6.議事の概要
(1)開 会
○事務局より、配布資料の確認があった。
(2)持続可能な発展を目指して(第2回)(前回(第5回)会合の続き)
(2−1)核融合研究開発推進の意義と将来展望
持続可能な発展について(その2)
核融合:実現に向けての開発戦略
○井上委員より、資料2に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
- コストがかかるシステムを着実に進めるため、わが国では核融合研究開発を段階的に進め、前段階で次の段階の目標設定に必要な科学技術的見通しを得ながら行っている。具体的には、JT-60(臨界プラズマ実験装置)でQ値(エネルギー増倍率)を1とすることを目標とし、これを達成している。次の実験炉に相当するITER(国際熱核融合実験炉)では、10〜20以上のQ値を達成することを目標とし、超伝導コイル並びに重水素及びトリチウムの燃料を使う。その次は、Q値を30〜50以上として核融合発電を実現し、発電の工学的実証を行う。発電実証までは国主導で行い、その後、核融合炉発電の実用化、電力市場への参入については民間主導で実施する。
- 実用化に向けたコスト低減のためには、装置を小型化する必要があり、この方策として物理と工学の両面が貢献する。工学的要因(磁場の増加)と物理的要因(従来のLモードからHモードへのプラズマ閉じ込めモードの進歩や同じ磁場で高い圧力のプラズマの閉じ込め)との相乗効果により装置の小型化が実現できれば、経済性が改善できる。
- 現在は第三段階にあり、中核装置としてトカマク型の実験炉ITERを建設し、燃焼しているプラズマの制御技術を確立することを目指している。プラズマは電気抵抗が小さいので、ITERの場合、外から制御磁場を加えたときに中心に到達するまでの間、少なくとも300秒から500秒を要し、それより長い時間にわたりプラズマを保持する必要がある。
- 核融合反応が実際に起こるときに核的技術、超伝導技術、真空技術などの要素技術が必要となるので、これら要素技術を開発し、システムとして統合する。統合化技術そのものの成立性を実証することが必要となる。
- 第三段階では、文部省核融合科学研究所の大型ヘリカル装置において、トカマク方式にない定常運転性、電流を流すことで生じる不安定性がないという性質をもつ代替方式を並行して研究している。
- 第三段階から第四段階に移行するときにはトカマク方式と並行して研究している他の方式と比較し、原型炉の概念を決定する。そのときには工学、炉心プラズマの研究で得られた成果を反映する予定である。
- プラズマは非平衡性かつ非線形性を有し、外界とエネルギーをやりとりしながら自分の物理的状態を自分で決める性質があるとともに、電場、磁場によって、いろいろな状態をとることができる。どのような条件でどのような状態をとるのか系統的に調べる必要があるが、今まで燃焼したプラズマを扱ったことがなく、理論で予測することは困難なので、それを正確に予測するために実験による燃焼プラズマの研究を行う必要がある。ITERにより核融合の実現に向けて相当な確証が得られ、新しい物理学の展開もある。
- トカマク代替方式研究がトカマク方式を支援する成果の例として、ミラー型装置を基にトカマクの加熱装置として有力な中性粒子入射装置が開発されたことや、ドーナツのリング状のコンパクトトロイドをプラズマに入射することによってITERにおけるプラズマ中心部への燃料注入方法の見通しを得る試みなどが挙げられる。プラズマ加熱、電流駆動、計測、燃料入射、工学技術は、トカマクにも代替方式にも共通する技術である。
- 核融合研究開発は、プラズマ核融合学会をはじめとする多くの学会と関連しているほか、それを通して、大学の研究活動を活性化している。人材養成の面では、プラズマ物理研究、先端技術研究で養成された人材のうち、核融合分野の研究者になっているのは極く一部であるが、将来ITERで人が必要になったとき、核融合分野以外で活躍している潜在的な人が支援してくれるものと思う。
○井上委員のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
- ITERによって、燃焼プラズマ研究で物理学の新しい展開があることを期待している。JT−60はミッションオリエンテッドの(使命を果たすよう方向付けをした)研究が中心で、新しい展開への視点が欠けていると思う。(ITER)装置をミッションオリエンテッドにすると、学問の発展を阻害する要因が出てくるのではないか。
(井上委員)
- 核融合開発でミッション(使命)を除くと単なる学術研究になり、これだけの大きな規模で進められるか、段階開発をとる必要があるかどうかという議論に立ち戻る。核融合はエネルギー開発を行っているが、それだけでは進まず、学術がきちんとサポートする必要がある。研究開発を進める上で、両面をバランスよく進めることが最も効率的で重要である。
