6.議事の概要
(1)開会について
| ○ | 座長より、本日の議題「持続可能な発展を目指して(第2回)」について議論を進める上で以下のような説明があった。 |
- 今回の議題におけるキーワードは、次のとおり。@将来展望として新たな利用法の模索、成果と現状、国の役割、A国際競争力の強化として優位性を維持する必要性、基幹技術としての位置づけ、B中長期的ストラテジーの構築としてテクノロジープッシュの考え方の重視。
○事務局より、配布資料の確認があった。
(2)持続可能な発展を目指して
| ○ | 座長より、前回の会合における伊藤説明員のプレゼンテーションに関連して、伊藤説明員の補足コメントが以下のとおり紹介された。 |
- 「研究炉機構」は、原子力の教育を広範に行うとともに、諸方面で有益な中性子利用の安定した推進による科学技術の展開を目指したものであり、原子力依存社会のインフラストラクチャーとして提案したもの。加速器中性子源のように装置自身の新規性を基礎にした先端科学技術の開拓を目指したものではないため、中性子源として研究炉か加速器かという二者択一で決める話ではない。インフラストラクチャーを固めて持続可能性を確保し、先端科学技術を目指すという視点はないものか検討して欲しい。
- 日本の原子力で充足できていないものの一例としてモリブデン−99の生産を挙げたが、これは個々の問題に言及したわけではなく、将来の在り方を包括的に説明したもの。研究炉に関する問題は前回、指摘があったように経済性やその他多くの課題を抱えているのは確かである。
| ○ | 座長より、岡委員は都合により遅れるため、到着次第プレゼンテーションをお願いする旨の発言があった。 |
(2−1)核融合の研究の現状と展望
○伊藤委員より、資料1に基づきプレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
- フロンティア研究の巨大科学プロジェクトには、未踏領域にチャレンジする創造的研究であるがリスクを伴い、大規模で使命があるため国策を必要とするが巨額の研究費を必要とするという背反した要因が含まれている。
- 未踏領域の計画の是非を判断するためには新たな判断法の検討が必要とされ、計画遂行者と計画策定者の評価・判断の区別が重要。計画の科学的可能性を評価するため、「技術目標パラメータ(確実に研究すべき事柄)」と「研究範囲(チャレンジある研究課題)」という概念に分ける。計画遂行者は、現存のデータベースや理解を基に統計・確率的方法を用いて2つの概念の期待値を具体的に評価し、研究展開の多様性も保証する。計画策定者は、使命を考えて判断基準を選定し、目標達成のリスクと裕度のガイドラインをつくる。
- 核融合研究では、目標(実証炉)へ向かう途中の段階に、進展がさらに期待できるような外挿性を持った研究成果を上げられる中間ステップ(燃焼実験炉)を設け、段階的に開発を進めている。その際、「目標パラメータ」をどこに設定するか、またどれだけの研究費を必要とし、予算等で中間ステップに制約が生じた場合にいかに外挿性を確保するかが重要な問題。研究計画策定のための判断要因について、核融合研究を例にとると、計画遂行者が評価する「目標パラメータ」には燃焼プラズマの確実な実現による累積燃焼時間の達成と必要とされる工学試験が相当し、「研究範囲」には原型炉で求められる燃焼プラズマ状態の実現と性能に関する知識を得ることが当てはまる。計画策定者は、これらについての妥当性を判断し、ガイドラインをつくる必要がある。
- 計画遂行にあたっては、学術基盤を持つ研究の展開により、経験的知識を確実なものにしていくことが重要。普遍的な学問として成立することにより予言力を獲得することができ、これは、先端科学を拓くための必要条件である。
- 国際協力・共同研究におけるフロントランナー研究では、研究水準を上げることに貢献するとともに、尊厳を持ち文化をリードできることが国際貢献の必要条件。核融合研究は、多国間協力や二国間協力での多数の実績がある。
- 国際協力は競争でもある。核融合研究は根幹でエネルギーの安全保障とかかわっており、エネルギー自給は科学技術の自給から始まる。新エネルギーに対する国際規格のヘゲモニー(指導権)を追求していくこともフロントランナー研究には必要。技術のただ乗りという烙印を押された日本が、文化の刻印を打ち、文明をリードしていくことにより、国の尊厳を保つことができる。
