第一分科会における論点整理
(文明論、国民の信頼の確保、安全と安心の確保)

平成12年2月4日
第一分科会事務局

(構成)
T.文明と原子力

U.国民の信頼と安心の確保
 1.安全確保の在り方
 2.信頼感、安心感の確保の要件
  (1)信頼感の確保
  (2)安心感の確保
 3.意思決定、合意形成の在り方
  (1)合意形成とは
    @地域における合意形成
    A国民の合意形成
  (2)意思決定の在り方
    @意思決定の責任
    A住民参加の在り方
    B公正な政策決定の在り方
 4.国民の信頼と安心の確保のための具体的取組
  (1)情報公開
  (2)情報提供
  (3)教育
  (4)リスクコミュニケーション

注【策】は、策定会議委員からの意見
 【追加】は、分科会委員の追加意見


T.文明と原子力
(1)大量生産・大量消費型社会から循環型社会へ
(2)地球環境との調和と、持続的な経済成長の同時達成
(3)現世代が享受する便益と後世代に残す資産、負債
(4)技術の成熟化
(5)グローバリズムと我が国の対応
U.国民の信頼と安心の確保

1.安全確保の在り方
(基本的考え方)

(安全文化とは)
(モラル)
  • 求められるモラルの程度を考えるべきである。勤労のモラルのために慣習的規制、介入的規制、法律的規制の国情にあったオプティマム・ミックスの秩序化が重要である。
(防災)
  • 事故・災害を想定した体制の構築と住民への事前説明が重要である。
  • 集団的パニックに対処するための組織が必要である。
(規制)
  • 原子力の推進と規制の完全なる独立が国際的にも要求されている。
  • 最善の規制方式は、国情により異なり、我が国に適した規制の枠組みを目指すべきである。
  • 規制の役割分担と責任の明確化を図るべき
  • 第三者機関の在り方を検討すべき。
  • 「国の規制」と「事業者の自己責任」について、過剰なリクワイアメントによる遵守意識の低下も考慮すべきであり、事業者自らのモラル・遵守意識の確保を大前提として、事業者自らによる安全の維持・向上の整備が大切である。
(事故調査)
  • 従来の技術的な事象の詳細化のみならず、再発防止対策を中心に据えた事故調査が重要である。
(専門家の役割)
  • 専門家の育成、適切・有効な活用が安全確保のために重要である。【策】

2.信頼感、安心感の確保の要件
(1)信頼感の確保
  • 国民の原子力に対する信頼感の確保のための要件としては、@安全運転の実績の積み重ねとそれに向けた努力、A安全文化を社会全体が共有し、原子力に携わる者がその規範に則り行動すること、B十分な情報公開及び情報提供の3点が挙げられる。
  • 加えて、原子力の意義の明確化、信頼できる人が担う技術が信頼される。【策】
  • 「なぜ、原子力か」という位置づけの明確かが必要。【策】
  • 国民の信頼感醸成のためには、政策決定過程の透明性の確保が重要であり、開かれた体制によるエネルギー政策の議論、双方向のコミュニケーションも重要。【追加】

(2)安心感の確保
  • 安心感の確保のための要件としては、@安全の確保とA如何に安全(リスク)を伝えるか(リスクコミュニケーション)が挙げられる。
  • 社会の安心を技術で実現するのが安全ではないか。また、どの程度安全なら十分かは、技術者が押しつけるのではなく、社会が自分で判断するべき。【策】

