1. 核融合研究の展開と現状
核融合研究は着実な進展を遂げているが、そのなかで多種の閉じ込め方式の取捨選択が行われてきた。それに連れ(1)核融合燃焼状態の実現(2)低い循環入力による維持(3)より低い放射化など環境整合性、という研究課題が明瞭になっている。つまり(1)燃焼状態の実現に向けては、閉じ込め研究の実験パラメタが核融合燃焼領域に近付いている。経験に基づく法則性や運転領域の知見が蓄積整理され、設計の基礎をなし、そしてトカマクによる燃焼実験炉の構想(ITER)がなされている。(2)循環パワ−の低減化を目指す研究では、トカマクの定常化やヘリカル系の研究が進められている。(3)低中性子炉では一段と優れた閉じ込め性能とプラズマ安定性が必要であり、球状トカマクなどの萌芽的研究がある。更に慣性閉じ込め方式や、ミラー型閉じ込め研究も行われている。
核融合開発にとってプラズマ研究の果たす役割が大きい。H-modeの発見に始まるプラズマ閉じ込めの改善が、燃焼実験炉のサイズ(コスト)を大きく低減した。閉じ込めの改善は核融合燃焼実験の実現に大きなインパクトを持った。同時に、運転コストに関連する循環入力の低減についても、今後の研究の寄与が大きい事が強調される。それらにより炉の構想への科学基盤(炉形式の選択基準)が提供できる。
学術研究としての進展を見ると、多種の個物の知識が集積し普遍法則化への努力が進められている。プラズマ物性の理論的基礎付けが進んだ一例としてH-modeの発見と電場分岐と揺動抑制の理論構成があげられる。物理学としての普遍化がなされている。
こうした現在の研究成果に立脚し核融合炉心を展望するとき、重要な性質はプラズマが遷移する事である。燃焼プラズマの物性は非燃焼プラズマと連続的につながるかは本質的な課題である。
2. 今後の研究
核融合炉心、炉システムの研究としては、成果の普遍的定式化を進めるべきである。まず(1)プラズマ研究としてはプラズマ燃焼状態の研究が重要であり、物性の理解と外挿性の検証、及び定常制御性の確認、低中性子炉の探究等の研究課題があろう。特に、今までの多種(多岐)の個物の知識集積を普遍法則へと一般化することに力を入れ、未踏領域の予見をはかりつつ燃焼実験の実現を目指す。(2)技術発展には多種あるが、たとえば炉材料の研究でも段階的な研究計画策定が必要である。実験やシミュレーションの統合等による体系的な方法論へと展開を図る。(3)システム・インテグレーション(設計統合)も核融合研究の重要な要件である。複雑な実験装置を統合する既存の科学技術は財産でありその存続も必要である。総合体系技術の伝承にも配慮を必要とする。(4)これらを併せて総合科学化を進める。
高温プラズマの物理の持つ普遍的学術としての牽引力を特記する。自然科学の学理には二つの源流がある。デモクリトス以来の自然の構成要素の研究と、ヘラクレイトス以来の自然の流転の研究である。20世紀が「自然の究極の構成要素」の探究期であったなら、21世紀の研究の主潮流は「流転する自然の探究」にあり、その方向への核融合研究の学術推進力を強調したい。
3. 研究体制
創造的な研究では、多様性のある研究プログラムが必須である。プログラムの構成要素を大別すると、燃焼実験を開拓する研究にはITER計画があり、循環入力の低減や低放射化そして長期的課題に取り組む研究では、ヘリカル系やsupport tokamakその他の実験、理論研究等の研究群がある。
ITER計画については、燃焼プラズマの実現(物性・システムとして未知の探究)と工学的試験を目的とし、建設の着手が検討されている。実行事業体は世界チームでありパートナーの計画と整合性をはかる必要があるが、研究の重要性・チャレンジ性から研究自体はAll Japanで推進されねばならない。
