原子力委員会長期計画策定会議第三分科会報告書

 

 

高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術
の研究開発の在り方と将来展開

−技術的選択肢の確保を目指して−

 

 

(案)

 

 

 

 

平成12年  月

長期計画策定会議第三分科会


目次

はじめに

1.序言

2.高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発の在り方
 2.1 原子力開発の方向性と高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の位置づけ
 2.2 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発の方向性
 2.3 提言

3.高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発の将来展開
 3.1 研究開発の進め方
  (1)基本的考え方
  (2)研究開発体制
  (3)研究開発施設の有効利用
  (4)実用化に向けた展開
  (5)研究開発に当たって考慮すべき点
  (6)原子力政策円卓会議の提言について
 3.2 具体的展開
  (1)「実用化戦略調査研究」
  (2)基礎基盤技術の研究開発
  (3)長寿命核種の分離変換技術の研究開発
  (4)技術評価データベースの整備
  (5)国際協力の具体的展開
  (6)「もんじゅ」を活用した研究開発
  (7)その他の研究開発施設を活用した研究開発

4.結言

参考資料


はじめに

 原子力委員会は、1994年に「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(長期計画)を策定して以来約5年の間に、原子力を巡る国内外の情勢が変化していることを認識し、21世紀社会に向けた新たな長期計画を策定するため、1999年5月に長期計画策定会議を設置しました。
 本分科会は、この長期計画策定会議の審議事項のうち、高速増殖炉とこれに関連する核燃料サイクル技術の在り方、方向性及び今後の課題について審議することを目的として、1999年7月に長期計画策定会議の下に設置されました。
 本分科会は、1999年9月から2000年月までの間合計 回開催され、審議の過程において、高速増殖炉研究開発において重要な施設である核燃料サイクル開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」の視察を行う等現場の状況についても把握した上で議論を行ってきました。また、本分科会の開催に当たっては、審議の経過を明らかにするため、議事概要や配付資料をインターネット等で公開するだけでなく、分科会自体を公開し、審議の透明性の確保に努めてきました。
 本報告書については、長期計画策定会議に報告され、今後、この報告書の内容を踏まえて、同会議において長期計画が策定されることとなります。

 

1.序言

 原子力開発利用とそれを取り巻く環境は、国内的にも国際的にも厳しいものとなっています。まず、世界的には、原子力発電事業の低迷が続く中で、市場の自由化による国際競争の激化を通じエネルギー産業の大改革が進められる時代を迎え、原子力発電の将来は不透明になっています。その背景には、先進国に共通的なエネルギー需要増の減速化傾向がありますが、高レベル放射性廃棄物の最終処分問題が未解決のままという核燃料サイクルの下流部門の不透明感も関連しています。また、高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル(FBRサイクル)技術の研究開発においても、フランスの実証炉「スーパーフェニックス」が閉鎖されるなど、状況が大きく変化しています。

 日本でも、原子力開発利用は様々な課題を抱えています。前回の長期計画策定の後で起きた一連の事故・事件により、原子力政策及び原子力事業に対する国民の信頼は著しく損なわれ、原子力発電をこれ以上拡大することに懸念を感じる人が増えてきています。

 FBRサイクル技術の研究開発においても、原型炉「もんじゅ」は、1995年12月に試運転の途中でナトリウム漏れ事故を起こしたことにより運転が停止されたまま、運転再開へ向けての行政手続きは未だ進められていません。実証炉の建設計画については、前回の長期計画に示されていた具体的計画が、事故後の高速増殖炉懇談会報告により、見直しとなりました。実験炉「常陽」についても、JCO臨界事故は、「常陽」用のウラン濃縮度の高い特別の核燃料を再溶解して製造する過程で起きた事故であり、核燃料の調達の面で今後の計画に影響を及ぼしています。

 一方、地球社会全体をながめてみますと、なお多くの難問が山積しています。そして、その難問のいくつかはエネルギーと大いに関連があります。地球環境の劣化は、途上国における成長の権利を保証しつつエネルギー需給を世界的にいかに制御すべきかという難題を提起しています。すなわち、先進国においては一層の省エネ努力が求められているものの、途上国における人口増加と経済成長を考慮しますと、二酸化炭素を直接的に発生しないなど環境負荷の少ないエネルギー源の開発が望まれており、原子力はそのうちの有力な技術的選択肢の一つと考えられています。

 また、その原子力については、原子力安全や放射性廃棄物問題に加えて、冷戦終結後もなお難渋する核軍縮問題と、冷戦の終焉によってかえって懸念が増大しつつあるように見受けられる核拡散問題があります。核軍縮問題や核拡散問題は、世界的に避けて通れない課題であり、当事国ばかりでなく国際的にその解決に取り組んでいかなければなりません。

 第三分科会では、我が国の原子力開発利用が直面する課題とともに、これらのグローバルな課題を解決していくことが21世紀の地球社会にとって不可欠との認識に基づき、我が国におけるFBRサイクル技術の研究開発の在り方と将来の展開について検討しました。検討に当たっては、まず、その開発の前提となるべき原子力開発の全体計画の方向性について議論した上、その方向性の中での同技術の位置づけと開発の進め方、及びその将来展開に関する考察を行いました。

 

2.高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発の在り方

2.1 原子力開発の方向性と高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の位置づけ

 原子力開発の将来の方向性として第一に重要な視点は、いうまでもなく安全最優先の更なる徹底です。経済性を追求するあまり安全性がないがしろにされやすいといわれますが、原子力の場合、事故の発生による社会的影響の大きさを考えれば安全第一が長い目でみてむしろ経済的であることは明らかで、安全性と経済性を両立させていく必要があります。JCO臨界事故の教訓として、原子力安全の根本は事業に携わる人の問題であり、安全規制によるチェック機能の強化はもとより、より高い安全意識に基づく安全教育の徹底を図るとともに、社会的安全性を特に重視すべきことが求められています。

 原子力を取り巻く環境の悪化の背景には続発する事故や事件による人々の不信感の増幅があります。原子力開発の健全化に向けてその不信感を和らげていくためには、事件や事故の再発を防止し「安全」の実績を積み重ねていくことが何よりも重要です。特に一連の事故や事件が「もんじゅ」事故に端を発していることからも、この安全最優先の考え方は、FBRサイクル技術の研究開発に当たっても最重視されるべき課題であることは言うまでもありません。