- 前回(第5回会合)の報告を例にとると、ミッションオリエンテッドの場合、例えばQ値を5とか10とした技術目標を達成することがミッションとなる。実験装置を設計するときには、技術目標を確保すると同時に、更に研究範囲として、もっと高いQ値の燃焼プラズマ領域まで対応できる裕度を準備することを基本的方針としている。
- ミッションオリエンテッドが大事なことはわかるが、装置を使う人が狭いグループに限られてしまうのではないか。新しい物理分野を拓く場合には、違う研究分野や研究手法にも門戸を開く仕組みを始めから十分考慮しておいて欲しい。
- 前回、セレンディピティー(興味や価値を求める自然本能)が大事であるということを話した。
- 世界のリーダーシップ、トップクラスの話に関連して、米国、欧州圏の研究者数はどのくらいいるのか。
(井上委員)
- 米国の物理学会のプラズマ物理部会員は2000人くらいで、日本のプラズマ・核融合学会と同じ規模。米国原子力学会の核融合会員も同じくらいだと思う。
- 欧州物理学会のプラズマ物理分科会の参加者数は600人から800人、更に材料関連等を含む千人程度の工学系の研究者がいる。
(井上委員)
- 米国の場合、プラズマ応用としての半導体関係の人も入るため、大人数になっている。
(3)横断的事項について
(3−1)研究開発の評価
○秋山座長より、資料4に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
- これからの科学技術に期待される方向のキーワードは、アメニティー、感性、知性といえる。これらを活性化し、また媒介するものとして、情報、遺伝子、バイオといった科学技術、新しい材料、構造がある。さらに、要素の集合としてシステムがあり、原子力を含めたエネルギー科学技術、関連した科学技術は、特徴として非常に複雑なシステムを基盤として持つ。
- 効率性を進展の方向、課題の1つとして考慮し、目を向けていく必要がある。一方、国際社会の中での科学技術の進展のためには、一層貢献度を上げて、オリジナルな成果を出さなければならない。
- 評価は理念から始まり、評価自体の哲学、学術大系に基づいた目標を設定して基準をつくり、ある評価手法を適用して評価を実施する。この際、評価に関するいろいろな環境との調整が必要である。
- 評価にあたっては、科学技術を進展させる重要な視点として、リサーチ・オン・リサーチといった、研究の在り方や進め方自体を研究していく観点と、スタディ・イン・デプスといった、どこまでも限りなく深層に視野を伸ばして考えるスタンスで研究開発の構造、中味を展望する姿勢が今後、一段と必要になると思う。
- 評価とは、研究開発が本来の理念に基づき目的に沿って計画的に進められて、その途上で問題が適切に処理され、その成果が有効かつ多大なものになるよう実施されているかということについて、妥当性や優劣を明確にすることと定義される。科学技術基本計画(96年7月閣議決定)は、評価の基本的考えが研究開発課題の評価、研究開発機関の評価、研究者の評価という3つの観点からよく整理されている。
- 研究開発の計画、実行及び評価はサイクルをなし、評価は計画から実行に移る過程の間にも位置する。このサイクルは部分サイクルと複雑に絡まり、それぞれが役割分担しながら全体のミッションにつながる。評価のパラメータであるwhat(何を),why(なぜ),who(誰が)という観点から、条件、環境基準への適合性を判断する。評価については定常的に実施するとともに事前評価、事後評価、フォローアップといった非定常的に実施することも必要というのが共通認識である。
- プロジェクト等を実施する意思決定主体が自己評価するだけでなく、外部評価を含めた明示的評価が必要条件。外部評価では第三者による透明性、アカウンタビリティー(説明責任)のあるチェックが行われるべき。
- 意思決定論、評価論によれば、意思決定主体と評価システムとの間は評価規範で結び、意思決定主体と独立な評価システムにおいて、評価規範に則って評価対象を評価する必要があると報告されている。
- 科学技術において着想から成果に至るまでには、シーズ(小さなきっかけ)が社会の実用体系としてのベネフィット(利益)を生むまでの研究開発投資、計画の認知から支援というシステムの流れがある。その流れの1つが長期計画、科学技術基本計画等によるスクリーニング(選抜)を経てプログラムされた活動である。この流れは通常のプロジェクトがとる道筋で、研究は計画的に萌芽し、期待通りの成果を生み、それを組織的、計画的に社会的資産として実現する。もう一方で、個人レベルで研究が偶発的に萌芽し、個人投資家、個人パトロンの支援によって成果を生む流れがある。この成果はいずれは計画的プログラムに組み込む必要があるが、アメリカ等ではベンチャー的展開ということで、民間ベースで特に情報関係の分野において社会の実用の場に躍り上がっている。
