6.議事の概要
(1)開会
| ○ | 座長より、本日の主な議題として、「未踏科学への挑戦分野」について、プレゼンテーション及びそれについての議論を行っていく旨の発言があった。 |
| ○ | 前回欠席の委員及び本日出席いただいた説明者の紹介及び挨拶が行われた。 |
- 中性子散乱が21世紀の科学技術及び国民生活にとって、いかに重要な研究手段であるかについて説明したいと思う。
- レーザー核融合を専門として大型レーザーの開発と研究に携わってきた。本分科会で、原子力研究開発領域としてどの分野を取り扱っていくのかについて意見を述べたい。
(2)潟Wェー・シー・オー(JCO)核燃料加工施設での事故について
| ○ | 座長より、議事にはいる前に、原子力委員長代理よりJCO事故について発言をいただく旨の発言があった。 |
(原子力委員長代理)
- JCO事故は皆様の関心がたいへん高く、残念な事故であった。原子力委員会の対応については、事故発生時から検討し、作業を進めているが、原子力委員会は政策立案と決定及び円滑な実施を図ることが最大の職務であり、原子力安全委員会とは多少性格が異なる。事故の原因究明あるいは対策を行うというものとは、時間的なずれがあることについて理解いただきたい。
- 従って、(1)原子力委員会独自で対応すべき問題、(2)独自の委員会を作って対応すべき問題、(3)長期計画策定会議及び分科会で議論いただく問題の3つに分けられる。2番目は現時点では必要ないと考えている。
- 原子力委員会ではいろいろな観点から議論を進めている。例えば危機管理体制の在り方、安全の確保、核燃料サイクル政策をこのまま進めてよいか否か、モラルをどのように維持するかという組織や人間の問題などについて、論点を整理しているところである。しかし、最も重要なのはこれをどう政策に反映するか、という点であり、長期計画の議論の中でできるだけ皆様の意見を反映していきたい。
- 6つの分科会のうち、第四分科会は比較的直接的な関係が少ない分科会と考えている。しかし、こうした問題は個別具体的にのみ対応すればよいわけではなく、いかに水平展開していくかということが大事である。これまでの原子力安全の教訓が今回の事故に活かされていなかったという点においても、直接の関連だけで物事を考えてはいけないという教訓と思っている。ぜひ第四分科会でも皆様の考えを伺って、よりよく反映できればと考えている。
| ○ | 事務局より、資料7に基づき今回のJCO事故の概要について説明があった。主な質疑応答は以下のとおり。 |
- 今回のJCO事故は、先端的技術分野においても、優秀な学生の確保という面で5年から10年後に深刻な影響を及ぼすのではないか。
- これだけモラルが低下していることや教育や啓蒙のレベルが低いという現状から、これを機に、人材教育に力を入れていくべき。
- 組織体制の問題(終身雇用における「習うより慣れろ」の仕事のやり方等)が根底にあると思われる。安全性では、人や組織の問題が重要。
- 米国では規制緩和が進んでいるが、原子力発電所の稼動率は上がっており、安全性の指標も良くなっている。欧米ではリストラをする場合も、原子力の場合は安全を第一にしないと経営上の危機になるという意識を経営者や現場が持っている。
- 今回の事故の公衆の被爆線量は広島や長崎で発ガン率が有意に観測される量よりも低かったにもかかわらず、放射線は恐いものであると国民に思われており、原子力はビジネスとしてもリスクの高いものとなっている。原子力研究開発の推進を図るためには、なぜ、このように原子力とそのビジネスがリスクの高いものになってしまったのか、これを改善するにはどのようにすればよいのかをよく検討し、単に国民の理解を図るのではなく、より広い観点からストラテジックに対策を立てるべき。
- NASDA(宇宙開発事業団)のロケット打ち上げ失敗や動燃(現核燃料サイクル開発機構)事故と今回の事故は、一つの共通点があり、組織の中で技術の継承・保持・改善の姿勢が失われていることが挙げられる。
- 産業界では技術力が低下し、技術者の穴を埋めておらず、日本における技術力の空洞化現象が多く見られる。
- 科学技術庁関連の研究所の中で、契約研究者を集めて数年間で研究をやればよいという風潮が強くなっているように感じられるが、このように、新しい実験技術の開発をベースにして研究開発を進めていくという姿勢が減ってきている。このような社会の風潮が、このような事故を生み出しているのではないかと感じる。本分科会では、重要な論点として、いかに「技術」を社会の中に形作っていくかということを取り上げるべき。
(座長)