2.意思決定、合意形成の在り方
(1)合意形成とは
  • 合意形成については、「立地地域における合意形成」と「国民の合意形成」とに整理して、議論を行う必要がある。
  • 何を持って合意形成がなされたのか判断基準について社会と合意する必要がある。
 @地域における合意形成
  • 「立地地域における合意形成」とは、原子力施設の立地により、地域住民が何らかの形で全員がプラスになることである。
  • 「立地地域における合意形成」とは、結局は議会における多数決である。
  • 立地地域が国策に協力するという視点が重要であり、国として原子力の位置づけを明確化することが必要。【追加】
 A国民の合意形成
  • 「国民の合意形成」とは、第一義的には原子力の意義を理解してもらうことであるが、実際の大部分の国民にとっては専門的な理解よりも、事故がない、あるいは放射線は日常的に存在しているといった、ある種の「慣れ」の状態である。
  • 国会において、エネルギー政策や原子力の意義・必要性について広範に議論し、国としての方向性を出すことが必要。【策】
  • 文明論的な視点からの説明と共に、各エネルギーの長短を定量的・具体的に示して説明することが重要である。【策】

(2)意思決定の在り方
 @意思決定の責任
  • 意思決定における第三者の役割については、第三者の参加が閉塞的にならないために有効である
  • 第三者の限界もあり、専門家、また責任者としての第一者が第一義的に主体となるべきであり、第三者の適切な役割と活用法を十分に見極める必要がある。
 A住民参加の在り方
  • 時代の趨勢として、意思決定と住民との関わりについては、従前のパブリック・アクセプタンスから、初期段階から住民が意思決定プロセスに参加するパブリック・パーティシペーションへ移行しつつある。
  • パブリックコメントのあり方については、早い段階での募集や、コメントに対する回答の必要性がある。
 B公正な政策決定の在り方
  • 第三者の活用、パブリック・パーティシペーションに関連して、声の大きな人に引きずられ、公正な政策決定ができなくなるとの危惧もあり、意思決定に参加する「市民」としての十分な教育が必要との指摘もなされている。

3.国民の信頼と安心の確保のための具体的取組
(1)情報公開
(情報公開・提供)
  • 情報公開法でいう「情報公開」は透明性の確保のためのものであり、国民の原子力に対する理解のために情報を知ってもらう「情報提供」とは区別する必要がある。情報提供を含めた「広報」とは組織の戦略であり、「公開」とは組織のシステムに関わることであり、両者は共に必要であるが、異なるものである。【策】
  • 情報公開:社会の求めに応じて情報を開示すること
      全ての情報がどこにあるか、出すか否かの判断は誰がするか、間違った判断をした場合にどういう責任をとるか、等のシステム整備が重要。
    情報提供:提供側が自己正当化のために社会に情報発信すること
         受け手が理解できる工夫、受け手が望むタイミングが重要【策】
  • 情報公開の目的は何なのか、透明性の確保なのか、結果のみならず政策決定のプロセスの明確化が求められているのか、この他にも情報公開の目的はあるのかということを、原子力に対する国民の信頼確保の観点から検討する必要がある。
  • 情報公開に関する議論においては、現実の問題としてその負担の問題も考慮する必要がある。
(非公開情報について)
  • 核物質防護や外交問題等に係る情報についても、住民の安心のためには安全性や健全性に直結するデータは公開すべきであり、そのような情報の扱いを議論すべきである。
  • 情報公開というと無条件で良いものと受け止められるが、場合によっては逆に情報公開しないほうが良いものもある。
  • 情報公開できない場合はその理由をきっちり提示すれば国民の納得が得られるのではないか。情報を開示しない場合もありうるが、その前提は、何か問題が生じた場合の責任の所在が明らかされることである。
  • 秘すべき事項はあらかじめ明示し、ルールを設けるべき。