 第二に重要な課題は、核燃料サイクルの下流部門、すなわち放射性廃棄物問題への対策です。とりわけ優先的に取り組むべき課題は高レベル放射性廃棄物に関する対策であり、同廃棄物の最終処分に向けて計画の着実な進展を図る上から、処分事業の実施主体の設立と深地下の研究施設の建設が緊要な課題とされていますが、長期的観点からは、半減期の長い放射性物質を分離し変換することにより廃棄物中の放射能の寿命を出来るだけ短くする技術の開発も重要です。FBRサイクル技術は、この半減期の長い放射性物質の分離変換技術と大いに関連があり、環境負荷のより少ない原子力利用を目指す上で有効と考えられています。

 第三に、原子力に関しても経済性の一層の追求が要請されています。電力市場の自由化及びそれに伴なうコストダウンと国際競争力の強化はもはや時代の趨勢であり、他電源との競合性が今後ますます重視されるであろうことを認識しておく必要があります。この点は、軽水炉を基本とする現在の原子力利用体系においても考慮されなければならないことですが、将来の技術的選択肢を開発していくに当たっても考えておかなければならない要件です。特に、将来の地球規模のエネルギー問題の解決に向けた貢献という長期的かつグローバルな視点からは、途上国においてもコスト的に利用可能な原子力の開発が不可欠であることを念頭に置いておく必要があります。この点から、例えば、アメリカでは、途上国における利用可能性をも考慮に入れた将来の原子力利用技術について研究が始められています。

 第四のそして今後ますます重要になるであろうと思われる観点は、不透明感を増している将来への備えです。すなわち原子力の開発利用の意義はエネルギーセキュリティの確保と密接に関連しており、将来の情勢の変化に備え、我が国自身はもとより世界のエネルギーセキュリティの向上に寄与する原子力技術の開発を進める必要があります。例えば、二酸化炭素排出量の増加による地球温暖化現象の深刻化が長期的に憂慮されていますが、非化石燃料源の重要な技術的選択肢の一つとして、原子力を今後とも開発して行くことの意義は大きいと思われます。そして、そのような原子力技術に対する要件としては、上記の安全性・放射性廃棄物・経済性に加えて、環境負荷の低減化を目指した資源リサイクルすなわち省資源と、核不拡散に特に配慮したものが求められています。

 省資源化のためには、プルトニウムによるウラン資源の有効利用が有力な技術的手段です。プルトニウムを燃料として最も効率的に利用できる原子炉は高速中性子を利用する原子炉であり、したがって将来的に有力な選択肢としてFBRサイクル技術の開発が重要です。また、そのことは高速増殖炉懇談会の結論にも示されている通りです。問題は、その技術開発に著大な資金と長期の年月を要することで、諸外国が開発を断念した理由もその点にあります。しかし、先進国の中では最もエネルギー資源小国で石油について最も中東依存国であるという我が国の特殊性からすれば、日本のためばかりでなく世界のエネルギー問題の解決に向けて資源節約型エネルギー技術を開発することにより将来の技術的選択肢を確保をしていくことが重要であり、FBRサイクル技術はそのような技術的選択肢の中でも潜在的可能性が最も大きいものの一つとして位置づけられます。したがって、日本独自の構想と判断の下に国が主体となって長期的観点からその研究開発に取り組むことが必要です。

 一方、プルトニウム燃料の利用に当たっては核不拡散への留意が特段に重要になります。情報公開によって透明性を確保するとともに技術的に核拡散につながりにくい核不拡散型核燃料サイクルの開発が将来的に重要です。核不拡散型サイクルにはプルトニウム以外の有用物質であるマイナーアクチニドについても一緒に燃料として利用することが有効と考えられています。それは資源リサイクルによる省資源のためばかりでなく、最終処分の対象となる放射性廃棄物中に残留するプルトニウムやマイナーアクチニドといった潜在的に危険性の高い物質の量を少なくすることができることから、廃棄物問題の解決にも貢献し得ると考えられます。

 最後に、すでに述べたように、エネルギーセキュリティのための原子力技術も経済合理性がなければ現実にはなかなか採用されません。したがって他の技術的選択肢との競合性を念頭におきつつ実用化の目標を定めその研究開発を進めていく必要があります。しかしながら、エネルギーセキュリティと経済性の問題はエネルギー源の間の単なる比較優位性にとどまらず、日本のような大量の資源輸入国にとっては海外からのエネルギー資源確保に際し国としての一種の交渉力にも大いに関係しており、かかる観点からその技術開発に当たっては国として着実かつ粘り強くそれに取り組むことが期待されます。

2.2 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発の方向性

 まず、第一に開発の柔軟性、すなわち開発に選択の幅をもつことが重要です。海外でも、例えば、フランスでは、原型炉「フェニックス」、及び実証炉「スーパーフェニックス」の経験を踏まえた上、現在ではガス冷却型炉も視野に入れ、2006年までにサイクル全体の技術開発の評価を行う予定になっています。ロシアにおいても、ナトリウム冷却炉である、運転中の「BN−600」、及び財政難のため建設を中断したままの「BN−800」に加え、鉛冷却型炉の開発も行っています。アメリカが昨年から手掛けている新原子力研究計画「原子力エネルギー研究イニシアチブ(NERI)」では核不拡散型核燃料サイクルを指向しており、高速増殖炉ではありませんが中小型炉で途上国向けの技術開発も視野に入れつつ検討が始められています。このように、各国ともに将来の技術的選択肢の開発に当たっては、それぞれの国における研究開発の実績を踏まえつつその選択の幅をできるだけ広くとって進めており、日本においても同様の考え方を採ることが適切と考えられます。

 そのような多様な選択肢の技術的検討を進める観点から、現在、核燃料サイクル開発機構(サイクル機構)において関連する民間機関の協力を得つつ「実用化戦略調査研究」が進められています。多様な選択肢に関する研究開発の方向性を見極めていくに当たっては、まず、同調査研究のタイムスケジュールの下、段階的に示される調査研究の結果に関し原子力委員会の場で評価していく必要があります。その際、「実用化戦略調査研究」の成果のみにとらわれることなく、それ以外の斬新な提案も評価の対象として採り上げていくことが必要です。

 国として研究開発成果を適切に評価し将来の方向性に関する的確な判断を下していくためには、その基礎となる技術評価基盤を開発し整備していくことが不可欠です。過去、日本においては、独自の構想や判断というよりもどちらかといえば諸外国における前例に追従することに重きがおかれることが少なくありませんでしたが、今後は前例のない技術開発に取り組むとの観点から、技術評価データベースを体系的に整備し、研究開発機関の間の連携をこれまで以上に強化することが重要です。また、前例のない技術開発には、結果の成功が必ずしも保証されていないこと、すなわち常に開発リスクを伴なうことを念頭におきつつ、しかし、そのリスクを最小化する努力が恒常的に求められていることを忘れるべきではありません。

