平成12年3月21日

「放射線の健康影響」についてのコメント

日本原子力研究所  前田 充

 2月29日の第五分科会(第5回)における、放射線による健康影響リスクに関する議論の中で、リスク研究の意義について誤解を招くおそれのある発言を行ったので、それに関する追加のコメントを行いたい。また、この研究分野の国際貢献についての意見を述べたい。

(1)リスク研究の意義等
 過日の議論は、「リスク論=低線量域での直線仮説」を前提とした議論展開と理解したが、リスク論と低線量(率)域での放射線の健康影響の解明とは本来個別に議論できるものである。
 原子力の利用や宇宙開発・利用等に伴って受けるであろう放射線、とくに低線量(率)域における放射線の健康リスクを的確に評価し、放射線の防護基準に適正に反映させることは重要である。これは、環境における有害物質に対する基準や原子力施設から出る極低レベルの放射性廃棄物の処分方策などとも密接に関連している。従って、放射線リスク研究そのものは、積極的に進められるべきである。
 その際、既に議論があったように、安全性に対する住民の理解とリスクの受容性が重要なカギとなる。すなわち、放射線リスクに関するコミュニケーション並びに種々のリスク源に対する総合的リスク指標の確立が、安全性とリスクの理解に重要な役割を担うと考えられ、この点にも留意して研究を進める必要がある。

(2)国際貢献
 放射線影響研究や放射線防護研究等の保健物理研究もまた、その成果をICRPなどの国際機関へ発信することにより、国際的な放射線防護基準、放射線被ばく測定・評価方法及び放射線計測の品質保証の指針や勧告の構築、改善や合理的な実施に貢献できる。また、成果に基づく東南アジア諸国等への助言、支援を通じて、アジア地域の放射線安全の確立に貢献することも重要である。