- この問題については多くの方が様々な意見を持っていると思うが、どのように本分科会で取り扱うかについては、他の分科会での議論も状況も含め、原子力委員長代理、座長及び事務局で検討して、次回以降の懸案としたい。
(3)未踏分野への挑戦について
| (3−1) | 原子力研究開発利用長期計画の予備的検討に関する調査報告書(未来を拓く先端的研究開発)における論点及び議論経緯の報告 |
| ○ | 谷畑委員より、資料2に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
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(議論の前提)
- 加速器科学とは、約100年前のX線の発見などに始まるもので、現在では光、荷電粒子線、中性粒子線などを用いて基礎的研究から応用まで広がっている。
- 原子力を、「粒子や原子核の反応に根ざした幅広い科学技術」と広く捉えることとし、物質的側面ばかりでなく文化的、精神的な影響までもその効用に含めた。
- 放射線の利用、放射線発生装置の開発やその利用及び新しい原子エネルギー発生を目的とする開発研究を、先端的研究開発に含めた。
- 先端的研究開発の目的としては、人間社会と地球環境の調和を図り人類の持続的発展に貢献すること、及び総合科学技術としてエネルギー技術開発等の基礎を築くこととした。一般にわかりやすい具体的な切り口として、「見る、極める、創る」や「環境との調和、安心して使える技術、エネルギーとしての可能性」、「知る、つくる、守る」などを提案した。
(論点1:原子力の捉え方)
- 今後、原子力が、ますます重要となっていくであろう。
- 原子力から遠く感じられる、例えばライフサイエンスにおいても、原子力の基盤技術なくしては研究の推進も困難となるという現実がある。
- 我が国に西欧の科学がもたらされて約100年後、ようやく我が国がリーダーシップを発揮する時代となり、研究開発の進め方にも変化が求められている。
(論点2:原子力研究開発の在り方)
- シーズ開拓型やニーズ開拓型の研究は、研究の独創性や成果の先駆性を重視し、長いレンジで評価するなどして、ニーズ先行型研究に対して適正なバランスを保ちながら推進していくべき。
- 研究開発と、教育や産業の育成が、現実に整合性をもって進められるべき。
- 積極的に貢献できる領域を見定めた上で、特にアジア圏での立場を認識し、協力や分担に取り組むべき。
- 外国人の受入れなど、ソフト面での協力においては、未だ我が国は国外から利益を吸い上げているという傾向があり、改善されるべき。
(論点3:原子力研究開発の新しい時代)
- 我が国は、キャッチアップから世界のリーダーシップをとる側へと変わりつつある。
- そのため、「テクノロジープッシュ」型研究を重視し、独創性や独自性に重点を置くなどして評価の在り方を工夫すべき。一方、ニーズ先行型研究では、マイルストーンの設定や進捗状況の評価がより重要となってくる。
- 利用研究の観点では広く開かれた競争的環境をつくり出す一方で、研究者に知的成果を社会に還元する意識を持たせ、自らニーズを開拓して他者が受け入れるところまで技術を熟成させるよう働きかけることが大事。
- 次世代の技術者の育成や教育基盤の整備を着実に進めることが必要。
(論点4:国の役割)
- 計画の策定から実現までのプロセスを、原子力委員会の役割や機能も含めて再構築する必要がある。
- 計画は、研究動向を把握し、研究者コミュニティーの意向に留意できる優れた研究者によるパネルを設置したうえで、国内や世界の複数の計画を考え合わせ、国の戦略として立案すべき。また、立案された計画を実現するためのシステムも必要。
- 計画の実行段階では、経済性や効率ばかりでなく、計画が安全、着実な推進のため、十分な人を充てることが重要。
- 省庁間の整合性ある連携が望まれる(医療用加速器の普及と保険点数との兼ね合いなど)。
(論点5:原子力研究開発の育成)
- 今後は独創的・先端的計画を重視した、世界レベルに基準を置いた相対的評価が必要。
- テクノロジープッシュを育成し、ニーズ重視型研究に対して不利にならない配慮をすることが大事。
- 中長期的ストラテジーにのっとった比較的長いレンジでの評価基準を設定することが大事。
| ○ | 谷畑委員のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
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- 「粒子や原子核の反応に根ざした幅広い科学技術」という原子力の新しい定義については、素粒子、原子核等の物理学者から反発されないか。あるいは、原子核物理学者には原子力反対派もいると聞いているが、素直に受け入れられるのか。
