ロシア解体プルトニウム処分協力への取り組みについて

平成12年2月14日
核燃料サイクル開発機構

1.目的

 国際社会の当面する重要懸案事項のひとつであるロシア余剰解体プルトニウム処分に対し、サイクル機構がこれまで蓄積してきた原子力平和利用技術を活用しつつ協力し、世界的な核軍縮・核不拡散に貢献することを本件の目的とします。
 具体的には、ロシアの解体プルトニウムをロシアで開発された振動充填燃料(バイパック燃料)製造技術を用いて混合酸化物燃料(MOX燃料)とし、ロシアの高速炉BN-600(電気出力600MW)において、現在の濃縮ウラン燃料に置き換えて燃焼させるオプション(BN-600バイパックオプション)について、ロシアの関係機関と協力して実施することであり、我が国の解体プルトニウム処分に対する貢献策の柱として米国との協調の下に、安全の確保、透明性の確保を前提として進めるものです。
 また、この協力を通してバイパック燃料製造技術に係る共同研究及び作業経験等に基づく知見の獲得を図るとともに、BN-600炉心・燃料設計等の実機での経験を蓄積し、実用化戦略調査研究を始め、サイクル機構が進める研究開発業務に最大限活用してまいる所存です。

2.全体計画

 上記のBN-600バイパックオプションは、ロシアの解体プルトニウム総計約20tonを高速炉一基で20年間(寿命延長10年を含む)で燃焼させるものであります。

 (1) 実施ステップ
 本オプションは実施にあたり、以下の3つのフェーズで進めていくことが提案されており、サイクル機構は現在フェーズ0及びフェーズ1に対する具体的な協力方策を検討しております。 (図1)
@フェーズ0(準備段階:1999年〜2003年)
このフェーズは、本格的な解体プルトニウムの処分に先がけて行われる準備段階で、主な実施項目は以下のとおりです。
Aフェーズ1(BN-600部分MOX炉心化(ハイブリッド炉心化):2000年〜2006年)
このフェーズは、BN-600炉心の約1/5のウラン燃料をバイパックMOX燃料で置き換え、かつ増殖を止めるため、径方向ブランケット集合体を取り出し反射体で置き換えます。必要なMOX燃料は、バイパック燃料技術開発を進めてきたロシア原子炉科学研究所(RIAR)の施設を増強し、製造を行います。新燃料輸送容器の製造、BN-600の新燃料取り扱い施設の整備及び使用済みMOX燃料貯蔵施設の整備等もあわせて実施します。このフェーズ1で年間約0.3トンの解体プルトニウムが処分することができます。(フェーズ1は4年間を予定しており、合計1.2トンの解体プルトニウムが処分できる計画です。)主な実施項目は以下のとおりです。
Bフェーズ2(BN-600全MOX炉心化:2002年〜2020年)
このフェーズでは、BN-600炉心を全てバイパックMOX燃料で置き換えます。本フェーズでは、年間約250体のMOX燃料製造施設の整備とBN-600プラントの寿命延長(2010年→2020年)が必要です。主な作業項目は以下のとおりです。

本オプションは、

@既存炉であり、かつ良好な運転実績を持つBN-600を用いること、
ABN-600での照射実績を持つMOXバイパック燃料を用いること、
BRIAR施設での大量製造実績とロシアの高速実験炉BOR-60での良好な照射実績を持つバイパック燃料製造技術を用いること、
Cハイブリッド炉心用として既存施設内の設備増強が可能なRIAR施設を用いること、
といったことから、「信頼性が高い、低コスト、早期実施が可能」といった特長を有しています。

 (2) 役割分担
 実施にあたっては、関係国間で適宜役割分担して進めていく考えであります。
フェーズ0については、我が国は、2件の実験的研究につき分担し、ロシアの研究所と共同研究を行っています。
 フェーズ1については、技術開発要素が高い項目について分担する方針で、表1の役割分担で検討を実施しています。
 フェーズ2については、作業項目の検討を実施していますが、その実施に関し各国の参加を呼びかけている段階であり、役割分担の検討には至っていません。
 日本及び米国の分担する解析・設計等の具体的な作業は契約に基づきロシア側でなされ、日本及び米国はロシアでの作業費用の負担と作業経過、結果の技術面での確認を行うことになります。

