平成12年3月27日
長計 第3分科会委員 平岡 徹

高速増殖炉および核燃料サイクルの開発の進め方についての私見

 黎明期から高速増殖炉開発に携わってきたものとして高速増殖炉および核燃料サイクルの開発の進め方について私見を述べたい。
 原子力を取り巻く状況は大きく変わりつつある。しかし、原子力の根本の存在意義がエネルギーセキュリティにあることには変りがない。原子力はエネルギーセキュリティに自律性をもたらすものである。また、高速増殖炉はさらにその原子力に自律性をもたらすものである。問題はエネルギーセキュリティをいうときにそれぞれが考えているタイムスパンに大きな違いがあることである。10年を単位として考えざるを得ない原子力開発と10年までをスコープとする通常のエネルギー産業(いまや電力も情勢の激変によりその一つとなりつつある)とでは議論が噛み合わない。原子力による長期的なエネルギーセキュリティ戦略は国が全面的に行わざるを得ない。この意味では防衛問題と同じである。
通常のエネルギー産業の一つとなる電力にとっては経済性が成り立つ原子力システムを手に入れる必要がある。これは高速増殖炉システムとても同じである。現在、電力も参加しているJNCの実用化戦略調査研究により、高速増殖炉による燃料サイクルの実用化の目標設定が行われ、その様なシステムの姿が詳細な検討により精力的に追求されており、最終的な姿はその技術的評価結果を待つことになろうが、このような状況の変化を踏まえて、炉を含めてこれからの先進リサイクル実現までの全体の進め方を考えてみる。
 現在、高速増殖炉の進展を阻んでいる主な原因は経済性であり、特に炉の建設コストである。これを大幅に低減する炉の新概念の創出が行われない限り、先進リサイクルがどうあろうと高速増殖炉による燃料サイクルの進展はあり得ない。一方、高速増殖炉の本質は燃料にあり、高速増殖炉の資源利用性、環境保全性および核不拡散性などの特性は、現在考えられている冷却材の如何にかかわらず、ほぼ燃料形態およびリサイクル方式で決まる。
 これらを考えると、炉を含めた先進リサイクルの開発は、炉の経済性を飛躍的に向上させる炉概念を創出する鍵となる技術および先進リサイクル技術を一体として短期間に見通しを得るように併行して精力的に進めなければならない。その双方の交点に位置するものが原子力に固有な炉心工学および高速増殖炉プラント工学である。しかしこの分野は急速に力を失いつつある。検討および研究開発に許される期間はこのような技術力の維持を考えると最大限20年であろう。開発には求心力が要る。それ以上の目標設定では若い世代も含めて開発意欲がそがれ、高速増殖炉路線は自然と終焉するであろう。
 一般に新燃料および新再処理法の開発には時間がかかるものであるため、国は評価により絞られた先進リサイクル方式(当初は複数も可)について全面的に開発資源(金、人、施設)を投入して加速させる必要がある。新しい炉概念および先進リサイクルについて見通しが得られれば、もんじゅでの運転経験も踏まえ、そのままスケールアップをすれば当初の実用化の見通しが得られる新概念の小型の試験炉(いわゆる小型炉ではない。ナトリウム冷却炉であれば例えば2次系削除試験炉)および対応する小規模の燃料サイクルプラントを国がその段階で最小限の費用で建設すべきである。もしも諸般の事情により、それすらむつかしいとすれば、炉については、対応が可能ならば常陽の大幅な改造でもよい。そのときは“もんじゅ”が燃料照射の責を負う。
 炉の新概念がさらに早期に創出されれば、とりあえず経験の豊富な酸化物ペレット燃料でその小型の試験炉を建設、運転し、使用済み燃料は貯蔵しておき、先進リサイクルの実用化の見通しが得られた時点で先進リサイクルと結合させるという戦略となろう。この場合は燃料を酸化物へ特化してしまい、新しい燃料、新しい再処理/製造法への変更をためらうなど、これまで陥り勝ちであった計画の硬直性の排除など様々な側面を考慮してその進め方を設定していく必要がある。
 今後も国、電力の協力体制が必要なのは言うまでもないが、長期のエネルギーセキュリティに責を負うのは国の役目である。

以上