FBRサイクルの実用化戦略調査研究
(進捗状況報告書)

2000年1月17日
核燃料サイクル開発機構

1. はじめに

 昨年7月、推進体制を発足し、FBRとその関連する核燃料サイクル(FBRサイクル)の実用化戦略調査研究を開始した。実施体制等については、第2回会合資料「高速増殖炉サイクルの研究開発の現状と実用化戦略」で説明した通りである。現在、半年が経過した段階であるが、ここでは現時点での進捗状況を中心に述べる。

2. 実用化戦略調査研究の進め方

 FBRサイクルの実用化戦略調査研究は、フェーズT(1999年度〜2000年度)、フェーズU(2005年度頃まで)と段階を踏み、各フェーズ毎に研究開発の計画及び成果についてチェックアンドレビューを受けながら進めることとしている。フェーズT、Uの実施内容を以下に示す。

フェーズT[2000年度まで]

[実施概要]
 幅広く技術的選択肢の評価を行い、実用化戦略を明確にする上で必要となる判断資料を整備する。このフェーズの成果として、有望な実用化候補概念を抽出することしている。 [フェーズT終了時のチェックアンドレビューのポイント]
 研究開発を継続することによって、上記候補概念が後述の開発目標に適合するものに成長し得るか否かの評価を受けた後、次の段階へ進むこととなる。

フェーズU[2005年度頃まで]
[実施概要]
 工学試験等を踏まえ、FBRサイクル全体としての最適化及び評価を行い、実用化候補概念(複数)を絞り込んで必須の研究開発テーマを特定する。
 このフェーズで必要となる研究開発項目はフェーズTの成果により変わるが、研究開発項目の候補例を以下に示す。
炉心燃料:例えば、燃料材料の照射試験[高燃焼度燃料、低除染燃料、超ウラン元素(TRU)燃料、金属燃料、窒化物燃料等]等が必要と考えられる。
FBRプラントシステム:例えば、ナトリウム炉であれば抽出された概念に応じた経済性向上のための要素技術試験(合体機器モデル試験等)が、重金属炉、ガス炉であれば小型試験ループによる冷却系特性試験(伝熱流動、材料腐食等)が必要になると考えられる。
燃料サイクルシステム:システム構築の上で必須の技術、経済性向上等に著しい効果のある技術、及び、複数の候補概念に共通する技術を洗い出し、最も適切な規模による試験を実施する。例えば、乾式再処理では回収率向上方策、処理速度向上方策、廃棄物対策、保障措置等に係わる技術等、湿式再処理では遠心抽出器等の新型機器の試験、燃料製造では振動充填燃料の照射挙動評価等が必要になると考えられる。
[フェーズU終了時のチェックアンドレビューのポイント]
 絞り込んだ実用化候補概念(複数)について、工学的な成立見通しの評価を受けた後、次の段階へ進むこととなる。

 フェーズUの後の研究開発についても、5年程度毎にチェックアンドレビューを受けながらローリングプランで進め、安全性確保を大前提として競争力あるFBRサイクル技術を2015年頃には提示することを目標としたい。

 また、FBRの実用化を推進する上で、要素技術を統合し発電プラントとしての技術的知見と経験を蓄積することは重要である。このため、「もんじゅ」の運転で得られる発電システムとしての知見・経験は、どのような炉型のFBRに対しても重要なものである。更に、実用化に向けたプラント新技術の検証と確認等で実用化研究の一翼を担っている。したがって、早期に運転が再開されることが望まれる。

