平成12年 1月19日
川村 

長期計画策定会議第二分科会(第4回)でのプレゼンテーションに関する質問回答

質 問 1
 わが国では、国内のエネルギー安全保障の確立のために原子力発電を開発し、そのために原子力機器も極力国産化を目指してきたと思います。それが、そしてそれのみが「国民の利益」だったといえるかと思います。しかし、例えば、同じく国内資源の乏しいフランスやドイツは、国内原子力発電はもとより、その過程で国内に育成された技術や原子力機器・プラントを国外に輸出することも「国民の利益」につながるものとして、政府首脳自らセールス活動をしているように見えます。長く且つ広い視野で見るならば、今後原子力を必要と考えるであろう国々に、わが国の育てた原子力機器・プラントや技術を輸出していくことは、双方の国民にとって利のあること(もちろん安全性と平和利用が大前提)と考えられますが、この点についてのお考えをお聞きしたい。また、それを可能にする条件、困難である障害は何でしょうか。

回 答
1.我が国が育てた原子力機器・プラントや技術を輸出していくことは、次の点から双方の国民にとって利のあることであり、積極的に推進すべきと考えています。

    @国内の原子力供給産業の活性化
    A地球規模の温暖化防止策を支援する。
    B我が国の蓄積した原子力技術を提供することによって安全性、信頼性確保に貢献する。

2.輸出推進のための条件、困難である障害
 競争市場で勝ち抜いていくためには、供給産業界の品質・価格競争力が基本的な要素でありますが、需要側の要求に応じた迅速な対応もまた重要であります。迅速な対応を行う上で課題となるものの例として次が挙げられます。
 第一に、核不拡散、原子力安全保障への配慮であります。原子力関連機器や技術の輸出に際しては、ロンドンガイドラインに定める、平和利用、第三者への移転制限等の項目についての相手国政府の合意が必要であり、具体的にはこれらの合意を盛り込んだ原子力平和利用に関する二国間協力協定の存在が必須であります。相手国との間に二国間平和利用協力協定が既に存在し(現在、日本が平和利用協力協定を締結している相手国;仏、米、中国、オーストラリア、カナダ、英、ロシア、韓国、イタリア、スウェーデン)、さらに、輸出しようとする技術・機器等が、同協定の記載範囲内である場合には、当該技術の提供・移転、機器等の輸出に関する許可の取得に関し、現実的な対応が可能であります。しかしながら、相手国との二国間平和利用協力協定が存在しない、あるいは、輸出しようとする技術・機器等が、既存の協力協定に記載されていない場合には、輸出のために、相手国政府から新たに公式な保証を得る必要があり、手続きに要する時間的な問題から、競争市場における現実的な対応はほば不可能なものとなります。原子力供給産業界の海外展開のため、既存の二国間平和利用協力協定の記載範囲(取引可能範囲)の拡大と二国間平和利用協力協定締結相手国の拡大が必要と考えます。
 第二に原子力損害賠償制度の整備であります。原子力関連機器や技術の輸出に際しては、輸出者に限度の無い賠償責任義務が転嫁されぬよう、相手国において原子力損害賠償にかかわる十分な保証処置が制度化されている必要があります。このことは、相手国の内政にかかわる問題ですが、ウィーン条約等国際的な枠組みの中で、国際レベルの制度が整備されるよう、国の働きかけが重要と考えられます。
 第三にファイナンスに関する課題であります。プラント輸出に際し、輸出国側にファイナンスを求めることはアジア諸国では一般的ですが、とりわけ原子力プラントはその初期投資が巨額であることから必須の条件といえます。一方、輸出国側にとっても、やはりその規模の大きさから、十分な範囲のファイナンスを用意することは各国企業にとって相当困難を伴っています。
 以上の課題は、日本の原子力海外展開の環境整備という観点から国レベルの対応が必要と考えます。

質 問 2
 米国においては、ここ20年以上原子力の新規発注がなく、実質的なモラトリアム状態であり、その結果、かってはGE、WH、CE、B&W等を擁し、世界の原子力産業のリーダーだった米国内に、もはや物作りの出来るプランとメーカは存在しなくなった。
 最近、日本でも原子力モラトリアム論が盛んだが、プラントメーカーがもの作りを、一旦、休・廃業し、20〜30年後に再開しようとしても、
(1)設計技術や物作り技能は伝承されず、失われてしまう。
(2)原子力を支える広範の産業基盤が衰退してしまう。
(3)原子力に志す学生、若い技術者がいなくなっている。
 等々の理由により、再開は殆ど不可能に思える。
 メーカーの立場からみて、モラトリアム時代に入ると仮定した場合においても、技術を維持し、将来に備えることが出来ると考えられるのか。