(谷畑委員)
- 確かにある時期、原子核物理学者の間で原子力とは異なるという意見を持つ向きもあったが、昨今は世界的にも、古い意味(狭義の)での原子力を支えるものを創った原子核物理学者はやはり原子力に貢献すべきという意識に確実にかわりつつある。本年1月に出たOECD(経済協力開発機構)メガサイエンスフォーラムの核物理の答申においても、その旨謳ってある。
- 確かに素粒子物理学はより基礎的な研究をしているという立場から明確に反発する方もいるかと思われるが、(受け入れられるのかという)指摘は、現段階では広い意味で捉えればそれほど問題はないと思う。
- むしろ社会全体が原子力をエネルギーとして固定的に捉えている点の方が厳しい問題であろう。研究者はより柔軟になってきている。例えばハドロン中性子統合計画などに対する強いアレルギーは、研究者にでなく、一般社会に存在するであろう。原子力委員会は原子力とは何かということについてはっきりと社会に説明することが大事である。
- (資料2の2頁について)原子力研究開発の新しい時代を考えたときに、加速器研究はすでに100年続けられており、人によっては「既にかなりわかっている」と言う人もいる。その時に、さらに進めるべき研究の方向性について、素粒子、原子核、原子物理は相当考えていく必要があると思われるが、それを「ミクロ世界への挑戦」と表現したと理解してよいのか。
- (同9頁について)社会に受け入れられるところまで技術を熟成させることが大事という指摘はそのとおりと思う。特に加速器技術については、企業がやらない分、研究者がやらなければならず、加速器技術の応用の中でも重要なことである。
(谷畑委員)
- (同2頁について)人間がそれまで見たことのない世界を見ると必ず、想像を超えたことが起こる。新しい道具ができたとき、その道具の利用について突き詰めていくと、今まで見たことのなかったものが見えるようになり、そこにひとつの重点がある。中性子、放射光、不安定核などは、新しい道具として、人間が知識を得ることができなかったところまで新たに入っていくことを可能とする。RIビームは、宇宙での元素合成の過程の研究をはじめて人類に可能にするものである。
- 「荷電粒子」というキーワードで将来の科学技術を捉えるとき、ミクロ世界の研究も重要だが、プラズマの場合、非均衡荷電粒子多体系としての性質が重要である。今回の発表は、範囲を限ったものと考えられるので、機会を見て説明したい。
- テクノロジープッシュとディマンドプルのバランスについて、定量的な表現が望まれる。「研究目標」に対して「技術目標」、「科学としてのロマン」に対して「技術としての完全性」など、テクノロジープッシュとディマンドプルにはそれぞれ対立した要素概念が含まれる。また、巨大科学を進める上では、ロマンが必要な一方、確実に成果を獲得しなければならない部分もあり、これらの比重をどのように設定するのか。計画を立てる際の評価を定量的に詰め、指針を出すことができればよい。
- ここで述べられている「原子力」は、新しい定義だと思う。原子が潜在的に持つ力の開発という観点で、グローバルな捉え方である。一言で言える新しい言葉があればよい。
- テクノロジープッシュとディマンドプルの関係がバランスよく、相互に影響しながら進むのが望ましい。この関係は、いろいろな分野で見られ、階層構造をなしている場合もある。
- (同7頁において)「いかに表現するか?専門家には正しく、一般にはやさしく」とあるが、「光、荷電粒子、中性粒子を理解し、さらにそれを使ってミクロの世界が持つ」という説明は、一般の人には難しい。
(3−2)放射光分野における研究開発の意義・将来展望
| ○ | 上坪委員より、資料3−1及び3−2に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。 |
- 人類社会と自然界をつなぐものとして基礎的基礎、基礎、応用、実用化の各段階の研究開発がある。
- 加速器については、エネルギーや強度のフロンティアを切り開く先鋭的で、自然界の基本構造の探求を目指すものと、幅広い科学技術分野での先端的研究開発を支えるための、高輝度、高フラックス、高分解能等、高性能の汎用的加速器がある。これら二つの加速器は、共に比較的大型で、技術的に密接な関係にある。
- 他方、実用化技術として、病院のガン照射用線型加速器やPET用サイクロトロンなど専用化・単能化された加速器があり、技術が汎用化、実用化するにつれ、基礎的基礎研究が新しいものに移り変わっていく。
- 放射光施設には実用化研究に向けられたものはなく、いずれも基礎か応用研究へのものであるが、特徴は学際的な広がりが大きいこと。たんぱく質の立体構造の解明研究では、生命現象の解明や新薬の開発などが成果としてあるが、これは加速器の発展における重要な側面が顕著に具体化した例である。