- 今後の核融合炉心、炉プラズマの研究では、成果の普遍的定式化を進める必要がある。その際、複雑な実験装置を統合(システム・インテグレーション)する既存の科学技術は財産であり、総合体系技術の伝承が必要である。さらに広くその総合科学化を進めていくことが重要である。
- エネルギーの安定供給は国民生活の基盤であり、核融合研究はエネルギー開発の一環であることから国策による研究推進が必要とされ、フロントランナー研究としての持続性が要求される。開発的側面として、核融合研究にはチャレンジとリスクがあると同時に大きな投資を必要とする。一方、総合科学として学術研究を発展させ、日本が生み出す学術文化の重要な一端を担うという文化・学術研究の側面もある。未踏領域に取り組むフロンティア研究として核融合研究は、国中の英知の増強を図り、学術基盤を持つ研究を展開し、普遍性を持つ研究成果を達成することが重要であり、そのために適切な予算措置が必要である。
- 現在の日本の科学技術予算は増えておらず、皆で奪い合っているのが実状。対照的に米国は科学・教育(防衛におけるものも含めて)の予算を増やしており、納税者はこれまでの科学技術への投資とそれによる発展が国の繁栄に結びついているから予算が増えていると認識している。日本も予算を増やす方向で考えるべきである。
○伊藤委員のプレゼンテーションについての主な意見は以下のとおり。
- 計画策定者と計画遂行者を明確に分けるべきという意見に同感。現状は既にそうなっているのか。今後そうなるべきと主張しているのか。日本原子力研究所(原研)の核融合研究はそれが実現されている方だと考えるが、大学では両者が渾然一体としている印象がある。本来は学術審議会が取り仕切ることになっているが、実態は仲間同士でやっている感じ。原子力委員会との関係も不明瞭である。
(伊藤委員)
- そうあるべきと考えている。計画策定者、行政は明快な考え方を持って判断基準を明示していくべき。ここで想定している策定者は、長期計画策定会議あるいは納税者のことである。
- 日本では、計画の策定と評価はうまく機能しておらず、策定しても的確に予算配分に反映されていないのが実状。予算折衝は計画とは独立に進んでおり、いくらがんばっても無駄だという敗北感がある。これは是正すべきである。
- 最近、フロントランナーになろうとする研究分野が日本にも出てきており、産みの苦しみを味わっている。一旦トップに躍り出ると、それを維持するためにはいわば町工場も巻き込んだ不断の努力が要求され、現在どの研究分野も苦労している。実際に研究を進める方向を判断する人の考えが政策に直結させるようなシステムづくりが必要である。
- ITERや加速器そのものは技術的な問題が主であるが、最も重要なのはそこから生まれる科学である。科学的な話と大型の施設をつくるプロジェクトの話は分けて考えるべき。科学や技術の開拓を目指した最先端の研究は、チャレンジ的なことができる反面、リスクを伴う。従って、プロジェクトを進めるためには技術的なリスクを克服する道筋が必要であり、確実に遂行できる第2の方式を持っておくことも重要。得られる成果が陳腐化しないためにも、計画の立案にあたっては、確実に一定期間で完成させることを目標にすべき。また、計画を策定する人と遂行が妥当か判断する人を明確に分け、判断基準としてリスクをどう評価するかが重要な課題である。
- 国際協力や過去の国内の大きな計画について、問題点を洗い出し、何が悪かったかを反省して評価を行うことが必要。過去の計画の評価結果に関するデータベースを整備し、今後の大型プロジェクト推進に役立てるべき。これは原子力委員会が取り組むべき重要な課題と考える。
- 第四分科会は大型プロジェクトを生み出す研究分野の将来展開を検討する場であり、例えばITERとは異なる形のフロントランナーを生み出す方式はないか考えるべき。核融合研究においてフロントランナーとして日本が誇ってきたのはどの分野か。それをどう発展させることがフロントランナーの持続につながるのか。
(伊藤委員)
- 確実に達成可能な技術目標の設定が「技術目標パラメータ」であり、その上で科学的なチャレンジを目指すものが「研究範囲」。その際、技術の確実性は当然要求される。
