内での貯蔵に加え、発電所敷地外での中間貯蔵について、昨年必要な法整備を行い、その具体化が進められているところである。すなわち、我が国としては、自国の使用済燃料を国外の国際共同貯蔵施設に貯蔵する政策はとっていない。
使用済燃料の国際共同貯蔵構想の歴史は古く、米国の核不拡散法の実施に関連して、INFCE(国際核燃料サイクル評価)の場においても、制度的核不拡散の具体的施策のひとつとして提唱された。中規模原子力発電国にとっては、各国別に貯蔵施設の設備投資を行うより、関係国が共同して大型の施設を建設、運営することの経済的インセンティブがある。(2)今後の対応
使用済燃料国際共同貯蔵構想の実現可能性については、まず、使用済燃料の受入を希望する適切な国があるかどうかが問題である。受入国ではなく、送り出し国や第三国のみがイニシアティブをとって議論を進めても、構想の円滑な実現は困難である。また、受入国は、国際社会が安心して核物質の長期間貯蔵を委託出来る様政治的に安定していることはもとより、核物質管理と核不拡散努力において評価すべき実績を持つ国でなければならない。
そもそも、使用済燃料あるいは放射性廃棄物の処分は、発生国が対応するというのが国際的な基本認識である。使用済燃料あるいは放射性廃棄物の「貯蔵・処分のための国際協力」と「国際共同貯蔵・処分計画への協力」とは別問題であり、我が国は前者については前向きに対応していくべきであろう。我が国としては、使用済燃料の貯蔵技術や高レベル放射性廃棄物の地層処分についての科学的知見を共有することによって、国際社会に積極的に貢献していくべきである。1.余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力
(1)現状認識
1996年4月の原子力安全モスクワ・サミットにおいて、米露の核軍縮に伴う余剰兵器プルトニウムの管理・処分が核不拡散上重要な問題として取り上げられ、そこでの合意も踏まえ、国際的にこの問題に関する技術的検討が実施されてきている。米国は、自国の余剰兵器プルトニウムについて、MOX燃料として燃焼するオプションと固化処分するオプションの双方を追求していくことを決定し、関連施設の建設計画を進めている。一方、ロシアでは、米露の二国間協力による取組をはじめ、仏独露等の協力によるMOX燃料製造施設建設プロジェクト等、後述する我が国のアイデア等国際協力による複数の構想が進みつつある。
1999年6月に開催されたケルン・サミットでは、我が国から軍縮・核不拡散に関する2億ドル相当の旧ソ連諸国に対するプロジェクト支援を表明しており、このうち一部を余剰兵器プルトニウムの管理・処分プロジェクトに当てていくこととしている。(2)今後の対応
このような中で、我が国は、これまで研究開発を行ってきたMOX利用技術等の経験を用いて、ロシアの高速増殖炉BN−600による余剰兵器プルトニウムの処分構想を提案した。これに基づき、1999年より核燃料サイクル開発機構とロシアの研究機関との間で、共同研究を開始した。今後はこれら研究を踏まえ、今後の資金協力についても勘案しつつ、具体的な計画の検討が行われていくものと考える。
余剰兵器プルトニウムの管理・処分問題については、第一義的には米露の責任において取り組むべき問題であり、他のG8諸国等の役割は補完的なものである。本件は核軍縮の促進と核拡散防止の観点から極めて重要な問題であるが、今後、国際的な支援の在り方に検討が具体化していく中で、我が国としては、核軍縮の促進と核拡散の防止の観点から、世界の平和及び原子力平和利用の推進に貢献するため、米露当事国の責任と当事国以外の協力意義のバランスを考慮しつつも、本問題に対して他の主要国と歩調をそろえた外交上の主体的な協力を行っていくことが必要である。
なお、各国では、既存の炉形式による余剰兵器プルトニウムの処理処分を提案しているところであるが、これに加え、新型炉である高温ガス炉を用いた処分構想の検討が進められており、これについては我が国としても、必要に応じ、日本原子力研究所が有している高温工学試験研究炉を用いた技術的知見を提供していく。2.IAEA保障措置の強化・効率化
(1)現状認識
言うまでもなく、IAEA保障措置は、国際的な核不拡散体制の維持及び安定に極めて重要な役割を果たしてきている。このIAEA保障措置については、昨今、NPTに加盟し、IAEA保障措置を受け入れていたイラクの核兵器開発計画の発覚等を契機として、未申告の核物質や原子力活動の探知能力の向上を図るため保障措置協定の追加議定書が取りまとめられ、順次実施されるなどその強化に向けた取り組みが、国際的に進められている。
このようなIAEA保障措置の強化への国際的取り組みに対して、我が国は、自らの原子力活動の透明性の一層の向上を図ることにより国際的な信頼を醸成するとともに、世界の核不拡散体制の強化に貢献するとの観点から、早期に追加議定書を発効(1999年12月)させるなど、積極的に取り組んでいる。しかし、世界的には、未だ追加議定書の締結国が一部に限られているのが現状である。(2)今後の対応
@追加議定書の締結国拡大の努力
追加議定書については、IAEA保障措置の強化を実効性のあるものとするためには、すべての国が追加議定書を締結することによりその普遍化を図ることが必要不可欠であり、我が国としても、IAEAはもとより関係各国との緊密な連携の下、締結促進のための様々な方途を検討しつつ未締結国への働きかけ等そのための努力を継続する。
A「統合保障措置」の検討への積極的な参画
追加議定書のIAEAによる実施には、人的・予算的に追加的な負担が想定されるが、IAEAの資源には限界があるのも現実であり、今後の保障措置の有効な実施のための資源の確保について、IAEAはもとより関係各国による真剣な議論が行われることが求められる。
しかしながら、追加議定書の実施に必要な人的・予算的な追加的負担をどこまで確保できるかは正確に予測できないことも事実である。したがって、そうした状況を踏まえて、今後もIAEA保障措置を効果的に実施するため、核不拡散を確保するための優先課題の再検討と明確化を進め、現実の脅威に対応したIAEA保障措置の実施のあり方について検討していくことが重要である。
今後のIAEA保障措置の効果的な実施に関しては、現在、保障措置協定に基づく包括的保障措置と追加議定書に基づく保障措置との統合を検討する「統合保障措置」の検討がIAEAを中心として進められているところである。この検討を通じて、核不拡散を確保するための優先課題に対して重点化が図られるなど、IAEAの限られた資源が効率的に用いられる仕組みが構築されるよう我が国としても引き続き積極的に参画していく。B保障措置技術の研究開発への貢献