○秋山座長のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
- プログラムされた中におけるプログラムされてない研究の仕方は重要と思うので、規定されたプログラムから自由な個人的発想を基にした研究開発に向かう下向きの矢印も付ける必要があると思う。
(座長)
- 評価の問題は全体的な観点からきちんと議論しておくべきと思う。
- 最近は、基礎研究、開発研究の何もかも効率よく行い、社会に貢献しなければならないといわれている。結果として効率よく、社会に貢献するのはよいことが、はじめから目的とすることには、あるところからは注意が必要。効率、社会貢献は非常に大事な視点だが、人間が自然からモノを学び、役立てる視点と離れるので、あるときは逆の視点も大事である。
(3−2)研究開発の推進方策、体制等
○永宮座長より、資料5に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
- 研究開発推進の重要な諸点(理念)は、研究開発推進のサイクル、世界に発信できる研究開発、国の事業としての科学技術及びフロンティア科学技術の継続と発展。これ以外に、人材の育成、地域社会との共生、リーダーの育成、評価が重要である。
- 研究開発推進のサイクルをなす立案、実施、評価という機能をフルにバランスよく活かすことが理想的な推進体制と思う。この3つの機能をきちんと盛り込んだ研究開発体制にすることが重要である。
- 21世紀の日本を考える上で、世界に発信できるような研究開発を行うことが重要。現在、世界は三極体制で動いている。アジア・オセアニア圏のセンターとしての役割を果たすことと世界先進三極におけるリーダーシップを発揮することの2つの点を心に留めて、研究開発組織を樹立することが重要である。
- 国の税金を使う研究開発は、直接の応用を意識しないものから国家的社会的課題への対応を意識したものまで多種多様であるが、科学技術基本計画の3つの柱、知的存在感のある国、安心・安全な生活ができる国、国際競争力のある国の実現を目指して科学技術を進めるべき。
- ニーズ(要望)先行型かシーズ開拓型かのバランスについては、21世紀はニーズ先行型よりもシーズ開拓型、デマンドプル(需要牽引型)よりもテクノロジープッシュ(科学技術による誘発型)、確実な成果よりも科学としてのロマン等々、重点を若干後ろ側にずらさないと世界のリーダーシップはとれないと思う。
- 国の機関と産業界の積極的な連携を進め、大学だけでなく産業界の研究者を育成することが重要な課題。国外に開かれた研究機関として、特にアジア・オセアニア圏の研究者の育成は21世紀の課題。国のみならず民間企業と連携した大学院教育はこれから伸ばすべき。アメリカの産業界が積極的に大学生の教育を実施しているように、産業界と大学が連携した研究交流が重要である。
- 社会教育活動の一環として、高校教員を研究グループへ参加させることを通じて高校教育に役立てたり、大学、研究機関が中・高生の教育を行うことはこれから重要となる。
- 地域社会との共生も非常に大きな課題。これまでは外国の研究者を受け入れるような人本位の地域社会との融合が強調されてきたが、それだけでなく、民間企業、ベンチャー企業を活性化する方向での地域社会との共生が重要である。
- 21世紀のリーダーシップをとるには迅速な決断力、判断力、責任分担、リーダーシップを必要とする狩猟民族的側面を強調しなければならない。現在、日本の中で強いリーダーの育成に対する反発があって、受け入れる体制、リーダー育成教育がないのは問題である。
- 現在の研究評価はアドバイザリー(助言)的評価、レビュー(変更が必要か判断するための意見具申)的評価、エバリエーション(注意深い検討に基づく価値判断)的評価が混在して行われているので、きちんと分ける必要がある。評価の結果が確実に反映されるメカニズムが非常に重要。時間をかけて行うべき評価、評価者としての外国人の登用、原子力委員会における常置委員会の設置等、検討すべき事項が多い。基本的には、明確な評価システムの確立が必要である。
○永宮座長のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
- アジア・オセアニア圏のセンターとして、また、世界先進三極の1つとして世界に発信できる研究開発を行うことは重要である。しかし、アジア・オセアニアの国々との付合いは、国際協力なのか国際貢献なのか悩むところと思う。ヨーロッパではいろいろな先進国があり、互恵平等な協力ができるだろうが、アジアは必ずしもそうでなく、今後どうするのが一番よいと思うか。
(永宮座長)