- フロントランナーとして日本が誇れる分野は、例えば「閉じこめ」に関して普遍化させた理論的研究や実験研究が挙げられる。それに加えて大学や原研での研究が進んできたのも世界を先導する要因になっている。未踏のプラズマを開拓してきた実績と、学術基盤を持つ普遍性を目指してきた実績と、その双方によって現在のフロントランナーの地位を勝ち得てきた。最後に述べたように、国中の英知を増強するという姿勢が今後重要になる。
- 技術の総合化という視点が重要ではないか。個別の技術的な目標を設定し、それに向かってがんばることはよくあるが、新しい方式を見つけ出すために総合的にどうなるかを見わたすシステムはあるのか。
(伊藤委員)
- ハード面とソフト面を合わせた装置全体が科学的財産であるという考え方は、真にシステム・インテグレーションの視点を基に成り立っている。総合科学技術化はもちろんのこと、さらに広げた総合科学化が必要である。
- 個々の科学に関する知識は個人に蓄積されていくが、大きなプロジェクトにおける技術はどこに集積していくのか。
(伊藤委員)
- どの研究分野にも共通しているが、これまでの科学技術を財産として伝承し、技術を磨きながら装置をつくり続けていく過程の中で新しい科学や技術が入り込んでその研究分野は成長していくもの。巨大な科学研究を進めていくにあたっては、総合科学技術をどうやって成長させ伝承していくか、さらに広く総合科学化させていくかが今後の重要な課題である。
(2−2)革新的な中小型炉の開発について
○大瀬委員より、資料3に基づきプレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
- 中小型炉開発は、将来予想される電力需要の低成長や原子力発電所の更新の際に求められる投資リスクの低減と柔軟な設備計画、分散立地による電力供給停止リスクの低減、立地拡大による送電コストの低減、原子力熱エネルギーの多様な利用による環境・資源問題への貢献、若い世代への魅力的革新的技術分野の提供と原子力産業の活性化などの点で国内効果が期待される。
- 国際的には、多くの国への普及に適した原子力プラントの開発を目指し、地球環境問題解決への原子力の貢献拡大、国内外のエネルギー長期安定供給、開発途上国の急速な経済成長に伴うエネルギー需要増加と地球環境・資源問題の両立、人との関わりの少ない安全性を持つ原子力プラントの普及などの効果が期待される。
- アイデア段階の各種小型炉の実用化に向けた課題には、開発目標の設定、革新的技術・概念による経済性向上のブレークスルー、概念の評価と絞り込みがある。開発を進める際には、革新的な基盤技術の開発とプラント概念の検討が必要とされ、公募により研究開発を活性化し、開発対象概念を絞り込んだ上で実用化価値の評価を行い、技術的・経済的な可能性を検討する。その場合、官・民・学の協力と横断的な評価の場が必要とされる。
- 実証段階の高温ガス発電炉の実用化に向けた課題には、経済性の詳細な評価、実用化のための開発試験、原子力政策上の位置づけの明確化、安全設計基準の確立、プラントの実証がある。開発にあたっては、実用プラントの技術的・経済的可能性の検討、原研のHTTRの運転・試験データの取得と評価を基に総合評価を行い、実用化の価値があると判断された場合には、実用化のための技術開発と実証、詳細設計、HTTRの静的安全性に基づく従来の軽水炉とは異なる安全設計基準確立のための評価と実証が必要。その際、国の支援による官・民の協力と官・民共同の評価の場が必要である。
- 実用段階に近い単純化軽水炉の課題は、具体的なニーズと経済性の見通しの明確化。開発にあたっては、具体的なニーズに応じた実用化推進が重要である。
- 日本の原子力は国際的にもフロントランナーの位置にあり、主体的な国際協力の推進が必要とされる。その際、日本が果たす役割は、大型軽水炉の実績に基づく設計・製作・運転・保守に関する技術と高速炉やHTTR開発で培った革新技術などを背景に主導的な立場で協力国とともに開発を進めること。国際的なニーズには、中小規模の電源を必要とし需要の急速な伸びが見込まれる地域に適した中小型炉開発と国際協力による中小型炉開発の効率化がある。国際協力にあたっては、海外のニーズを考慮したプラント概念を検討するとともに、要素技術の開発・実証、プラントの実証、国際安全基準の策定、IAEA(国際原子力機関)等を通じた協力が必要。2国間あるいは多国間の協定締結、核不拡散に関する米国との協調、燃料供給・使用済み燃料の取り扱い等の国際的条件の整備、日本の技術の移転、共同開発に対する支援などの国による条件整備も必要である。