保障措置システムの基礎のひとつは、個々の計量管理・検証等の技術である。各国の原子力の研究開発利用が進展し、多様化して行く中で、そのような様々な条件に対して保障措置を適切に実施できるよう新たな技術の研究開発を実施していく必要がある。このような技術の研究開発は、保障措置の効果を高めるとともに、その効率化にも資するものである。
保障措置技術の研究開発については、我が国はじめIAEA加盟国は、それぞれ保障措置技術開発援助プログラムを設定し、IAEAの研究開発活動を支援してきているところである。今後とも、このようなIAEA保障措置に対する技術的支援を実施するとともに、関係各国による協力の下、保障措置技術の研究開発に積極的に取り組むことが肝要である。C国内保障措置制度の一層の充実
我が国は、IAEA保障措置を受け入れるとともに、自ら、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)に基づき、国内保障措置制度を確立している。国内保障措置制度については、当面は、1999年12月の原子炉等規制法の改正により導入された保障措置に係る検査業務等に関する指定機関(指定保障措置検査等実施機関)制度を着実かつ効果的に運用し、今後の追加議定書の実施等による保障措置関連業務の増大に適切に対応していく。
3.核物質防護への取組
(1)現状認識
冷戦終結後の旧ソ連・東欧諸国における核物質管理の状況を踏まえ、核物質の不法移転、海賊行為等、核拡散の懸念が国際的に指摘されている。このため、核テロリズム防止に向けた国際条約の検討が進められているほか、国内外における核物質防護のあり方について、関心が高まっている。
核物質の国際輸送に関して、その防護措置を規定する核物質防護条約は、1987年に発効し、以来5年ごとに見直しを行うも特段改訂されることはなかった。しかし、1998年、米国が国際情勢を踏まえ、核物質防護活動の強化を認識し、IAEAにおいて本条約の改正のための専門家会合を開くことを支持する旨を表明した。その結果、1999年11月、IAEAにおいて、非公式の専門家会合が開かれた。同会合では、改正の要否を検討する前に、まずは各国の核物質防護の状況を調査することとされ、本条約の技術及び運用面の検討を行うワーキング・グループが設立されることとなった。(2)今後の対応
これらの国際動向に対し、日本においては、原子力関係者の間でさえ、本問題についての関心が高いとは必ずしも言えない状況である。核物質防護のあり方をどうするかの問題については、国のみならず直接関係する産業界等の民間も一層関心を持って議論に加わる等、積極的に対応していくことが望まれる。
国際間及び国内を問わず、全ての核物質利用全般における防護措置の国際的な共通の指針としてIAEAが定めているガイドラインは、1975年に公表されて以来実情にあわせ、1977年、1989年、1993年にそれぞれ改訂が行われてきたところである。現在は1999年6月、新たな改訂が加えられたガイドラインが公表されている。これを受けた我が国の国内措置について、各施設別に脅威度を決定し、脅威度別に建設基準を設定するとともに、新たに国の規制を加える等法整備も含めて大きく変わろうとしているところである。
また、核物質防護に関する技術開発については、これまで公開することが適当でない性格のものが多かったこともあり、具体的な国際協力、国際共同プロジェクトは多くなかった。しかし、核物質防護に対する要請が強まっている現在、関連技術の向上は望ましいものであり、制約はあるが、我が国としても世界的な技術開発に関する情報交換を促進していく。4.CTBT早期発効及びFMCT交渉開始に向けた努力
(1)現状認識
@CTBT(包括的核実験禁止条約)
1996年9月に国連で採択され、我が国は1997年7月に世界で4番目に締結した包括的核実験禁止条約(CTBT)は、核不拡散・核軍縮を着実に進めるうえで重要なステップの一つである。本条約は、2000年3月末現在、署名国155ヶ国に上るが、その批准が本条約の発効要件となっている発効要件国44ヶ国中批准国は未だ30ヶ国であり、その早期発効が待たれている。
特に1999年10月、CTBT成立に向け指導的役割を担っていた米国において、上院がCTBTの批准を否決するという事態が発生した。我が国としては、その早期発効に向け、これまで1999年10月に行われたCTBT発効促進会議では、我が国は議長を務めた他、未批准の発効要件国に対し批准促進を働きかける外務大臣メッセージを発出したり、ミッションを派遣する等CTBT批准促進キャンペーンを実施してきた。
これが今後、世界の核軍縮・不拡散へ及ぼし得る影響ははかりしれず、特にロシア、中国の批准についても影響を与える可能性がある。AFMCT(兵器用核分裂性物質生産禁止条約、略称カットオフ条約)
カットオフとは、核兵器その他の核爆発装置用のプルトニウム及び高濃縮ウランの生産禁止のことで、CTBTに続く多国間の核軍縮・核不拡散措置の一つである。
1993年、条約交渉開始を勧告する国連総会決議がコンセンサスで採択されて以来、ジュネーブ軍縮会議(CD)において条約交渉開始の準備作業が行われ、1995年3月、カットオフ特別委員会の設置が決定された。しかし、核軍縮に関する特別委員会の設置問題めぐり交渉国間の意見が対立し、その後3年以上にわたり条約交渉は開始されなかった。1998年5月の核実験の後、インド、パキスタンはFMCT交渉に積極的に参加する旨表明し、右を機に交渉開始への機運が再び生まれ、同年8月11日、同条約交渉のための特別委員会の設置が改めて決定された。しかし、1998年の第3会期終了後、1999年8月の時点でも同委員会の再設置の目処は立っていない現状である。(2)今後の対応
CTBTに関しては、引き続き、我が国として関係各国に対し、主体的な働きかけを行うとともに、一方で、CTBTがいつ発効しても対応可能なように、我が国国内の体制も早急に整備していく。特に、主として米国の批准促進に資する観点から、新たな動きとして、2000年3月に、CTBTに限らず、広く軍備管理・軍縮・不拡散分野において日米が協力するための枠組み(日米軍備管理・軍縮・不拡散・検証委員会)が設立された。こうした枠組みを通じ、CTBT発効促進に向け、日米が共同の取組を行ったり、あるいはCTBT検証技術の向上に向けた研究開発協力を展開するなど、具体的な協力活動を進めていく必要がある。
他方、FMCTに関しては、我が国は、ジュネーブ軍縮会議において、核軍縮に関する特別調整者の任命を提案した。また、FMCTの技術的問題について検討を開始することを提案した結果、1998年5月、FMCTに関する技術的問題検討会合を開催するなど、FMCT交渉開始に向けた努力をしてきたところである。今後とも外交ルート及びセカンドトラックを通じた努力を傾注すべきである。5.核不拡散への取り組みに対する我が国のイニシアティブ強化
(1)現状認識