3. フェーズTの検討状況

 現在は上記の実用化戦略調査研究の内、フェーズTの途中段階に位置している。ここでは、その検討状況について述べる。

3.1 検討フロー

 FBRサイクルの開発目標を図3-1に示す。幅広い選択肢の中からこの目標を満足する実用化候補概念を抽出するフェーズTの検討フローを図3-2に示す。
2年間で成果を上げるため、炉心、FBRプラントシステム、燃料サイクルシステムの検討をある程度並行して進めることとなるが、FBRサイクル全体の整合性に十分に配慮し、互いにフィードバックを掛けながら検討を進めている。
 FBRは、プルトニウムの増殖やTRUの燃焼[資源の有効利用]、長半減期の核分裂生成物(FP)の核変換[FBRの付加価値としての環境負荷低減への貢献]等を行える特長を有しており、これらの性能は炉心が決めることから、炉心が全体をリードした形で検討を進める。
 炉心の特性は、冷却材と燃料形態(酸化物、窒化物、金属)の組合せに依存する。目標とする炉心性能を実現するため、有望な燃料形態と冷却材の組合せを抽出する。
 FBRプラントシステムの検討では、特に、軽水炉と比肩する経済性を実現するための、経済性向上方策の摘出を重視している。1999年度の検討では、まず、有望な選択肢を見極め、2000年度に概念検討を進めることとしている。
 燃料サイクルシステムの検討では、これまで中心に据えて開発を進めてきた湿式法(PUREX法)を抜本的に見直すことに加え、新たに乾式再処理等の方式を対象に、その技術的成立性を評価する。1999年度には乾式法及び湿式法再処理、並びに、それらに関連する燃料製造法の技術評価と課題摘出を行い、2000年度には摘出した課題の解決と経済性の見通しをつけ、有望な概念を抽出する。
 総合評価は、FBRサイクルの開発目標を基に、評価指標と判断基準を設定して総合的に行うこととしている。現在、評価指標とそれらを総合的に評価する手法の具体化を進めている。
 評価指標としては、実用化戦略調査研究の5つの開発目標(安全性、経済性、資源有効利用、環境負荷低減、核不拡散性)に、技術的実現性を加えた6項目とする予定である。この内、安全性についてはある一定の水準を必ず満足させるものとして扱う。技術的実現性については現状の技術レベル(基礎研究、工学試験、実用化)と実用化までの開発期間及び投資資金を考慮する。
 評価手法としては、FBR、再処理、燃料製造の各システムに対して上記6つの評価指標を適用して評価すると共に、FBRサイクル全体の整合性について評価する総合的なものとする予定である。

3.2 FBRサイクルの要素毎の検討状況

3.2.1 FBRの炉心及びプラントシステム概念

 はじめに既往文献の調査、社内提案、メーカ提案、アイデア公募、国内研究協力、国際協力等により、国内外のFBRのこれまでの開発経験及び新たな概念等を広範に調査・分析し、冷却材及び燃料形態の検討対象範囲を設定した。検討対象とすべき概念として、冷却材はナトリウム、重金属(鉛、鉛ビスマス合金)、ガス(炭酸ガス、ヘリウム)、水(沸騰水、加圧水、超臨界圧水)を、燃料形態は被覆管燃料(酸化物、窒化物、金属)、ヘリウムガス冷却炉として被覆粒子燃料(酸化物、窒化物)を選定した。
 なお、液体燃料を用いた高速増殖溶融塩炉概念については、既存の研究が基礎的な段階であることから、他の冷却材とは同列に扱えず、調査を行って、その技術的内容を把握しておくこととした。

 (1)安全性確保
 FBRの実用化にあたっては、軽水炉と同等ないしはそれ以上の安全性を確保するものとし、IAEA(国際原子力機関)の基本安全原則はもとより、現行の軽水炉に適用される基準及び指針類、「もんじゅ」の安全審査で適用された基準及び指針類、実証炉の安全基準案等の考え方を参考に、燃料形態及び冷却材の特徴を考慮した安全設計とすることとしている。
 具体的な安全要求としては、原子炉停止系は十分信頼性の高い設計とするが、これらの安全系に期待しなくとも、炉心損傷に至らずに自然に事象が終息できるよう、受動的な原理で原子炉を停止できる能力を持たせる。併せて、炉心冷却に関しても崩壊熱を自然循環により除去できる設計とする。また、仮想的な炉心損傷状態を仮定しても、大きな機械的エネルギー放出を伴わず自然に事象終息すること、例えばこのエネルギー放出の原因が排除できる炉心設計(再臨界を排除する炉心概念)とする。
 現在、酸化物燃料炉心に対し、この要求を満たす概念を構築し、その有効性と炉心性能への影響について検討を行っている。
 また、機器の故障及びヒューマンエラーの影響が極力少なくなるようシステムの簡素化等を通して信頼性の確保を図ると共に、ナトリウムを使用する場合には、その化学反応の影響を緩和する設備対策にも配慮している。