- 特定の機能に絞ってコンパクト化した放射光源としては、リソグラフィやマイクロマシン加工用などがある。
- 現在では幅広い研究分野の利用者から、まず第一に輝度の増加と短波長化が、次に短パルス化、高ピーク化、繰り返し可変、様々な偏光特性、高コヒーレンスなどが要求されている。マイクロビームからナノビームへの進展や、コヒーレントなX線の測定手段の開発など、研究技術の開発も望まれている。
- 新しい利用分野の開拓も重要であるが、現在の施設でも星の内部構造や地球内部の構造などから極微小な構造の観察まで、非常に広い範囲をカバーしており、新しい領域を開拓している。
- 我が国が抱える問題点としては、優れた軟X線源がないこと。特に、第三世代の放射光源として、我が国にはSPring-8(大型放射光施設)しかなく増強が必要である。
- 産業界の利用は、日本企業が外国との技術競争力をつけるということに重点を絞るなりして、SPring-8を産学協同の施設として活用すべき。
| ○ | 上坪委員のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
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- 現在の教育では出来合いのものを使って理解することは行っているが、自分の手を使ってものをつくることは行っていない。ある装置を使ってどのような利用研究ができるか考えるという観点から人材育成を考えるときには、子供の頃から、指を使うことの重要性を認識した教育をしていくべきである。
- 第四世代光源としての自由電子レーザーは、世界的にはどこまで検討あるいは計画が進んでいるのか。
(上坪委員)
- まだ成功していないが、ドイツのDESY(Deutsches Elektronen-Synchrotron)にあるTTF-FEL(TESLA Test Facility−Free-Electron Laser)が本格的な第四世代の放射光源である。アルゴンヌ国立研究所やスタンフォード大学でも研究開発が行われており、世界で急速に技術開発が進められているが、我が国では本格的には始められていない。
- 放射光施設の利用効率はどうか。
(上坪委員)
- 共同利用研究施設としてSPring-8、PF(フォトン・ファクトリー)は過密な利用状況である。PFは90%ぐらいの課題採択率。SPring-8は、ユーザーからの要求に対して、課題採択率は60%、ビームタイムでは40%となっている。小型の施設としては、立命館大学や広島大学が保有しているが、これらについてもよく使われている。
- 企業の利用の仕方が偏っているという点について危惧を抱いており、2つの期待をしたい。一つは産業界の基幹事業の推進であり、例えば材料やデバイスの解析・評価に役立てたい。もう一つは、医療診断への応用であり、苦痛のない、人に優しい技術として、微小ガンや血管狭窄の発見に役立てたい。今後、X線の被曝が減り、診断性が向上するなどの研究開発が進み、多くの人が技術の恩恵にあずかることを期待したい。
(3−3)中性子科学分野における研究開発の意義・将来展望
| ○齋藤委員より、資料4に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
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- 中性子は、X線と相補的なもので、水素などの原子、磁性、分子や原子の運動状態を見ることができる。物質の物性・機能を探求するための有力な手段となるほか、核変換による新元素の創製や、高レベル廃棄物の消滅にも今後使われることになろう。
- 発生源は研究用原子炉から大強度陽子加速器に移り変わりつつある。利用としては、中性子散乱から即発ガンマ線分析、RI製造、燃料・材料照射などがあるが、先端的研究開発の観点では、中性子散乱による生命・物質科学への寄与、消滅処理などが挙げられる。
- 特許の対象としての知的情報としても、ゲノムなど生命科学は21世紀の最重要科学の一つであるが、たんぱく質の水素や水和構造の位置、働き、構造を見るには中性子が不可欠である。
- 応用としては、医療分野、食品産業、アルツハイマーなど高齢化問題、環境科学などに役立っていくことが期待される。
- 物質科学において、物質の構造やダイナミクス(相互作用)を決定し理解することで、新物質や新材料の創製(人工骨などの生体材料、食品や薬品の開発など)が期待される。
- 工業材料において、材料の健全性の診断や余寿命の予測ができるようになる。