我が国は、1956年に制定した原子力基本法によって、原子力の利用を、厳に平和目的に限って行うことを明文化している。核不拡散上の国際的義務は誠実に遵守し、IAEAとの追加議定書もいち早く発効させたことは特筆すべきことであり、保障措置技術開発の国際協力においても積極的に参加するなど、核不拡散体制の維持・強化に貢献しているところである。
今後とも、原子力発電や核燃料サイクルの分野において、日本が世界において重要な役割を果たすことを考えれば、我が国の平和利用への姿勢を一層明確にし、国際的課題への主体的な取り組みをさらに充実させていく必要がある。21世紀における冷戦終結後の新しい国際秩序造りの過程において、世界の核不拡散体制の強化と普遍化によって国際社会の安定に貢献するという日本の役割は大きい。(2)今後の対応
@核拡散リスク低減のための国際的技術開発協力
核拡散を防止するためには、保障措置を中心とする国際的制度の強化に加えて、核拡散抵抗性を向上させる技術、すなわち、核拡散抵抗性の高い原子炉・燃料サイクル技術、核物質防護・管理・計量関連の技術の役割は重要であり、その開発を主体的に推進するとともに、こうした技術開発の国際協力に積極的に取り組んでいく。
すなわち、核拡散抵抗性のより高い原子炉および核燃料サイクル技術の開発を推進し核不拡散強化を図る必要がある。技術のみでは、核不拡散の危険を排除することは不可能であるが、将来の原子力システムはより高い核拡散抵抗性をビルトインした核の転用の可能性を減じた技術に基づくことが要求される。これには核物質を、より転用し難い形あるいは転用に魅力の乏しい形に変えること、核物質を処理する際の損失を最小にすること、また高度な核物質防護・管理・計量関連技術を開発、使用し、転用、盗用などを防止すること、なども含まれる。また核不拡散条約や軍縮条約に係わる検認を強化する新しい技術の価値も考慮すべきである。国際的な核不拡散体制の強化を増進するための、我が国としても効果的な多国間の技術協力を目指すことが必要である。Aプルトニウム利用の透明性の一層の向上施策
現在、世界全体の民生用プルトニウムの在庫量は増加しつつあり、核不拡散・核物質防護の観点から、国際的な懸念の高まりがみられる。既にプルトニウムを所有する関連9カ国(米国、ロシア、フランス、英国、中国、ドイツ、日本、ベルギー、スイス)が合意した「国際プルトニウム指針」(INFCIRC/549)では、プルトニウム利用に係わる基本的な原則を示すとともに、その透明性向上を目的として、各国のプルトニウム在庫量(使用済燃料に含まれるプルトニウムも含む)を、燃料サイクル政策とともに自主的に公表することとしている。今後は、この指針に基づく透明性向上など情報公開をさらに徹底し、対象国も拡大していくことが望ましく、また、需給バランスの重要性の認識を深めつつ、在庫の安全かつ確実な管理の在り方について、十分検討していくことが重要である。このための我が国の積極的な貢献、具体的な施策が期待される。
B朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)プロジェクトへの積極的協力
朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)は、1994年の米朝間の「合意された枠組み」に基づき、核兵器開発疑惑の対象となった北朝鮮の黒鉛減速炉及び関連施設を凍結・解体するとともに、北朝鮮がIAEAとの保障措置協定の完全履行を受け入れることと引き換えに、北朝鮮に対し軽水炉を供与するための枠組みであり、1995年、日、米、韓の協力により設立された。
KEDOは北朝鮮の核兵器開発を封ずる上で、最も現実的かつ効果的な枠組みであるとの認識のもと、我が国としてもこれを支持し、軽水炉建設のための10億ドル相当円の資金協力やKEDO事務局への人材の派遣等を通じて積極的に協力してきている。
米朝間の「合意された枠組み」に規定されているとおり、北朝鮮はNPTの締約国の地位に留まっており、NPT下のIAEAとの保障措置協定の実施を受け入れる責任を負っている。北朝鮮は、米朝間の「合意された枠組み」に従い、当該核関連施設の凍結を維持しているものの、IAEAが過去の核兵器開発疑惑解明のために必要と考える措置及び保障措置協定の履行に関し、これまでのところ、必ずしも協力的な態度を示していない。米朝間の「合意された枠組み」上も、北朝鮮に対する重要な原子力部品の供与にあたっては、それまでに北朝鮮がIAEAとの保障措置協定を完全履行していること及び今後とも完全履行することを改めて確認することが前提となっている。KEDO軽水炉プロジェクトは本格工事の段階に移行する等大きな進展を見せており、北朝鮮がこれら状況を真摯に受け止め、IAEAに対する協力を開始するとともに、IAEAとの保障措置協定の完全履行を通じて北朝鮮の核兵器開発疑惑が解明されることを期待する。C「核不拡散研究センター」の設置構想の検討
核軍縮の促進や核不拡散体制整備といった国際平和秩序構築への貢献をより一層強化するため、国際的な専門家、特にアジア諸国からの専門家の参加を得て、我が国において「核不拡散研究センター」を設立する構想を検討する。このセンターに期待される機能としては、欧米に現存する同様のセンターと連繋しつつ、政策研究とともに、必要とされる技術開発も実施することにより、総合的な視野から国際社会に対して勧告、助言を発信することである。
1.原子力安全に関する協力の推進
(1)現状認識
原子力研究開発利用に当たっては、安全の確保が大前提であること、また、ある国の原子力施設の事故等が他国の国民の不安を招き、その開発計画に重大な支障をもたらすこととなることから、原子力の安全確保の問題は、各国が協力して取り組むべき最も重要な国際的な共通課題である。
原子力安全の確保は、原子力活動を行う国と事業者が責任を持つべきものであることは言うまでもない。我が国は、放射線利用に関する安全管理の世界的水準の実績はもちろん、原子力発電所等の建設・運転に関して豊富な経験がある。よって、世界における原子力安全に関わる諸問題を敏感に受け止め、その解決に積極的に協力し、世界の原子力の安全性の向上に貢献して、リーダーシップを発揮していくことが重要である。
原子力安全の確保に関しては、基本的考え方において広い国際的合意の下、国際基準等の形で具体化していくことが重要である。我が国は、これまでも技術的知見により、国際機関の行う原子力安全の基本思想、考え方の構築、国際安全規格基準の整備等の活動に協力してきたところである。今後とも、国際基準の基盤となる技術やデータの蓄積を含め、この分野でもより積極的な役割を担うことが必要である。特に、原子力安全に関するデータベースの構築に関しては、近年、研究開発予算の伸び悩みあるいは低減を背景として、欧米の牽引力が低下しており、我が国の果たす役割への期待が従来にも増して大きくなってきている。