 (2)炉心
 炉心の検討状況(ナトリウム冷却炉の例)について、燃料形態毎に表3-1に示す。  燃料形態には、酸化物、窒化物、金属燃料を被覆管で包んだピン型燃料と、酸化物及び窒化物燃料を仁丹状にセラミック材などで被覆した粒子燃料がある。この粒子燃料は、ヘリウムガスを冷却材に用いた場合にしか採用されないため、ガス炉の設計検討の中で個別に検討していくこととしている。
 炉心の検討では、それぞれの燃料形態について、安全性の要件に適合する範囲内で、炉心性能を明確にするよう検討を進めている。

 (3)FBRプラントシステム
 プラントシステムの検討では、安全性の向上を図りつつ建設費のコストダウン方策についての検討を中心に進めている。
 ナトリウム冷却炉については、これまでの経験をもとに検討を深めることが可能であるので、軽水炉と比肩しうる経済性を達成できるシステム概念を追求している。あわせて、「もんじゅ」の2次系ナトリウム漏洩事故の経験をもとに、ナトリウムの安全確保対策について検討している。その他の冷却材を用いたシステム概念については、まだ検討の緒についた段階であるので、基本的な特性であるFBRとしての炉心性能とシステムの技術的成立性見通しを中心に検討を進めている。

(a)ナトリウム冷却炉(図3-4〜3-7、表3-2)

 ナトリウム冷却炉については、沸点が高く、低圧システムであり、自然循環能力が大きい等のナトリウムの利点と、不透明で化学的に活性なナトリウムの欠点を十分認識した上で、安全性の確保を前提に検討を進めている。
 ナトリウム冷却大型炉については、「もんじゅ」をはじめとする既存プラントの経験はもとより実証炉の設計研究成果、モジュール炉の合理化方策、欧州EFR(European Fast Reactor)でのコストダウン方策等も参考にしながら、将来の軽水炉と同等の建設費(20万円/kWe)を達成しうる有望な方策を検討した。これまでに、炉心の低圧損化によるループ数の削減、免震による地震荷重低減を図り機器・配管等の簡素化、新材料の適用によるシステムのコンパクト化及び高性能炉心による長期運転サイクル化等のコストダウン方策を摘出した。さらに、2次系を削除して更なるコストダウンを可能とする革新的な蒸気発生器概念を摘出した。現在、これらの概念の成立性等を中心に検討を進めている。
中型モジュール炉では、中小型炉の特徴を生かした安全系の簡素化や、プラントの低温化(炉心出口で510℃程度)による安価な材料の適用等により、経済性を追及している。また、反射体制御方式を採用した長期運転サイクル炉心と、1次及び2次系のポンプと熱交換器の機器合体等により経済性向上を目指した概念についても検討している。
更に、将来的な技術選択肢として、高温・高電気伝導度のナトリウム冷却材の特長を生かした直接発電システム[MHD(Magnetohydrodynamics:電磁流体力学)発電及び熱電子発電システム]は、これが可能となればシステムの大幅な簡素化によるコストダウンが期待される。また、この技術は、併せて検討しているナトリウム冷却の小型炉への適用も考えられる。なお、小型炉については、他の冷却材の概念も含め後述する。

(b)重金属冷却炉(図3-8、3-9)
 重金属冷却炉では、冷却材として鉛又は鉛ビスマス合金を対象として検討を進めている。
 鉛は、沸点が1750℃と高く、また、水及び空気との反応性が低いことから、ナトリウム冷却で採用されている2次系が不要な簡素なシステムとできると共に、ナトリウム火災対策等を不要とできる利点を有している。また、中性子スペクトルが硬いことから、増殖比等の炉心性能は、ナトリウム冷却炉よりもやや改善できる可能性がある。
 一方、鉛の伝熱特性がナトリウムに比べて劣ることから稠密でコンパクトな炉心にできないこと、比重が大きいことから大きなポンプ駆動力が必要となること、高温鉛の構造材料等に対する防蝕技術が必要であり構造材料の耐久性が課題となること、融点が327℃と高く予熱設備による所内負荷率が増加すること、ナトリウム以上に高温かつ不透明環境下での供用期間中検査技術が必要なこと等、多くの解決すべき技術課題がある。
 鉛ビスマスについては、基本的には鉛と同じ特性で融点が124℃と低い有利性はあるが、放射性ポロニウムの生成及びビスマス資源量が限られている点が課題である。
このため、これらの解決すべき技術課題の見通しを得ると共に、日本の立地条件に適合しうるシステム概念を追求するべく、スケールメリットを生かした大型炉とモジュール効果を活用した中小型モジュール炉並びに小型炉の3種類の概念について検討を進めている。併せて、原子力潜水艦での運転実績があり鉛及び鉛ビスマス冷却炉の設計研究が進められているロシアの使用実績及び設計例等についても調査し、検討に反映することとしている。

