平成11年10月29日
第五分科会における審議項目の追加について(提案)
日本原子力研究所 前田 充
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放射線の環境影響に係る
「原子力利用と環境科学」
を主題とする下記のような討論を提案いたします。討論は、第5回で審議が予定されている「放射線の健康影響」の際に議論されることが適切かと思います。
(1)提案の背景
人類を取り巻く生活環境には、宇宙放射線やラジウム鉱泉などの自然放射性物質から放出される放射線など自然放射線が日常的に存在し、X線撮影のように人工的に作られた放射線に触れる機会も多い。生活環境における自然放射線や放射線作業時の低線量放射線の健康影響は本分科会の重要な審議項目の一つであり、国民の関心も高い。
一方、広島・長崎の原爆や過去の重大な原子炉事故に見られるように、予期せず大量の放射線や放射性物質が自然界に放出された場合には、多数の人間が被曝するだけでなく、広範囲にわたって地球環境に影響を及ぼすことになる。自然界に放出された放射性物質は、様々な形で環境中を移行・循環し、場合によっては生態系の一部分に蓄積・濃縮されて、間接的に人体に影響を及ぼすことさえありうる。
JCO核燃料加工施設の事故の際には、原研は様々な形で事態の収拾に向けた支援活動を行ったが、その中で周辺住民から「微量の放射性物質は環境中でどうなるのか?」、「人々にどのように蓄積されるのか?」、「現在と将来の健康への影響は?」といった疑問の声が数多く寄せられ、放射線の健康影響だけでなく、環境影響への危惧の念もかなりあった。
原子力利用は、自然界に存在しなかった放射性物質の生成と放出をともなうため、これまでに知られていない環境の変化と生態系の変化を引き起こす可能性がある。従って、環境における放射性物質等の挙動を解明・予測するとともに、環境放射線が生態系に及ぼす影響を評価し、環境の保全と修復に必要な知見を得るための「原子力の環境科学」を進めることが重要と考える。
(2)提案理由の骨子
JCO核燃料加工施設の事故等を踏まえ、環境中に放出された微量の放射性物質の環境への影響(拡がり)や放射線の人体への影響は国民の関心事の一つ。
同時に、自然放射性物質の存在、フォールアウト等による人工放射性物質の環境蓄積等について、現状の正確な理解を国民に求めることも重要。
環境放射線は「放射線の健康影響」の評価における重要なソースタームの一つ。
(3)主な論点
環境中の放射性物質(自然放射性物質、フォールアウト等人工放射性物質の環境蓄積等)の現状。
環境中での放射性物質の移行挙動。
環境中の放射性物質の分析、モニタリング。
環境中での放射性物質による生物、生態系への影響。
環境中の放射性物質の低減・環境保全技術
(4)
「原子力利用と環境科学」
に関したプレゼンテーション
プレゼンテータとして 合志陽一国立環境研究所副所長 を推薦する。
(以上)