「常陽」及びリサイクル機器試験施設等の位置付けと
研究開発の進め方

平成12年3月27日
核燃料サイクル開発機構

 

1.はじめに

 核燃料サイクル開発機構では、高速増殖炉サイクル技術体系の確立に向け、高い安全性の確保を前提とし、経済性の向上、資源の有効利用、放射性廃棄物による環境負荷の低減、核不拡散性の確保を開発目標に、国内外の関係機関と協力しつつ、高速増殖炉とその関連する核燃料サイクルの実用化研究を進めている。

 高速増殖炉サイクルの実用化研究を進めるには、並行して、それを支える幅広い基盤技術研究の進展が必要である。このため、高速実験炉「常陽」や核燃料サイクル関連施設を使用して高速増殖炉サイクルに関する各種の試験研究を実施し、データの蓄積と解析を進め、国内外の研究機関とも協力して技術開発成果を高速増殖炉サイクルの技術基準、設計評価手法、データベース等にとりまとめ、設計技術や解析技術の高度化を進めている。本資料では、その取り組み状況と、「常陽」や核燃料サイクル関連施設(高レベル放射性物質研究施設[CPF:Chemical Processing Facility]、リサイクル機器試験施設[RETF:Recycle Equipment Test Facility])における今後の研究開発の進め方を紹介する。

 なお、「もんじゅ」による発電プラント技術の確立と合わせて実用化研究の両輪を成している実用化戦略調査研究では、高速増殖炉サイクルを実用化する上での枢要な技術を特定し、研究開発項目の優先順位付けを計った研究開発計画を検討・策定することとしている。将来的には、その中で、基盤技術研究の実施戦略や、「もんじゅ」、「常陽」、リサイクル機器試験施設等の大型施設をより有効に活用する戦略を再構築し、それに基づき、より高度な高速増殖炉サイクル技術の開発を進めていく計画である。

 

2.「常陽」及びリサイクル機器試験施設等の研究開発上の位置付け
 高速増殖炉サイクルの研究開発において、「常陽」は、我が国初の高速炉として、実データに基づいて「もんじゅ」及びその後の高速炉開発に必要な技術的課題を摘出し、その解決に貢献するとともに、高速中性子の照射による新型燃料・材料の開発や革新的技術を取り入れた機器等の開発にも有効活用することを目的とした研究施設と位置付けられる。

 将来、「もんじゅ」が照射施設としての能力を備え、新しいタイプの燃料の性能を確証できるようになった場合には、「常陽」では、過渡照射や限界照射並びに実績の少ない燃料の先行照射等、難易度の高い試験に積極的に取り組むことが可能となる。

 高レベル放射性物質研究施設:CPFは、化学処理プロセスの基礎試験をミッションとするホットセル試験施設である。リサイクル機器試験施設:RETFは、CPFからの知見を反映して構築された新型の再処理プロセスを適用し、主として工学規模での高速炉燃料の再処理技術を開拓する研究開発の場と位置付けられる。すなわち、RETFは、高速炉燃料再処理の実用化に向けた技術課題を洗い出し、再処理機器や化学処理プロセスの高度化を図ることをミッションとしている。

 高速増殖炉サイクルの研究開発では、「常陽」や「もんじゅ」とは、高速炉燃料の再処理試験に供する使用済燃料の提供を受ける、あるいは、新型燃料の試作用原料を燃料製造施設へ提供して試作燃料を造りそれを照射試験に供するという形で、連携して核燃料サイクル技術を開拓していく関係にある。この観点では、CPFでは、「常陽」の試験燃料ピンを再処理してプルトニウムを回収し、その一部(約25gのプルトニウム)を改めて混合酸化物(MOX)燃料体に加工して「常陽」にリサイクルし、小規模ながら高速増殖炉サイクルの環を閉じ、高速炉燃料再処理への軽水炉燃料再処理技術(湿式PUREX法)の拡張・適用性を確認した実績がある。RETFでも、「常陽」や「もんじゅ」を活用し、先進的核燃料サイクル技術として実用化戦略調査研究で選択された再処理技術に係る研究開発を、工学規模で展開することが目標となる。

 なお、燃料製造施設については、核燃料サイクル技術全体を俯瞰して最も合理的な技術の確立を目指す観点から研究開発を進め、再処理プロセスとの一体化も検討し、総合的に見極めていく計画である。

 

3.研究開発の現状と今後の進め方

3.1「常陽」(図1〜4、表1参照)