(c)ガス冷却炉(図3-10、3-11)
 ガス冷却炉では、炭酸ガス冷却炉及びヘリウムガス冷却炉を対象として検討を進めている。
 ガス冷却炉の利点は、ガスが不活性で透明な冷却材であることから、2次系を削除した簡素なシステムとなり経済性を向上できる可能性があると共に、プラントの保守・補修、供用期間中検査が容易にできることである。炭酸ガス冷却炉については、英国の商用炉である改良型ガス冷却炉(AGR)の設計・運転経験と、ナトリウム冷却FBRの研究開発で得られた被覆管材料を活用できることから、高温化の限界があるものの開発課題は比較的少ない。一方、ヘリウム冷却炉については、熱輸送能力が炭酸ガスより劣ることから、燃料ピン形態では熱伝導性の良い窒化物燃料を用いる必要がある。また、再処理に課題はあるものの高温に耐える被覆粒子燃料を用いて、ガスタービン発電システムにより簡素で高温・高効率を達成する概念が考えられる。
 ガスは上記のような利点がある一方で、液体金属よりも熱輸送能力に劣るため、炉心、機器、熱交換器の大型化による物量増加の可能性があること、並びに大型PCRV(プレストレスト・コンクリート原子炉容器)の成立性等の課題がある。また、高圧システム(炭酸ガスで40気圧、ヘリウムガスで100気圧以上)となることから、増殖比を確保するため稠密化した炉心燃料の事故時冷却能力について検討する必要がある。更に、仮想的な炉心損傷時における大きな機械的エネルギー放出の回避と冷却等の影響緩和方策についても検討する必要がある。
 そのため、事故時冷却能力及び、仮想的な炉心損傷時の影響緩和方策を検討すると共に欧州の技術等をもとに大型炉、モジュール炉、小型炉の3種類のプラントシステム概念を追求している。

(d)水冷却炉
 水冷却炉は、沸騰水型軽水炉(72気圧、287℃)の炉心を稠密な構成にするか、あるいは、加圧水型炉(157気圧、320℃)に重水を用いることにより増殖炉となる可能性がある。また超臨界圧水(250気圧、530℃)を用いたシステムでは、直接サイクル(超臨界圧蒸気タービン)を利用でき、簡素なシステム構成の増殖炉となる可能性がある。しかしながら、水冷却炉もガス冷却炉と同様に高圧システムとなるので、事故時(配管破損時)の炉心冷却性、並びにプルトニウム含有率の高い燃料を利用するため、炉心損傷時の大きな機械的エネルギー放出の回避と冷却性等の影響緩和方策について検討する必要がある。  そのため、これらの課題を中心に炉心性能と安全性にかかわる特性評価を開始している。超臨界圧水のシステムでは、他の水冷却炉と同様の検討に加えて、炉心燃料及び構造材料の腐食等について検討している。

(e)溶融塩炉
 液体燃料を用いたFBR概念については、既存の研究が基礎的な段階であることから、ウラン・プルトニウムサイクルに適合する塩化物燃料を用いた溶融塩炉を中心に検討している。

(f)小型炉
 小型炉については、多目的分散電源として今後注目していく必要があると考えられる。国内向けのニーズとしては、送電ロス、送電コスト低減の観点から島嶼部への立地及び電力需要都市への近接立地等が挙げられる。さらに、投資リスクの縮小の観点も考えられる。また、国外向けのニーズ(輸出)としては、投資リスクの縮小の観点のほか、海水淡水化及び寒冷地の熱供給等が考えられる。
 これらを考慮すると、図3-12に示すような要求条件が摘出され、現在燃料交換頻度の少ない長期運転サイクル炉心、受動的安全性、核不拡散性に優れるシステム概念を中心に検討を進めている。