原子力安全のための国際的支援に関しては、安全性が懸念されている旧ソ連、中・東欧諸国の原子力発電所について、我が国は、二国間や多国間の枠組みを通じて協力を行ってきている。さらに、近年は、原子力研究開発利用が急速に拡大しつつある近隣アジア地域等との協力に当たっても、原子力安全規制体制の整備や安全確保のために必要な研究基盤、技術基盤の整備など安全確保に関する協力が重要となってきている。
原子力防災については、「原子力事故の早期通報に関する条約」、「原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」の締約国として、国際的な原子力防災訓練へ参加する等の多国間の枠組みを通じての国際協力、並びに防災技術の情報交換等の二国間での国際協力を実施している。(2)今後の対応
世界の原子力研究開発利用におけるフロントランナーの一員として、グローバルな視点で、原子力安全研究を積極的に進めるとともに、原子力安全技術の継承・発展を図り、国際機関を通じた協力や二国間協力に参加して世界の原子力の安全性向上に向けて一層の努力を続けていく。
特に、近年欧米では、原子力安全に関する技術的知見を提供する大型研究施設の維持が困難になっている状況に鑑み、我が国の研究施設を維持・活用するとともに、これらの施設に欧米及びアジア地域の研究者を受け入れ、研究の一層の活性化を図る。研究で得られる知見やデータは、IAEA、OECD/NEA等の国際機関とも連携しつつ、国際公共財として積極的に国際社会に提供していく。
原子力安全分野の国際協力において、国毎に異なる条件に配慮しつつも、国際基準の整備に向けて、我が国は積極的にリーダーシップを発揮すべきである。特に、原子力施設の安全確保に関連した国際的教育プログラムを我が国は積極的に推進すべきである。また、高レベル放射性廃棄物の処理処分の安全確保に係わる理解促進に資する観点から、関係基準類の整備や関連技術のデータベース化について、先進国間に止まらず途上国も対象に含め、国際機関を積極的に活用した協力の枠組み作りにリーダーシップを発揮すべきである。
また、アジア諸国との協力においては、相手国の国情や計画に合わせて安全規制に従事する人材の育成、規制関係情報の提供等の協力を二国間で行っていくほか、アジア原子力協力フォーラム、IAEA特別拠出アジアプロジェクト等、我が国が大きな役割を果たしている従来からの協力枠組みを効果的に活用し、アジア地域での原子力の安全性の向上を図る。
このように、原子力安全に関しては、安全規制に係る様々な取り組みが国を中心に行われているが、「WANO」の活動を中心に、民間でも海外事業者との情報交換等を通じてセーフティカルチャーの醸成支援を推進している。また、JCO事故時の反省からは、事故トラブルの時には、特に海外へも情報をタイムリーかつわかりやすく情報発信することの重要性が認識された。今後は、その具体的対応策の樹立に向けて官民協力して活動を強化する。2.研究開発協力の推進
(1)現状認識
原子力の研究開発を推進するに当たっては、国際的ニーズと国内的ニーズに対応した相互協力により相乗効果を図るため、我が国としても国際協力を積極的に展開してきたところである。これにより、協力相手同士の持つ知識の集約と資源の節約が可能であり、従って開発リスクも分散できた。また、欧米の技術のキャッチアップ的な要素が強かったこれまでの協力においては、人材養成的な要素や、研究開発の国際的評価の効果も期待されていたと言える。
昨今の世界の原子力の研究開発を取り巻く状況においては、人材、施設、資金といった研究開発資源について大幅な伸びが期待できないことに加え、産業のグローバル化と自由化が進展している中で、国際協力の有効性がますます増しているといえる。
原子力研究開発分野における欧米の牽引力の低下や、アジア地域における今後の原子力研究開発利用の拡大の見通しを踏まえ、我が国には、研究開発分野においても、これまでのキャッチアップ重視の態度から、フロントランナーにふさわしい主体性のある国際協力が求められている。(2)今後の対応
@国際研究開発への挑戦
新しい挑戦に対する心性的、文化的抵抗を打破して、全く新しい技術概念の開発や既存の原子力技術のブレークスルーを指向する革新的な技術開発等、革新的な技術開発等の国際研究開発に積極的に挑戦していく。その際、他国の主導するプロジェクトに部分的に貢献するのではなく、総体としての技術システムのマネージメントについて挑戦していくという考え方に立って、先進諸国と協調しつつ推進していく。
一方、研究開発資源を最大限に活用する観点から、我が国が保有する優れた各種研究開発施設について、積極的に海外研究者に開放し、世界の研究開発の中核的拠点としての役割を果たす。特に、我が国の地政的な特徴を考えた場合、アフリカに対する欧州、南米に対する米国と同様の位置づけとして、北東アジア、東南アジアにおける原子力研究開発の拠点としての我が国の役割が、今後一層重要性を増していくと考えられる。このため、北東アジアに対しては、主にエネルギー利用や原子力安全といった分野、東南アジアに対しては、主に放射線利用、放射線安全や人材養成といった分野を中心として、研究開発等の場と機会を提供する役割を担っていく。A高速増殖炉関連技術、先端的研究開発に関する国際協力の推進
高速増殖炉と関連する核燃料サイクルに係わる研究開発を効率的に推進し、得られる成果及び知識を世界的に共有化する必要があり、今後も一層共同研究の実施、情報交換、研究者の交流といった国際協力を積極的に推進していくべきである。特に、我が国が保有する「常陽」、「もんじゅ」を始めとする各種試験施設を海外の研究者に解放するとともに、海外の各種試験施設を積極的に活用していくことが重要である。
さらに、例えば、高温ガス炉を用いた水素エネルギーシステムの研究開発といった先端的な研究開発についても、積極的に国際協力を進める。B放射性廃棄物の処分研究開発に関する国際協力の推進
高レベル放射性廃棄物に係る地層処分研究開発は、各国共通の技術的課題が多いことから、評価手法や評価結果の妥当性について相互に比較・検討するなど、国際的な協力を推進することは重要である。また、我が国を始め各国が推進している深地層研究施設計画において、各国が専門的知見や技術を持ち寄り、協力して研究開発を行うことにより、研究開発資源として共有し、有効に活用することが可能となる。こうした考え方の下、高レベル放射性廃棄物処分に係わる研究開発を効率的に推進し、得られる成果及び知識を共有化する必要があり、今後も一層共同研究の実施、情報交換、研究者の交流といった国際協力を積極的に推進していくべきである。このため、2国間の協力のみならず、OECD/NEAやIAEAといった国際機関を活用することも重要である。
放射性廃棄物全般の処分技術開発についても、評価手法や処分の安全性に係る判断基準、放射性物質として扱う必要がないものと区分するクリアランスレベルの設定等に関し、国際協力を推進する。C核融合炉研究開発への積極的な協力
