長期計画策定会議第二分科会
「核燃料サイクル政策の明確化」に関する報告書骨子(案)

平成12年4月19日
レポーター宅間正夫

1 核燃料サイクル政策の基本的考え方
 1.1 平和利用
 1.2 核燃料サイクルの意義
 1.3 核燃料サイクルの実施に関する基本的考え方
 1.4 放射性廃棄物処分に関する基本的考え方
 1.5 国と民間の協力体制

2 核燃料サイクル事業の具体化
 2.1 ウラン資源の確保
  (1) 天然ウランの確保
  (2) ウラン探鉱
 2.2 ウラン濃縮
  (1) ウラン濃縮事業の位置付け
  (2) 国内事業の展開
 2.3 軽水炉による混合酸化物(MOX)燃料利用(プルサーマル)
 2.4 軽水炉使用済燃料再処理
 2.5 MOX燃料加工
 2.6 使用済燃料中間貯蔵
 2.7 再処理の展開(第二再処理工場)
 2.8 軽水炉使用済MOX燃料の取扱い
 2.9 長期的な核燃料サイクルの展開
 2.10 今後のプルトニウム利用の見通し
 2.11 その他

3 放射性廃棄物の処理処分等の方向性
 3.1 放射性廃棄物の処理処分
  (1) 放射性廃棄物の処理処分に係る基本的考え方
  (2) 放射性廃棄物の区分
  (3) 処分に向けた取組み
   ① 地層処分を行う廃棄物
   ② 管理型処分を行う廃棄物
   ③ その他の廃棄物
  (4) 放射性廃棄物の有効利用等の推進
  (5) 処分に対する信頼の確保
  (6) わかりやすい情報提供
 3.2 原子力施設の廃止措置


1 核燃料サイクル政策の基本的考え方
1.1 平和利用
 ○資源の乏しい我が国は、国際社会において平和裏に生存していくため、世界の自由貿易体制の中で、国際協調を基調として繁栄を享受していく道を選択している。我が国が平和利用以外の用途に原子力を利用することは、アジアを中心とした国際的緊張と反発、総合安全保障の喪失、国際的孤立とそれに伴う国内経済の破綻をもたらすものであり、我が国がそのような用途に原子力を利用することはあり得ない。
 ○また、我が国は、広島・長崎への原子爆弾投下などにより、核兵器使用の悲惨さを身をもって体験しており、自らが核兵器による加害者となるような政策は国民感情として受け入れられない。このような感情は戦後50年以上を経過した現在においても、しっかりと受け継がれており、それが我が国の原子力平和利用の厳守及び核兵器廃絶への願いの原動力となっている。
 ○さらに、我が国が培ってきた原子力を含めた科学技術力を活かし、進んで世界の長期的なエネルギー問題解決のために貢献し、世界の安定した秩序を維持・発展させることは、日本国憲法前文の精神にも適うものであり、我が国は、日本および世界のために、厳に平和利用目的に限り原子力の開発利用を進めることとしている。
 ○我が国は原子力基本法の制定以来、一貫してこの法律の目的に沿って原子力研究開発及び利用を厳に平和目的に限って推進している。
 ○このような信念の下、我が国は、「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)」締約国として、核兵器を持たないことはもちろんのこと、IAEAによる厳密な保障措置を受け入れると共に、国内保障措置制度を確立し、これを確実に実施するなど、この条約に求められているところを誠実に履行してきている。
 ○また、我が国は、原子力の平和利用活動には高い透明性と緊張感が求められていると認識しており、特にプルトニウム利用の透明性向上の観点から、毎年のプルトニウム管理状況を公表すると共に、国際プルトニウム指針に基づき、プルトニウム利用計画及びプルトニウム保有量をIAEAに報告・公表するなどの取組を行ってきている。

1.2 核燃料サイクルの意義

 ○我が国のように資源に乏しい島国にあっては、国内外の経済社会の変化に関わりなく、中長期的、戦略的な見地に立って、社会活動を営む上で必要なエネルギー量の一定部分を安定的に確保するための基盤を国内に形成することが重要であり、近年の原油輸入の中東依存度の高まりや石油価格の上昇傾向等を鑑みれば、こうしたエネルギーセキュリティ確保努力の重要性が一層高まってきている。我が国において原子力発電は既に50基を超える軽水炉(約4500万kW)で総発電電力量の約三分の一を賄っており、基軸エネルギーとしての役割を果たしている。今後ともこの原子力発電を適切に運用しつつ、進展する市場経済の中でエネルギー資源の多様化を図ることが重要。
 ○今後とも技術が生み出す準国産エネルギーとして、原子力が、この基軸エネルギーの役目を担うためには、ウラン資源が有限でありかつ国内で殆ど産しないことを考慮すれば、将来にわたるウラン資源の安定的な調達の確保を図るのみならず、それを有効に利用するため、国内に存在するエネルギー資源と見なせる使用済燃料のリサイクル、すなわち核燃料サイクルの国内における確立を図ることが重要。また、核燃料サイクルは、高度な技術の鎖であり、国内に一貫したサイクル技術を維持することは、テクノロジーセキュリティの観点からも重要。
 ○今日、我が国は、世界の一次エネルギー消費の約6%を消費し、米国、中国そしてロシアに次ぐ一次エネルギー消費国となっている。このように地球上の有限のエネルギー資源を大量に消費している我が国が、その持てる技術力を駆使してプルトニウムリサイクルを基調とした核燃料サイクルを国内に確立し、自律的、持続的なエネルギー源を先行的に人類のために確保することは、エネルギー多消費国としての責任である。これはまた、我が国の利益の実現が全人類的・全地球的な利益に繋がっていく活動でもある。
 ○核燃料サイクルを進めていくに当たっては、施設の安全確保はもとより、ウラン資源の利用に伴い発生する放射性廃棄物の安全な管理への対策が不可欠。