- 日本はアジアの中で経済的にかなり抜きん出ており、アジア圏も日本に対して期待を持っている。当面は日本がセンターになるつもりで取り組まなければならないと思う。日本に全てを奢れるほどの力があるかは疑問だが、ヨーロッパとは違う、アジア圏での日本のリーダーシップを樹立しなければならないと思う。
- 原子核研究所ができたときに、研究環境が悪いにもかかわらずフランスやアメリカから第一線の研究者が来てくれたことは重要だった。アジア・オセアニアのセンターになるときに、アジアの人を呼んで教育する視点は重要だが、それだけでなく、日本の研究者が相手の国に乗り込む視点も今後必要になると思う。
- 社会貢献に関するいろいろな指摘点は、今すぐやるべきと思う。国の方針として長計に載せることは大事だが、既存施設について地元交流のための利用の仕方を議論することも大事と思う。
- 日本はアジアで中心的だからという漠然とした動機では、何について貢献していくか具体化できない。社会、国の営みである以上、基本的にギブ・アンド・テイクの要素がなければ貢献は成り立たない。我々の技術を単に広めるだけでなく、技術を日本に跳ね返らせるためにどのようなギブの仕方をするか、人材源としてアジア全体を考えるのは、我々のためでなく、アジア全体のレベルを上げるためというように、1対1対応まで詰めて政策を立てることが必要である。
(永宮座長)
- 中国、インドなどアジアで最優秀な人はアメリカに流れている。アジアの最先端の人が日本に来るように魅力的な環境をつくる必要がある。
- よい研究環境があるところ、研究が進んでいるところに人が来るのは当然。環境づくりは国外との関係にかかわりなく進めなければならない。
(3−3)ユーザーとしての視点及び地方の観点から見た先端的技術開発のあり方
○福永委員より、資料5に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
- 原子力は天然資源の少ない我が国にとって重要な資源の1つ。今後とも先端技術開発を通じて技術創造立国に向けた努力が継続されるべきである。
- 原子力技術のポテンシャルは、発電面のみならず、医療、一般産業、農業など、広く人類の福祉に貢献することが期待されている。
- 先端的技術開発が技術創造立国に向け、国家的プロジェクトとして強力に推進されることを大いに期待する。
- 基礎的・基盤的研究は国が主導し、研究開発の利用・応用分野における技術開発等は民間が主導することが役割分担の基本と考えるが、国の基本政策に関連する重要なものについては実用化まで国が主導すべき。
- 原子力先端的研究開発はその波及効果の範囲の広さと大きさから、将来の日本の国際協力を決しかねない、国家戦略上も重要な分野なので、第四分科会では、広く原子力先端的研究開発の進め方に関する理念を提示することが第1の命題と思う。
- 本分科会の報告書では、原子力先端的研究開発の重要性及び長期展望等に加えて、次のことをぜひ盛り込んで欲しい。
-複数の選択肢を視野に入れた、柔軟性のある計画の重要性(特に、大型の研究開発プロジェクトについて)
-研究実施計画に関する評価システムの早期確立
-研究成果を幅広い分野で活用できるような技術移転システムの早期確立
-社会への情報発信による社会的認知獲得の必要性
-国際協力の重要性
- 研究開発は、成果を上げることが重要であるが、研究成果を積極的に社会に還元する姿勢が必要。日本では、技術移転のシステムが不十分なので、先端技術の利用・応用面に関する情報が他の研究者や産業界に向けて発信され、技術移転がスムーズに行われるようなシステムづくりが必要。また、学学、産学などの情報交流、関連情報の一元管理、コーディネーターの養成及び研究者の権利保護が必要である。
- 地域振興の観点からみた技術開発の在り方について、九州の産業構造に関していえば、企業の海外展開などによる産業の空洞化への対応、研究開発基盤の整備が課題として挙げられる。この対策として、マザー工場化(研究開発や商品企画の機能をもった親工場が他の生産工場をまとめる仕組み)、産学連携による頭脳強化が進められている。
- 原子力技術開発の現状として、九州には原子力発電所以外の原子力関連産業はほとんどない。九州では、原子力関係学科を出た学生で九州に残る者は僅かである。特徴として、アジアからの留学生を積極的に受け入れており、平成11年度、九州大学では、留学生の約800人のうち、アジアからの留学生は約650人を占め、そのうち、原子力関係で6人の留学生がいる。
- 地方からの要望は、地方の核となる原子力の公的施設(研究機関)の設置だけでなく、核になる人材も欲しい。
- 地方の特色を活かした取り組みとして、アジアの学生向けの原子力留学制度を構築して欲しい。それによって、アジア地域の原子力の基礎づくりに十分貢献できると思う。
○福永委員のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
- 違う視点からの意見で非常に参考になった。活用可能な技術移転システムの確立の実現について何か具体的な案はあるのか。
