1.はじめに
「もんじゅ」は、大洗工学センターにおける「常陽」及び各種ナトリウム試験施設による研究開発成果を基にして設計された大型の炉心とナトリウム機器をもつ、電気出力28万kWの発電用FBRプラントであり、ループ型炉、2次冷却系配管分岐型崩壊熱除去系、より高度な高温構造設計基準に基づく設備、等の技術的特徴を有する。
高速増殖炉とその関連する核燃料サイクル(以下「FBRサイクル」と言う)の実用化を進める上で、発電炉である「もんじゅ」の設計、建設を通じて得られた知見や、今後の運転を通して得られる知見は、必要不可欠なものである。「もんじゅ」を活用し、高速増殖炉の合理的なプラント設計や運転・保守方法を追求することによって、発電プラント技術の確立を図ることが可能となる。
サイクル機構としては、地域社会のご理解とご協力を得ながら、安全確保を前提に、「もんじゅ」の運転を早期に再開し、ナトリウム取扱い技術を含む運転経験を蓄積し、発電プラントとしての主要な技術情報の収集・コスト低減策の検討等を進めることとしたい。
なお、平成9年12月にとりまとめられた高速増殖炉懇談会報告書において、『「もんじゅ」を使い、研究開発を続けることは必要』との結論が示され、『研究開発に当たっては、増殖特性の確認を含む燃料・炉心特性の確認、ナトリウム取扱い技術や高燃焼度燃料開発など原型炉としてのデータを着実に蓄積するとともに、マイナーアクチニド燃焼など新たな分野の研究開発に資するデータを幅広く蓄積すべき』としている。
2.FBRサイクル実用化に向けた「もんじゅ」の位置付け
| (1) | FBRサイクルは、ウラン資源を有効に利用しつつエネルギーを再生産し、また、放射性廃棄物による環境負荷を低減できる可能性を有しており、その実用化は、我が国にとって重要な研究開発課題である。 |
| (2) | この技術を実用化するには、概念検討・要素技術開発・設計研究等を行うだけでは不十分であり、プラントの運転・保守からの経験を基盤として、高度の信頼性・安定性等を備えた発電プラントとしての総合技術体系を確立する必要がある。また、軽水炉プラントの歴史からも明かな通り、技術の確立には長期に亘る運転経験の蓄積と技術改良の積み重ねが必要である。 |
| (3) | この経験の蓄積と改良を行い技術を確立する場、つまり「発電プラント技術確立の場」が「もんじゅ」であり、以下の技術的特徴から、「もんじゅ」はその位置付けにふさわしい。 |
| (4) | 「もんじゅ」は、わが国のFBR研究開発成果の集大成であって、発電機能を有する総合的な原子力システムであることから、システム統合化の貴重な成果を得ることができる。これまでの大型機器の製作・据付の経験に加えて、各種トラブルの経験とその克服、ナトリウム取扱い経験、運転制御性やプラント保守性の確認、各系統(サブシステム)間の干渉の回避や最適化、等において世界的に貴重なデータを生み出し、21世紀を先導する原子力科学技術を創出する場を提供する。 また、「もんじゅ」は、「常陽」や大洗工学センターでの試験装置に比べて、大型化された機器から構成されているため、そのスケールアップ効果の見極め、さらに、原子炉周りの放射線データ、ナトリウムや不純物の構造間隙部内での挙動、計測機器のバックグランドレベル等、運転中の複合的な実環境条件下でのデータ、実機ならではの知見を提供する。 特に、「もんじゅ」の炉心は、我が国初めての大型の高速中性子炉心であり、高速中性子炉心のふるまいを明らかにすることは、FBRサイクルの実用化に向けて共通で必須の研究開発事項である。 |
| (5) | 一方、将来においては、「もんじゅ」は、実用炉で要求される高い照射量や大型の燃料集合体の照射が可能である等、どのような燃料形態の高速増殖炉炉心燃料に関しても、「照射場」として重要な役割をもっている。さらに、実用化戦略調査研究で選択された有望技術について、「もんじゅ」に適用または改造して、「発電システムとしての信頼性確証の場」として、利用が可能である。従って、将来においては「技術実証の場」としても位置付けられる。 |
| (6) | 以上から、「もんじゅ」を活用してFBRサイクルを実用化することを通して、人類の将来のエネルギー確保及び環境保全に、さらには21世紀における原子力科学技術の発展に貢献できる。 |
3.研究開発の進め方
「もんじゅ」は、「発電プラント技術の確立」を最重点目標として、使用実績を積みながら運転信頼性を向上させていく。
また、経年特性の把握や運転データの蓄積等を行うため、発電プラント技術の成熟に向けた運転継続が必要であるとともに、実用化戦略調査研究の成果を踏まえて、経済性向上に寄与する技術や環境負荷低減技術を「もんじゅ」に適用または改造して、技術の信頼性を確証することが必要である。