 FBRサイクル技術のうち、最も開発が進んでおり現時点で実用化に最も近いものは、MOX燃料とナトリウム冷却を基本とする技術であり、技術的選択肢を広く検討していくに際しても、同技術の評価をまず優先して行うことが不可欠です。同技術に関する今後の重点開発項目をあげれば、ナトリウム取扱技術、MOX燃料再処理、簡素化MOX燃料加工等があります。特にナトリウム取扱技術については、「もんじゅ」による発電プラントとしての運転経験に基づく実証に最優先で取り組むことが必要です。「もんじゅ」は、その他にも、高速中性子源としてFBRサイクル技術に関連する様々な研究開発の目的に供することができ、また、近い将来には世界で唯一の本格的ナトリウム冷却炉になる可能性があることから、我が国及び世界における将来のFBRサイクル技術の研究開発の中核的役割を担うことが期待されています。これらの見地から、「もんじゅ」の同研究開発への早期の活用が望まれます。

 「もんじゅ」に関しては、地元住民らが提訴していた、原子炉の設置許可処分は無効だとする行政訴訟と、建設・運転の差し止めを求める民事訴訟の両訴訟について、いずれも「原告らの請求を棄却」する判決がこの3月22日に示されました。判決は、1995年のナトリウム事故についても「安全審査の合理性を左右するものではない」との見解を示しており、安全性に対するこれまでの基本的考え方の正当性を認めています。しかしながら、事故による社会的影響は著大なものがあり、またとりわけその事故が初歩的な技術的欠陥に起因していたことを関係者は十分に肝に銘じて今後の研究開発に取り組む必要があります。

 上記の「原子力開発の方向性と高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の位置づけ」に示したように、資源リサイクル・核不拡散型サイクルの観点からは、高速炉によるマイナーアクチニドの燃焼技術を視野に入れた先進的リサイクル技術の開発が有効です。そのためには、湿式対乾式再処理プロセス、合金対化合物燃料、集中型対一体型サイクル等、提案されている技術的選択肢に関し長期的視点から総合的に比較検討を行っていく必要があります。さらに、将来の選択肢を広げる上から、炉型選択についても広く考えていくことが適当です。すなわち、鉛冷却やガス冷却等の冷却方式の違い、大型対中小型の規模の相異、高転換炉や高温ガス炉等の他の形式の新型炉、さらには加速器による核変換技術等の将来のオプションについても基礎的及び基盤的研究を進めていくべきです。

 いずれにしても、FBRサイクル技術の研究開発は、少なくとも来世紀の半ばまで、すなわち半世紀以上にわたる超長期的課題です。したがって、それに必要な人材の糾合と育成を常に図りつつ技術開発ポテンシャルの向上と確立に不断に取り組むとの観点が肝要です。そのためには、同技術の研究開発に当たって、原子力以外の他分野との交流に努め革新的技術の導入を図るとともに、他分野との共通性の高い最先端の研究課題に挑戦的に取り組むことを促すなどの長期的施策が必要です。

 一方、研究開発を進めるに当たっても、経済効率性や競争力の維持及び追求が不可欠です。そのためには、企業間の自由な競争と参入や産官学の連携と競争に加えて発注者と受注者の間の役割分担の明確化が重要です。さらには、その目的のために国際競争を活用するとの観点も考慮すべきです。なお、国の研究開発の成果については、電力市場の自由化に関連して電気事業者以外のユーザーの可能性も視野に入れる必要があります。

 また、国際的牽引力となることを目指して我が国の主体性を明確にしつつ国際協力によって技術開発の効率化を図ることが重要であり、現在すでに進行している日仏及び日露の二国間協力を推進するとともに、核軍縮及び核不拡散への技術協力に積極的に取り組むことも重要です。特に米露両国間の核軍縮に伴って発生する解体核兵器からの余剰のプルトニウムの処理を目的とした原子炉オプションについては、米露以外の第三国の積極的関与が核軍縮プロセスの透明性を向上させる上で極めて有効であるとの認識が国際的に醸成されつつある点に留意すべきです。

 研究開発の到達度や進め方についてのチェックアンドレビューを随時行う必要があります。そのためには出来るだけ融通性に富む技術開発プログラムを立て社会情勢の変化に柔軟に対応できるようにするとともに、外部評価によって評価の透明性を確保することが不可欠です。さらに、評価に当たっては、単なる技術評価にとどまらず、社会的状況変化等を踏まえ研究開発政策に関する評価も行うことが肝要です。

2.3 提言

 上記「原子力開発の方向性とFBRサイクル技術の位置づけ」及び「FBRサイクル技術の研究開発の方向性」を基に、次の諸点を提言します。

(1)FBRサイクル技術の研究開発に関する新たな視点を、国のエネルギー戦略の中での将来の技術的選択肢の確保におく。「もんじゅ」を、その研究開発の場の中核として位置づけ、さらにまた、国際的にも貴重な研究開発施設としても位置づけ、その活用を図る。

(2)そのような新たな視点の下、発電プラントとしての信頼性を実証するとともにその運転実績を通じナトリウム取扱技術を確立するという所期の目的を達成するため「もんじゅ」は早期に運転再開を行う。なお、「もんじゅ」の早期運転再開は原子力政策円卓会議の提言にも示唆されている。

(3)「もんじゅ」事故及び原子力界で起きたその後の一連の不祥事や事故によって人々の原子力に対する不信感と不安感が著しく増幅されていることを重く受けとめ、運転再開に当たっては、徹底した情報の開示と提供を行うなど、国民及び地域住民の安全と安心に格別に留意する。

(4)原子力政策円卓会議では、運転再開後の「もんじゅ」の将来の処置について、3つの選択肢を例示しているが、その中では、(ii)の「一定期間研究開発を行った上でその処置を判断する」が妥当である。すなわち、上記の提言(2)に示されている所期の目的のほかにも「もんじゅ」の活用を図るべきか否かについては、今後の研究開発の成果を踏まえて判断する。

(5)研究開発に当たっては、将来の社会的ニーズの多様性を考慮して、従来の大型化ばかりでなく、中小型炉の開発を含め、幅広く技術的選択肢を検討する。また、その成果をグローバルな視点から国際的に役立たせることを目指し、技術的に核拡散につながり難い選択肢を開発する。