1.3 核燃料サイクルの実施に関する基本的考え方

 ○我が国においては、これまで核燃料サイクルの確立及びプルトニウム利用体系への展開という基本的考え方に基づき、国及びその他研究機関等によりその技術の研究開発が計画的に進められ、その事業化についても国の適切な支援の下に民間で進められてきた。
 ○今後は、技術が確立し事業化された核燃料サイクル要素については、市場経済の下、国際競争場裏において、一層の合理化・効率化が進むことが期待されるので、引き続き、民間による事業経営活動として進めることが適切。また、核燃料サイクル全体の整合性ある運営は、発注者・受注者の関係の中で事業者自体や事業者間の自律的、自主的な企業活動として実現してきている。国は、民間のダイナミックな企業活動に対し、環境整備など適切な支援と整合性のとれた安全規制を行うことが必要。
 ○上記1.2で述べた通り、我が国では、中長期にわたる国のエネルギーセキュリティとテクノロジーセキュリティの観点から、核燃料サイクルの国内完結が一層重要となってきており、これまで多くの努力を払ってきているが、この重要性は今後も変わらない。特に核燃料サイクルを構成する技術には、その確立に長期間を要するのみならず、開発の途上において海外の先進国から導入することが難しいものが多いことから、今後ともその技術基盤を国内に育成し、維持することが肝要。
 ○一方、経済や流通のグローバル化が進み、企業の国際的な再編統合等が進んでおり、また、企業経営の対応として、核燃料サイクル要素のある部分については、経済的合理性に基づく選択の結果として従来にも増して海外と競争関係が強まることも考えられる。我が国におけるエネルギーセキュリティ確保等としての原子力利用の観点から、原子力発電に必要な燃料の長期的安定供給に支障のない範囲で、核燃料サイクル要素のある部分について既に国際的な市場取引が成り立っている部分もある。
 ○ただし、長期的な研究開発と投資を必要とする核燃料サイクル要素、機微技術を含み他国からの技術導入困難な核燃料サイクル要素、建設に当たり高度な技術が必要であり早期の事業化が困難である核燃料サイクル要素及びこれらと密接に関連した核燃料サイクル要素については、国内においてその技術を確立し、必要な規模の国内事業を保持することが重要である。また、今後、海外調達が増加する場合でも、核燃料サイクル要素の技術的な能力が国内で保有され、核燃料サイクルの高度な技術の鎖が繋がっていることが重要である。

1.4 放射性廃棄物処分に関する基本的考え方

 ○われわれ現世代は、発電、医療、研究開発など広範な分野で原子力を利用し、その便益を享受してきている。原子力の便益を享受した現世代は、その責務において放射性廃棄物の処分への取組に全力を尽くす必要がある。
 ○現世代の責務を果たすためには、今後とも放射性廃棄物処分に向けた取組みを強力に推進しなければならず、遅きに失した面もあるが、今できることから早急に取り組んで行かなければならない。
 ○原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物については、埋設処分が進められている。また、これまでの調査・検討により、他の放射性廃棄物の処分対策は、処分方策の策定の段階から、処分の事業化を図る段階に前進。今後、一刻も早く実際の処分が開始されるよう国や電気事業者等の関係者が一体となって推進することが不可欠。
 ○一般廃棄物と同様に、放射性廃棄物も有効利用の促進と発生量の抑制を進め、処分される放射性廃棄物量を減らす努力が必要。また、発生量の低減に寄与するクリアランスレベルの制度化を進めることが重要。
 ○放射性廃棄物処分の問題を、国民一人一人が自らの問題として考え、国民各層において活発な議論が行われることが必要。このために、国民が放射性廃棄物処分に関する情報を共有することが重要。
 ○また、国や電気事業者等の関係者が一体となって、広報活動等を通じた情報提供に力を入れ、議論に必要となる正確な知識や情報を普及すると共に、全国各地で放射性廃棄物に関する議論が行われるような環境づくりを進めることが極めて重要。