○大瀬委員のプレゼンテーションについての主な意見は以下のとおり。
- 国民に受け入れられる条件に関して、立地分散により、かえって多くの反対運動が起きる可能性がある。立地分散と社会の関係を議論する分科会はどこか。
(事務局)
- 立地地域との共生については第一分科会で審議が行われている。
- 国際協力について審議する第六分科会において、中小型炉の国内ニーズがない段階で、国際的なニーズを踏まえた売込みを前提とした中小型炉開発が成り立つかどうかの議論はあった。
(大瀬委員)
- 今後、発展途上国で原子力発電が普及していくことが予想され、中小型炉が有力な候補になる。その場合、日本の産業界の売込みという観点ではなく、日本の技術のポテンシャルを活かした協力という意味で重要と考える。
- 中小型炉には、安全性の点で新しい考え方があるのか。「人との関わりの少ない安全性」を実現することにより将来国民に納得してもらえるのか、あるいは原子力への不安を払拭するような新たな概念の基に技術開発を行うのか。
(大瀬委員)
- 既存の大型軽水炉も今後開発する中小型炉も安全であるという点でかわりはない。中小型炉の場合、炉の容量を小さくすることにより強制冷却が不要となり、炉心溶融の懸念もないものにできることから、従来とは異なる安全性を確立でき、より安心感を与えることができる。大型軽水炉は動的な安全原理を持っているのに対し、中小型炉は静的であるといえる。安全性に関する定量的な分析は今後の課題。国民の理解を得るためには、海外も含めてどこかに実証炉を作り、安心を与える原子炉であることを示すことが先決である。
- 「人との関わりの少ない安全性」とは、人への直接的な負担が少ないという意味合いが強いのではないか。広い意味ではマシンに対峙する人間との直接的な関わりも含まれる。
(大瀬委員)
- 2つの意味があり、一つは人への負担が少ないこと、もう一つは人が関わらなくても致命的な事故にならないこと。
- 原子炉が安全ならば大都市にもつくれという立地地域の住民の声もあるが、安心できる原子炉ができれば、今後、大都市圏にある火力発電所を原子力発電所で置き換える方策も考えられる。20〜30年後、分散立地が反対派を増やす方向に働くとは、現段階では予測できない。
- 中小型炉の場合、炉心溶融の確率が大型軽水炉より一桁から二桁小さいというデータもあり、静的な安全システムだけでより安心感を与えることが可能。今後、海外情勢を注視し、安全性や経済性の面で中小型炉ならではの利点を活かしていけば、大型炉のみに依存しない新たな道が開けてくるはず。国内だけでなく国際的にも協力して検討していくことが必要である。
- 総合科学技術体系においては、科学技術を少しずつ発展させながら継続的に伝承していくことが必要。そのためには大型の装置ではお金がかかるが、小型のものは比較的容易。これまで科学技術の伝承と銘打ってやってきたところは世界的にも無かったのではないか。それが求められる新しい時代に入ってきたと考えられ、さらに広げていくことが重要。そのような面は中小型炉にないのか。
(大瀬委員)
- メーカーの立場では技術の伝承は重要な問題であり、人材確保と育成が大きな課題。設計やデスクワークだけでは人材育成に限界があり、適切な時間間隔で適切な規模の装置を継続的につくっていくことがメーカーの技術レベルの維持に必要である。
- 技術継承は重要だが、そのためだけに中小型炉の開発が必要という論理は時期的に早い。今は、中小型炉が将来必要であるということが重要である。電力事業の面では自由化もあり、今後の需給は不透明。大型炉は投資リスクが大きく、需要の伸びが小さい状態では、投資リスクが小さく融通性のある原子力発電設備が求められる。中小型炉が安全性や経済性に優れているならば、それを採用する意義はあるが、まだアイデアの段階であり、電力事業として今、必要とは明言できない。
(大瀬委員)
- 技術の継承のために開発を進めるのではなく、まず、中小型炉の開発の進め方を評価する場を設けるべき。中長期的な視野で検討を行い、開発が必要という結論であれば、適切な時間スパンで、ある規模の装置をつくることを想定した開発が必要となる。
- 技術の継承の点では、核融合技術のみならず核分裂炉技術の継承も重要。日本ではまだ原子炉の注文はあるが、外国ではほとんど新たな注文がなく、海外のメーカーは縮小・合併の傾向にある。書面的な継承では不十分。中小型炉の研究開発は魅力ある中小型炉を創出することが目的であるが、その幅広い技術を若い層へ継承しながら新人を育成していくことは大型軽水炉の技術継承にも役立つ。