 「常陽」は、1977年4月に初臨界を達成した。熱出力50MWt及び75MWtの炉心(MK-I炉心)の性能試験と運転では、炉心やナトリウム冷却系の特性を把握し、蒸気発生器を除く高速炉プラントの技術的経験を蓄積した。その後、燃料・材料の照射試験用に熱出力100MWtの炉心(MK-II)に改造し、1982年11月に臨界を達成し、運転を継続しており、これまでに約470体の運転用燃料、約690体の炉心構成要素及び75体の試験燃料等を照射し、高速炉炉心での燃料集合体や燃料ピンの安全性と照射特性を明らかにしている。この間、「常陽」は、燃料破損やナトリウム漏えい等の大きなトラブルを発生することなく運転し、初臨界からの累積運転時間は、2000年2月末現在約59,500時間、積算熱出力は49.4億kWhとなっている。

 なお、「常陽」は、照射能力を高めるため、熱出力140MWtの炉心(MK-III)への改造を計画しており、現在、新燃料や主中間熱交換器等の更新機器の製作、据付準備をしているところである。改造炉心は2002年度に完成する予定である。

 「常陽」の基本的な役割は、(1)高速増殖炉の運転管理技術の高度化、(2)高速増殖炉燃料及び材料の照射、(3)機器等の新技術の実証試験である。

(1) 運転管理技術の高度化

 運転管理技術については、初臨界以来20年以上の運転・保守経験を有し、高速増殖炉の増殖比等の基本的炉心特性の確認、炉心管理手法の開発整備、冷却系の不純物管理、ナトリウム機器の保守・補修経験等により、高速増殖炉の運転・保守技術の高度化を行い、「もんじゅ」への反映を図っている。

(2) 燃料及び材料の照射

 燃料・材料の照射試験については、高速炉燃料の高燃焼度化と高線出力化、先進的燃料サイクル技術開発を目的として試験を実施し、約130体の運転用炉心構成要素(燃料、制御棒、反射体など)及び75体の試験燃料等について照射後試験を行った。

 MOX燃料の高燃焼度化と高線出力化を目指した試験では、中空高密度燃料ペレット、太径燃料、軸非均質燃料等に、改良オーステナイト鋼やフェライト鋼等の高性能被覆管を組み合わせて照射試験を実施し、最大線出力460W/cm、要素平均燃焼度12万MWd/t、照射量21×1022 n/cm2を達成した。また、高強度及び耐スエリング性を有する被覆管材料の開発に関しては、材料照射用リグを用いて、酸化物分散強化型ステンレス鋼(ODS)を含む高性能被覆管材料の先行照射を行っており、照射量は改良オーステナイト鋼で23×1022 n/cm2に達している。

 さらに、燃料の熱的設計裕度を把握するための燃料溶融限界線出力試験や、材料の照射特性を正確に把握するための温度制御型材料照射試験などの照射試験を行い、燃料溶融限界線出力や被覆管スエリング挙動等についてデータを蓄積した。

 先進的核燃料サイクルの技術開発を目指した試験では、アメリシウム(Am)含有燃料(MOX燃料に含まれる241Puの壊変により生成した241Amが蓄積したもの)の照射、超ウラン元素(TRU)のサンプル照射、炭化物、窒化物燃料照射を実施し、照射後試験を実施している。Am含有燃料では燃焼度26,500MWd/t、TRU照射では照射量8.8×1022 n/cm2、炭化物燃料では燃焼度40,100MWd/t、最大線出力734W/cm、窒化物燃料では燃焼度39,500MWd/t、最大線出力741W/cmのデータを得ている。

 「常陽」MK−V炉心では、照射領域の拡大と高中性子束化を柱として、炉心の総合的な高性能化を図っている。仕様は以下のようになる。

 「常陽」MK−V炉心の初装荷燃料75体(内側炉心21体、外側炉心54体)については、外側炉心の一部20体が「常陽」に搬入されて、1997年12月から順次炉心に装荷され運転に使用されており、残り55体(内側炉心21体、外側炉心34体)が東海事業所で製造中である。照射リグにおいては、新型燃料(集合体平均燃焼度15万MWd/t以上、燃料寿命5年以上の高性能MOX燃料、窒化物燃料、ネプチウムなどのマイナーアクチニド(MA)含有燃料等)の照射試験、燃料の安全性向上試験等を計画している。

 「常陽」は高速中性子の照射場として有用かつ貴重な施設であり、国内外の研究者・技術者の利用に供することも重要である。このため、炉心に外部利用者用のスペース(外部利用専用リグ)を確保し、外部利用の推進を図っていくこととしている。また、大学連合からの核融合材料に関する受託照射等も継続していく。この他に、高速炉開発への国際的な貢献として、仏国との間でMA含有燃料の研究開発を中心とした共同研究を進めており、お互いの照射情報を交換するとともに、2004年にPhenix炉が停止した後は、仏国に「常陽」での照射の機会を提供することとしている。