 (4)現在の検討状況と今後の課題
 表3-3に検討状況と今後の課題についてまとめた。
 現在は、各種冷却材と燃料形態とを組み合わせて、幅広く検討を行っており、1999年度末には各冷却材毎に有望な炉心概念及びFBRプラントシステム概念を抽出する。
 2000年度は、サイクル技術との整合性を取りつつ抽出された候補概念の設計検討、開発目標の達成度評価を行い、実用化候補概念の抽出と開発計画の策定を実施する予定である。

3.2.2 燃料サイクルシステム概念

 FBRの燃料は軽水炉に比べ、不純物の許容量を高くとれるという特長を有している。このため再処理の低除染化が可能となる。その結果、プロセスの簡素化及びこれに基づく廃棄物発生量の削減、プラントのコンパクト化等の経済性向上や環境負荷低減に寄与し得る改良方策を考案できる。また、低除染化は、核不拡散性の観点からも好ましい方向となる。
 安全性確保については、多量のFPを含んだプルトニウム等のTRUを非密封の形で取扱うので、臨界安全、閉じ込め機能に十分な対策を施すと共に、取扱物質の特性(化学的活性度、毒性等)やプロセス条件(運転温度等)を踏まえた安全対策を施すこととする。
これらの特徴を踏まえて、燃料サイクルシステムについて、既往文献、社内提案、メーカー提案、アイデア公募、国内外協力等により幅広く技術を調査し、開発目標への適合性、技術的成立性の観点から検討候補対象の選択を行った。その結果を燃料形態とサイクル技術のマトリックスとして整理すると共に、実用化戦略調査研究における検討のポイントを含めてまとめた(図3-13)。
 燃料形態については、酸化物、窒化物、金属燃料を選定した。
再処理プロセスについては、処理媒体として水溶液を用いる湿式法と、水溶液を用いない乾式法を選定した。さらに、湿式法としては、軽水炉燃料の再処理法として実績のあるPUREX法(抽出溶媒としてリン酸三ブチル:TBPを使用)に対し、開発目標に合致するようサイクル機構が考案した「先進湿式法」(PUREX法を大幅に見直した「簡素化PUREX法」と「晶析法」とを組合せさらにTRU回収機能も付加)のほか、その一部を代替/補完するプロセスとして「イオン交換法」、「アミン抽出法」、「超臨界流体抽出法」、「沈殿法」等を、また、乾式法としては、溶融塩中での電解を利用した「金属電解法」(米国アルゴンヌ研究所(ANL)で開発されたものを改良)及び「酸化物電解法」(ロシア原子炉科学研究所(RIAR)で開発されたものを改良)、並びにフッ化物気体の生成し易さの違いにより燃料とFPを分離する「フッ化物揮発法」を選定した。
 燃料製造プロセスについては、「ペレット法」、粒径の異なる燃料粒子を直接被覆管に装荷し振動により充填する「振動充填法」、低融点の金属燃料用の「鋳造法」、ガス冷却炉用燃料の「被覆粒子法」を、それぞれ燃料形態との組合せで選定した。
 なお、3種類の燃料形態の内、酸化物燃料と窒化物燃料の再処理及び燃料製造については基本的に類似の技術が適用可能であることが調査により判明したため、まず経験の多い酸化物燃料サイクルに対してプロセスフロー、物質収支、設備機器仕様の概念設計検討を進め、それらに基づく経済性等の評価を行うと共に、その検討結果をベースに窒化物燃料サイクルについて概略評価を行うこととした。また、これと並行して金属燃料サイクルに関する検討を行うこととした。