- 加速器、原子炉、宇宙などの開発を目指す従来の日本の大型プロジェクトでは、官・民協力で進める場合、国が主導的にシステム・インテグレーションを行い、民間に任せずに行ってきたのが問題。システム・インテグレーションの伝承が最も重要であり、それを請負う能力のある民間企業を維持していくことが必要である。
- 産業界と研究機関など、それぞれの間で組織的な役割の整合性を高めながら、システム・インテグレーションの面での力を継続していくことが重要である。
- 大きなプロジェクトを進める上で、システム・インテグレーションの民間への移転は重要である。
- システム・インテグレーションを製作会社がやろうとするのは問題。製作会社とは切り離したハイレベルの技術者集団が担当すべきである。
- 科学技術の研究開発においては、ポートフォリオ(資産所有の最適な組合せ)的な概念をどう捉えるかが問題。確実性の高い研究開発だけを行うのでは進歩がなく、ポートフォリオのように多種の研究を育て、その中で成功したものを伸ばしていくという考え方を導入すべき。ポートフォリオ的な考えに基づく施策の進め方を検討する必要がある。
- 研究開発におけるポートフォリオの視点は重要。
(2−3)全体議論
○これまでのプレゼンテーションについて議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
- 「持続可能な発展を目指して」についての議論では、21世紀に向けたエネルギー問題における持続可能とは何かという視点が重要。ものをつくり、運営し、処分する際に資源利用効率やエネルギー利用効率をいかに高めていくかが持続のための重要な条件。既存技術の延長線上で議論するのもいいが、材質、つくり方、燃やし方の効率を向上させ、全体として地球環境との整合性を考慮していくことが必要。エネルギーや原子力における将来へ向けた技術の在り方として持続可能な発展のためには何が必要で、今後どういう観点でさらに開発を進めていくべきかを議論すべきである。
(座長)
(事務局)
- 次回会合で共通的課題を取り上げる際に議論してもらい、まとめに反映させていきたい。
- 予算は増えないのが現実。日本は資源に乏しいがゆえに工業力をつける政策で成功してきた。日本の科学者は、皆その道の権威者で、1人しかいないが、全てのことを適当にやっている感じがする。日本に住む限られた人間の中で、個人の能力をいかに活用し、世界に貢献していくかを全体的に流れを見ながら考えていくシステムが必要である。
- 世界の中で日本が自信を持って新しい概念をつくり、十分な技術的素地もつくりながら研究開発を進めていくことが重要。一旦フロントランナーになったときには、苦しみながらも自信を持って世界に発信していかなくてはならないが、その際必要なのは、強力なリーダーシップ。例えばマンハッタン計画の際のオッペンハイマーのような存在。ITERなどのような巨大なプロジェクトを進める場合には、最後まで責任を持って遂行するシステムが必要である。
- 評価を行う際には、いかにクリティカルに(批評眼を持って)行い、評価結果をいかに行政に結びつけるかが重要。最近日本でも評価が行われるようになったが、あいまいな部分が多い。米国には、健康診断的な軽い評価を行うアドバイザリィ、厳密な評価が行われるエバリュエーション、それらの中間的な評価のレビューという3種類の評価がある。中でもエバリュエーションは最も厳しく、評価結果がよくない場合には、10年くらい研究生命や予算に影響を及ぼしかねないため、皆あまり受けたがらない。日本では、これらがミックスしたような評価体系で行っている。評価に要する期間も重要で、米国では1週間以上缶詰になって集中的に行う場合もある。日本でも明快な評価メカニズムを確立する必要がある。
- 日本の技術は最高のレベルにあり、フロントランナーとは異なる視点で技術の伝承が必要。中小型炉については、このような観点からの重要性も指摘されており、その点は認めるが、全体として何が絶対必要であるのかが明確でなく、安全性の点でも大型炉と比べて優れているともいえないのであれば、パンチに乏しい。