我が国の核融合研究開発については、国際競争の中で世界をリードするポテンシャルを有するにいたっている。一方、原子力に特徴的な大型施設の必要性は、国際協力の必要性を益々高めている。このような状況の変化に対応し、各国との競争と協力の調和を図りつつ、これまでの共同研究の実施、情報交換、研究者の交流といった国際協力の基盤に立って、さらに新たな国際協力のあり方を構築していくことが必要である。
国際熱核融合実験炉(ITER)計画については、我が国の核融合研究開発の中核的役割を担っているとともに、EU及びロシアにおいても次世代の核融合研究の中核とされており、国際共同プロジェクトとして進められている。国際共同でITERを建設・運転するための新しいシステムの総合的なマネージメントを担うべく、今後ともITER計画に積極的かつ主体的に取り組んでいくことが重要である。3.放射線利用・放射線医学に係る国際協力
(1)現状認識
放射線は、医学、農業、工業等、様々な分野で利用が進んでおり、既に生活に無くてはならないものとなりつつある。この分野で、我が国は、アジア地域において幅広い協力活動を実施しており、相手国の安全基盤の確立、研究、技術レベルの向上に貢献してきている。
また、放射線の健康影響に関する調査研究については、原爆被爆国である我が国が世界において最も広く深い知識を持つ分野であり、このことは、国際機関の放射線の防護・安全基準が基本的に我が国の被爆者の調査結果に基づいていることに示されるている。なお、国内において、本分野の我が国の世界への貢献は必ずしも正当に評価されていないきらいがある。JCO事故においても、重度の被ばく者3名の治療において、我が国の医療レベルが評価されたところであるが、この分野における国際的な評価について、国内で充分に認識されるべきである。(2)今後の対応
放射線利用分野の協力は、原子力発電を行っていない開発途上国等においても強いニーズがあり、また実施可能であるため、原子力研究開発利用への理解を促進する観点からも効果的であり、引き続きアジア地域において積極的な協力活動を推進していく。
放射線の健康影響については、我が国の広島・長崎における被爆調査結果が世界基準を策定する上で活用されているように世界に卓越した知見であることを改めて充分認識する必要がある。したがって、我が国が高く評価されているこの被爆医療分野において、国際的な課題に対しリーダーシップを取って対応していくという国際社会への貢献について真剣に考えるべきである。
具体的に言えば、@今後とも広島・長崎における放射線の健康影響に関する知見の国際的基準への貢献など国際的活用がなされるよう一層配慮していくこと、A特に、緊急時被爆医療に関して、現場において円滑な対応ができるような国際協力体制を整備すること、Bそのために関係各省庁が円滑な連絡の上で対応できるような国内体制を整備すること、などが考えられる。1.アジア諸国との原子力開発分野での国際的取組
(1)現状認識
アジア地域での経済事情には、一時、悪化、混乱があったものの現在は回復基調にあり、エネルギー需要も増大傾向にある。中長期的には、原子力研究開発利用拡大の必要性、可能性の大きい地域であることに変わりはない。また、この地域の多くの国は開発途上国であり、医学、農業等の分野における放射線や放射性同位元素の利用といった非発電利用がもたらす社会経済的な恩恵にも大きくあずかる地域である。また、将来的にはこの地域での原子力発電開発は進展するであろう。
@多種多様なアジア地域
我が国は、この地域にあって、最も先進的に原子力研究開発利用を推進している国であり、アジア地域での国際協力に果たすべき我が国の役割は大きい。また、アジア地域での原子力研究開発利用の普及のみならず、我が国の原子力研究開発利用への理解と支援を得、更にアジア地域との信頼感の醸成の観点からも、良好な協力関係を維持、発展させることが重要である。
しかしながら、アジア地域の国々は、宗教、文化、政治、社会、産業、経済においてそれぞれ固有の歴史的発展を遂げた国々であり、世界の他の地域との比較において極めて多種多様である。したがって、この地域の原子力分野における協力を考える際には、これを十分考慮する必要がある。A多様で広範な協力分野
原子力研究開発利用を推進する上においては、安全規制などの制度面や原子力技術を担う人材面でのインフラ整備は不可欠であり、我が国として積極的に協力できる重要な分野である。技術面でも、原子力発電技術の他、農業分野、医学分野などでの放射線の利用技術、高度な放射線利用や放射性同位元素製造のための研究炉利用技術、研究炉自身の運転、管理技術など、多様な技術協力が可能である。また、セーフティーカルチャーの醸成は原子力安全の確保の上できわめて重要であり、技術、制度、人材養成全てにわたる協力分野となり得るものである。このように、協力の分野もまた多様で広範である。
B原子力協力の枠組
このような協力を行う枠組としては、各国の国情、特徴に配慮した二国間協力もしくは地域協力として実施しているほか、国際機関の枠組も活用している。また、原子力発電に関する運転経験などの情報交換やピアレビューでは民間の協力が進展している。
二国間協力は、1980年代半ばから本格的に始まり、これまで、原子力に携わる人材の養成、原子力の研究・技術基盤の整備、原子力安全規制体制の整備、原子力安全文化の醸成など、長期的な展望に立ち、技術向上等に係る自助努力を支援する協力を制度、技術の両面から進めてきている。例えば、具体的な人材養成の面では、関係省庁の所管する各種の制度により、アジアの技術者、研究者を受け入れ、また、我が国の経験者をアジア諸国へ派遣することで、人材交流を図り、人的インフラ整備への協力を図っているところである。
こうした二国間協力の進展と平行して、地域協力としては、原子力委員会の主催するアジア原子力協力フォーラムにおいて、情報・意見交換、技術交流の場を提供しており、地域での関連技術レベルの向上などに寄与しつつある。このほか、アジア地域において「安全最優先」の理念を確認し、実現していくための意見交換の場として、1996年及び1997年にはアジア原子力安全会議も開催されている。
また、IAEAを通じた原子力平和利用に関する技術協力や原子力施設の安全性向上に資するプロジェクトを支援しているほか、多国間協力として、1970年代に締結されたアジア・太平洋地域の地域協力である「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」の下、工業、医学、生物学における放射線利用、放射線防護等の分野で域内開発途上国に対する協力を進めてきた。C原子力発電の現状
原子力発電の分野では、アジア各国はいくつかのカテゴリーに分けられる。