(福永委員)
- これまでの第四分科会の議論からは、ユーザーとしては、どう研究して、研究成果をどう移転するのか具体的なイメージが湧かないが、地方の産業界、大学の関係者の話として、研究成果が産業界に移転するシステムがお粗末という意見がほとんどであった。原子力長期計画の策定において研究内容について議論することも大事だが、研究成果を社会に還元し、実業界の中に反映するシステムを早く確立する必要があることを最も述べたかった。
- 九州では、がん治療のために加速器を利用する方向に考えが進んでいるのか。加速器がある九州大学からの貢献は期待できるのか。
(福永委員)
- 九州各県の取り組みとして、加速器や関連工場を誘致する話はある。原子力分野の研究が一般の産業にいろいろ利用できることが全国的に拡がっている段階にまだなっていないと思われる。九州は、東京、関西という中心的なところでの動きに追随する傾向があるので、この機会に、地方への取組みを積極的に考えて欲しい。
- 研究所の成果を産業に役立てるのは非常に重要と思う。日本原子力研究所(原研)の成果報告会を九州で開催したときに、特許や移転できそうな技術に関するコーナーを設けて説明したが、レスポンスが1、2件しかなく、情報の伝達がうまくかみ合っていないと思った。ホームページにも情報公開しているので、接点はあると思う。
- 人と人とのコンタクトは重要と思う。原研では外来研究員という制度があり、1、2年滞在することができる。産業界、ユーザーは待つだけでなく、もっと積極的にアプローチする姿勢が必要と思う。
(福永委員)
- 通産局をはじめ、九州各県には特許の保有状況を調べる調整機関があるが、どういう研究結果があるのか、なかなか探し出せない現状にある。情報の一元管理として、例えば、科学技術庁、原研が日本の原子力全ての研究情報を管理して、インターネットで見られるシステムをつくれば、かなり利用できると思う。
- 産業界からも研究機関にアプローチする姿勢は必要と思う。九州には原子力に関する研究機関がほとんどないので、核になる大きな研究所ができれば、そこの研究者がコーディネーターとして中心になり、産業界と研究者のつながりができると思う。情報のやりとり、技術移転という一連のシステムで円滑なものがないと感じている。
- 今の議論からは、技術開発は大学が行い、企業は結果をもらえばよいと聞こえた。企業から出てくる問題が新しいシーズの開拓になっていることがたくさんある。産学協同、技術移転をもっと別な観点で考えて欲しい。
- 研究成果を産業界に移転するシステムがお粗末という意見には同感。日本では学会等で産業界からの意見を聞く機会が少ないが、米国の原子力学会では産業界の人が話す機会があるようだ。必ずしも原子力産業だけでなく、広く、産業界の現状を聞くことは研究企画を考える第一歩だと思う。
(3−4)従来型の解決方法では立ちゆかない時代になっている
−−原子力委員会への私の意見
○田崎委員より、資料7に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
- 新しいもの(独創性)がないと若い人達は夢を見ないのではないか。魅力(アトラクティブネス)が必要。情報技術、バイオは、基礎研究のレベルからあっという間に産業化に拡がった。魅力と発展性の2点は夢を与えるのに不可欠な要素と思う。入学試験のために勉強して知識をつめこむ今のやり方をどこかで払拭しなければ、21世紀はないと思う。
- 事故が起こると、初心に帰るというが、原子力だけでなくどの分野も外から技術を導入しているので、初心だけでは、また外に学びに行くことになる。しかし、もう学ぶ場所がないので、どこかで、自分達で何かをしないといけない。自分達で行うのが独創性で、技術が生まれるコア(核)をつくって取り組むことを考えなければならない。このことはこの分科会の場でも議論されているが、方法が問題だと思う。
- ものづくりの過程は自分達で全部わからなければならない。技術が生まれるコアがあれば、装置の全てを把握できるので、トラブルが発生しても自分達で原因究明し、早期に解決する能力をあわせ持つ。トラブルを未然に防ぐために固有安全性を強化する努力も重要だが、トラブルからの回復力を高めれば、稼働率が上がるため、生産性が向上すると思う。
- 第四分科会では21世紀に耐えられる原子力開発のことを考えるべきと思う。温暖化防止、エネルギー資源、石油の有限性を考えると、世界的に、特にアジア各国では原子力が必要になる。このときには、先進的な原子炉を考える必要があり、つくり方を革新的に変えないといけない。従来の指向を脱した独創性がないとおもしろくないと思う。
- 何らかの標準炉を開発してはどうか。今の原子炉はスタンド・アロン(別々)で全て少しずつ違う。テーラーメイドでは値段が高いので、経済性の点で問題と思う。いくつもつくることによって、コストが下がるとともに、技術的にも安全度が高まると思う。