- 日本がフロントランナーになることと国際協力は、本来両立しない。フロントランナーを目指してフロンティア研究を行う際に全てを国際協力に任せるのは危険。国際協力で行うならば、平等にプロジェクト推進のリーダーを務めることができる人を養成する必要がある。フロントランナーの国産主義は必要である。
- 中小型炉には様々なアイデアの炉があり、まだ絞込みが終わっておらず、今は総花的で必要性のパンチに欠ける印象を持たれるかもしれない。いずれ日本でも海外でも必要となる。今から評価の場をつくり開発の方向性を議論すべきである。
- 中小型炉は、中型と小型で次元が違うにもかかわらず混同しているためパンチ不足の印象を与えている。小型炉はそれなりに面白さがあり、具体的な特徴を伝えるべきである。
- 原子力に関する技術の伝承は国家保障に係わる問題であり、そのために原研がある。もっと率先して技術の伝承に努めるべきである。
- ここ10〜20年の立地をみるとそんなに生やさしいものではなく、大変深刻な問題である。
- 原研は、省庁再編で今後の原子力へのコミット(かかわり方)で悩んでいるところ。今後の展開について支援して欲しい。
- 中型炉は20〜60万kW級、小型炉はそれ以下という位置づけ。15年くらい燃料を変える必要のない1MW級の小型の原子炉を大きなビルの地下に設置し、暖房をまかなうというアイデアもあり、中型炉と小型炉を分けて考える視点も重要。
- 意見を聞いていて、まだ一般市民には理解できない分野がかなりある。今度の長計(長期計画)には細かいことを書くわけではなく、先端技術をどうするか、未来を拓くとはどういうことかといった基本的な理念を記述することになるのではないか。各分野の話をこの基本的な考えの中にどう盛り込むかが原子力委員会で議論されるはず。
- 日本には世界に発信できるような強力なリーダーシップが必要。それは、例えばロケット開発を先導した糸川英夫氏(東京大学生産技術研究所)のようなスターの存在が重要。スターはマスコミがつくる。スターにはロマンがあり、話がわかりやすく、一般市民が興味を持てる存在。スターがいれば一般市民に理解できる言葉で、かみ砕いて説明してくれるが、今はいない。スターはスポークスマン的な役割も担っており、今、国民に受けるスターが求められている。
- 科学技術に携わる者にはアカウンタビリティ(説明責任)が必要。スターはいつでも出るわけではない。自分が行っていることがどういう意味を持つのかを説明し、理解を得る努力が必要。計画策定者は、最終的には納税者である。科学者や技術者は、個々の場でのアカウンタビリティが求められている。
- 大きなプロジェクトが一段落し、次のステップへ移る際には、大いばりできるデータを持っている人ととりあえず次へという人の差が見えるような評価システムが必要。問題点を隠しているところに問題があり、問題点を明確に見つける評価システムが必要。現在のレビューでは、早く切り抜けようという感じがある。
- 進行中のプロジェクトについてエバリュエーションを行うのは好ましくなく、既に終わったプロジェクトについて厳しくエバリュエーションを行い、データベース化していくことが必要。従来の大型加速器施設の共同利用制度は完全に硬直化し、レベルアップにはつながっているものの、日本から創造的な成果が出るのを阻む原因になっている。改善策の検討にあたっては、過去の評価のデータベースが必要とされ、計画のつくり方、建設の仕方、技術的な問題、利用の仕方についての戦後50年のエバリュエーションは、今後の大型プロジェクトの参考になる。
- 伊藤委員のプレゼンテーション資料(OHP説明)の5ページ目で、合理化によるハイリスク・ハイリターン型へのシフトを指摘しているが、計画遂行にあたっては長期的な目標がある一方、技術は短期間に革新しないと陳腐化するという面もある。ITERのような大きな投資を必要とするプロジェクトは、国際協力で目標を1つに絞る動きがある中で、時間を考慮した場合の合理化やハイリスク・ハイリターンを全体的にどのように理解していくべきか。
- 次のステップを選ぶ際、現状に近いところを選べば保証するものは技術的に楽になりうるが、そのままでは得られる成果は少ない。お金を費やしても得るものが少なければ、結局は、ハイリスク(科学的に意味が薄くなる)。逆に少ない投資で得るものが大きいとハイリターンだが、少ない投資で掛け率がかなり下がると意味がなくなる。その意味で研究計画の区分や構成の重要性を述べた。
さらに時間に対する評価法は重要であろう。