 (1)酸化物及び窒化物燃料サイクル
(a)再処理システムの検討状況
 @湿式再処理

 酸化物燃料の湿式再処理法として「先進湿式法」を考案し、その具体化を図っている。これは従来のPUREX法を大幅に見直したもので、次の主要工程からなるものである(図3-14)。
  • 抽出溶媒にTBPを用いるが、プルトニウムはウラン及びネプツニウムと分離せず、低除染係数で共回収する「簡素化PUREX法」。
  • TBP以外の溶媒を用いた高レベル廃液からの「TRU回収法」
  • ウラン/プルトニウムの溶解度の差を利用して溶解液中に多量に存在するウランを溶媒抽出の前段で温度を下げて固体で析出させる「晶析法」
 これによりプルトニウムは単独では回収はされず、また晶析法の併用により溶媒抽出プロセスでの処理量が削減されることから廃液発生量の低減が可能となる。上記の方法について、プロセスフロー及び物質収支の評価を行うと共に、遠心抽出器の採用等によりシステムの一層の小型化をねらった設備機器仕様の検討を進めている。
 このほか、ウラン/TRU元素回収に高性能イオン交換樹脂を用いた「イオン交換法」、新たなウラン/プルトニウム回収方法としてアミン抽出剤を用いた「アミン抽出法」及び超臨界炭酸ガスにTBP-硝酸錯体を添加した処理媒体を用いた「超臨界流体抽出法」、中和処理等によりFPを順次沈殿物として除去していく「沈殿法」等についてのシステム検討等を行っている。
 また、湿式法すなわち連続処理という従来の発想を転換し、バッチ処理システムを追求することによりプロセスの簡素化をねらった「パイプレスプラント」の概念についても検討を実施している。
 窒化物燃料に対しては、主プロセスに上述の酸化物燃料を対象とした技術が適用できる。固有の課題としては、燃料製造に用いるN-15の濃縮技術と再処理におけるその回収技術、ボンド材(ナトリウム等)の除去等の前処理技術あるいは製品の窒化物への転換技術等があり、それらに対する検討を進めている。

 A乾式再処理
 酸化物燃料の乾式再処理として、「酸化物電解法」、「金属電解法」及び「フッ化物揮発法」の検討を行い、オリジナルのプロセスに対し、以下に示すような改良を加えたプロセスフローを考案し、より詳細な技術成立性の検討を進めている。

  • 酸化物電解法では、オリジナルのRIAR法に対し、前処理に機械式脱被覆法を採用、同時電解による処理速度の向上・運転温度の低温化・塩素使用量の低減、炉特性に悪影響を及ぼす白金族FPの分離工程の追加、二酸化プルトニウムの単独沈殿をウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)電解共析に変更、絞り電解によるMA回収、等の改良プロセスを構築した。
  • 金属電解法では、オリジナルのANL法(ウラン、プルトニウムをMAと共に回収)に対し、前処理に熱脱被覆法を採用、酸化物の塩素化溶解法の採用による塩廃棄物の削減、白金族FP分離プロセスの追加等の改良プロセスを構築した。
  • フッ化物揮発法では、既往のプロセスに対し、低除染MOXとしてのプルトニウムの回収、MAの回収等の改良プロセスを構築した。

 以上のプロセスの改良点を、図3-15〜図3-17にフローと共に示す。
上記の各方式について、それぞれ物質収支の評価を行うと共に機器・配置設計等の概略検討を進めている。
 なお、窒化物燃料の乾式再処理に関しては、湿式再処理の項で述べたものと同様の固有の課題があり、原研の協力を得てシステムの検討に着手したところである。

(b)燃料製造システムの検討状況
 @ペレット法

 PUREX法から得られる高除染の燃料原料粉をベースとした酸化物ペレット燃料製造法について、経済性向上に向けた工程簡素化の検討を進めている。具体的には、硝酸溶液混合時に燃料仕様に合わせたプルトニウム富化度調整を行い、マイクロ波加熱脱硝時にペレット成型・焼結のための粉末特性調整を行うことで、混合から造粒までの酸化物燃料粉末を取扱うプロセスを撤廃し合理化を図った「簡素化ペレット法」の開発、及びそれに基づくシステム設計を実施している。(図3-18
 さらに、先進湿式再処理から得られる低除染の放射能強度が高い燃料を使用した酸化物ペレット燃料製造技術を確立するために、上記の簡素化ペレット法をベースに、ホットセルによる遠隔製造プラントの概念検討を進めている。(図3-18)  窒化物ペレット燃料製造は、酸化物燃料粉末を窒化処理しペレットに成型加工するプロセスをとるので、基本的には酸化物燃料の製造プロセスに炭素熱還元/窒化プロセスを付加したものとなる。このため、この付加工程を中心に検討を行っている。