- 全く新しいプロジェクトをつくってはどうか。それには、産官学が融合して取り組む仕組みが必要であり、理科系の専門家だけでなく、高専、高校の学生や批判家、例えば人文科学、社会科学の専門家を含めてはどうか。ロボットコンテストをみていると高専の学生達が独創的で想像力に満ちたプログラムに取り組んでいる。こうした学生の積極的な登用がおもしろいものを生み出すと思う。10年程度の期間を考えた場合、10代後半から始めれば、結構、独創的なものを生み出すようになるし、技術、能力のある人材としての中核になると思う。その場合、学生はボランティアでなく、国の費用で単位を与えることを考えてはどうか。
- 新しい炉型を提案するときには、みんなで意見を出し合い、インターネットなどで優劣を論議し、さらに政府公報などの場や費用を使って、進捗状況を毎月報告してはどうか。参加型にしないと前進がない。原子力の抱える最大の問題は、一般の大多数の国民が何をやっているのかわからないことである。日本では国民参加型は難しいが、新しい世紀には、「あなたの力で新型炉を」というような訴え方が問われていると思う。円卓会議のような場でも、ものづくりの段階まで踏み込んで意見を出し合わないと、単なる意見のいい合いに終わってしまうと思う。この状態を払拭しないと、原子力は廃れていく。
○田崎委員のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
- 人文科学、社会科学の専門家の意見を聞いたり、思考法を理解する必要性については、プレゼンテーションのとおりと思う。西側諸国では軽水炉で死んだ人もいないのに、どうしてこんなに状況が悪くなってしまったのか。理系の人が社会科学の人の思考法を全く理解していなかったことがその理由かもしれない。自然科学はマザーネイチャー(自然の根源)となる真理があるが、社会科学にはそれがなく、現状分析からスタートする。その点が違う。理工系、特に工学系の人間は原子力発電が社会システムの1つであることに気づかず、理工系の手法でアプローチするだけであった。技術のもつ社会科学的な側面を理解できていない。こうなったのは、理工系と社会・法文系の教育が全く別になっている教育システムに問題があると思う。この問題に対処する方法論は、ケース・スタディーを集積することと思う。マネージメントスクールで経済学のケーススタディーをまとめたものを教材に用いているように、例えば、どうして原子力に対するイメージがこんなに悪くなったのかなどについて問題を設定して、社会科学的観点から分析したケース・スタディーの結果をまとめれば、工学系の学生が原子力に対するイメージ低下などの社会的問題の本質を理解するのに役立つ教材になると思う。
- 人が使うシステムである以上、安全性について、技術以外の側面、例えば人的な組織の問題がある。チェルノブイリ事故は、ソ連という、ある意味で横に分断された無責任な社会が引き起こしたようなものではないか。JCOにおいても小さな会社の中で、日本特有の組織上の問題があったのではないか。事故における組織の問題を原子力事故に限らず、広くケーススタディーで分析し、それを教材としてまとめれば、安全性の向上に随分役立つと思う。
(田崎委員)
- JCO事故のときに10キロメートル圏内の人が屋内退避する必要があるのか疑問に感じた。退避範囲の設定の根拠は、TMI(スリーマイル島原子力発電所)事故で5マイルの退避範囲の計算がされたことによるもの。TMIの中性子レベルとJCOの中性子レベルには違いがあるはずなのに、自分達の経験に基づく根拠がないため、退避範囲がいきなり350メートルから10キロメートルになる。今のままだと疑問が払拭されずに終わってしまう。
(4)全体議論
| ○ | 座長より、今までのプレゼンテーションの中で抜けている重要なことや、別の視点に立った意見を求める旨、発言があった。これまでのプレゼンテーションに対する意見も含め、主な発言は以下のとおり。 |
- 理念という形では相当のことが出てきたと思う。理念を具体化するにはどうすればよいかという議論がされていないので、この方向に移っていけばよいと思う。
- 田崎委員のプレゼンテーションは、我々の解釈で全部書き直すことができると思う。例えば、国民プロジェクトにするということは、全体、研究開発段階、製品をつくる段階、という種々のレベルでシステムコーディネーションをどうするかということに対応する。トラブルに耐えられる技術を備えるという点については、最先端の研究に立てばあっという間にパイプの先まで作らなければならないし、どのようなネジを作らなければならないか自ずとわかる。このようなことを指摘していると思う。
- 初等教育、中等教育のレベルから放射線教育、先端科学技術に関する教育を入れていかなければならないと思う。