既に相当規模の原子力発電所の建設、運転を行っている韓国、台湾では、使用済燃料と低レベル放射性廃棄物の処理・処分の問題が深刻化しつつある。中国は10年前から急速にいくつかの建設計画を進めたが、現在、そのテンポが鈍ってきている。
アセアン諸国は比較的豊富な化石燃料の利用により、原子力発電への指向はそれほど強くないが、ベトナムなどが導入に意欲を示している。その他では北朝鮮のKEDOには重要技術、資金、法制等様々な課題がある。
南アジアでは、インドは20万kW前後の小型の原子力発電所を10基程度運転しているところに特徴があり、パキスタンは、13万kWのカナダ製原子炉が稼働中である他、中国から導入した30万kWの軽水炉を建設中である。(2)今後の対応
@相手国の国情と開発段階に応じた協力
アジア各国との協力は、原子力分野に限らず、特に今世紀における過去の歴史的事実を背景に様々の困難がある。したがって、原子力開発利用の協力にあたっては、まず、我が国のアジア外交全体を十分踏まえて進めていくことが肝要である。
その上で今後も引き続き、各国の原子力科学技術のレベル、原子力研究開発利用の段階等に応じ、適切な計画の下、技術、制度等の面から国情にあった長期的な協力を進めていく。その際、安全の確保と核不拡散の遵守は最大の条件であり、長期的にこの方針を進めるために政治的、経済的な安定が不可欠である。前述の如く、この地域の特色である各国毎の国情の違いを踏まえつつ、安全確保と核不拡散等とが適切になされるよう、きめ細かい協力を行っていく。A原子力利用の基盤整備支援
各国が自立的に原子力研究開発利用での実績を積んでいくことができるようになるためには、その国の技術向上に係る自助努力を支援し、中長期的に研究開発能力の向上を図ることが重要である。
具体的には、アジア原子力協力フォーラム、RCAを通じた地域協力・交流を引き続き推進していく。その際、我が国からの一方的な協力あるいは支援に止まらず、地域内各国の自立を促し、各国の人的、物的、財政的資源を可能な限り活用し、相互理解に基づく相互協力活動でのパートナーシップの確立を図っていく。原子力委員会自らが主催するアジア原子力協力フォーラムにおいては、1)研究炉の利用、2)放射性同位元素、放射線の農業分野での利用、3)放射性同位元素、放射線の医学分野での利用、4)原子力のパブリックインフォメーション、5)放射性廃棄物管理、6)原子力安全文化(セーフティーカルチャー)、7)人材養成の7分野で、この場を活用し、協力に関する各国のニーズの吸い上げに努め、共同研究などの具体的協力活動への展開、各種資源の有効活用が可能となるよう強化を図る。例えば、原子力損害賠償制度、放射性廃棄物管理、緊急事態対応などの共通関心事項について、我が国が積極的に働きかけるということも検討する。
また、協力活動をより具体的に強化する施策として、リタイアした研究者及び行政官などを中心として、人材登録データベースを作成し、国内における人的協力体制の層を厚くするようにする。また、この人材登録データベースを活用し、例えば、事故等緊急時に積極的な情報発信ができるようなスピーカーズビューローを創設するなどが考えられる。また、優れた製造技術の次に日本が世界の産業をリードすべき分野は、過消費、過少資源のエネルギー分野、特に原子力開発分野となろう。したがって、アジアで唯一の技術先進国として日本が負っている義務から考えても、我が国は原子力平和利用の面でアジア各国に対して思い切った支援を行い、例えば、アジア諸国の原子力発電モニタリングのための国際レジーム作りを含めた地域協力を行うことなども考えられる。B原子力発電所建設計画への対応
将来のアジア諸国の原子力発電所建設計画への対応については、既に原子力発電を導入している中国に対する対応と同様、今後も国際競争の下、民間主体でビジネスベースにより協力していくのが適当である。民間企業に蓄積された商業発電プラントの設計、製作、保守等のハード、ソフトを十分に活用しつつ、国は、必要に応じ、相手国や国内民間からのニーズを踏まえ、二国間協定締結などによって環境の整備を行い、また、原子力発電プラント建設に係る制度、人材等のソフト面での相手国のインフラ整備への協力や、研究機関を中心とした基礎技術に関する技術協力などを中心に行っていく。
原子力発電分野において特に重要となる制度、システムのうち原子力損害賠償制度や、放射性廃棄物管理、緊急事態対応等の共通関心事項についても、我が国は地域内先進国として、国際機関等をも活用しつつ各国に積極的に働きかけ、イニシアティブを発揮していく。さらに、各国に対し、原子力平和利用の遵守と、核拡散防止への協力を前提とするよう、NPTの批准、追加議定書を含めたIAEA保障措置の受け入れ、CTBTの批准を呼びかける努力を継続する。
また、世界原子力発電事業者協会(WANO)への支援と協力を強め、発電所の建設と運転をワンセットとした安全性確保に最大限の努力をかたむける。2.欧米諸国との取組のあり方
欧米諸国においては、原子力は厳しい状況にあるが、依然として高い技術ポテンシャルを有しており、我が国は、これらの諸国を引き続き原子力研究開発利用におけるパートナーとして、共同研究や人材交流等、協力を進めていくことが基本である。
(1)米国
@現状認識
我が国は原子力研究開発利用の初期段階から米国からの支援協力を受けてきたところであり、その協力関係は、我が国の原子力研究開発利用の進展とともに、一層重要なものとなってきた。その米国においては、この20年間、新規の原子力発電所の建設はなく、また、商業用再処理は行っておらず、FBR開発は中止して、全体的には原子力の意義が低下傾向にあるように見える。しかし、依然として100基以上の原子力発電所が稼働している世界最大の原子力発電大国であり、いくつもの有能な国立研究所と100隻を越す原子力艦船の保有を含めて、原子力技術の開発について極めて高い能力を有している。
原子力発電に関する米国の最近の動向としては、厳しい電力の自由化が進められる中で、経済性の低い中・小型炉が閉鎖される一方、運転実績の良い原子力発電所は石炭火力より発電コストは安く、最近では原子力発電所の買収や合併等が盛んに進められている。その背景は、1990年代初期に始まった電気事業再編計画の下で、複数の原子力発電所を保有することによる運転保守コストを低下させ、更なる原子力発電の経済性の向上を目指すものである。そして、このことが結果的に安全性と稼働率の向上をもたらすとして、NRC(原子力規制委員会)もDOE(エネルギー省)も支持している。その例が、発電所許可の期間の延長であり、売却発電所についての料金上、税法上の優遇策である。
こうした傾向から、今後5〜10年の間に原子力発電所の数は現在の約100基から90〜95基に、原子力発電事業者の数は現在の44社から10〜15社になると予測されている。
他方、最近の新たな動きとしては以下の2つがあげられる。