プロジェクトとしてはITER専任部隊があろうが、核融合燃焼状態の実現には、技術的信頼性と、安定した建設研究計画が必要である。それと独立な、タスクと予算の裏付けのある物理R&Dグループが必要である。独立性は研究の自主性の為である。そして多様性あるプログラムを展開するために、研究グループ・コンソーシアムを構想し、学術研究内容の普遍化、知識のシェア、人材の交流と協力競争を推進することが必須である。それは科学・技術財産の伝承、学問の進歩を育むものである。
4. 研究計画の評価と判断法
具体的に核融合燃焼実験炉に進むためには、その計画の可否を判断せねばならぬ。フロンテイア研究の巨大科学プロジェクトには背反する要因が潜んでいる。「未踏」でありチャレンジとリスクがあるから創造的研究;大規模で使命があるから国策を要する;リスクがあり「使命」だけでは踏み切れないほど巨額の研究費を要する。「未踏領域」の計画について判断するには、新たな判断法自体の検討が必要であり、そこでは計画遂行者と計画策定者の評価・判断の区別が重要になる。その解決と進み方として、次のような考え方があろう。(1)計画の科学的可能性を評価するため、「目標パラメタ」(確実に研究すべき事柄)に併せ、「研究範囲」(チャレンジある研究課題)という概念を分ける。(2)計画遂行者としては、現存のデータベースや理解を基に統計確率的方法によりその期待値を具体的に評価する。創意を生かし研究の更なる進展を可能にするために、研究展開の多様性も保証する。(3)計画策定者としては、使命を考え判断基準を選定し、目的達成のリスクと裕度のガイドラインを作る。
核融合研究では段階的開発を行なうとされ、燃焼実験炉はDEMO炉の前の中間ステップである。問題は目標パラメタの選択と外挿性の確保である。燃焼プラズマの確実な実現と累積燃焼時間の達成による工学試験を行なうことが目的とされる。「目標パラメタ」の一例としては、核融合パワー増倍率(Q値)を10-20程度と選んでいる。「研究範囲」としてはDEMO炉で求められるプラズマ状態の知識を得ることである。Q値としては100やそれ以上の知識が必要になろう。計画策定者としては、妥当性を判断しガイドラインを作る必要がある。
経験的知識による予測を確実にするには学術基盤を持つ研究を展開する事が必要である。普遍的な学問として成立して初めて予言力を獲得するし、それは「先端科学をひらく」と呼ぶ必要条件でもある。
5. 国際協力と競争
プラズマの性能と維持能力の進展をみると最先端をリードする4装置のうち3装置が日本の研究であり、理論研究の先進性も認められており、日本が核融合研究の指導的役割りを果たしている事が分かる。
未踏研究の先端を切り開くフロント・ランナーの研究では、研究水準を上げることに貢献すること、そして尊厳を持ち文化をリードできる事が国際貢献である。(研究成果の導入や提供ではない。)またそれは、競争でもある。核融合研究は根幹でエネルギーの安全保障とかかわる。エネルギーの自給は科学技術の自給から始まり、また、国際規格のヘゲモニー追求も必要である。そうした努力を通じて、日本に対する「技術ただ乗り論」に応答することを始め、文化の刻印を打ち、文明のリードを図ることで国の尊厳をもたらす。
6. フロントランナー研究としての持続性
核融合研究がわが国のエネルギー開発の一環であることから、国策による研究推進を必要とする。
開発的側面からその理由をまとめると、エネルギーの安定供給は国民生活の基盤であり、チャレンジとリスクがあり大きな投資を必要とするといった事柄があげられる。文化・学術研究の側面にも重要な理由がある。核融合総合科学として学術研究の発展が必要であり、核融合研究は日本が生みだす文化の重要な一端をなす。
核融合研究は未踏の領域に取り組むフロンテイア研究であり、国中の英知の増強を図る必要がある。そのためにも持続性をもって学術基盤を持つ研究を展開し、普遍性を持つ研究成果を挙げることが重要である。