- 日本では、予算を出すときに十分な措置がとられていない場合があるという点が抜けている。芝生を植えると、芝生を刈る人を雇わなければならないのだが、刈る人の予算までは出ない。道路をつくれば、汚れるから整備しないといけないのだか、予算上そこまでは配慮されない。このように、形はできるが、最終まで面倒を見るところまで見通されておらず、システムとして抜けていると思う。
- 加速器のようなビッグプロジェクトは、東京近辺ではなく、全部、地方にもっていくことを国の方針としてはっきり決めてもらうとよい。そうでないと福永委員が指摘した問題点は解決しないと思う。地方で現地の人と仲良くできるのは、施設を積極的に受け入れてくれたこととともに、住居、仕事場と地域の環境・社会が融け合っていることによる。大都会のように孤立化した社会では、プロジェクトに対する国民的な理解が深まらないと思う。
- きちんとしたものをつくって欲しいとの谷畑委員の意見に関連して、つくるものの数を減らすよう、きちんとした競争と評価を行う必要がある。10のお金で3つつくれば満足なのに、4つも5つもつくるからアフターケアのお金が不足する状況を生む。計画をシビアに評価することも大事だと思う。
- フロンティア科学技術の継承と発展で、確実な成果よりもロマンの重要性が指摘された。核融合ではアカウンタビリティの観点から、どうしても確実な成果を求められる面が強い。最初の頃は、核融合も「地上に太陽を」というキャッチフレーズでロマンを強調していたが、50年も経つとそれだけでは世間が納得しない状況になった。なぜ50年もかかったのかという理由が、プラズマという非線形の難しいものを解明してきたということでは、納得してもらえない。ロマンだけでは説得できない分野もあることをわかってもらいたい。
- 核融合のように非常に進歩し、技術が重要な役割を果たす分野では、成果とロマンのバランス配分が重要と随分指摘されたと思う。20世紀は確実な成果を追求しすぎたというのは個人的な見方かもしれない。全体的にもう少しロマンの追求に重点を移してはどうかと発言したが、バランス配分について個々の分野でもっと詳細な検討が必要かもしれない。
(5)その他
○齋藤委員より、資料「計算科学技術について」に基づき、提案があった。要旨は以下のとおり。
- 今までの実験と理論に並ぶ第3の方法として、計算科学技術は基礎研究における新現象の探索、新技術の開発や設計などに活用されている。具体的な適用分野には放射線生体影響、地球環境変化、レーザー、蛋白質の構造決定、加速器、中性子、核融合がある。
- 計算科学は、いろいろな分野で役に立つので、積極的に活用するとともに分野横断的に高い予測精度を有する原理的な手法、例えば分子動力学に基づく手法を開発してはどうか。具体的には、既存の研究機関が有する計算センター等をネットワークで結合し、計算科学技術における相互乗り入れ可能な全国的な推進体制を整備することに国としても配慮してはどうか。
- 上記の推進体制の下に、材料、環境、生命科学、プラズマ物理等の分野で世界のトップを目指した手法開発等を米国のように戦略的に行ってはどうか。
○齋藤委員の提案について議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
- とても結構な計画と思う。工学の立場では、計算工学も加えてもらいたい。前回、プレゼンテーションでモデリング工学のことを述べたが、工学分野でも計算によって従来の経験的な工学手法では扱うのが困難な、非常に複雑な現象、例えば熱流動ならば形状を変える対象や早い過渡現象(短時間内に動作、反応が始まり、変化し、完了するという一連の現象)の説明ができるようになると期待している。工学では、ニーズ側からスタートし、従来の経験的なマクロの手法から一歩下に降りた計算モデル化を図ることで、従来の手法とは全く違うフェーズでものの仕組みが説明できる。このことは、工学の分野でも非常に重要と思う。既に単相流では計算コードが市販されて産業分野で非常に役立っている。他の工学分野でも、計算工学を進めることで同様の効果が得られる可能性がある。工学の場合は、必ずしも、いつも最もミクロの物理方程式から始める必要はないと思う。
(座長)
- 計算科学は横断的な項目であるので、1つのトピックスとしてプレゼンテーションを行うかどうか検討した結果、今回の提案を受けて、共通的項目として考えることとした。更に審議するかどうかは、各委員の意見で判断したい。座長判断としては、今回取り上げることにより、重要性を認めてもらうということで終わりたい。
- 計算科学あるいは計算工学は既に原子力の基盤技術としてやっているが、必ずしも原子力の分野だけでなく、いろいろな分野に共通。取り上げるのは賛成だが、通商産業省でも科学技術庁でも類似のプロジェクトがあると思うので、それらを見ながら進めて欲しい。
(藤家委員長代理)
