第三分科会からの中間報告

平成12年4月7日
第三分科会座長

1.テーマ:高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル(Fサイクル)

2.論 点:(1)Fサイクルの位置づけ−原子力開発の方向性
      (2)Fサイクル関連技術開発の方向性−もんじゅの位置づけ
      (3)Fサイクル関連技術開発の進め方

3.原子力開発の方向性

(1)第1は安全性。安全最優先の徹底。長い目でみて安全第1がむしろ経済的との認識が重要。JCO事故の教訓は、自己責任の徹底、21世紀型安全社会、リスク評価社会、国民の不安に応える安全行政。とくに、携わる人の問題。安全意識、安全教育、社会的安全性の重視。

(2)第2はバックエンド対策。とくに高レベル放射性廃棄物対策。着実な進展を図る上から実施主体の設立と地下研究施設の建設が当面の課題。長期的観点からは、長寿命放射能の分離変換技術の開発も重要。

(3)第3は経済性の一層の追求。電力市場の自由化、コストダウン、国際競争力の強化は時代の趨勢。長期的かつグローバルな視点からは、途上国でもコスト的に利用可能な原子力の開発が重要。

(4)第4は将来の備え。原子力の技術開発の意義はエネルギーセキュリティ。それが動燃改革検討委員会の勧告。エネルギーセキュリティ型原子力の要件は、安全性・バックエンド・経済性に加えて、資源リサイクルすなわち省資源と核不拡散。

(5)省資源又は資源リサイクルのためには、プルトニウムによるウラン資源の有効利用が欠かせない。したがって将来的に重要な選択肢として高速炉の開発が重要。それが高速増殖炉懇談会の結論。問題は、セキュリティ、すなわち、日本独自の構想や判断の下にいかに開発を進めていくか。そのためには、国が主体となって長期的に開発に取り組むことが必要。第三分科会での長計の議論では、Fサイクルに関する国の計画に重点。

(6)また、プルトニウム燃料の利用には核不拡散への留意が特段に重要。情報公開による透明性の向上とともに核不拡散型サイクルの開発。核不拡散型サイクルにはマイナーアクチニドの利用が有効。資源リサイクルとともにバックエンド対策(廃棄物問題)にも貢献。

(7)しかし、エネルギーセキュリティ型原子力も経済合理性がなければ不採用。エネルギーセキュリティと経済性の問題は、海外からのエネルギー資源確保に際し国としての一種の交渉力に関連。長期的視点から戦略的に開発に取り組むことが重要。

4.Fサイクル関連技術の開発の方向性

(1)第1に柔軟性。選択の幅をもつことが重要。フランスでは、フェニックス、スーパーフェニックスの経験を踏まえ、ガス冷却炉も視野。2006年までに、サイクル全体の技術開発評価を予定。ロシアでも、BN−600、BN−800に加え、鉛冷却型炉も開発。米国の新原子力研究計画は核不拡散型を指向するとともに中小型炉で途上国向けも視野。

(2)多様な選択肢の検討を進める観点から、JNCの実用化戦略調査研究を活用。同調査研究のタイムスケジュールの下、第1期において期待されている成果に関し原子力委員会の場で評価。

(3)国として研究開発成果を的確に評価し判断していくための技術評価基盤の開発が不可欠。そのためには技術評価データベースを確立し、研究開発機関の間の連携を強化することが重要。

(4)Fサイクル関連技術のうち、もっとも開発が進んでいるものは、MOX燃料・ナトリウム冷却。同技術の重点開発項目は、たとえば、ナトリウム技術、3次元免震、MOX燃料再処理・加工。とくにナトリウム技術については、「もんじゅ」の運転経験にもとづく実証が不可欠。

(5)資源リサイクル・核不拡散型サイクルの観点からは、先進リサイクル・マイナーアクチニド燃焼を視野に入れることが重要。そのためには、湿式対乾式、合金対化合物、集中型サイクル対一体型などの比較検討が必要。

(6)さらに、将来の選択肢を広げる観点から、炉型選択についても広く考えることが重要。すなわち、鉛冷却・ガス冷却、大型・中小型炉。高転換炉、高温ガス炉、加速器などのオープションに関する比較検討が重要。

(7)いずれにしても、Fサイクル関連技術の開発は次世紀にわたる研究開発。そのために必要な人材の糾合・育成、技術開発ポテンシャルの向上・確立を図るとの観点が肝要。

(8)しかし、同時に経済効率性・競争力の維持・追及が不可欠。そのためには、企業間の自由な競争と参入や産官学の連携と競争に加えて発注者と受注者の役割分担の明確化が重要。さらには国際競争を活用することも重要。なお、国の研究開発の成果については、電力市場の自由化に関連して電力以外のユーザーの可能性も視野。

(9)また、国際協力を進め技術開発の効率化を図る。現行の日仏・日ロを推進。核不拡散・核兵器解体への技術協力も重要。解体核プルトニウムの原子炉オープションについては第3国協力が核軍縮プロセスの透明性向上の観点から有効との認識が重要。

(10)研究開発の到達度や進め方についてのチェック・アンド・レビューを随時行う。そのためには出来るだけ融通性に富む技術開発プログラムを樹て社会情勢の変化に柔軟に対応。併せて外部評価による透明性の向上を図る。さらに、評価に当たっては、単なる技術評価にとどまらず、社会的状況変化等を踏まえ研究開発政策に関する政策評価も行うことが肝要。

○「もんじゅ」に関する原子力政策円卓会議の提言について
「もんじゅ」の早期運転再開は、原子力円卓会議でも提言されているところ。同提言にある「その後の処置」に関する選択肢()、()、()については、()の「一定期間研究開発を行い必要なデータを得た上で廃炉する」は実行するとしても()の「一定期間研究開発を行った上でその処置を判断する」の内の1つの選択肢として考えられる。一方、()の「従来の予定通り炉の運転を再開し研究開発を継続する」は、「従来の予定通り」が難しいことは明らか。新たな視点は技術的選択肢すなわち柔軟性の確保。()の「研究開発の継続」の可能性は、()の「その処置の判断」の1つであることから、()、()、()の中から選ぶとすれば、()を選択することが妥当か。ポイントは、「研究開発」の中味。また、円卓会議の()、()、()以外に、分科会では「運転再開をせずに博物館とする」という案も委員の一人から示されている。


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