(6)研究開発を進めていくに際しては、資源配分が重要であることに鑑み、既存の設備や施設の有効活用をできるだけ図るとともに、人的交流などにより関係機関の連携を強化する。また、開発の効率性を高める観点から国際協力を推進する。

(7)核拡散問題への国際的懸念の増大に照らして、国内の計画の透明性の確保に必要な情報を積極的に発信するとともに、核軍縮に伴って発生するロシアの余剰プルトニウム問題など国際的に緊要度の高い課題の解決に向けて、日本の平和利用技術を提供するなどして積極的に協力する。

3.高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発の将来展開

3.1 研究開発の進め方

(1)基本的考え方

 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル(FBRサイクル)は、非化石エネルギー源として地球温暖化問題を解決する有力な手段の一つであるという原子力の利点に加えて、ウラン資源の利用率を現状に比べ10倍以上に高めることができ、資源消費に伴う環境への負荷を大幅に低減させる効果があり、FBRサイクルの実用化に向け、その研究開発を進めていきます。
 研究開発を進めるに当たっては、我が国がFBRサイクルの研究開発におけるフロントランナーの一員であるとの認識の下、国際的牽引力を持って研究開発を進め、高い目標を達成するため創造性を発揮しつつ、世界のエネルギー問題の永続的解決に寄与すべく努めていかなければなりません。
 以下、基本的な研究開発の進め方について述べます。

@社会的な情勢や内外の研究開発動向等を踏まえた研究開発の推進
 内外の研究開発動向に照らして真に努力を傾注する価値のある課題であるかを確認しつつ研究開発を進め、大学等における関連分野の基礎基盤研究の充実により新しいアイデアの提案や展開が行えるように留意し、その結果にも注目し計画を随時見直していきます。
 また、柔軟な計画の下に研究開発を進めていくためには、将来におけるエネルギー情勢、新たなユーザーを含めたユーザーのニーズ及び社会的ニーズの不確実性等を踏まえ、FBRサイクル技術が多様性を持ち得ることを考慮し、選択の幅を持たせることが重要であり、炉型選択、再処理法、燃料製造法について広く検討を行います。

A経済性の確保
 電力市場の自由化等の厳しい経済的な環境を踏まえ、導入リスクをできる限り低減する必要があります。そのため、FBRサイクルの研究開発には、安全確保を前提に、実用化段階において軽水炉や他電源と比肩し得る経済性を達成するという目標を設定することが必要です。
 特に、高速増殖炉の研究開発については、FBRサイクル全体の推進の観点から、高い経済性を目指す必要があります。
 また、今後の研究開発において最大限の投資効果を引き出すため、FBRサイクル技術の多様な選択肢について経済性等の実用化の可能性を十分に検討し、将来のFBRサイクルの実用化像の絞り込みと実用化への道筋をつけるための研究開発を進めていきます。
 研究開発を進めるに当たって、企業間の自由な競争と参入や産官学の連携と競争、国際競争が活発に行われ、経済効率性の向上が図れるような環境が醸成されることが重要です。

B環境負荷低減
 21世紀の我が国が目指すべき循環型社会への基本路線に適合し、かつ環境負荷低減の観点から、発生する廃棄物量をできる限り低減する必要があります。その一つの方策として放射性廃棄物から長寿命核種を分離し、それらを短寿命あるいは安定な核種に変換する技術に係る研究開発を基礎基盤技術として引き続き進めることとします。さらに、この環境負荷について適切に見積もり、経済性の検討等に反映させていきます。
 また、核不拡散の観点から、我が国にとどまらず国際的な課題の解決に向けた研究開発を実施する必要があり、マイナーアクチニド燃焼を含む核燃料サイクルを視野に入れて研究開発を進めます。

C技術の継承と人材確保
 これまでの研究開発過程で得られた成果は、今後の実用化に向けたFBRサイクルの研究開発を着実かつ効率的に進める上で非常に重要であり、研究開発だけでなく設計や建設を行った各機関に分散している技術的な成果を散逸させることなく、高いポテンシャルを維持し技術継承を図り十分に活用するよう努めます。また、高い水準の研究開発を継続的に実施していくため、優秀な人材の確保に努めます。
 技術の継承と人材確保のため、各機関は相互に連携しつつ、適切な研究開発目標を設定し、研究開発施設を設計、建設し、これを運転、維持していくなど、技術的継承を行いながら新しい技術の開発・改良を行っていく環境の整備に努めます。この際、高い水準の夢を持てる研究開発を進めることが人材の確保につながるという視点も欠かせません。
 さらに、将来の研究開発を担う人材を確保するという観点から、大学等における関連分野の基礎基盤研究の充実により、新しいアイデアの提案や展開を積極的に進めることとします。

D研究開発成果の評価
 研究開発を進めていく途上においては、できるだけ融通性の高い研究開発プログラムを立て、社会情勢も含めた研究開発を取り巻く状況を的確に踏まえつつ、その進め方及び到達度について定期的にチェックアンドレビューを行っていきます。研究開発の進め方及び成果について、透明性の確保を図る観点からも資源配分に配慮しつつ定期的に技術評価のみならず研究開発政策に関する評価もなされる必要があります。
 また、研究開発成果を的確に評価するため、研究開発機関間の連携を強化し、技術基盤情報を含む技術評価データベースの整備を進めます。

E安全性
 原子力の研究開発において安全性の確保はその大前提となるものであり、最優先に取り組むべきものです。
 また、FBRサイクルの実用化の段階で安全が確保されることはもちろんのこと、研究開発の途上においても安全の確保に努めていかなければなりません。

(JCO臨界事故)
 JCO臨界事故は、作業員の重大な被ばくや周辺住民の避難や屋内退避を招き、原子力利用に対する国民の信頼が大きく損なわれた重大な事故でした。JCO臨界事故を受け、国は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正及び原子力災害対策特別措置法の制定を行い、安全規制及び防災対策を強化しました。
 JCO臨界事故は、「常陽」用燃料製造のための比較的高いウラン濃縮度の硝酸ウラニル製造という小規模かつ非定常的な特殊な作業において発生したもので、その特殊性に関する配慮が必要でありました。さらに、そのような配慮がないばかりでなく、作業員が定められた作業基準を逸脱した条件で作業を行うという組織としても安全確保に対する責任を履行し得る体制になっていなかったことがこのような事故を発生させたと考えます。
 この状況に鑑みれば、安全についての十分な知識を持つことはもとより、安全を守るという強い責任感が必要であり、個人的にも組織的にも安全確保の責任を明確化させていく必要があります。また、事故が発生しても他へ波及しないようにするなど、被害を最小限にするためのシステムの構築の必要性等JCO臨界事故の教訓を最大限踏まえ、失われた国民からの信頼を回復していかなければならないと考えます。