(表-1)フェーズ1の役割分担(案)

日本 ・ ハイブリッド炉心設計及び安全解析
・ 反射体設計
・ RIAR施設の増強
・先行照射試験
米国 ・ 使用済みブランケット燃料乾式貯蔵容器の製造
・ 使用済みMOX燃料貯蔵施設の建設
・ MPC&A面(核物質防護、保障措置等)での整備
ロシア ・ ハイブリッド平衡炉心用MOX燃料製造
・ 出力補償用ウラン燃料集合体設計・製造
・ ハイブリッド炉心変更作業
未定 ・ MOX新燃料輸送容器の設計・製造
・ ハイブリッド初期炉心用MOX燃料製造
・ ハイブリッド炉心許認可
・ 反射体製造
・ BN-600新燃料取り扱いシステム整備

3.現在の状況
 (1) フェーズ0の共同研究概要
 米国は、これまで米露共同研究で、全体計画検討、コスト評価及び解析コード・データ整備を実施しています。これらの成果について、サイクル機構は、米露研究のロシア側取りまとめ機関であるエネルギー物理研究所(IPPE)と占有情報に関する取極め(PIA)を締結し、報告書の入手が可能となっています。
 サイクル機構は、現在、フェーズ0として以下の2件の共同研究をロシアの研究所と実施しております。
@BFS-2臨界実験
A3体MOXバイパック燃料製造・照射試験

 (2) フェーズ1の実施項目及びスケジュール
 フェーズ1の実施項目とスケジュールを図2に示します。このうちサイクル機構が資金分担を検討しているのは、技術開発要素が強い項目である径方向ブランケット削除のうちの反射体設計、BN-600炉心変更のうちの炉心・燃料設計及び安全解析、バイパック燃料製造のうちのRIAR施設の増強と先行照射試験(燃料設計、製造、照射、照射後試験(PIE))です。
@反射体設計
A炉心・燃料設計
B安全解析
CRIAR燃料製造施設の増強
D先行照射試験(燃料製造、照射、PIE)

 (3) フェーズ2の予備検討
 フェーズ2ではBN-600の寿命延長と全MOX炉心化が必要となるほか、新たな燃料製造施設の手当てが必要になります。特にBN600の寿命延長と全MOX炉心化は、大幅な炉心の改造を伴うことからその成立性について十分な予備検討が必要です。これについては米露研究でも計画されていますが、サイクル機構においても来年度以降フィージビリティスタディを行い、本計画の成立性について確認していくこととしています。

4.期待される成果
 フェーズ1における成果として、他のオプションに先駆けて有意量の解体プルトニウムを処分する事により、また、軽水炉等に比べて一基の炉として処分できる量の大きいことから、高速炉の本分野での有効性が示されます。また、バイパック燃料製造技術、BN-600炉心・燃料設計等に係る共同研究、作業及び意見交換等を通して知見の獲得を図るとともに実機での経験を蓄積し、実用化戦略調査研究を始めサイクル機構が進める研究開発業務にこれらを最大限活用していきます。

5.今後の進め方と課題
 (1) 留意点
 本件は、米露間の核軍縮合意に基づいて国際的に進められている検討への協力という側面を持つものであり、日本、米国、ロシアがそれぞれの分担を着実に実施して初めて全体目的が達成されるものです。現在は日本提案に基づいて米露両国と技術的検討を進めている状況にあり、今後米国との密接な連携の下に他の関係国とも調整を取りつつ、ロシアと詳細な作業項目・スケジュールを詰めて合意された実施計画を完成することが急務です。  したがって、今後、本件を進めるに当たっては、専門家会合等を活用し日米露三国の協調を図るとともに、国内調整を実施していきます。

 (2) 課題
 現在、サイクル機構はフェーズ0の協力を実施しているところでありますが、これまでの経験からより大きな成果を上げるためには、以下の課題の解決が重要であると感じております。

@フェーズ2への対処方策の検討

A協力環境の整備

以上