回 答
 原子力の新規建設の端境期には、原子力のコア技術・人員の維持、新分野への展開、類似技術分野との人員交流、海外事業進出、保守点検分野への人員シフト等により、プラントメーカとして技術の維持、伝承に努めています。既設プラントの改造、保守点検技術の多くは新規プラント建設技術と共通であります。しかし、ご指摘の通り、プラントメーカが一旦、休業し、20〜30年後に再開すると仮定した場合は、再び長い立上げ期間が必要となるものと予想します。特に、原子力は裾野の広い総合技術であることから、国内の産業基盤の衰退が危惧され、エンジニアリング、生産技術ともに国産技術のみでなく世界的な視野で立上げを図ることになると思われます。技術力の完全な維持は、モラトリアム論と両立せず、建設と開発投資の継続が必要であります。
 人材確保の観点からも、先進技術開発と原子力産業の活性化により魅力のある原子力産業を育成することが不可欠であります。

質 問 3
 電力の売り上げが伸びずに低迷を続けている、という話を聞いています。今後、省エネルギーに国民の関心が向いていって、電力使用の伸びがますます伸びなやんだ時に、人員の削減、コストの削減を要求されることは間違いありません。
 先月の遂に死者を出すに至った東海村の事故も、下請けのコスト削減が最も強く事故に結びついた原因であったと考えられますが、そのあたりを川村委員はどうお考えでしょうか。  又、第40回原子力産業実態調査の報告資料によりますと、半数以上の企業が優秀な人材確保に懸念を見せています。建設業が25社、原子力専業が12社などです。ハイ・リスク社会においては、東海村の事故など、質・量共に、優秀な人材の確保と責任感、人間性などに、安全がかかっています。私などが最も心配するのも、省エネルギーの方向と、優秀な人材確保は、両立しないものと考えるのですが、その点についても伺いたいと思いま す。

回 答
 事業を行う者にとって、安全性の確保という第一義的な責任を全うすべきことは、原子力産業のみではなく、その他の産業においても国際社会での共通認識であります。また、ある産業に従事する人員数はその産業規模によることは市場経済において自然ではありますが、安全確保のための人材確保、教育・訓練は不可欠と考えています。
 「省エネルギー」は小資源国である我が国にとって必須で、従来から取り組まれていることであり、優秀な人材確保をさまたげるものではないと認識しています。むしろ、原子力事業の将来性や新技術開発への積極的な取り組み等の有無が影響するのではないかと考えています。
 なお、平成10年6月、総合エネルギー調査会「長期エネルギー需給見通し」では、「国民各層の努力を経済合理性の範囲内で最大限引き出す競争的枠組みを産業、民生、運輸の全部門にわたって構築し、抜本的な省エネルギー対策を講じた場合」の「対策ケース」においても平成22年度には原子力の設備容量6600〜7000万KWが必要とされています。この見通しを達成するためには約16〜20基と従来以上のペースでの原子力発電所新設が求められる状況となっています。

質 問 4
p26
「内部監査の充実及び第三者による評価・監査」で第三者機関の設立、とありま すが、
 何か具体的なことをお考えになっておられるでしょうか。
 例えば第一線を退いた専門家の活用とか。

回 答
 P26に例示しましたISO、ASME(米国)、TUV(独)等実績を挙げている機関、及び、平成12年7月1日より施行の電気事業法で規定されている溶接検査における指定安全管理審査機関等を効果的に運用し、これら第三者機関による監査並びに評価によって、安全を確保すると共に、透明化を図ることに努めたいと考えています。
 JCO臨界事故を契機に設立しました「ニュークリアセイフティネットワーク」では、WANO(世界原子力発電事業者協会)の活動を参考に、2年程度で全会員の事業所を一巡することを目処に会員間の相互評価(ピュアレビュー)を実施する予定であり、さらに、中立的立場の第三者(有識者、評論家、マスコミ等…第一線を退いた専門家にお願いすることもあり得ます。)で構成される評議員会を設け、外部チェック機関として、開かれた透明性のある議論を行う機能を持たせています。また、世界中の核燃料加工事業者間の情報交換、安全についての相互レビュー、安全文化の促進などを行うことを目的に設立された「世界核燃料加工安全ネットワーク」も外部者による評価・監査の役割を担うものと考えております。