国際シンポジウム「21世紀の原子力平和利用と核問題
−人類の知恵の結集と挑戦−」の開催について(概要報告)
平成12年3月15日
(社)日本原子力産業会議
学会、政府、産業界の専門家・関係者から構成され、調査・分析をもとにわが国の核不拡散政策に関わる協力方策を検討している「原子力平和利用・核不拡散政策研究会」(事務局:(社)日本原子力産業会議)が主催者となり、3月9日(木)、10日(金)の2日間、東京・麹町会館において、国際シンポジウム「21世紀の原子力平和利用と核問題−人類の知恵の結集と挑戦−」を開催した。
同シンポジウムは、開閉会セッションと第1から第5のパネルセッションで構成され、海外 10カ国11名のパネリスト、および国内から13名の講演者・パネリストが議論に参加した。一般参加者は国内外から約180名を数えた。
各セッションの概要
●開会セッション
主催者を代表して、黒澤満原子力平和利用・核不拡散政策研究会座長(大阪大学教授)が開会挨拶を述べたのに続き、今井隆吉世界平和研究所主席研究員が開会スピーチを行い、開発途上国を中心とした来世紀のエネルギー需要を満たすための原子力の重要性を指摘するとともに、次世代のエネルギー供給は人類と環境のより複雑な相互作用の上に成り立つだろうと述べた。
さらに、A.ベアー前原子力供給国グループ議長が基調講演を行い、広島への原爆投下以降約50年間の原子力開発と核問題を歴史的に認識した上で、人類は種々の国際的な工夫と施策により「核の竜」を手なずけてきたが、新世紀を迎えるにあたり、新しいシステムを構築するべきだとし、現行核不拡散条約(NPT)の持つ不公平さを排除し、保障措置協定、包括的核実験禁止条約(CTBT)等の基本的利点を内包する特徴を持つ新しい核不拡散条約の創設を提案した。
●第1パネル
本パネルは、1999年ケルンサミット共同宣言にうたわれた「脅威削減のための国際的パートナーシップ」を構築する上で基本となる核不拡散政策の重要性・必要性を理念を中心に議論し、今後の課題を明確にすることをねらいとして行われた。
5名のパネリストからのキーノートスピーチを受けて、以下のコメントがなされた。
- 核兵器の削減が進みつつあるが、余剰核物質の処分のように問題も残されている。NPT延長は加盟国全体の意思であるにもかかわらず、南アジアがこれに反している。CTBTに関しては米国も様々な努力を継続しており、米国が最後とはならない。
- ベアー氏の基調講演で述べられた新たな概念の条約(新NPT)に関する具体的な進め方としては、新たなアイデアを出して議論を尽くすべきである。
- 現状のNPT及びCTBTに多くの問題点があり、新たな概念のNPTの有効性も疑問である。
- 新たな考え方は必要であるが、本質的な課題はNPTではなく、紛争解決にどう取り組むかということである。
- NPT遵守の監視方法に関わる第3条の適用、原子力平和利用についてNPTの第4条に注目することが必要。
●第2パネル
本パネルは、世界の安全保障の最大課題の一つである冷戦終結の負の遺産の後始末、および核解体からのプルトニウムの処理・処分の問題について議論を進めることをねらいとして行われた。
3名のパネリストからのキーノートスピーチを受けて、以下のコメントがなされた。
- 解体核処分についてはロシア国内の処分についてドイツで中止となったハナウのプラントを移設するプランもある。
- 解体核の余剰Puが問題になっているが、米国は商業用のPuからも爆弾を製造しており、こちらの余剰も問題であるが、これについてはまず兵器級の処分が最重要である。
- 民生用と兵器用の違いについてそれぞれのリスクや科学的なデータに基づく定義等が必要。
- 使用済み燃料の長期貯蔵についても言及されたが、ロシアでは環境委員会が反対している上、議会もプライオリティを高く設定していない。米国もロシア国内の法律改正が必要なものであることから非常に慎重な姿勢である。