まず、原子力の研究開発の分野では、DOEが、「原子力エネルギー・研究イニシアティブ(NERI)」を1999年度より予算化しており、世界の科学技術のリーダーとして先端的な原子力技術を追求していこうとする米国の意気込みも伺える取り組みを進めている。この中には、新しい原子炉の設計コンセプトが含まれており、中小型炉、核拡散抵抗性の高い原子炉、放射性廃棄物管理技術等、我が国としても関心の持てるものが含まれている。
次に、核不拡散の面では、世界的な民生用プルトニウムのストックの増加による核不拡散の観点からの懸念の増大を理由として、バックエンド政策を決定していない国々に対し、使用済燃料を直接処分する政策を改めて強く奨励する方針を打ち出してきている。しかし、我が国及び西欧のプルトニウム利用政策に対する既存のコミットメントは変更しないとしている。
特に、1999年9月のIAEA総会におけるリチャードソンDOE長官の「民生用使用済燃料とプルトニウムのストック量の増加懸念」などの表明を受けるかたちで、その後、米国主導で、同年11月には、米国デンバーで「放射性廃棄物国際会議」、2000年3月には米国ラスベガスで使用済燃料・高レベル廃棄物の貯蔵・処分に関する「東アジア原子力協力会議」、同年3月には米国ワシントンで民生分離プルトニウムの取扱いをテーマとした科学・国際安全保障研究所の会合が開催されるなど、一連の活発な核不拡散政策に係る動きが注目される。A今後の対応
我が国において、再処理によるプルトニウム・リサイクル政策を推進する重要性は変わっておらず、米国のこの点についてのコミットメントも何ら変わっていないが、一方で米国は、バックエンド政策を決定していない国々に対する民生プルトニウム利用を推奨しない方針を打ち出している。これについては、原子力分野に係る我が国と米国との緊密な友好関係を維持・拡充しつつ、積極的な情報発信と直接的対話を通じて、核燃料サイクル政策を推進している我が国の立場への理解を深めるよう努めていく。
緊密な友好関係の維持・拡充の観点から、21世紀の原子力産業を牽引していく新型炉の開発や高レベル放射性廃棄物の処理処分技術の開発、医療等への放射線利用といった幅広い原子力科学技術分野において米国との協力を一層強化していくことが必要である。
新型炉の研究開発分野では、米国におけるFFTFの運転再開検討やNERI計画の立ち上げ等の動向を注視しつつ、安全性、経済性、環境負荷の低減、核拡散抵抗性等に優れた炉と関連する燃料サイクルシステム概念に関する共同研究について、段階を踏んで米国内の国立研究所等と協力を強化していく必要がある。
高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究開発分野では、WIPPやYucca Mountain高レベル放射性廃棄物処分場計画の実施に向けて知見を蓄積した米国内の国立研究所等との協力を強化していくことを通じて、地層処分に係わる性能評価モデルの検証、安全基準類の整備や安全設計・評価に係わる品質保証システムの開発を推進していくことも重要である。
また、米国との協力関係を再活性化し、人材交流、研究炉等の各種試験施設の相互活用、地下研究施設の国際共同利用等を通じ、幅広い原子力科学技術について協力を促進する。
いずれにしても、これまで以上に、国、民間、それぞれのレベルでの対話を怠ってはならない。また米国の核不拡散に関する研究・開発に対しては積極的に協力を行うこととする。解体核兵器に由来するプルトニウムや高濃縮ウランの処分についての協力は、友好関係の保持に資することはいうまでもない。(2)欧州
@現状認識
欧州全体に共通する動向として、電力需要の低迷、電力の自由化と規制緩和の進展、国際的送電網の整備に伴い、欧州全体が電力の単一市場になりつつあり、西欧における天然ガスパイプライン網の整備と相俟って、新規の原子力発電所建設の必要性が減少している。これに加えて近年、フランス、ドイツにおいて「脱原子力」「反原発」を掲げる政党の政権参加が相継ぎ、チェルノブイリ事故の影響も相俟って、既存の原子力発電所の閉鎖を求める運動もある。また、地球温暖化防止対策の面では、原子力発電の建設の推進ではなく、石炭から天然ガスへの転換といった方向を指向している。
我が国との原子力分野における協力の観点から欧州で最も重要な国の1つであるフランスは、欧州で最大の原子力発電国であり、原子力先進国である。我が国は同国と、再処理、高速増殖炉開発等多様な分野で今後とも良好な協力関係を維持し、友好関係を深めていく。エネルギー資源の少ない原子力先進国であるフランスは我が国と状況が似ており、軽水炉、ウラン濃縮、FBR、先進リサイクル分野、高レベル放射性廃棄物処分研究等様々な分野で協力を進めてきている。他方、最近ではスーパーフェニックスの閉鎖や高レベル放射性廃棄物の処理処分方策での多様な選択肢の検討を進めるなどの動きがある。
ドイツについては、現政権は脱原子力政策をとっているが、政府と電力産業界の脱原子力に関する話し合いにも不透明感が強い。欧州における脱原発の政治的雰囲気は深刻な状況にあるが、例えば代替エネルギーについての具体的な議論もなされていない。また、供給網の連繋強化によりEUが単一の電力市場になりつつあり、各国個別には原子力発電所を持たなくても、結果的にフランスの周辺の国々は同国の原子力発電に頼るという状況がある。
我が国としては、この欧州の「脱原発」に関する動向について、注意深く見守る必要がある。A今後の対応
欧州も原子力分野においては高い技術レベルを保持しており、FBR、核融合等の巨大プロジェクトについて国際分業を進めるとともに、相互に先端的な研究施設を開放する等、フランスをはじめとする欧州原子力先進国との協力を引き続き進めていく。
FBR開発、核燃料リサイクル分野において、フランスは、ロシアとともに重要な我が国のパートナーであり、この3極での開発戦略を構築していくことは意義がある。また、高レベル放射性廃棄物の研究開発については、フランス、スウェーデン、スイス、EU等との協力を進めていく。
特に、フランスは、現状においても我が国にとって重要なパートナーであり、例えば高速増殖炉開発など、関連技術の開発の先頭に立っている両国が協力し効率的に研究開発を推進し、牽引車としての役割を果たしていくことが期待される。したがって、ウラン濃縮技術協力などあらゆる分野において、今後ともフランスとの協力関係の強化、緊密化が重要である。
高レベル放射性廃棄物の地層処分に係わる研究開発に関しても、地下研究施設を利用した地層処分システムの長期安定性評価や安全評価に係わる共同研究の推進、情報交換が重要である。3.旧ソ連、中・東欧諸国との取組のあり方
(1)現状認識
@旧ソ連型原子力発電施設の安全性確保