(安全確保のための教育)
 安全は、安全についての十分な知識の上に強い責任感を持つことによって確保されるものと考えられます。したがって、まず職務に関し責任感を持つことがきちんと教育される必要があります。
 その上で、十全なシステムを構築しつつ、研究開発に携わる人全てが、その業務に関する安全性について十分な教育を受け、高い安全確保についての意識を持てるような体制を整備していくことが重要と認識すべきです。

(安全確保のためのシステムの構築)
 一般に原子力施設は多様なシステムが統合されたものであり、機器の故障等をゼロにすることは不可能です。このため、早期に故障を発見したり、故障が起こっても他への波及がないようにするなどトラブルを未然に防ぐシステムを構築する必要があります。また、原子力施設だけの問題ではありませんが、人の介在する部分でのトラブルが多く発生することに鑑み、人は誤りを犯すことを前提にソフト・ハード両面からの対策をとるなど人的過誤を可能な限り防ぐためのシステムを構築することが不可欠です。さらに、万一、施設外へ影響を及ぼすような事態に至ったとしても影響の拡大を防ぐシステムの構築が不可欠です。また、FBRサイクルの進展によってプルトニウムの利用が拡大することから、万が一の事態に備えるため、プルトニウムの生体への影響に関する研究を行う必要があります。
 このようなソフト・ハード両面での対策がなされた上で、施設を運用する個人と組織が、自己責任の徹底によって、安全を確保することが必要です。さらに、各組織に求められる要件として、自己責任の徹底がなされていることを常に確認する体制を整備することも重要です。

F国際協力
 我が国が主導的に行う部分を明確にし、そこにおいて国際的牽引力になることを目指し、国際協力によって、技術開発を効率的に進め、研究開発成果を国際的に役立たせるとの観点から、現在実施されている日仏協力、日露協力をはじめとして、各国との協力を積極的に推進することとします。
 また、核軍縮及び核不拡散への技術協力という観点も重要であり、ロシアにおける高速増殖炉を利用した余剰兵器プルトニウム燃焼に係る研究開発に引き続き取り組みます。

(2)研究開発体制
@研究開発体制の基本的考え方
 実用化に向けた研究開発を進めていくに当たっては、従来の研究開発成果を活用するとともに、新たな発想の創出に挑戦することが必要であり、内外の研究者の力を結集して、多様な選択肢の検討を含め、原子炉システムと核燃料サイクルシステムについて整合性をもって進めることが重要です。したがって、FBRサイクルの研究開発に参加する組織、すなわち核燃料サイクル開発機構(サイクル機構)、電気事業者、電力中央研究所(電中研)、日本原子力研究所(原研)、メーカー等がそれぞれの役割を担いつつ、緊密な連携を図ることが求められます。
 このような観点から、研究開発に必要な人、資金等の資源を有効活用し、効率的に研究開発を進めるため、サイクル機構と電気事業者が一致協力して「実用化戦略調査研究」を実施しており、既に電中研及び原研も参画しています。各機関は、これが大きな成果を得るよう努めていく必要があります。

A各機関の役割
 国は、関係機関におけるFBRサイクルの研究開発が効果的かつ効率的に推進されるよう、その全体的な進め方について定期的な評価及び必要に応じた見直しをしていかなければなりません。
 サイクル機構は主要な研究開発施設を有し、FBRサイクルを技術的に確立するための主導的役割を担うべく国民の負託を受けた研究開発機関として、これまでの知見・経験をいかし、実用化に向けたFBRサイクル全般の研究開発を計画的に進めていく責任を持ちます。
 電気事業者は、FBRサイクルの実用化の目途がついた後には、将来のユーザーとして主体的に実用化のための開発を進めていくこととなります。したがって、実用化に向けた研究開発にその計画策定段階から積極的に参画し、研究開発においてコスト意識が強く反映されるよう、サイクル機構と一致協力していく必要があります。
電中研は、FBRサイクルの基礎基盤研究及び将来のユーザーたる電気事業者のニーズに応えるための実用化技術に関する研究開発を推進します。
 原研は、FBRサイクルの基礎基盤研究を担う主要な機関として関連の研究開発を推進します。
 メーカーは、その独自のノウハウをいかし、関連研究開発、施設の建設、保守、改良等に関する受注を通じて、また研究開発機関、他メーカー等との協力を通じて、実用化に向けた研究開発を支える設計技術及び製造技術を開発しつつ、その成果を実用化に向けた研究開発に役立てていくことが望まれます。
 大学等は、その幅広い基礎基盤研究において、革新的技術を創出することが望まれます。
 また、これまで原子力に係る研究開発を行っていなかった企業等がFBRサイクルに係る研究開発に参入する機会をつくることも重要です。

(3)研究開発施設の有効利用
@「もんじゅ」
 「もんじゅ」における研究開発においては、これまでの設計・建設段階で多くの知見を蓄積してきましたが、今後の実用化に向けた高速増殖炉の研究開発を進めるに当たって、これまでの蓄積に加え、今後の「もんじゅ」の運転・保守データを加えることが重要です。
 「もんじゅ」の運転による研究開発により、発電プラントとしての信頼性を確認し、実用化に向けた技術的可能性を評価する「原型炉」としての目的を達成することが必要不可欠であり、この目的を達成しないまま、「もんじゅ」の研究開発を中断することは、これまでの成果とともに今後の可能性をも否定することに等しく、我が国の将来にとって大きな損失といえます。
 したがって、「もんじゅ」については、総合漏えい監視システム設置、窒素ガス注入設備整備等のナトリウム漏えい対策の実施及び安全性総点検における改善により施設の安全性の向上を図るとともに、動燃改革等の確実な実施により「もんじゅ」に携わる人の安全意識の向上を図り、地元の理解と協力を得て、研究開発段階にある原子炉であることを認識した慎重な運転管理が行われることを前提に、早期に運転再開されることが適切です。
 また、実用化に向けた研究開発によって得られた要素技術等の成果を「もんじゅ」において実証するなど、高速増殖炉用燃料製造及び再処理と連携して、一連の核燃料サイクル技術の確立に向けた研究開発において、「もんじゅ」を高速中性子源として有効に活用していくことが必要と考えられます。
 さらに、「もんじゅ」は、最も開発が進んでいるMOX燃料を用いたナトリウム冷却型の炉であり、高速増殖炉研究開発にとって、世界的に見ても限られた必要不可欠な場です。このため、内外の研究者に広く開放しつつ、中核的な研究開発施設として運用していくことが適切です。