1.5 国と民間の協力体制

 ○我が国のエネルギーの安定供給を実現していく体制は、従来のような国と民間の役割分担から一歩進めて、それぞれの特質を踏まえた適切な連携方策を検討し、限られた人材と資金を効率良く運用する新しい協力体制を確保することが重要。
 ○自由経済社会においては、民間事業者の国際展開を含む自己責任に基づく自主的な事業活動が市場を通じて行われることが基本。小さな政府と言われ国の関与が限られる中で、核燃料サイクルに関わる民間事業者は、事業者の社会的な責任として、健全な事業経営の下、その活動が社会の利益にも繋がることが期待されていることを認識すべき。国は、必要な経済規制の緩和と、過剰な社会的規制の合理化や必要な環境整備を実施する。
 ○民間事業者は、その事業の円滑な遂行を図るため、市場及び国民に対して説明責任を全うすることが重要。国は、核燃料サイクル確立への国民的な合意形成に向けた一層の努力を払うことが必要。
 ○市場経済の中で、民間事業者において自主的に行われる研究開発は、短期的な効果を求める分野が主となるが、一方、安全研究、バックエンド対策等の中長期にわたり確実に成果を上げるべきもの及び中長期的な大型の研究開発は、国が中心となるべき分野である。このように国と民間の研究開発の性格の相違を踏まえながら協力して進めるべき。将来の高速増殖炉による利用を含むプルトニウム本格利用に備えた研究開発は、国と民間を挙げた協力体制の下で推進すべきであり、市場経済を視野に入れた時点では民間事業者が主体となって進める。さらに、国は、核燃料サイクルに関連する基礎的な研究開発を長期的に推進することが重要。
 ○大型の研究開発の成果の実用化を進めるに当たっては、研究開発主体と建設・運転主体とが一体となって経済性向上のための研究開発を含め関連の開発活動を実施する体制を整備すること、進捗状況に応じて計画を評価し所要の措置を適時的確に講じていく体制を構築すること等が重要。
 ○研究開発活動や民間事業を安定的かつ継続的に進めるためには、人材育成は重要な課題。研究者・管理者・技術技能者・現場作業員等役割別の人材育成など、層の厚い人材を創るよう積極的に進めていくことが重要。人材育成の課題は、国と民間それぞれの役割を踏まえた取組が必要。

2 核燃料サイクル事業の具体化

 ○核燃料サイクルの実現に向けては、その事業化への着実な取組が必要である。ここ数年において、六ヶ所再処理工場の使用済燃料受入貯蔵施設が完成し、軽水炉による混合酸化物(MOX)燃料利用(プルサーマル)計画については、安全審査やMOX燃料輸送が行われるなど実施に向けて着実な進展が見られ、使用済燃料の貯蔵管理についても中間貯蔵に係る法整備が行われるなど、当面の核燃料サイクルに関する主要な課題が各々進展し、我が国における核燃料サイクルの輪が着実に姿を見せつつある。
 ○また、平成11年に、通産省が核燃料サイクルの進捗等を踏まえて原子力発電コストの試算を一定条件の下で行った結果、発電原価は5.9円/kwhとなり、他の電源との比較において遜色はないものとされている。
 ○短期的には、当面の課題各々について着実な進展を図ることにより、我が国におけるウラン資源の有効利用の安定的なシステムの確立を図ることが重要。
 ○この場合にも、平和利用の担保と国際的なルールの下、利用目的のない余剰のプルトニウムを持たないとの基本的な方針及びプルトニウム利用の透明性の向上努力が引き続き必要なことは変わらない。

2.1 ウラン資源の確保
(1) 天然ウランの確保

 ○我が国は、長期購入契約等により今後10年近くの必要量を確保しており、また、天然ウラン供給国が、政治的に安定した国であり、かつ友好関係にあることを踏まえると、当面は、引き続き適切な価格により天然ウランの調達は可能と電気事業者は予想している。
 ○しかし、将来の需給動向を踏まえつつ、我が国の原子力開発利用の自主性及び安定性を確保する観点から、電気事業者を中心とする民間事業者は、適切な量の備蓄を含め、天然ウランの安定確保を図っていく努力を継続する必要がある。また、鉱山開発のリードタイムの長期化、ウラン産業の寡占化の進行等にも留意することが必要。
 ○民間事業者は、供給源の多様化に配慮し、引き続き長期購入契約を軸とした天然ウランの確保を図ると共に、自主的なウラン探鉱活動、鉱山開発への経営参加等を進めていくことが期待される。

(2) ウラン探鉱

 ○核燃料サイクル開発機構は、民間活動を補完することを目的として、自主的な探鉱活動により、海外に4万トン弱の権益を保有(2000年2月)してきた。動燃改革に伴い、天然ウランの市場状況の今後の見通し、核燃料関連事業の進展等を踏まえて、核燃料サイクル開発機構はウラン探鉱事業から撤退し、権益は国内民間企業等に適切に移転または売却することとし、民間への技術移転を行うこととする。また、今後のためにも成果の取りまとめを行うことが重要。
 ○現在は、天然ウランの供給過剰の状況から探鉱を継続することの短期的な重要性は小さいが、ウラン資源の中長期的な安定供給確保は依然として重要。これまで核燃料サイクル開発機構が獲得した権益のうち重要なものについては、民間に譲渡され、今後5年間保有されることとされているが、さらに長期間民間において維持されることが望ましい。
 ○今後の探鉱活動は、他のエネルギー資源・鉱物資源同様、当面は、民間活動に委ねることが適当。

2.2 ウラン濃縮
(1) ウラン濃縮事業の位置付け

 ○世界におけるウラン濃縮役務市場の需給バランスは、今後も当面の間は供給能力過剰で推移していくものと予想されるが、中長期的に見れば、欧米のガス拡散法プラントがいずれ老朽化すること等から、ウラン濃縮役務需給が逼迫する恐れも予想される。
 ○我が国としては、濃縮技術が高度で且つ機微な技術であること等を勘案し、供給の安定性を確保すると共に、核燃料サイクルの自主性を確保する観点から、国内においてウラン濃縮技術の開発および事業化を継続的に推進していくことが重要。