1986年4月のチェルノブイリ原子力発電所の事故以来、旧ソ連型の原子力施設の安全性に関する懸念が国際的に高まり、1991年12月のソ連邦崩壊後のミュンヘン・サミット(1992年7月)において、この問題が大きく取り上げられ、西側先進国による様々な安全支援事業が実施されている。
旧ソ連邦内及び中・東欧諸国では、旧ソ連で開発されたRBMK(圧力管型黒鉛炉)及びVVER(加圧水型軽水炉)の2種類の原子炉が建設された。その後、東西ドイツの統一、旧ソ連邦崩壊後、旧東ドイツを中心としていくつかの原子炉発電所が閉鎖されたが、現在も多くの旧ソ連、中・東欧諸国でこれらの原子炉が運転されており、特にRBMK及び第1世代のVVERについて安全性への懸念が高い。
原子力安全に関する責任は、基本的に当該原子力施設を所轄する国が負うという国際的に認められている原則を定着させることが重要である一方で、原子力事故は国境を越えた影響を及ぼす可能性があることから、原子力安全確保が国際社会共通の重要課題とされてきた。
これまで、我が国は、原子力安全の分野における技術支援等を中心に、多国間協力及び2国間協力による様々な国際協力を実施してきている。A旧ソ連諸国との研究協力等の推進
我が国は、今後とも高速増殖炉の実用化の可能性を追求することとしているが、旧ソ連諸国、特にロシアでは、高速増殖炉を中心とした核燃料サイクルの確立を目指した研究開発が進められ、現在も運転中の高速炉であるBN−600に関する豊富な研究開発実績、運転経験等が、我が国の研究開発に資する可能性を有している。
また、この他の原子力研究開発分野に関しては、日本、米国、欧州委員会(EC)、ロシアが、国際科学技術センター(ISTC)を設立し、旧ソ連諸国における研究者との研究協力のための基盤整備が行われている。現在、本センター加盟国においては、民間企業を中心とした協力者拡大を模索している。B余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力
ロシアの核兵器解体に伴い生じる余剰兵器プルトニウムの管理・処分への協力の重要性の高まりを受け、国際的に複数の取組が進められており、我が国も核燃料サイクル開発機構を通じた協力を実施している。詳細は第3章1.で記述したところである。
(2)今後の対応
@旧ソ連型原子力発電施設の安全性確保
旧ソ連、中・東欧諸国への原子力安全支援に関しては、欧州をはじめとする各国が様々な二国間協力を実施している他、IAEA、OECD等の国際機関による協力、欧州復興開発銀行の原子力安全基金及びチェルノブイリ石棺基金を通じた協力、G7やG24支援調整グループの活動等の多国間協力など、多様な協力の枠組み及び協力を調整するシステムがある。
我が国が協力を行うに当たっては、これらの枠組みを活用しつつ、既存の協力活動、関係国との調整を十分に行い、協力活動の効率化を図っていく。なお、旧ソ連型炉に関しては、原子力発電所の寿命延長を計画している国が多いものの、今後寿命を迎える原子炉については、廃炉されるケースが増えると考えられ、こうした分野における技術協力の可能性について、今後、必要に応じ、検討していく。A旧ソ連諸国との研究協力等の推進
ロシアは優れた科学技術のポテンシャルを有しており、今後我が国がロシアと緊密な協力関係を強化していくことは、効率的な研究開発を推進する上で重要でもある。我が国の高速増殖炉分野の研究開発については、現在、ロシアとの専門家会合等を通じた共同研究等具体的な協力について協議を行っている。
また、カザフスタンとの高速増殖炉の炉心安全研究分野での研究協力も積極的に推進していくことが重要である。この他の原子力研究開発分野に関しては、今後もISTC設立の主旨にのっとり、協力可能な分野の検討を行う。B余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力
今後、ロシアの余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力について、国際的な支援の在り方に対する検討が具体化する中で、我が国として、核軍縮の観点、核不拡散上の観点、米露当事国の責任と当事国以外の協力意義のバランス等を考慮し、他の主要国と協調しつつ、主体性を持って応分の協力を行っていく。具体的には第3章1.で既述した通りである。
4.国際機関の積極的活用
(1)現状認識
IAEA、OECD/NEA等の原子力に関する国際機関の活動に対しては、国際的な共通課題の解決、コンセンサスの形成、効率的な国際協力計画の推進等を進める観点から、財政的支援ばかりでなく、これまで以上の人的貢献も含め、積極的に参画していくことが重要である。
しかしながら、国際機関への人的貢献については、原子力関係国際機関への資金分担率に比し邦人職員数の割合が極めて低いのが現状である。例えば、IAEAの場合、我が国は米国に次ぐ世界第2位(約18%)の資金分担をしているにも係わらず、従事する邦人職員の割合は4%にも満たない状況である。特に、課長職以上の主要なポストについては、国際機関での勤務経験が採用の重要な要件となる場合が多いことから、こうした要件を満たす邦人職員は数が極めて少なく、状況の改善は容易ではない。(2)今後の対応
我が国としては、原子力に係る理解増進、各国共通の課題であるバックエンド対策、保障措置の強化・効率化、解体核から生じる余剰兵器プルトニウムの検認体制の確立、安全確保や原子力損害賠償制度整備を促進するために国際機関の活用を図るとともに、自らの技術と経験を活かして積極的に協力していくことが重要である。
人的貢献に関しては、今後は国際機関への邦人職員の増加、主要ポストへの計画的派遣に努めていくため、国内の関係各機関において国際機関への派遣を考慮した人材養成を行い、コストフリーによる派遣等を通じて国際機関における経験の計画的蓄積等を図っていくことが必要である。具体的には、例えば、@国際機関における経歴及び評価を国内の原子力関係組織における人事政策上キャリアパスとして位置付けること、A応募・帰国時の積極的バックアップを実施していくこと、B中高年齢層の人材を積極的に活用すること、C国際機関の空席情報について、情報提供を積極的に行えるような会員制の登録システムを活用し、広く官民関係者の応募予定者に対して応募支援を行うこと、などにより、より多くの人材を適所へのタイムリーな派遣につとめる。
また、国際機関の中立性、普遍性を生かした国際的な基準、条約の策定や、バックエンド対策等各国共通の課題に関する国際的なコンセンサスの形成に資する、国際機関の活動に引き続き協力する。さらに、核データバンク事業等国際機関を通じた共同プロジェクトの実施により国際協力の効率的な推進を促す。 近年、国際機関が役割を果たすべき課題の増加等により各機関とも財政事情が厳しい状況にある。国際機関への財政的支援に関しては、我が国に関連の深い重要テーマに関する活動に対し拠出する。また、専門家派遣等の支援は、より積極的に行う。