Aその他の研究開発施設
 FBRサイクルの実用化への研究開発を進めるには、それを支える幅広い基礎基盤的研究が並行してなされることが必要です。このため、「常陽」や核燃料サイクル関連施設を使用してFBRサイクルに関する各種の研究開発を、国内外の研究機関が協力して実施していくことが重要です。

()「常陽」
 FBRサイクルの研究開発において、「常陽」は、我が国初の高速増殖炉として、実データに基づいて「もんじゅ」及びその後の高速増殖炉開発に必要な技術的課題を摘出し、その解決に貢献するとともに、高速中性子の照射による新型燃料・材料の開発や革新的技術を取り入れた機器等の開発にも有効活用することを目的とした研究開発施設と位置付けることができます。
 特に高速増殖炉の実用化に向け、燃料に関する様々な照射試験、運転時の安全性を実証する試験等、難度の高い試験に積極的に取り組むことが重要です。
なお、2004年度以降の燃料については、海外からの調達を含め検討していくこととなります。

()リサイクル機器試験施設(RETF)
 RETFは、工学規模での高速増殖炉燃料再処理技術確立に向けた研究開発を行う施設であり、高レベル放射性物質研究施設(CPF)を用いた基盤研究の成果、「実用化戦略調査研究」の結果等を踏まえ、ピューレックス法以外の技術開発を行うことも含め、その方向性を明確にする必要があります。

()その他の施設
 プルトニウム燃料開発施設、燃料及び材料の照射後試験施設、ナトリウムの試験研究施設等は、基礎基盤研究に供するとともに、ソフト技術の高度化に役立てることが必要です。

(4)実用化に向けた展開
 実証炉の具体的計画については、実用化に向けた研究開発の過程で得られる種々の成果等を十分に評価した上で、その決定が行われることが適切です。
 また、高速増殖炉の実用化に当たっては、安全確保を大前提に、経済性を追求しつつ、実用化時期を含めた開発計画について柔軟に対応していくことが適切です。

(5)研究開発に当たって考慮すべき点
@国民合意と理解促進
 FBRサイクルの研究開発についても、その意義及び進め方等についての立地地域社会の理解をはじめとした国民レベルでの合意形成が必要不可欠です。特に立地地域社会の理解を得るためには、地域の自主的努力を支援するよう地域振興等を行い地域社会との信頼関係を深め共存を図っていくことが重要です。
 このため研究開発の意義及び進め方、施設の安全性等について、国をはじめとする関係者が情報公開に努めることはもちろんのこと、説明会、シンポジウム等の様々な機会を通じて一般の方々への説明責任を十分に果たしていかなければなりません。
 さらに、多くの一般の方々が新聞、テレビ等のマスコミを通じて情報を得ることから、関係者はマスコミとのコミュニケーションにも十分配慮すべきです。
また、「もんじゅ」事故、JCO臨界事故等により、地元をはじめとする国民の不安感、不信感が高まっており、国をはじめとして、関係者は、その信頼回復に努めなければなりません。

A核不拡散の努力
 我が国の原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限っています。核不拡散については、我が国は、原子力施設等について、国際原子力機関(IAEA)の保障措置上の厳しい監視を受け入れています。
 プルトニウムについては、利用目的のない余剰プルトニウムを持たないとの原則に基づき全体のプルトニウム需給に適切に配慮しつつ計画的に利用していくことが重要です。またテロリストなどによる破壊活動や核物質の盗難が危惧され、プルトニウムの盗難等がないようにする核物質防護についても、核物質防護条約に加盟し、世界の国々と一致協力して対策をとっています。さらに、分離プルトニウムの管理状況について毎年公表するなど、プルトニウム利用の透明性向上にも積極的に取り組んでいます。  FBRサイクル技術の研究開発においても、上記のような観点から、適切な保障措置を受け、国の指導の下、的確な核物質防護措置をとることにより、今後とも各国からの疑念を招かないように努力することが基本です。

(6)原子力政策円卓会議の提言について
 「もんじゅ」の早期運転再開は、原子力政策円卓会議でも提言されています。同提言にある「その後の処置」に関する選択肢()、()、()については、()の「一定期間研究開発を行い必要なデータを得た上で廃炉する」は最終的には実行することとなるとしても、技術的選択肢の確保の観点から、()の「一定期間研究開発を行った上でその処置を判断する」を選択することが妥当です。すなわち、発電プラントとしての信頼性を実証するとともにその運転実績を通じナトリウム取扱い技術を確立するという所期の目的を達成するために「もんじゅ」の早期運転再開を行い、この所期の目的の他にも「もんじゅ」の活用を図るべきか否かについては、今後の研究開発の成果を踏まえて判断することが適当です。
 また、本分科会では、原子力政策円卓会議の()、()、()以外に、「運転再開をせずに博物館とする」という案も委員の一人から示されました。

3.2具体的展開

 これまでの議論を踏まえ、主要な研究開発の項目について、具体的な進め方を以下に述べます。

(1)「実用化戦略調査研究」
@目的
 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル(FBRサイクル)に関する技術的な選択肢について経済性等の評価を行い、FBRサイクルの実用化像を絞り込み、その研究開発計画を提示することを目的に、開発に必要な人、資金等の資源を有効活用し、効率的に研究開発を進めるという観点から、1999年よりサイクル機構と電気事業者が一致協力して「実用化戦略調査研究」を実施しており、電中研と原研も参画しています。今後、必要に応じメーカーの参画も期待されます。

A進め方
 「実用化戦略調査研究」では、安全の確保を大前提として軽水炉をはじめとする他電源に対し競争力のあるFBRサイクル技術を提示するため、幅広い選択肢について、FBRサイクルとして適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を明示します。本調査研究の実施に当たっては、単に既存の技術について調査を行うだけでなく、新たなアイデアの発掘にも努める必要があります。
 高速増殖炉の炉型選択については冷却材(ナトリウム、鉛、ガス等)、出力規模(大型、中小型炉等)、燃料形態(化合物燃料(MOX燃料、窒化物燃料)、合金燃料(金属燃料)等)について評価するとともに、高転換炉、高温ガス炉等の選択肢についても比較検討を行います。また、高速増殖炉に関連する核燃料サイクルについては燃料製造法(ペレット法、射出成形法、振動充填法等)、再処理法(湿式法、乾式法等)、サイクル施設の配置方式(集中型、炉との一体型)について評価を行います。
 評価の指標については、安全性、経済性、資源の有効利用、環境負荷低減、核不拡散性の5つの観点に加えて、研究開発の実現性についても重要な視点であり、各選択肢における現状の技術の開発状況、実用化までの開発期間及び投入資金が考慮されるべきです。
 また、本調査研究等を踏まえ、FBRサイクルとして適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を明示し、その結果について原子力委員会が評価する必要があります。