(2)情報提供
  • 事業者や国は十分な情報を国民に対して分かりやすく提供すべき。【策】
  • TVで原子力チャンネルをもつことは意義がある。
  • 情報を出す際には、その理解を助ける情報をあわせて出すべき。
  • 住民がデータにアクセスできるよう手続きを確立することにより、国や電気事業者が緊張感を持つことになる。
  • 情報公開については、原子力に関しては現状でも他に率先して情報公開がなされていると信じるが、一方、一層の情報公開が必要との声が大きいのも確かである。情報の提供方法の問題。
  • 原子力分野からは膨大な情報が出されているにもかかわらず、情報が広がらないのは、情報の製造、流通が原子力畑の中だけでおこなわれている可能性がある。【追加】
  • 誤った情報が流通したとき早期に訂正情報を流すことが重要。その役割の担い手を決めることが重要。【追加】
(マスメディアの役割と在り方)
  • 原子力の議論においては、マスメディアを含め反原発かそうでないかという二分法的な単純な議論が続いている。また、安全と危険の二分法ではなく、その中間にある様々な危険の度合いを説明することが必要。
  • 国民の情報源として、新聞、テレビは、政府や電力会社のパンフレットを遙かに上回っている。
  • マスコミには、事故等否定的な面ばかりでなく原子力のエネルギー供給における役割についても公平かつ客観的な報道を期待。
  • 報道機関の正確な理解を得る努力が必要。【追加】
  • テレビは公正中立な報道に努めているものの当事者の主観が入る。多くの視聴者はそれに気がつかず公正・中立と思いこみ世論を操作してしまう。マスコミも極端な主張を行えば世論から乖離し、批判を受けマスコミも世論に操作されることがある。
  • 冷静に議論できる人が必要であり、ターゲットに応じた情報提供に努めるべき。
  • マスコミの大量の情報に逐一対応するのは困難であり、検証や点検を行うジャーナリストも必要であろう。

(3)教育
  • 原子力に関する信頼感の確保や安心感の確保を図る上で教育の果たす役割は 大きい。現行の学習指導要領においていくつかの科目において取り上げられている。
  • 様々な原子力関係機関から、教材の作成・配布、教員を対象とした研修等の支援が行われている。これらは、担当者に届かないことや十分に活用されないこと、提供した教材の活用状況や学習成果の把握など双方向的な連携がなされていない問題点がある。
  • 原子力教育においては、総合的な学習の時間の活用を期待。
  • 教員に正確で適切な教材を提供することのできる支援センターが必要。
  • エネルギー問題と環境問題は不可分であり、エネルギー・環境教育が重要。【追加】

(4)リスクコミュニケーション
(リスクの認識)
  • 確率的な事象の認知に関しては、人間の判断は合理的には、形成されない。リスクの認知は心理的なバイアスを受けるため、物理的に同じリスクでも条件によって判断が異なる。
  • リスクの認知は、その人の知識レベルとは別個に構成される。知識を与えるだけではリスクの社会的受容は高まらない。
  • 主観的な恐怖感、未知性に加え、航空機事故のように事象一回あたりの死亡者が大きいとリスクを大きく評価しがちである。
  • 知識は無くともなれることにより冷静な判断が可能となる。原子力も慣れを形成することが必要である。
  • 確率論的リスク評価は、工学的には有用であるが、国民は、知覚されたリスクと知覚されたベネフィットで判断する。
(リスクコミュニケーション)
  • 「リスクコミュニケーション」については、潜在的な危険性の存在を共通認識として認知した上で、リスクについて個人がそれぞれの立場から議論、比較考慮し、リスクと正面からつきあう社会を形成することである。
  • 国民の信頼感や合意形成とも関連して、リスクをありのまま伝えるという姿勢がまず大事である。
  • 人間は、リスクを心理学的な影響のもとにしか知覚できないものであり、技術的確率論は安心につながらないとの指摘もあり、これらを十分に検討した上でのコミュニケーション方法を探る必要がある。
  • 事故のリスクや期待値についての説明は、理解促進に有益。【追加】
  • 放射線の影響に対する社会の認識を高めることが重要である。
  • リスク・リスク・トレードオフが今日の社会の現状。【策】
  • 原子力に対する不信感を払拭するためには、放射線に対する正しい理解が重要。 【策】
  • 放射線の影響については、特に低線量被ばくの影響やホルミシス効果の研究の促進とその結果を社会に伝える努力が必要。【策】