(3) 機器等の新技術の実証

 高速増殖炉サイクルの実用化のためには、設計研究において摘出された要素技術を実プラントで実証していくことが必要であり、「常陽」は、自己作動型炉停止機構等の新技術の実証試験の場として使用していく。また、実用化戦略調査研究で選択されたプラント技術についても、「もんじゅ」での確証試験等が実施し易いように、「常陽」で先行してデータを取得するなど先導的役割を担っていく。

3.2リサイクル機器試験施設等(図5〜8、表2参照)

 高速炉燃料は、軽水炉燃料と比べ燃焼度及びプルトニウム含有率が高く、燃料集合体の構造が異なることから、湿式であれ乾式であれ、これらの特徴を考慮した再処理技術の研究開発が必要である。

 CPFでは、「常陽」や海外炉の使用済み試験燃料を使用してプルトニウムの抽出分離等のキーテクノロジーに関する基礎実験を行い、そのデータをRETFの試験設備のプロセス技術開発等に反映している。RETFでは、

 を目標として、高速炉再処理試験を実施していく。

(1) 高レベル放射性物質研究施設(CPF)

 CPFでは、1982年より、湿式PUREX法をベースとして、溶解・抽出分離等の化学プロセス技術、材料の要素技術開発やMA回収技術の研究を行ってきた。現在、先進的核燃料サイクル技術に係る研究開発に対応できるようにするため、試験セルや実験設備の改造を実施しており、2001年度からは、実用化戦略調査研究計画に沿って、先進的再処理プロセス開発や分離変換技術開発を中心とする多様な高速炉再処理技術研究の基礎的実験施設として使用していく予定である。

 先進的再処理プロセス開発としては、湿式及び乾式について、以下のように、安全性と経済性を追求したプロセス、廃棄物量を低減化したプロセス、核不拡散性を考慮した共回収プロセスなど、高度化した再処理プロセスや新プロセスを開発していく。

 分離変換技術開発としては、キーテクノロジーの一つであるTRU及び長半減期核分裂生成物(LLFP)の回収技術に関する研究開発を行う。当面は、リン酸トリブチル(TBP)以外の溶媒を用いた高レベル廃液からの「TRU回収法」の技術開発を行うとともに、その工学規模での成立性を検討していく。

 また、先進的再処理プロセス開発、分離変換技術開発を支える溶液化学、錯体構造解析など基盤技術の開発も行っていく。

(2) リサイクル機器試験施設(RETF)

 RETFは、東海再処理工場の軽水炉燃料再処理技術をベースに、高速炉燃料に係るCPFでのプロセス研究成果や米国DOEとの日米再処理技術共同研究(1987〜1994年)の機器開発成果等に基づいて設計された試験施設である。再処理能力は、「もんじゅ」炉心燃料・ブランケット燃料、「常陽」ブランケット燃料を対象燃料とした湿式再処理では、年間最大6トン(炉心燃料1トン、ブランケット燃料5トン)の設計となっている。1995年1月に建設を開始し、2000年6月に試験棟建物、電気設備、換気・給排水設備、建物に付属する搭槽類等の施設工事(第1期工事)を終了する。現在、実用化戦略調査研究に基づき、乾式再処理の技術開発も対象に含めて施設の利用計画を見直しており、実用化戦略調査研究の進捗と整合をとりつつ、再処理プロセス機器等の製作、据付を行う第2期工事を進めていく予定である。

 関連する技術開発としては、RETFの設計・建設段階では、高速炉燃料の再処理に特有なラッパ管除去、高燃焼度・高プルトニウム富化度燃料処理などの技術課題に取り組み、前処理技術、化学プロセス技術、遠隔技術、施設設計最適化などの技術開発を進め、レーザー解体機、連続溶解槽、遠心抽出機などの新型機器を完成させ、それらを設計に反映している。また、再処理施設のプロセス設計(物質収支計算等)を一から手掛けることにより、機器設計、配置設計、建設・施工まで一貫した施設設計技術の蓄積を行うことができた。なお、日米共同研究でも、遠隔操作機器等の技術開発(遠隔技術に関する協力:1982〜1987年)や臨界安全研究(日米共同臨界実験:1983〜1988年)を実施している。これらの経験は、実用化戦略調査研究における高速炉燃料再処理の枢要技術の工学試験等で活用していく予定である。



表2 RETFの設計・建設に反映させた主要研究成果と高速増殖炉サイクル研究開発への反映