- CoCr(コバルトクロム)の磁気記録薄膜を用いた、大容量のフロッピーディスクを創るなど新材料・電子デバイスの開発も期待されている。
- 核破砕中性子を高レベル廃棄物中の長寿命の核種にあてて短半減期のものや非放射性のものに変えることによって、廃棄物の放射能の毒性を相当小さくすることができると期待される。
- 我が国の中性子源は原研(日本原子力研究所)のJRR―3(Japan Research Reactor 3)とKEK(高エネルギー加速器研究機構)のKENS(KEK Neutron Scattering facility)ぐらいしかない。世界的には、研究用原子炉が減少し、2010年では1960年代の数を下回るとされるのに対して、中性子散乱の研究者は2010年には倍程度に伸びていくと予測されている。
- 原研とKEKで共同で大強度陽子加速器の計画(中性子科学研究計画/大型ハドロン計画の統合計画)を進めている。中性子の強度としても、研究炉の二桁上が出せるので、生命科学の研究ではそれだけ効率が上がる。
- OECDメガサイエンスフォーラムでも、アメリカのSNS(Spallation Neutron Source)計画、欧州のESS(European Spallation Source)計画、さらに我々の計画をもって世界の三大拠点を作り、中性子研究を発展させていこうとの認識である。
| ○ | 齋藤委員のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
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- (資料4の2/6頁について)大強度陽子加速器からの中性子をサーマライズするとほとんどが減衰してしまい、一方、高エネルギー成分が残っていることを考えると、本頁で紹介されている中性子散乱、ラジオグラフィ、即発ガンマ線分析、放射化分析までは、加速器からの中性子を用いるよりはむしろ研究用原子炉からの中性子を使うべきものではないのか。そのように考えると研究用原子炉の方が有効で、それらを開発していくことにつながっていくのではないのか。大強度陽子加速器は、核変換が最も有効な気がする。
(齋藤委員)
- 現在、研究用原子炉からの中性子を低速中性子に変換して研究に使っている。大強度陽子加速器からの中性子も同様にして使う。
- 中性子散乱研究では、パルス中性子の方が向いている。また、大強度陽子加速器では現在の100倍の中性子強度が期待できる。リゾチームの場合、研究用原子炉を使うと三週間かかるが、陽子加速器の方では数時間ですむ。数をこなすという点からも中性子の強度が高いほうが望ましい。
- さらに、(日本の)研究用原子炉は、フラックスでいうと炉心で1014個/cm2/秒であり、これが限界。これ以上を求めることは、燃料の高濃縮の点でも炉の構造の点でも極めて難しくなる。
- 中性子の強度は核破砕直後の中性子の数字か、それとも減衰後のものか。加速器からの中性子の強度は、減衰した後、研究用原子炉からの中性子のそれよりも下がってしまうのではないか。
- ターゲットやモデレータの開発がたいへん進歩していると言える。齋藤委員が取り上げた数字は、エピサーマル中性子、熱中性子、冷中性子を含めた、実際に使える中性子の数である。
- 強度とエネルギーレベルの選び方、評価法、すなわち研究目標と研究範囲における取捨選択の考え方はどうなのか。強度やエネルギ―レベルを選ぶときの判断基準として、「質的な変化が予測される」など科学的基礎づけのある明確な評価が必要だと思う。「高ければ高いほどよい。」というだけでは計画の説得力に欠ける。「半分の大きさでも進歩は得られるのだから半分でもよいのではないか」というコメントに代表されるようにどんどん小さくされてもよいことになってしまう。前もって答えを用意しておく必要がある。
(齋藤委員)
- 生命科学の研究の面では、先ほどの理由で強度の高いものが必要である点について理解してもらえたものと思う。
- 消滅処理の場合の理由は生命科学のものと異なるが、最終的な実用段階は別にして、現段階では大強度陽子加速器でできる範囲の研究をやっていこうというものである。
- 現在、世界で稼動している中性子源を使うと、たんぱく質では、水素や水分子の位置はわかるが、動きはわからない。実際には動きと機能の関係、即ち相互作用が非常に重要であり、そのためには二桁上の強度の中性子が必要である。いわゆる非弾性散乱を測定することが必要で、強度だけでなくエネルギー解析も重要な要素となる。
- 原子炉中性子源が不要というのではなく、原子炉は連続中性子、加速器はパルス中性子と、それぞれに特徴がある。広い範囲で粗く対象を狙うには加速器中性子が有効で、特定の対象に絞り詳細に見るには原子炉から発生する中性子が有効である。