(2) 国内事業の展開

 ○核燃料サイクル開発機構の原型プラントの成果は国内民間濃縮事業に活かされ平成12年度に濃縮役務運転を終了予定。その後は、役務運転を終了した原型プラント等を活用し、濃縮プラントの廃止措置にかかる研究開発を進める。
 ○国内民間濃縮事業は、核燃料サイクル開発機構が開発した金属胴遠心分離機を用いて、既に六ヶ所ウラン濃縮工場が稼動中。今後は、より経済性の高い遠心分離機を開発・導入し、事業者が計画している同工場の1,500トンSWU/年規模までの生産能力の増強と、安定したプラントの運転および経済性の向上に全力を傾注することが望まれる。
 ○さらに、我が国の遠心分離法濃縮技術を国際競争力のあるものとするためには、より一層性能が高く経済性に優れた遠心分離機の開発を行うことが必要不可欠。このための研究開発は、核燃料サイクル開発機構によるこれまでの開発成果・知見・人的資源を着実に民間へ集約してその技術力を有効に活用すると共に、他国との協力をも視野に入れた開発を民間主体で推進することが望まれる。このことは、テクノロジーセキュリティの観点からも重要。
 ○一方世界の濃縮事業をみると、現在、欧米の濃縮事業者は、ガス拡散法プラントの代替技術としてレーザー法ではなく遠心分離法を志向していることから、将来的に、世界におけるウラン濃縮の主流技術は、既に我が国をはじめURENCO(欧州)やTENEX(ロシア)において事業化されている遠心分離法が主流となる可能性が大きい。
 ○将来的には、既に遠心分離技術を有している我が国としては、より経済性が高く高性能な濃縮技術の開発を行いつつ、国際的なウラン濃縮役務の需給動向を勘案し、国際市場を視野に入れた展開をも考慮することが望まれる。
 ○ウラン濃縮の新技術として、これまで原子レーザー法、分子レーザー法及び化学法の研究開発が進められてきた。これら新技術については、実用化の可能性をある程度の確度で見通せるレベルに概ね達したものと考えられるが、実用技術として確立する時期を見極める必要がある。また、それぞれの開発が終了した時点までの成果を取りまとめておくことが適当。

2.3 軽水炉による混合酸化物(MOX)燃料利用(プルサーマル)

 ○プルサーマルは、ウラン資源の有効利用を図り、基軸エネルギーに係る燃料供給の確保の観点から重要であり、また、将来のプルトニウム本格利用時代に備えて産業基盤や社会環境を整備することにも寄与。
 ○プルサーマルは、安全性、経済性及び国内外の利用実績等を総合的に勘案して実用化された技術であると共に、現時点でウラン資源を有効利用していく最も確実な方法であり、当面のウラン資源リサイクルの中核的な担い手として着実に推進していく。
 ○プルサーマルは、海外では選択肢の一つとされ既に実施されている国もある。我が国では、2010年までに累計16~18基において順次プルサーマルを実施していくという電気事業者自らが立案した計画が、関係者の努力により実現の緒につきつつある。我が国においては、プルサーマルをこの規模で進めることの重要性は変わっておらず、電気事業者には、BNFLデータ問題などの様な問題が再び起こらぬよう細心の注意を払い、国民の信頼を得て計画的かつ着実に進めることが期待される。
 ○なお、全炉心MOX燃料装荷可能な改良型沸騰水型軽水炉として青森県大間町に建設が予定されている大間原子力発電所は、プルサーマル計画の柔軟性を広げるという位置付けを持つものとして、その準備が進められている。

2.4 軽水炉使用済燃料再処理

 ○使用済燃料は、リサイクル燃料資源と位置付けられ、技術によって高度に利用することが可能な資源。使用済燃料再処理は原子力を準国産エネルギーと位置付ける重要な要素。
 ○六ヶ所再処理工場については、このような我が国の核燃料サイクルの中心的役割を担う施設であり、その建設・運転を通じて商業規模での再処理技術の着実な定着を図るものとして、平成17年の竣工に向けた建設スケジュールに沿って、その建設が確実に進められており、着実に運転が実施される予定。この過程では、民間事業者と核燃料サイクル開発機構との連携等を含め、着実に再処理事業を実施していく努力を図る必要がある。
 ○六ヶ所再処理工場や使用済燃料中間貯蔵の進展を踏まえれば、これらの事業が計画に従って順調に進捗していく限り、現段階においては海外再処理の選択の必要性は低い。
 ○東海再処理工場については、短期的には、電気事業者からの契約役務及び「ふげん」等からの使用済燃料の再処理を実施すると共に、高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料のフィールド試験等を行い必要な研究を実施。その後は、プラント寿命を考慮し廃止措置に係る研究開発を通じ、廃止措置に備える。

2.5 MOX燃料加工

 ○MOX燃料加工は、プルサーマルに安定して燃料を供給するもの。また、MOX燃料加工は、中間貯蔵と共に、再処理を中心とした核燃料サイクルの流れの幹をなす要素であり、国内事業として確保することは必要な選択。
 ○このため、六ヶ所再処理工場の建設・運転と歩調を合わせて民間において国内MOX燃料加工の事業化を図るため、調査・検討が進められている。一方海外では、仏国、英国及びベルギーにおいてMOX燃料加工工場が稼働中であり、我が国電気事業者に向けて、MOX燃料加工が開始されている。
 ○国内におけるMOX燃料加工の事業化については、MOX燃料を使用し発電を行う電気事業者が中心となった民間事業者が進めることが適当。また、早急にMOX燃料加工事業の実施主体を確定することが重要であり、その事業内容についても具体的に検討を進める必要がある。
 ○このため、核燃料サイクル開発機構のMOX燃料加工施設の活用及び技術移転について、核燃料サイクル開発機構と民間事業者の間で早急に結論を得ることが重要。技術移転については、核燃料サイクル開発機構で培った技術等をも十分に活用し、MOX燃料加工技術が我が国において産業として早急に定着するよう、関係者が必要な方策をとることが望まれる。