(2)基礎基盤技術の研究開発
 サイクル機構、電中研、原研、大学等の各機関は、FBRサイクル技術について裾野の広い基盤的な研究開発を行っていくことが必要です。
高速増殖炉に関しては、プラント設計のための設計基準及び解析コード類並びに安全評価のための解析手法等の整備、またマイナーアクチニドの燃焼及び長寿命核分裂生成物の核変換等を対象とした炉物理試験や核データファイルの整備、さらに燃料の物性データの整備等のための研究開発を進めるべきです。
 高速増殖炉に関連する核燃料サイクルに関しては、ペレット法、射出成形法、振動充填法等の各種燃料製造法について、また湿式法、乾式法等の各種再処理法について基盤的な研究開発を進めるべきです。
 また、研究開発を進めるに当たっては、研究者個人やこれまで原子力に係る研究開発を行っていなかった企業等も広く参加できる提案公募型の研究開発推進制度を活用するなどにより、競争的な環境を作っていくことも重要です。

(3)長寿命核種の分離変換技術の研究開発
 分離変換技術に関しては、実現性のある核燃料サイクルへの分離変換技術システムの導入シナリオを検討しつつ、基礎基盤的な研究開発を着実に進めることが重要です。そのためにサイクル機構と電中研が、高速増殖炉を中心とする一つの核燃料サイクルの中で発電とマイナーアクチニド及び長寿命核分裂生成物の核変換を同時に行うことを目指す発電用高速炉利用型の技術についての研究開発を進めることが重要です。また、原研が商用発電サイクルと加速器駆動未臨界炉(ADS)や専焼高速炉(ABR)等を中心に据えた核変換サイクルの二つのサイクルからなる階層型の技術についての研究開発を進めることが重要です。
 また、「もんじゅ」を含め、高速増殖炉から発生する放射性廃棄物の量等環境負荷を適切に見積もり、経済性等に反映させていくことが重要であり、必要なデータを取得するために「もんじゅ」、「常陽」等の施設において所要の実験等を行っていく必要があります。

(4)技術評価データベースの整備
 技術評価データベースの整備に当たっては、実プラントの設計、製作、運転、保守に関する技術情報等を含め、これまで各機関が蓄積してきた研究開発成果に関する技術情報を広く集め、共有化する必要があります。
 技術評価データベースについては、まず各機関が自ら取りまとめ、その結果をサイクル機構が中心となって集約・共有化し、透明性を確保しつつ整備することが重要です。

(5)国際協力の具体的展開

 FBRサイクルに関する国際協力について、前章までに述べた基本的考え方の下、以下のとおり進めていきます。

@フランス
 「高速増殖炉に関する日仏専門家会合」等を通じ、サイクル機構、電気事業者、電中研、原研の各機関はフランスの研究機関との間において、将来炉における経済性向上及びプラント性能向上に関する共同研究、将来炉における安全性向上に関する共同研究、マイナーアクチニド等の燃焼及び長寿命核分裂生成物の核変換に関する「常陽」及び「フェニックス」を用いた共同照射試験研究等に関する協力を着実に進めていきます。

Aロシア
 サイクル機構、電気事業者、電中研、原研の各機関はロシアの研究機関との間において「高速増殖炉に関する日露専門家会合」等を通じ、乾式再処理技術と振動充填法による燃料製造技術等の高速増殖炉に関連する核燃料サイクルに関する研究開発、ロシアの高速増殖炉を用いた高燃焼度燃料の照射試験研究、核データ及び炉物理分野等について密接に協力関係を進展させることが望まれます。
 また、サイクル機構は、核軍縮及び核不拡散への貢献の観点も考慮しつつ、燃料製造に係る研究開発の一環として、ロシアの核兵器解体に伴う余剰兵器プルトニウムをロシアの高速増殖炉「BN−600」で燃焼させる計画へ参画しており、本計画を通じて得られる技術成果を「実用化戦略調査研究」等に反映していくことが重要です。

Bその他
 今後は、「原子力エネルギー研究イニシアチブ(NERI)」に代表されるアメリカの新しい動きにも注視しつつ積極的に協力関係を深めることが重要です。また、欧州諸国及びカザフスタン、さらに実験炉を建設する段階に至っている中国をはじめとするアジア各国との人的交流も含めて総合的に国際協力を検討していくことが重要です。

(6)「もんじゅ」を活用した研究開発
@「もんじゅ」の役割
 「もんじゅ」については、FBRサイクルに関する技術を実証する中核的役割を果たすことが期待されます。発電プラントとしての性能を確認するとともに運転経験の蓄積と技術改良を行い、実用化に向けた技術的可能性を評価する「原型炉」としての目的を達成するために、ナトリウム漏えい事故の損傷部の改修及び再発防止のための安全対策の措置を行った後、早期に運転を再開し、増殖性能の確認、高燃焼度燃料の実証、運転・保守経験を通じた蒸気発生器等の大型ナトリウム機器の性能及び信頼性の実証等ナトリウム取扱技術の確立等を目指した研究開発を進めることが重要です。また、「もんじゅ」を開発するに当たり蓄積されてきた設計基準、設計コード等の設計手法や安全評価のための解析手法の妥当性を「もんじゅ」の運転を通して検証することも重要です。長期的には、実用化に向けた研究開発によって得られた要素技術等の成果を「もんじゅ」において実証するなど高速増殖炉用燃料及び再処理と連携して、一連の核燃料サイクル技術の確立に向けた研究開発において「もんじゅ」を高速中性子源として有効に活用することも考えられます。

 「もんじゅ」では実用化に向けた研究開発において要求される大型の燃料集合体での照射等が可能であるため、マイナーアクチニドの燃焼や長寿命核分裂生成物の核変換等環境負荷低減に関するデータを幅広く蓄積することが必要と考えられます。

A「もんじゅ」における国際協力
 「もんじゅ」は国際的に見ても発電設備を有する貴重な高速増殖炉プラントであり、ここで得られる運転・保守データ及び照射・燃焼データ等は世界における高速増殖炉に係る研究開発に資する重要なデータとして期待されます。したがって、「もんじゅ」及びその周辺施設を国際協力の拠点として整備し、「もんじゅ」における研究開発は、海外技術者に開かれた体制で進め、その成果を広く国内外に発信することが重要です。