- 計算科学の重要性、汎用性はわかっている。原子力の世界で特定してそれを出さなければいけないのか、あるいは総合科学技術のような世界で扱う方が、より一般性が高まり、汎用性が高まるのか議論して欲しい。
(座長)
- 計算科学は重要であろうが、核融合、加速器といった基本的なものでなく、共通なツールとして考えているので、それを超えて計算科学だけを1つの重要項目として取り上げることは考えていない。
- 座長とほとんど同じ意見である。計算科学はある意味で方法論。原子力だけでなく、もっと広い分野で磨かなければならないと思うので、ここで敢えて議論するより、もっと広い分野を扱うところで取り上げる方がよい。
(座長)
- 只今までの議論で計算科学についての主要な認識は示されたと思うが、計算科学と原子力との関連について、あえて一言加えるなら、原子力分野において科学技術の面も含めて社会との関連といった、もっと幅広い観点でみて、計算科学を強力に引っ張るべき理由付けがあるなら、積極的に出すべき。例えば、昨今の原子力に対する安全への期待と不安が混ざり合っている中で、原子力が安全文化を先導的に引っ張るに際しては、コンピュータによるシミュレーション、あるいは解析による物理的なファクト・ファインディング(実証)などを通して大きな支えとなり、推進力となろう。このような問題意識と期待をもっているので、次回までに、更に詰めて考えてみたい。ただし、議論をあまり拡げすぎてはいけないことも事実である。
(座長)
- 計算科学については、委員の間で若干認識が違って捉えていると思うので、次回までに考えておいてもらいたい。
| ○ | 座長より、長期計画策定会議に報告する資料「原子力長期計画策定会議第四分科会における議論」に基づき、説明があった。要旨は以下のとおり。 |
- 原子力は多くの分野で知的・技術的リーダーシップを担ってきたが、今後の原子力は、基礎科学の分野との接点を密にし、狭義の原子力に留まらす、その裾野に拡がりを持った未来像が求められている。本分科会では、特にこれからの原子力科学技術の在り方に焦点を当て、その幅広い可能性を追求し、議論・検討する。これまで、未踏領域への挑戦と持続可能な技術の発展について議論を行ってきたところである。
- 将来の視点と展開の原則としては、今後何が重要であるかを大きな枠組みで捉え、細部にわたった議論よりも大枠の議論に主眼を置く。その際には、ある程度のプライオリティを付けなければならない。
○座長より、更に、第四分科会における議論のまとめ方について、説明があった。要旨は以下のとおり。
- 長計全体の報告書について、第四分科会としてはエッセンス中のエッセンスを報告する。
- 第四分科会として、議論したことは別にまとめたい。
- 次回(第7回)会合で、第四分科会のまとめとして書くべき項目、留意点を決めたい。また、長期計画策定会議に対して分科会の報告書について報告を行うため、次々回の会合では、分科会報告書のとりまとめについて議論したい。
- 各委員には、第四分科会をどういう視点でまとめるべきか、考えを出して欲しい。秋山座長とともに各委員の意見を読み、まとめたものを次回の分科会に出して議論したい。2週間以内くらいを目途に意見を事務局に送って欲しい。
○座長より、上記座長の説明に関して、以下のような発言があった。
- 座長から説明があったとおりお願いしたい。公開原則の社会では、分科会での発言、資料に明示されたことのルーツが後で確認できれば、それが世に出たことに対して権利と責任が発生するので、重要な意見は必ず出しておいて欲しい。ただし、意見をどういう形で報告書にまとめるかは、相談しながら決めていきたい。
○座長の説明に対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
- 技術的なことは書かれているが、知的活動の意義、すなわち文化をつくるために行っているという視点が抜けている。
- 科学技術庁という名称についてもっとよいものにならないか。「科学技術」の間に「・」が入っておらず、「科学と技術」にもなっていない。多分、文部科学技術省になると「文部」、「科学」、「技術」が3つ並列になるだろう。「科学技術」では技術になってしまう。これから基礎科学を行おうとするなら、もっと注意が必要。例えば、原子力科学と原子力技術というようにいい方を変える方がよい。
- 6ページのまとめには、研究炉と大学の研究の2つの視点で話したことが混じって記載されているので、区別できるように書き直して欲しい。これらの視点を、技術革新や知的活動の効率化、原子力科学技術の将来を考える際に、取り上げてもらうとありがたい。
(6)閉会
○座長より、次回(第7回)会合について、以下のとおり説明があった。
開催日時:平成12年4月17日(月)14:00〜16:30
開催場所:KKR HOTEL TOKYO
テーマ :報告書骨子案の検討について
以上