平成12年2月14日
富士電機株式会社大瀬克博

革新的な中小型炉の開発について

 21世紀を展望すると、電力・エネルギー需給の不確実性が増すことが考えられる。そのような社会情勢の変化に対応して社会の持続的発展を図るために、我が国の原子力開発は、電力供給・エネルギー供給の多様化、立地の多様化、さらに国際協力にも目を向けた取り組みが必要である。このため、ABWR、APWRや次世代大型炉と併存して、新たな発想に基づく安全性、経済性に優れる革新的な中小型炉の開発を進めていくことが有意義である。また、社会的意義の大きい、革新的な原子力エネルギー技術の開発は我が国の原子力産業の活性化そして若い世代への魅力的な技術分野の提供につながると考える。(表1)

1.開発の要件
 軽水炉の開発は中型炉から始まり、次第に大型化してきた。これは、大型化のスケールメリットによる出力当たりの建設費や運転保守費の低減を追求してきたためであり、同時に限られたサイトの有効利用を図ることもできる。
 同一の設計で建設するのであれば規模の経済が働くのが一般的な原則であって、今後の中小型炉の開発においては、在来炉のスケールダウンでは高い経済性を達成することは困難であり、中小型炉の特徴を活かした簡素化、モジュール化、静的安全性の導入などを行い、革新的な要素技術を取り入れたプラントを開発することが必要である。単なるスケールダウンによる中小型炉を目指すのであれば技術開発を必要とする要素は乏しく、中小型でも現在の大型の経済性を凌駕し得るような新規技術を開発の目標に据えるべきと考える。
  従って、革新技術の例としては以下をあげることができる。
 @高い経済性の達成に向けた技術
静的安全技術を取り入れた安全系の簡素化、機器の一体化、モジュール化、汎用品活用、工場生産範囲の拡大などのプラントの構成、製造方法の改善、及び燃料の長寿命化、熱効率向上、新材料の導入など。
 A人との関わりの少ない安全性を目指した技術
原子力プラントの更なる普及を考慮し、人との関わりの少ない固有の安全性や静的安全技術の取り入れ。
 B運転保守の容易なプラント
プラントの単純化による運転保守の簡素化、及び腐食や各種応力に対応出来る新材料開発など。
 C核不拡散性の高い炉
使用済燃料の引き取りなどを考慮した核不拡散性の高い炉心・燃料設計、長期燃料無交換設計。原子力を使用する国が増すことを想定すると、核不拡散性に対するニーズは高い。

2.開発の現状と今後の進め方
 開発対象となる炉は、すでに開発に取り組んでいる炉、新技術を取り入れて新たに開発するアイデア段階の炉など、開発段階が異なっており、今後の開発の進め方も異なったものになる。アイデア段階の炉については、小型軽水炉、中小型高速炉、小型の高温ガス熱利用炉など、実証段階の炉には高温ガス発電炉、実用段階に近い炉には中型の単純化軽水炉がある。(表2)
 @アイデア段階の各種中小型炉については、まず大型炉に勝り得る安全性、経済性を高める概念の基礎となる革新的基盤技術の開発およびプラント概念の検討を実施する。テーマの選定にあたっては、公募など、競争により優れたアイデアが発掘できるシステムを導入し、研究開発の活性化を図る。次に、開発の対象とする概念を選定し、技術的・経済的フィージビリティ検討を実施して、実用化価値の評価を行う。なお、研究は、国が主体となり、国の研究機関、大学、民間などが協力して実施することが考えられる。
これらの技術開発には多くのオプションがあると考えられることから、研究成果の目標設定、評価の枠組みの明確化、研究マネージメントの方法など、官民が協力して効率的な研究開発の進め方を検討する必要がある。
 A高温ガス発電炉については、最近海外でも実用化開発の動きがあるが、我が国で実用化に向けた開発を進めるべきかを判断するための評価がまず必要である。このため、実用プラントの技術的・経済的フィージビリティ検討を実施し、その結果と高温工学試験研究炉(HTTR)の運転・試験実績をもとに、我が国の原子力政策の中での位置づけを明確化し、実用化価値の評価を行う。このような評価を経た上で、実用化に向けた開発を進める。実用化に向けた開発にはHTTRの活用を図る。なお、フィージビリティ検討は、国の支援のもとに、国の研究機関、メーカーなどが協力して実施し、官民共同でその評価を行うことが考えられる。
 B中型の単純化軽水炉については、実用に近い段階にあることから、大型炉との比較を踏まえて、具体的ニーズ、経済性の見通しなどを明確にする。

 なお、中小型炉には炉型、出力などにより、さまざまな特徴を有するものがあることから、それらの特徴を踏まえて開発ニーズ、目標設定等を十分検討した上で開発を進める必要がある。

3.国際協力
 我が国の原子力は国際的にフロントランナーの位置を占めており、従来以上に主体的に国際協力を進める必要があると考える。
 海外には送電網が未整備で、中小規模の分散電源を必要とし、今後急速なエネルギー需要の伸びが見込まれる地域が多い。これらの地域のニーズに適合した中小型炉の開発・実用化は、地球環境保全およびエネルギー安定供給への貢献が期待できる。
 革新的中小型炉の開発、実用化にあたっては、我が国の大型軽水炉の実績に基づく設計・製作・運転・保守技術、安全文化、および高速炉開発、HTTR開発などにより蓄積した革新技術などを背景に主導的立場に立って、これらの国々と協力し開発を進めることが望ましい。具体的には海外の需要を考慮しながらプラント概念を固め、要素技術開発・実証、プラント実証を共同で実施する。また、IAEAなど国際機関を通じて革新的中小型炉の国際安全基準を策定することなどが考えられる。
 この場合、二国間(多国間)協定、核不拡散、燃料供給・使用済み燃料の取り扱いなどの国際的条件整備、我が国の技術開発成果の活用および共同開発に対する国の支援が望まれる。

表1 21世紀の新たなニーズと革新的な中小型炉の有効性