- ITERは科学政策上重要な位置づけであり、ITERに象徴される核融合研究をどういう形で進めるかは重要な問題。目標をあまり下げると価値がなくなるが、次のステップの設定にクリティカルな(決定的な)部分があるのか、研究開発をある程度行って次のステップを考えるのか。
(座長)
(2−4)技術革新と大学の原子力工学研究教育
○岡委員より、資料2に基づきプレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
- 前回のプレゼンテーション資料について、研究炉の使用済み燃料廃棄物の処理について包括的に対処できることを追記する。
- 原子力発電所は人間がつくる最も巨大な工業製品である。原子力には高い信頼性と安全性が要求され、徹底的な研究と製品化が行われてきた。原子力工学は総合工学として位置づけられ、ビーム工学、レーザー、プラズマ応用、加速器工学等への展開が行われている。
- 日本の軽水炉技術は世界一であり、産業生産力に優れている反面、革新的で創造的な分野では弱点を抱えている。根本技術は輸入されたものが多く、基礎分野が弱い。原子力を国産化する時代は終わり、海外技術の移転や模倣は困難な状況にある。民間の原子力技術開発投資は市場原理のもとで減少傾向にあり、長期的には国の支援による技術革新の追求が重要である。
- 技術革新により製品や工程が不連続に変化した例はいくつかある。例えば、タイプライターの場合、手動のものを生産したメーカーが電動のものをつくったわけではなく、心理的、戦略的な保守性が不連続の原因になっている。
- 半導体や光ファイバーの発明に見られるように、技術革新は他分野や境界分野で生まれる例が多い。技術革新を生むためには、基礎学問の強化、他分野や関連分野、異文化の勉強、創造力と想像力の養成、研究予算の多様化、加点法の評価と失敗の継承、経常研究と実験研究の重視、評価を含む情報交換、人材・教育・利用者等のソフトの重視ということが必要とされる。
- 大学は、学問が横断的で教育との兼務による低コスト構造を持ち、フレッシュな人材の供給とテーマの変遷への適応力が大きい。また、試行錯誤がやりやすく、プロジェクトにしばられず、細かい制約を知らないのもよい。さらに、不可能へのチャレンジが容易であり、大学は技術革新の追求に適した環境にある。
- 学・官・民の連携は重要であり、それぞれの長所を伸ばすように役割分担をすべき。大学は学問手法の革新、シーズ提供、教育などを担当し、研究開発機関は大型装置の建設と運営などを行い、企業は製品化のための研究などに取り組む。連携形態には共同利用型、プロジェクト主導型、共同研究型、提案公募型、大学主導プロジェクト型、ベンチャービジネス型があるが、大学は予算や利用面で下請化しないことが必要。
- 大型プロジェクトの推進に伴って周辺が枯れる場合があるため、予算の数%を技術革新のために独立してつぎ込み、新しい芽を育てることが必要である。
- 天文学や熱力学などのように技術が先行し、それが理論に昇華する場合が多く、技術(工学)と科学(理学)はスパイラル的に発展する。
- 理学は真理探究を目指した演繹的、定性的、ミクロな学問であるが、工学は応用を重視した経験的、定量的、マクロな学問。新フロンティアは原子力工学と理学の境界領域にあり、原子力工学は経験的な工学を、より演繹的な工学にかえていく先導的な役割を担っている。
- 原子炉物理学は予測可能性が最も大きく、熱流動工学や構造力学は条件が整えば予測可能。その点、材料学は予測可能性が最も小さい。
- 今後の原子力工学は、基礎にもどって、よりミクロなモデルによってマクロな挙動を予測し、モデルの要点を実験で検証していくことが重要。原子力モデリング工学、ビーム物質相関学と応用、原子力安全性と信頼性、原子力社会工学などが今後の課題である。
- 原子力工学の革新には多様な線源と実験装置群が必要。学問や技術の革新には人材(ソフト)のいるところにハードを用意する必要がある。
(3)閉会
○閉会にあたって、座長より、以下のとおり発言があった。
- 今回の議題について、質問や意見等があれば次回までに事務局へ提出して欲しい。
- 本分科会のまとめに向けたドラフトづくりのための意見を既に数名の委員からもらっているが、他の委員もとりまとめに関する意見を事務局へ提出して欲しい。
○座長より、次回(第6回)の会合について、以下のとおり開催する旨説明があった。