●第3パネル
本パネルは、原子力平和利用を、国際核不拡散レジームといかに円滑かつ効果的に適応させていくかという認識のもと、IAEAの今後の指向すべき方向、保障措置、輸出入管理、核物質防護、核拡散抵抗性技術開発などの課題について議論するねらいで行われた。
7名のパネリストからのキーノートスピーチを受けて、以下のコメントがなされた。
- 今後、原子力平和利用を行いたい国のアクセスをどのように保証していくのか
- 原子力平和利用の積極的な動きがアジアで生じても当然である。核不拡散の実現のためには信頼醸成が最重要。
- 開発途上国のエネルギー問題と非核兵器地帯の調和が必要である。
●第4パネル
本パネルは、日本が果たすべき国際核不拡散政策への貢献、ならびにわが国の原子力平和利用推進方策、核不拡散政策に対する外国の有識者からの期待について明確にすることをねらいとして行われた。
2名のパネリストからのキーノートスピーチの後、以下のコメントがなされた。
- 日本の原子力利用について中国では懸念を抱いている者もいる。個人的には、日本の国際Pu貯蔵構想に対しては懸念を持つ。日本は、政治的に現在の核不拡散政策を堅持してほしいとともに、輸出規制を厳しくしてほしい。
- 日本の原子力平和利用については何の懸念もないが、核不拡散政策には疑問がある。米国に追随しない独自の核不拡散路線を取るべき。東京フォーラム提案は特に新味がない点で失望した。
- 日本はアジアでリーダーシップを果たすべきであり、ASIATOM構想を推進することが望まれる。
- 日本国民は核兵器に対して嫌悪感があり、国家安全保障のために核兵器を所有するよりは、米国の核の傘に入るほうがましだという感情がある。今後、日本は核不拡散のための努力をより以上に続ける必要あるが、近隣地域に安全保障上の問題がある限りは米国の核の傘にとどまらざるを得ない。これは現実論と理想論のバランスを保つ意味で矛盾したものではない。
- NPTは不公平な部分はあるとしても、当時の状況を考えると現実的な制度であった。核不拡散の制度も進化をとげていくものである。将来的に可能性のあるものとして、機微な施設の多国間管理があげられる。また、核拡散抵抗性の強い燃料サイクル技術を開発していくことも重要。
●第5パネル
本パネルは、「原子力平和利用・核不拡散政策研究会」がまとめた国際的提言案「21世紀における原子力平和利用推進と核不拡散のための行動計画」に対し、参加者より率直な意見を出してもらうことをねらいとして行われた。
研究会から説明された提言案について、以下のコメントがなされた。
- 保障措置追加議定書は重要な要素ではあるが、法的には各国の義務とはならない。あくまでも、法的でなく外交的努力により保障措置対象国を拡大していくべきである。
- NPT条約執行機関の設立はよいアイデアである。しかし注意しないと、新機関は官僚的機構となってしまうし、既存の機関(軍縮会議等)のような機関をまた新たに作り出すことになる。
- 提言案では、核兵器国に核軍縮には具体的な進展がないという指摘がなされているが、これは正しくない。NPTは強化されており、核軍縮の努力も行われている。
- 核兵器国の軍事用Puと民生用Puを区別をすることについては個人的には賛成するが、実質的には大変難しい作業である。
- 核不拡散研究センターの設立は歓迎すべきアイデアである。アジア・太平洋地域の研究センターとしての特色を明確にすべきである。センターには、技術開発スタッフとあわせて政策決定者を参画させることが重要。
●閉会
閉会挨拶として遠藤哲也原子力委員より、保障措置実施システムの強化、核物質防護強化、プルトニウム管理の透明性向上方策、核兵器解体で発生する核物質の管理における国際協力について意見が述べられ、シンポジウムの日程が終了した。
以 上