- それは定量化できないのか。
- 可能である。
(座長)
- 定量化の議論については、専門家の間でさらにやってもらいたい。
- 工学的な応用面では、物質そのものが問題になるケースは少なく、それが使用される環境や組成の経時変化を予測することが大切になっている。この点で工学での材料はより複雑な系であると言える。産業界で期待しているのは、例えば「腐食」という現象を根本的に解明することである。科学的側面からのみでなく、工学的側面からも研究を進め、双方の両端から研究をうまくつなげるようにしたい。
- Spring-8は、生命体や極限環境下でのその場観察的実験をできるのが特徴である。産業利用においても、その観点で行っていくことが大事である。中性子科学においても、その場観察的実験を可能にすることが大事である。
(齋藤委員)
- 原子炉を利用した方が適している燃料・材料照射も本分科会の検討範囲に含めるのであれば、まとめるよう対応する。
- 表面の腐食については、すでに中性子散乱で全反射率を計る方法で行われている。日本ではないが、アメリカではIn-situで腐食が進んでいく表面の変化を見る研究が行われている。
(3−4)荷電粒子科学分野における研究開発の意義、将来展望等
| ○ | 谷畑委員より、資料5に基づきプレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
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- 放射能の発見から、放射線利用、原子力エネルギーの利用が発展分岐していく中で、加速器からは陽子ビーム、電子ビーム、重イオンビームがつくられるようになった。最近では二次ビームとして、中性子ビーム、ミュオンビーム、放射光、RIビームなどがつくられるようになり、非常に種類が富んできた。
- 1950年代、60年代は加速器が広がりつつあるパイオニアの時代と言える。70年代中ごろになって、爆発的に製作台数が増え、大衆化・汎用化の時代となった。そして、90年代に入り、大型化が進んでいる。
- 現在産業用を除く加速器を見た場合、我が国の特徴は軽イオンにおいて医療用の加速器の台数が多い点であり、世界的に見てもユニークである。日本は、医療用加速器の先進国と言える。
- 今後、加速器は、高エネルギー化、大強度化、高機能化の方向に進む。加速器を用いた新しい研究としては、物質の根源を知る研究(物質の起源、極限の原子核、新基本物質、反物質の生成、質量の起源の追求)、物質・生体の機能の解明研究(環境中での元素の移動や代謝機能の解明、マイクロビームなどを使った遺伝情報の交信機能に関する研究、物質の内部構造の研究など)、応用の開拓の研究(塩耐性の植物など新しい機能を持った植物の開発や、ガン治療、画像診断など)、及び新エネルギーの可能性を探る研究(廃棄物処理の基礎研究、重イオンによる慣性核融合、加速器駆動型炉、ミュオン核融合などの基礎研究)の4つの方向性がある。
- 一方、WWW(World Wide Web)がCERN(European Laboratory for Particle Physics)で開発されるなど、大量データの処理技術や大容量データ処理保存技術は、加速器科学や原子核・素粒子科学を進める中で生み出されたものである。重要な点は、加速器技術とそれを用いた研究における、こうしたテクノロジープッシュの側面であり、本分科会の趣旨である先端的研究開発に含まれていることを認識して欲しい。
- 基礎研究や加速器開発から、応用開発、社会生活まで、相互の刺激や影響が全てにバランスよく保たれて発展することが重要。
- OECDメガサイエンスフォーラムの核物理ワーキンググループの本年1月の報告では、日本に対しては、特にRIビームとハドロン施設について、中心的存在となることが認識され、世界的な期待が集まっている。また、核物理学の利用研究の一つとして、消滅処理が重要となることについても認識されている。
| ○ | 谷畑委員のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
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- 電子加速器で発生したポジトロンも物質を見ることに利用しており、荷電粒子分野の一つに取り扱って欲しい。
(3−5)レーザー科学分野における研究開発の意義、将来展望等
| ○ | 中塚教授より、資料6に基づき、プレゼンテーションがあった。要旨は以下のとおり。