2.6 使用済燃料中間貯蔵

 ○使用済燃料はリサイクル燃料資源として位置付けられ、将来的に必ず資源として利用されるが、使用済燃料の中間貯蔵は、使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的な調整を行うことで、核燃料サイクル全体の運営の柔軟性を確保する核燃料サイクル要素として重要。
 ○既に、中間貯蔵に係わる法整備が行われ、民間事業者は2010年までに操業開始するための取組を実施中。海外主要国においては、大容量かつ集中的な使用済燃料中間貯蔵施設を既に運開・操業、若しくは法制度の準備が進められている。
 ○従って、早期に中間貯蔵を適切に運営・管理することができる実施主体により、安全の確保を大前提に、事業が早急に実現されることが期待される。
 ○使用済燃料は、発生国において管理することが原則であると共に、発生国の基本的な責務である。現段階では、国外における我が国の使用済燃料の中間貯蔵について検討する状況にはない。

2.7 再処理の展開(第二再処理工場)

 ○軽水炉時代の長期化に対応する観点及び将来の高速増殖炉による利用を含むプルトニウム本格利用の観点から、軽水炉使用済MOX燃料等をも再処理し得る施設の建設は重要。核燃料サイクル開発機構やその他の研究機関などにおいて、再処理技術の高度化研究開発が行われている。
 ○しかし、その建設については、民間事業者が、高速増殖炉実用化の見通し、六ヶ所再処理工場の建設・運転実績、今後の研究開発の進展及び使用済燃料中間貯蔵の進展などを総合的に勘案して、事業経営として建設計画、再処理能力、利用技術などの方針を決定することが基本であり、2010年頃に検討を行うことが適当。
 ○原子力委員会としても、経済社会の動向による事業体制等の不確実性が大きいことから、プルトニウム利用技術の動向を勘案しつつ、その決定された方針について適時的確に評価を実施していく。
 ○その際には、ウラン使用済燃料の再処理を行うだけでなく、この施設において、高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料及び高速増殖炉の使用済燃料再処理を可能とする施設を検討すべき。

2.8 軽水炉使用済MOX燃料の取扱い

 ○プルサーマルに伴って発生する軽水炉使用済MOX燃料の再処理は、国内外での実績により、技術的に可能であることが実証されている。
 ○短期的には、ウラン使用済燃料の再処理を優先することが現実的。また、ウラン使用済燃料と同様に安全に貯蔵管理できることから、軽水炉使用済MOX燃料は、中間貯蔵による対応を含めて再処理するまでの間、適切に貯蔵管理することとする。
 ○電気事業者を中心とした民間事業者が、第二再処理工場の建設計画等の諸状況を勘案して、軽水炉使用済MOX燃料の利用方針を決定することが基本。

2.9 長期的な核燃料サイクルの展開

 ○我が国が、これまでに培った技術力をベースとして、将来にわたりより良い技術を探索・実用化していくことは、将来における選択肢を豊富にし、将来のエネルギー産業における競争力を維持するためにも重要。
 ○従って、人類全体のセキュリティとして、地球環境問題を悪化させることのない大規模なエネルギー供給技術を実現し、長期的なエネルギーの安定確保を図ることは重要であり、そのための研究開発は技術力を有する先進国の責任でもある。
 ○将来の不確実性を考慮しても、原子力は現在と同様将来にわたって重要な役割を担っていくものと考える。今後の循環型社会を考慮すれば、ウラン資源の有効利用に加え、更なる環境負荷低減が求められる。将来の非化石エネルギーの有望な選択肢の一つと位置付けられる高速増殖炉については、ウラン資源の利用効率を飛躍的に高め、長期的にエネルギーの安定確保を図るだけでなく、超ウラン元素などに分離変換技術を用いることにより放射性廃棄物処分に係る負担軽減を可能とし、さらに核不拡散性の向上が可能であることから、高速増殖炉とそのサイクルを含めた研究開発が進められている。
 ○その進め方については、国内の核燃料サイクル事業の進展状況等、その時の国内外の諸状況を勘案しつつ、適時的確に評価していく。