(7)その他の研究開発施設を活用した研究開発
@「常陽」
 「常陽」は、現在照射性能を高めるために熱出力140MWの炉心への改造等を内容とするMK−V計画を進めており、その後実用化を想定した高燃焼度燃料やマイナーアクチニド含有燃料等の新型燃料の照射試験や燃料の安全性確認試験等を進めていきます。
 また、高速増殖炉の実用化に向け過渡照射や限界照射並びに実績の少ない燃料の先行照射等、難度の高い試験に積極的に取り組むことが重要です。
さらに、「常陽」は高速中性子の照射場として有用かつ貴重な施設であり、FBRサイクル技術のみならず核融合等の異分野についても大学や国内外の研究者への利用に供することも期待されます。

Aリサイクル機器試験施設(RETF)及び高レベル放射性物質研究施設(CPF)
 RETFは、東海再処理施設の軽水炉燃料再処理技術をベースに高速増殖炉燃料に係るCPFでの研究開発成果等を踏まえ、工学規模での高速増殖炉燃料再処理技術確立に向けた研究開発を行う施設です。2000年半ばには、試験棟建物、電気設備、換気・給排水設備等を建設、設置する第一期工事が終了する予定です。今後は、高速増殖炉再処理技術に関する研究成果を踏まえ、「実用化戦略調査研究」の進捗と整合をとりつつ、試験機器の設置を行う第二期工事を進めていく必要があります。
 CPFについては、先進的再処理プロセスの研究開発や分離変換技術の研究開発を中心とする多様な高速増殖炉燃料の再処理技術に関する基礎基盤研究のための試験施設として活用され、その成果を「実用化戦略調査研究」や分離変換技術の研究開発に反映することが重要です。
 具体的には、先進的再処理プロセスの開発については、湿式法及び乾式法について安全性と経済性を追求するプロセス、廃棄物量を低減化するプロセス、核不拡散性を考慮するプロセス等を開発していくこと、また分離変換技術の研究開発としては、マイナーアクチニドや長寿命核分裂生成物の分離技術に関する基盤的な研究開発を実施することが重要です。

Bその他
 原研の高速炉臨界実験装置(FCA)はプルトニウム燃料を利用した我が国唯一の臨界実験装置であり、炉心構成に柔軟性を持つなどの特徴があり、高速増殖炉及び分離変換技術に関する基盤的な研究開発を行っていきます。また、軽水臨界実験装置(TCA)を利用し、低減速スペクトル炉に関する基盤的な研究開発も行っていきます。
 サイクル機構のプルトニウム燃料開発施設、燃料及び材料の照射後試験施設、各種ナトリウム試験研究施設等を用いた試験を継続し、高速増殖炉の設計のための解析コード類や安全評価のための解析手法を整備していきます。

 

4.結言

 21世紀を間近に控え持続可能な地球社会の形成が希求されている中、紛争のない世界平和と安定的な経済成長を達成するとともに、廃棄物の発生量を出来るだけ抑制するなどの環境と調和するエネルギー需給構造を世界的に構築していくことが強く望まれており、その点で日本が果たすべき役割はますます大きくなっていくものと思われます。

 国内的にも、経済成長の低迷や財政赤字の拡大等克服すべき課題が山積していますが、エネルギー供給の海外依存度や石油の中東依存度等を見ますと日本のエネルギー供給構造は先進国の中でも特に際立って脆弱なものになっており、二酸化炭素排出量の削減目標の達成と合わせエネルギーセキュリティの向上がエネルギー政策上の最重要課題の一つとなっています。

 国内外のこれらの状況を総合的に考えますと、原子力の開発利用は、今後とも欠かすことのできないエネルギー選択肢であり、なかでもFBRサイクル技術については、地球社会の持続可能性を追求する上から長期的にその開発に取り組む必要があります。エネルギー供給面で海外資源への依存度が極めて高い日本は、特にその技術的研究開発を先導的に進め、世界のエネルギー問題の永続的解決に少しでも寄与していくことが重要です。

 FBRサイクル技術は、非化石エネルギー源として地球温暖化問題を解決する有力な手段の一つであるという原子力の利点に加えて、ウラン資源の利用率を現状に比べその10倍以上に高めることができ、資源消費に伴う環境への負荷を大幅に低減させる効果があります。また、同技術は、多様な燃料組成や燃料形態に柔軟に適用し得るという技術的特徴を有しており、高レベル放射性廃棄物中に長期的に残留する放射能をできるだけ少なくすることにも有効です。

 FBRサイクル技術に関連して、さらに注目すべきことは、核軍縮を進める上で不可欠な核兵器の解体に伴って発生する余剰のプルトニウムの処理を巡って、ロシアで発生するものについてはロシアのFBRサイクル技術を利用する計画が日・露・米の間の協力として進められているという事実です。これはもともと日本政府の提案によるものであり、日本においてこれまでに開発されてきたFBRサイクル技術が間接的に役立っています。同計画がさらに進めば、米露間の核軍縮の進展に少なからず貢献するものと考えられ、その意義は少なくないと思われます。

 他方、FBRサイクル技術の開発利用に際しては、プルトニウム燃料の使用を前提としており、核拡散問題を惹起しやすい面があることを忘れるべきではありません。これも日本政府の提案により、数年来プルトニウムの在庫についてその情報が国際的に公開されていますが、今後ともそのような情報の公開を徹底するとともに、技術的に核拡散につながり難いサイクル技術を開発するなどして核拡散に関する国際的懸念を払拭していく努力が必要です。

 以上のような観点から、原型炉「もんじゅ」については、FBRサイクル技術の研究開発の中核の場として位置づけ、安全の確保を大前提に、地元をはじめとする国民の理解を得て、早期に運転を再開し、発電プラントとしての性能の実証とその運転経験を通じてナトリウム取扱技術の確立を図るべきことを提案しました。

 さらに、今後の研究開発に当たって必要な新たな視点として計画の柔軟性を指摘しました。FBRサイクル技術のような長期的な技術的選択肢の研究開発には開発リスクがあることを予め計画に織り込んでおく必要があります。そのためには「もんじゅ」の運転実績を着実に積み重ねつつ、将来の展開については、多様な選択肢の可能性を併せて追求していくことが重要です。そのような計画の柔軟性を担保する上からは、外部評価を定期的かつ積極的に行うなどして計画の透明性を高めることが必要です。