 A振動充填法
 振動充填法で用いる燃料粒子は再処理の方法に応じてその性状が異なるため、粒子仕様に合致した振動充填条件の最適化を図る必要がある。このような特徴を踏まえて被覆管に均質に燃料を充填できるシステムの検討を行っている。(図3-19
 先進湿式再処理法で得られる酸化物燃料粒子を振動充填する方法は、スイスのポールシェラー研究所(PSI)との共同研究等により、添加剤を加えたウラン及びプルトニウムの硝酸溶液をノズルから液滴状に落下させアンモニアと反応させて球状のゲル球を形成させ、それを洗浄乾燥の後、焙焼、還元焼結して燃料粒子を得る湿式ゲル化法の基本プロセス及び振動充填条件を開発してきた。これをベースに、サイクル施設間の燃料輸送の削減やユーティリティの共有化等による経済性向上を目指した先進湿式再処理施設と燃料製造施設を一体化したプラントシステムについて、機器・配置設計等の検討を実施している。
 乾式法で得られる酸化物燃料粒子を振動充填する方法については、各乾式再処理方式と整合をとり、以下のような点に留意しつつ、プロセスフロー、物質収支、設備機器仕様の検討を行っている。また、乾式再処理と燃料製造の一体化プラントシステムの概念検討を行っている。

  • 酸化物電解法では、陰極に析出させた酸化物燃料の結晶を粉砕することによりに高密度の燃料顆粒が得られるため、それを直接振動充填燃料として使用することが可能であるが、顆粒形状が不定形であるため、その充填特性を把握する必要がある。
  • 金属電解法で得られる酸化物は、充填性能の向上のために粒子形状を揃える工夫が必要であり、薬品製造の分野で実績のある転動造粒法などが候補技術となる。
  • フッ化物揮発法では、流動床により直接燃料粒子を得られる特長を活かした振動充填プロセスの合理化を図っていく。

 窒化物の振動充填燃料用粒子製造の基本プロセスは、酸化物燃料プロセスに炭素熱還元/窒化プロセスを付加したものであるため、この付加工程を中心に検討を行っている。

 (2)金属燃料サイクル
 金属燃料に対する乾式再処理及び燃料製造については電中研と協力してANLが開発したプロセスに、ウラン/TRU回収率向上のための工程付加等の改良を加えつつ施設概念を検討し、経済性評価を行っている。
 溶融した合金燃料を圧力差でパイプ状の石英ガラス製の鋳型に射出する「射出成型法」については多量の鋳型廃棄物が発生するため、その改良方策の一つとして、鋳型の繰り返し使用が可能となる「遠心鋳造法」による金属燃料製造システムの検討に着手した(図3-20)。
 (3)被覆粒子燃料
 ガス炉用の燃料として考えられている被覆粒子燃料については現状の技術の調査を行っているところである。

 (4)今後の進め方
 以上述べてきた燃料サイクルシステムの検討状況と今後の課題を合わせて表3-4に示す。
 1999年度末にかけては、各燃料サイクル施設について酸化物燃料サイクルを中心に、概略のプロセス成立性、プラント概念、建設費、等の検討を実施する。2000年度の上半期に、処理規模の影響、計量管理手法、廃棄物の発生量等について、他の燃料形態も含めたより詳細な検討を行う。下半期には炉側の検討において有望と判断された燃料形態と整合をとりつつ、各燃料サイクルシステムを比較評価して複数の実用化候補概念の抽出と開発計画の策定を進めていく予定である。この際、炉とサイクル施設を近接させたコロケーション型の立地についても検討を行う。

4. 実用化戦略調査研究推進に当たって留意すべき点

 実用化戦略調査研究については、関係機関等に開かれた体制で以下のように進めており、その進捗状況等はインターネットに適宜掲載する予定である。

@大学、研究機関、メーカー、シンクタンクその他、外部の有識者を中心とした社内技術検討会を設けることにより、多面的なコメントを受けながら調査研究を進めている。
A関係機関のコンセンサスを得ながら調査研究を進めるため、電気事業連合会との意見交換や、関係機関の連絡協議会(サイクル機構、電気事業者、電中研、原研)での協議を適宜行っている。
B成果については、国内外の学会等の場に報告する等して、透明性を確保しながら進めることとしている。
Cまた、計画や成果については、第3者の外部評価(サイクル機構の研究開発課題評価委員会)を受けることとしている。