2.10 今後のプルトニウム利用の見通し

 ○我が国における当面のプルトニウムの利用について展望すると、今後着実に実施されるプルサーマルに利用すると共に、高速増殖炉等の研究開発に利用することとなる。
  • プルサーマルに必要なプルトニウムについては、基本的には、当初は海外再処理により回収されるプルトニウムを利用し、その後、国内再処理工場で回収される予定のプルトニウムも利用。
  • 国内再処理工場で回収されるプルトニウムについては、高速増殖原型炉「もんじゅ」等の研究開発にも利用する予定。
 ○プルトニウムの利用に際しては、利用目的のない余剰プルトニウムを持たないとの原則に基づき、計画的な利用を図ることが重要。研究開発用に用いられるプルトニウム需要は、関連する研究開発計画及びその進捗状況によって変動する可能性があるが、その場合においても、全体のプルトニウム需給に適切に配慮しつつ、プルサーマルと研究開発により、柔軟なプルトニウム利用を図ることとする。
 ○なお、「プルトニウム需給見通し」の試算については、プルトニウム利用の透明性向上の努力の一つとして、関連する諸計画の具体的な進捗状況によって当然変わりうるとの前提で試算を示しているものであるが、今後、「もんじゅ」、東海再処理工場等のプルトニウム需給に関係する施設について、その取扱いを見通せる状況になった時点で、新たな「プルトニウム需給見通し」の試算を示すことができるものと考える。しかしながら、上記見通しによりプルトニウム利用が図られることに変わりはなく、2010年過ぎ頃までのプルトニウムの回収と利用の概略について示せば以下の通り。(プルトニウム量は核分裂性プルトニウム量)
  • 海外再処理により回収されるプルトニウムは、累計約30トンと見積もられ、2010年頃までに順次回収される予定。また、国内再処理工場にて回収されるプルトニウムは、六ヶ所再処理工場が本格操業した段階で年間約5トン弱が回収される予定。
  • 「もんじゅ」等の研究開発用のプルトニウム需要は、「もんじゅ」が運転再開した後は、年間数百キログラムが見込まれる。
  • 電気事業者の計画によれば、2010年までに16~18基の規模までプルサーマルを順次拡大しつつ実施していくこととされているが、これに必要なプルトニウムは、プルサーマルの実施規模の拡大に合わせ、当初は海外再処理により回収されるプルトニウムが、その後、国内再処理工場で回収される予定のプルトニウムも利用され、上記の研究開発需要を踏まえれば、年間約5トン弱のプルトニウムが回収されるとして、年間約4トン程度となる。
  • 以上を踏まえれば、全体のプルトニウム需給に配慮しつつ、プルサーマルの実施と研究開発への利用によって、適切にプルトニウム利用を図っていくことが可能と判断できる。

2.11 その他

 ○新型転換炉「ふげん」については、その運転期間を平成14年度までとし、その間の活用方策については、過去の20年間の研究開発成果を含め、現在実施中の高燃焼度MOX燃料の安全評価等のプルトニウム利用技術やプラント管理技術について、研究開発成果の集大成を行うと共に、海外のニーズに応じ、圧力管型炉の運転管理技術の取得の場として活用していくことが適当。また、運転停止後の廃止措置を円滑に行うため、「ふげん」の原子炉システムの固有の廃止措置技術の開発及びそれに必要な研究を実施することが重要。
 ○再処理により回収されるウランの現時点で最も適切な利用法は、再濃縮によるリサイクル利用である。今後は、核燃料サイクル開発機構及び電気事業者を中心とする民間事業者とが協力して、回収ウランの利用方法について検討を進め、将来の本格利用に備えることが適当。
 ○海外再処理委託により回収されるウランは、海外において転換及び再濃縮を行うことが適当。電気事業者は利用計画策定等、本格利用に向けて諸準備を進めていくことが重要。
 ○ウラン濃縮に伴い発生する劣化ウランは、六ヶ所ウラン濃縮工場の運転に伴い、今後国内における発生量が増大することが予想されるが、将来の高速増殖炉等への利用に備え、その効率的な貯蔵方策及び利用方策について、電気事業者を中心とする民間事業者で検討を行うことが望まれる。
 ○海水中に含まれるウランの回収については、現時点では経済性を有していないため、経済性向上のための研究開発努力を継続し、長期的観点から天然ウランの需給動向を見極めつつ、これまでの成果を評価の上、今後の活用等を検討すべき。

3 放射性廃棄物の処理処分等の方向性
3.1 放射性廃棄物の処理処分
(1) 放射性廃棄物の処理処分に係る基本的考え方

 ○放射性廃棄物は、放射能レベルの高低、含まれる放射性物質の種類等により多種多様に存在し、この多様性を踏まえた適切な区分管理と区分に応じた合理的な処理処分を行うことが重要。
 ○放射性廃棄物の処理処分の責任については、発生者責任の原則を踏まえ、原子力の利用により放射性廃棄物を発生させた者の責任において処理処分がなされることが基本。
 ○処理処分の責任を有する者は、処理処分の具体的な実施計画を整備するなど処分が適切かつ確実に行われるよう、その責務を果たす必要があり、国は、法制度の整備など所要の措置を講ずる必要がある。

(2) 放射性廃棄物の区分

 ○「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成6年6月24日原子力委員会。以下「前長計」という。)では、放射性廃棄物管理の実態に合わせ、放射性廃棄物を発生源ごとに区分していた。
 ○原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物については、埋設処分が進められている。また、これまでの処分方策検討の結果、他の放射性廃棄物については、処分方策を調査審議中のウラン廃棄物を除き、地層処分、一般的な地下利用に十分余裕を持った深度への処分、コンクリートピット処分、素掘り処分及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律における管理型処分のいずれかの処分方法で処分できる見通しが得られている。
 ○今後は、処分方策の策定ではなく、現実の処分実施に向けた対応が重要となることを踏まえ、放射性廃棄物を処分方法ごとに区分する。

(3) 処分に向けた取組み
① 地層処分を行う廃棄物

 ○放射性廃棄物の中には、半減期の長い放射性核種(長寿命核種)を多く含むために人間による管理が期待できる期間内に生活環境に影響を及ぼさないレベルまで放射能の減衰が期待できないために、生活環境に影響を及ぼさないよう長期にわたって隔離する必要があるものが存在。
 ○当該廃棄物については、地下数百メートル以深の安定した地層中に、廃棄物の漏出抑制を目的とする人工バリアを設けて処分する「地層処分」を実施。当該廃棄物を「地層処分廃棄物(仮称)」と呼ぶ。