但し、「もんじゅ」のような大型プロジェクトについては、燃料サイクル全体の研究開発との整合性を確認したり、内外の研究動向に照らしてその妥当性を確認しながら、研究開発投資とその効果についての総括的な評価を受けることが重要である。従って、サイクル機構としては定期的な研究開発課題評価を受けるだけでなく、計画の節目には原子力委員会による評価を受け、運転計画の適切化を図っていくものとする。
「もんじゅ」は、FBRサイクル実用化に向けた研究開発の場として、情報の公開に努めるとともに、内外の研究者に対して広く公開していく。
3.1第1期:発電プラントとしての技術実証
ナトリウム取扱い技術等の発電プラントとしての経験を積み、その運転実績に基づき、運転信頼性の確立、発電プラントとしての主要技術の実証を行うとともに、将来のFBR開発に利用できる汎用性のある技術体系へのとりまとめ及び技術改良(高度化)を積み重ねる。(表1参照)
(1)運転信頼性の確立
ナトリウム漏えい事故の反省を踏まえた安全確保策(ナトリウム取扱い設備を中心とした改善、運転手順書改訂、品質保証活動充実、教育訓練の強化)や意識改革等の徹底を図りつつ、以下の経験を蓄積して、運転信頼性の確立を目指す。
| @ | トラブル・不具合の克服及び機器の補修を通じ、運転・保守方法を改善し、高度の信頼性・安定性を有するプラントを実現する。 |
| A | ナトリウム不純物管理・処理やナトリウム機器の取扱い等に習熟し、トラブルの未然防止を図る。 |
| B | 異常診断技術・ISI等における改良を行う。機器の検査や工程管理の経験を蓄積して、保守マニュアル・各種基準類の整備を図る。 |
| @ | 高速中性子炉心としてのデータ ◎FBRの主要特性である増殖性能の確認(予備的評価値として増殖比1.18を確認して公表済み)、 ◎臨界特性、反応度特性、出力分布特性等の評価手法(核データ、計算コード、評価条件の設定等)の実証・高度化、 ◎高次化プルトニウム炉心に関する特性の確認、 等 |
| A | 発電機能を有する総合システムとしてのデータ ◎発電効率や出力変更時におけるプラント運転制御性の確認、 ◎水/蒸気系を含むプラント熱過渡特性等の評価手法の実証・高度化、 ◎インターロック試験等によるサブシステム間干渉回避の確認、 等 |
| B | 実環境下(複合的環境条件・複雑な体系)のデータ ◎燃料/燃料集合体/制御棒の照射時健全性・燃焼度等の確認、 ◎破損燃料検出系、蒸気発生器水漏えい検出系等のバックグランドデータの確認、 ◎原子炉周り、一次冷却系等の遮蔽設計の実証・高度化、 等 |
| C | 大型化された機器等のデータ ◎蒸気発生器、ポンプ等の冷却系機器に関する運転性能・過渡特性・健全性の確認、 ◎原子炉プレナム内温度成層化の現象確認と評価手法の実証、 ◎ナトリウムミスト挙動等の確認、 等 |
3.2その後の研究開発の展開
(1)経済性向上に寄与する技術の確証
運転信頼性をさらに高める「発電プラント技術の成熟」を目指すとともに、第1期で得られた成果を基に、燃料の高燃焼度化、炉心に照射スペースの確保等を行い、「もんじゅ」運転コストの低減と性能の向上を図りながら、実用化戦略調査研究により選択された有望技術で機器・設備規模での確証が必要な技術については、「もんじゅ」に適用・改造して、実用化の見通しを確認する。
| @ | 運転・保守に係るコストの低減 ◎燃料の高燃焼度化による燃料費等の低減化、 ◎点検保守の頻度・範囲等の見直すによるコストの削減、 等 |
| A | 炉心の高度化、集合体規模の燃料開発 ◎燃料サイクルコスト低減燃料(例えば、低DF−バイパック燃料)及びTRU、LLFP入り燃料の集合体レベルでの照射試験、 ◎SASS(Self Actuated Shutdown System:自己作動型炉停止系)やGEM(Gas Expansion Module:ガス膨張機構)、等 |
| B | 実用化戦略調査研究で選択される技術の確証 ◎例えば、革新型蒸気発生器等の簡素化冷却系、高度化燃料取扱系等の実用化戦略調査研究で選択される技術について、「もんじゅ」に適用し、実用化の見通しを確認する。 |
4.おわりに
「もんじゅ」は、FBRの研究開発のための重要な場であり、この運転を再開し、研究開発を進めるには、安全確保と事故の反省を踏まえた信頼回復が不可欠である。これまで、ナトリウム漏えい事故の原因究明、「もんじゅ」の安全総点検、意識改革、地域社会の理解促進活動を行ってきたが、今後も引き続き努力を継続していく。