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- 90年代は光と物質との相互作用がはっきりと示され、レーザー光の物質的な側面が明確に出てきた時代である。
- レーザーの出現は1960年代であり、ほとんどのレーザーが発明された。70年代には科学的な研究手段として発展した。80年代には光通信やエネルギー関係の技術的な蓄積が進んだ。その結果、90年代に我が国では光技術が数兆円産業に発展しているほかエネルギー、環境、生命科学などの分野で実際の利用に展開しようとしている。
- パルスレーザーは、10年間に二桁のエネルギー上昇が見られる。現在では1パルス当たり1キロジュールで10ヘルツのレーザーが開発対象となっている。この背景にあるのは、レーザーダイオードが極めて高出力化してきたこと。
- ピークパワーでは約3年で10倍の伸びとなっており、これは個別の技術、例えば大型の材料化学や光工学における総合的な発展が大型のレーザーを支えてきたためと言える。
- レーザーの特徴は、エネルギーの集中性と周波数の同調性、波長可変性が挙げられる。
- 物質との相互作用という面から現在では光量子科学という新たな分野ができつつあり、高出力レーザー光と物質の相互作用の研究は今や非常に先端的な分野になっている。
- 我が国の研究施設としては、大きなものは大阪大学及び原研の光量子科学研究センターがあり、ハイエナジーレーザーシステムの開発やピークパワーの高いレーザーの開発を行っている。海外では、若干軍事的な要素も持つビッグサイエンスとして、米仏ではメガジュール級のレーザーが建設されつつあり、欧州共同体では共同して大型の装置を共通で使うという動きが、ここ2年ほど活発となっている。
- ピークパワーレーザーが持つ可能性は非常に広く、基礎科学や医学応用にも展開が可能ではないかということで、光量子科学研究センターではすでに数年間の将来計画を立てているようである。繰り返しの早い、産業応用にも展開可能なX線レーザー用のドライバーとして開発中である。
- 国内ではこのほかに、通産省ではレーザー同位体分離や加工についてのフォトン・プロジェクトが現在も続いており、各機関、各組織で次々と将来計画を打ち出している。
- 超短パルスレーザーからでるX線は非常に強く、サブペタワットのレーザーで鮮明なラジオグラフィが得られる。医療関係にも役立っている。
- 原子力領域でも先進的レーザーの開発は進める必要があり、高エネルギー、超高出力、X線、極超短パルス、自由電子レーザーなどがキーワードとなる。計算科学の推進も重要である。
| ○ | 中塚教授のプレゼンテーションに対する議論が行われ、主な意見は以下のとおり。
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- 日本の科学技術予算は大型化しがちで、1つの計画が立ち上がると、他の計画が沈んでしまう。しかし、加速器、レーザーは、小型化の可能性があると思われるので、計画を立案して研究を推進するためのソフト(やり方)についての議論も進めて欲しい。
(中塚教授)
- レーザー科学は、学際的な領域を広くカバーしており、単一の組織が行うものでなく、多くの組織がネットワークを作り、進めていくべきであると思う。
- なぜレーザー科学が原子力研究開発の一つとして取り上げられるのか、その意義がわからない。利用研究の議論も行うのか。
(座長)
- 本分科会では、明確に検討範囲として定められたものがあるわけではないので、今回の発表を下に委員の判断により重要であるとされれば扱うこともある。
(中塚教授)
- 今後の議論の中でレーザー核融合については取り上げられるのではないだろうか。そのベースになっているのは高強度光と物質の相互作用であり、大きな出力を出すレーザーが現在発展していて、その裾野は物理学会や応用物理学会にまで広く及んでいる。
- (原子力の)応用範囲をどこまで議論するかは、個人的な印象であるが、当然のことながら新しい科学技術の開発目標、利用される分野やそれにより生み出される価値などを視野に入れた上でなければ検討できない。つまりニーズへの対応を十分に考えておかなければならない。ニーズ自身をどこまで広げて議論するかについては時間的な制約もあるので、そこまで議論しなくてもよいのではないかと思う。
- 新しい光の創出は非常に重要であり、レーザー科学に携わる人と加速器の装置開発者との間できちんとした協力がはじめられ、今後、様々な加速器についても同様となると思う。レーザーは、原子力研究開発において、核融合のみならず非常に広い範囲で関わりが出てくるのではないか。
(4)その他
| ○ | 座長より、次回会合について以下のとおり説明があった。 |