イ) 高レベル放射性廃棄物

 ○使用済燃料からウラン等の有用物質を分離した後に残存する高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30年から50年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後地層処分する。
 ○原子力委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書(平成10年5月)において、「ガラス固化体の発生時期とその後の冷却期間を考慮して、2030年代から遅くとも2040年代半ばまでには処分事業を始めることが予定されている」と記されており、処分事業を着実に推進していく。
 ○処分地の選定については、立地地域の理解を得ながら着実に推進することが重要。
 ○立地地域の理解を得るためには、処分事業と立地地域との共生を図ることが重要。
 ○平成12年3月に処分事業の実施主体の設立等を内容とする「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案」が国会に提出された。法案の速やかな成立とそれに則った具体的な処分事業の推進が期待される。
 ○試験研究炉等から発生する高レベル放射性廃棄物については、適切な処分を行うため、関係者が所要の対応を図ることが重要。
 ○高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究開発については、「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性について―地層処分研究開発第2次取りまとめ―」(平成11年11月26日核燃料サイクル開発機構)の評価結果(原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会で審議中)に従い、今後とも研究開発を推進する必要がある。
 ○今後、核燃料サイクル開発機構は、地層処分放射化学研究施設や深地層の研究施設等を活用し、地層処分技術の信頼性の確認や安全評価手法の確立に向けて研究開発を着実に推進していく。
 ○深地層の研究施設は、これまでの処分研究開発の成果を確認していく上で重要な研究施設の一つであるとともに、国民が実際に地下深部の環境を体験でき、処分研究開発への理解を深める場として、社会的観点からも重要な施設。
 ○核燃料サイクル開発機構が北海道幌延町及び岐阜県瑞浪市で計画している深地層研究施設を着実に整備し、深地層の研究を進める必要がある。なお、従来通り、当該施設の計画と処分施設の計画は明確に区別して進める。
 ○処分事業の進展に応じ、核燃料サイクル開発機構から処分事業の実施主体へ適切に処分技術が移転されることが重要。また、今後は、引き続き核燃料サイクル開発機構が処分研究開発を進めると共に、一方で処分事業の実施主体も適切な役割を果たし、効率的に処分研究開発を進める必要がある。

ロ) 高レベル放射性廃棄物以外の地層処分廃棄物

 ○高レベル放射性廃棄物以外にも、長寿命核種を多く含むため、地層処分が必要な放射性廃棄物が存在。
 ○当該廃棄物は、その性状が多様であるため、高レベル放射性廃棄物処分研究開発の成果も活用しつつ、合理的な処分に向けて、その多様性を踏まえた処理処分研究開発(廃棄体の固型化、検認の方法等)を、当該廃棄物の発生者等が密接に協力しながら、推進することが重要。
 ○処分事業の推進に当たっては、当該廃棄物の発生者等がその責任において適切な対応をとることが不可欠であり、まず、処分についての制度的、技術的検討を行うことが必要。

ハ) 長寿命核種の分離変換技術

 ○放射性廃棄物に含まれる放射能の低減による処理処分の負担軽減、資源の有効利用を図る分離変換技術については、「長寿命核種の分離変換技術に関する研究開発の現状と今後の進め方」(平成12年3月31日原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会)にしたがって、研究開発を進める。
 ○分離変換技術は、将来の技術であること及び地層処分の対象となる長寿命核種を含む放射性廃棄物を完全になくすことはできないことから、地層処分の必要性がなくなるものではない。

② 管理型処分を行う廃棄物

 ○放射性廃棄物の多くは、人間による管理が期待できる期間内に、生活環境に影響を与えないレベルにまで放射能の減衰が期待できるもの。
 ○当該廃棄物については、放射能が時間とともに減衰し、人間環境への影響が十分に軽減されるまで、人工バリアと天然バリアを組み合わせ、放射能に応じた管理を行うことで、放射性廃棄物を人間環境から安全に隔離する「管理型処分」を行う。当該廃棄物を「管理型処分廃棄物(仮称)」という。
 ○管理型処分廃棄物は、ほぼすべての原子力利用施設から発生。管理型処分廃棄物は、処分の方法により、次の4つに区分される。
  a)不利用深度処分廃棄物(仮称)
  • 放射性核種の移行抑制機能の高い地中で、一般的であると考えられる地下利用に十分余裕を持った深度(例えば50~100m)にコンクリートピットと同等以上の機能を持つ人工構造物を設置して埋設し、数百年間管理を行う「不利用深度処分」の対象となるもの。
  b)コンクリートピット処分廃棄物(仮称)
  • 浅地中にコンクリートピットを設置して埋設し、数百年間管理を行う「コンクリートピット処分」の対象となるもの。
  c)素掘り処分廃棄物(仮称)
  • コンクリート等の安定な廃棄物を、コンクリートピットなどの人工構造物を設置せず、浅地中に埋設し、数十年間管理を行う「素掘り処分」の対象となるもの。
  d)化学物質考慮処分廃棄物(仮称)
  • 放射能レベルの観点からは素掘り処分の対象となる廃棄物のうち、鉛などの有害な化学物質を含むものであって、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)」における「管理型処分場」の構造基準を踏まえた処分施設を設置して埋設し、適切な期間管理を行う「化学物質考慮処分」の対象となるもの。
 ○既にコンクリートピット処分が進められている原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物以外の廃棄物について、今後は、処分の実現に向けた取組みを進めることが重要。取組みを進めるに当たっては、処分の合理性を追求する観点から、処分方法が同じ廃棄物は、その発生源を問わず、同一の処分場に処分することや、同一の処分場で、複数の処分方法による処分を実施することも考えられる。
 ○処分の在り方は、合理性の観点からだけででなく、廃棄物の性状などの物理的事項や立地地域の情勢などの社会的事項等を総合的に勘案して、実現可能性が高い処分のあり方を模索する必要がある。
 ○発生者責任の原則を踏まえつつ、処分の実現について総合的に調整する場を設けるなど、廃棄物の直接の発生者や発生に関わるもの等が密接に連携し、適切な対応をとることが重要。
 ○国は、必要に応じその取組みを支援することが必要であり、また、安全基準の策定や法制度の整備など、処分の実現に向けた所要の取組みを推進する必要がある。

③ その他の廃棄物

 ○ウラン廃棄物に関しては、その処分方策に関して現在原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会にて調査審議中であり、速やかに取りまとめがなされることが望まれる。

(4) 放射性廃棄物の有効利用等の推進

 ○放射性廃棄物については、商業用発電炉の解体に伴い発生するものを除き、主として処理処分の観点から議論されることが多く、例えば放射性金属廃棄物の溶融処理・再利用等の有効利用の観点からの議論があまり行われていない。
 ○現在、廃棄物を減らしリサイクル型社会を構築するという社会全体を取り巻く大きな流れが存在し、放射性廃棄物についても、その流れに沿って、廃棄物の発生量低減や有効利用の研究開発について積極的に推進していく必要がある。
 ○放射性廃棄物の有効利用のあり方については、関係者及び関係行政当局の連係の下に、幅広い観点から検討を行うことが重要。
 ○廃棄物の発生量低減や放射線量低減等の観点から、廃棄物処理に関する研究開発を今後とも継続することが重要。

(5) 処分に対する信頼の確保

 ○処分の実現に向けた取組みを進める上で、処分事業に対する信頼を得ることが重要。
 ○処分事業の透明性を確保するため、長期的に継続して情報公開を行い、事業のすべての段階を通じて情報公開の姿勢を徹底することが不可欠。
 ○具体的には、処分の具体的内容、放射性廃棄物の物理的・化学的性質や量、処分スケジュールなど、処分事業の現状と方向を明示することが必要。また、安全性や環境への影響の可能性などに関する情報を公開することも重要。
 ○処分事業主体と地域との相互理解を深める場を設けることも考えられる。
 ○処分事業を進める上で、処分技術はその基盤をなすものであることから、処分技術に対する信頼性を得ることも必要。
 ○高い信頼性をもって技術的安全性が確保されることはもちろん、事業者に対する信頼を通して、社会的に「安心」を与えることが重要であり、処分における安全確保の考え方や処分に必要とされる技術について、その内容や、専門家の間での技術的な議論を、わかりやすく発信していく努力が求められる。
 ○先に述べた深地層の研究施設については、地下深部を人々が実際に見て体験できるという意味で、社会的観点から極めて重要。

(6) わかりやすい情報提供

 ○放射性廃棄物処分の推進に当たっては、社会的な理解を得ることが重要であり、また、広く国民各層の間で、正しい理解の下、放射性廃棄物に関する議論が行われ、その認識が広がることが必要。
 ○議論に必要となる様々な情報が提供されるとともに、その内容が国民に信頼されなければならない。
 ○提供する情報が、情報を受け取る側にとってわかりやすくなければ無意味。用語をわかりやすくしたり、説明を付けたりするなど表現の仕方、視覚的な情報を取り入れるなど情報の伝え方にも工夫が必要がある。
 ○人々が求めている情報を的確に提供することが重要。そのために、例えばアンケート調査や意識調査などを実施して、求められている情報のニーズを把握するよう努めることが重要。
 ○処分事業主体などの関係機関は、提供された情報に対する疑問等に迅速に対応できる体制を整備することが望まれる。
 ○求められる情報が多種多様であることに対応して、求められている情報を的確に把握し、専門家等から必要な情報を得た後、それをわかりやすく「翻訳」して提供できる専門スタッフを育成することが重要。

3.2 原子力施設の廃止措置

 ○原子力施設の廃止措置は、原子力施設の設置者の責任において、安全確保を大前提に、地域社会の理解と支援を得つつ進めることが重要。
 ○商業用発電炉の廃止措置については、原子炉の運転終了後、必要な期間を経過したのち、解体撤去することを原則とし、原子力発電所用地として、引き続き有効に利用することが望ましい。
 ○現状では、解決しなければ廃止措置が実施できないような技術的課題はないものの、解体技術及び除染技術の高度化、より合理的な放射能濃度測定技術の開発など、一層合理的な廃止措置が可能となるよう引き続き技術開発が望まれる。
 ○将来、試験研究炉の廃止措置が現実のものとなった場合に円滑な対応がなされるよう、その廃棄物の処理処分も含め関係者及び関係行政当局の連係の下に、現時点から所要の検討を行うことが重要。
 ○原子力施設の廃止措置により発生する放射性廃棄物の処理処分については、発生者である原子力施設設置者が適切かつ確実に行う責任がある。