長計第二分科会

放射性廃棄物を含む核燃料サイクルについての議論点

平成11年11月17日
(社)日本原子力産業会議
宅 間 正 夫

 原子力発電は、その技術的確立に目的的に特化して発展してきた過程で、発電を支える燃料政策としての核燃料サイクルが傍流視されてきた面のあったことは否定できない。
しかし、50基を超えるにいたった原子力プラントの長期安定運用が、エネルギー市場競争時代に、資源小国の重要なベースエネルギーであり、また、地球環境問題の観点からもその役割が期待されている。こうした状況下で、我が国の核燃料サイクルのあり方について国内外から注目されている。この度のジェー・シー・オーの事故は、我が国の原子力そのものに警鐘をならすことにもなってしまった。今、足元をもう一度照らしてみる議論が必要である。
また、多様な放射性廃棄物の処分も、課題として目の前に迫っている。
 このような状況を踏まえて、我が国の核燃料サイクルの今後のあり方について、分科会の議論の一助になるよう、議論点を整理してみた。サイクル全体にかかわるものとサイクルを構成する個々の技術・設備に関するものがあり、また、相互に相矛盾する議論点もあって、十分な整理ができたとはとてもいえないが、活発な討議に役立てれば幸いである。

〔核燃料サイクル全般にかかわる基本的な議論点〕

1.我が国の原子力開発利用については、原子力基本法(昭和30年)が方向づけている。
  議論点:
 現在、市場経済が世界規模で進展しているなかで、電気も他のエネルギーと同じという扱いになりつつあり、国産ではないにしても国内エネルギー事情はそこそこ充足されている。一方、世界的にも国内的にも、いわゆるトリレンマ(経済、環境、エネルギー)の解決に最大限の努力が求められている。
@短期指向の市場経済の中で、我が国は、準国産エネルギーと位置づけて35%までになった原子力を長期的にどうするか。
Aこうした状況下で、核燃料サイクルの国内完結を進めてきた意義とこれから進める意義は、今日的にみて何か。
 また、サイクルの要素のいくつかが国外依存になる可能性があり、市場経済のグローバルな進展はこれを加速しかねない。サイクルの要素の中で、最小限国内に保有すべきものはなにか。

2.核燃料サイクルは、端的にいえば、原子力発電を支える燃料資源の長期的安定確保のインフラといえよう。
  議論点:
@ 国内の軽水炉原子力発電そのものの将来を予想すると、この半世紀のような急速・多量な開発は期待しえないであろう。こうした将来を控えて、多額の投資を必要とする核燃料サイクルを、今後も民営による効率性を追求するにせよ、今のままで進められるか。
A 核燃料サイクルのもつ極めて大きな特徴は、ウラン資源の効率利用・拡大利用にあり、それは高速増殖炉につながる。しかし、これには、技術開発と投資と人材、それに人を動かす夢が不可欠である。高速増殖炉とそれに対応する高度化された核燃料サイクルを何時頃、誰が、どのような視点で、どこまでやるべきか。
B 高速増殖炉の導入にあたっては、軽水炉の核燃料サイクルの一構成要素として、環境負荷低減等のシステムの付加価値を高めるトータルシステム的な考え方をすべきではないか。

3.核燃料サイクルは、発電を中心とするウラン資源の循環利用過程である、といえるであろう。端的にいえば、発電部門からあがる収益の分配によって、他のサイクル部分が成りたっている。原子力発電量が今後、従来のように増加が期待されず、また、電力市場自由化で発電コスト抑制が迫られてくる中、核燃料サイクル全体のコスト抑制は不可欠である。
  議論点:
@ 核燃料サイクルは、個々の要素(サイクルを構成するウラン燃料の上流、発電、下流、リサイクル)が有機的に結びついて全体として機能を果たしている。
 資金がある程度豊富のときは、個々の要素がそれぞれに最適を目指して資金投入をする余裕があったが、今後は全体が無駄なく、効率的に運営される(人、物、金、技術、安全、環境などを総合して)ことについて、監督・検証が必要である。核燃料サイクルの場合は、とくに、中長期視点で、かつ国内はもちろん国際的視点でその時々に最適性を考えつつ行うことができなければならない。
 また、サイクルの運営は、適切なバッファー(貯蔵)と円滑な物流(輸送)があって、はじめて市場ニーズに対応した柔軟性をもつことができる。これも見ながらサイクル全体を一貫して俯瞰する主体が必要か、誰が行うべきか。あるいは、要素の運営者の自己責任のもとに、市場経済の自然の選択と淘汰に委ねればよいか。
A 資金投入に限りがあるなかで、核燃料サイクルの上流(ウラン濃縮)と下流(再処理・プルリサイクル)の双方に国産化を目指した投資を行うことについて供給安全保障上の必要性をどう考えるか。

4.軽水炉、高速増殖炉の使用済燃料を、我が国では「資源」(リサイクル資源)と位置づけている。資源であるということは、現世代のみならず、後世代もその所有や利用について権利を主張できる、ということであろう。他のエネルギー資源と異なって、ウラン資源は世代を越えて、拡大、リサイクル利用の可能性をもっており、その実現の第一歩が核燃料サイクルを完成させることといえる。そうした意味で、核燃料サイクルを論じるにあたっては、少なくとも50年から100年オーダーの時間スパンを見たい。
  議論点:
@ とくに、リサイクルと高レベル廃棄物処分について、現世代(一応、2030年位か)は、何を、どこまでやるべきか。後世代に委ね、期待することは何か。
A使用済燃料の中長期貯蔵は、国内では資源備蓄としてその利用の柔軟性を確保する重要な意味をもつが、国際的な中長期貯蔵についてはどう考えるべきか。

5.核燃料サイクルの国内完結を進めている国は、現在は我が国とフランスである。他のいくつかの国が将来実施するにせよ、ここ当分は2国に限られよう。イギリスはサイクルを国際的なビジネスとして展開している。
  議論点:
@このような状況下で、我が国の核燃料サイクルの国際的な位置づけをどう考えるべきか。

6.放射性廃棄物処分については、放射性廃棄物は既に発生しており、今後も発電をはじめ、RI利用や研究活動から発生し続けるから、否応なく処分を実施しなければならない。そして、発電を含む核燃料サイクルからの派生物として、サイクルと一体で、国民の合意と支援を得て、安全・環境・コストを最重点に実施すべき課題である。
  議論点:
@ 放射性廃棄物の処分は一般の廃棄物と同様に、原則は発生量減少と再利用(リサイクル)による環境負荷とコスト低減である。しかし、環境に還元廃棄ゼロとなるような完全な消滅はありえないから、最終残滓の固形化による安定化と地層を利用した密閉隔離の必要性はある。これらはいずれも技術に依るところが大きい。そこで、とくに、高レベル廃棄物の固化体について、現世代では安全に貯蔵し、技術の発達を待って、場合によっては後世代に委ねる、という考えもあろう。どうすべきか。
 とくに、発生し続ける高レベル廃液の処分について、長寿命核種の分離変換技術は、地層処分に代わるものではないが、コスト抑制や環境負荷低減の可能性がある、といわれる。処分政策の中でどのように位置づけるか。
A 放射性廃棄物についても、一般廃棄物と同様、分別による合理的処分と可能な限りの再利用(リサイクル)の方策をとるべきであろう。これには、省庁の壁を越えた国レベルの一元化の必要はないか。どのような組織・体制・行政的な措置・民間企業の役割等を作っていくか。
 現行の、発生源別の分類から発生源を横断した性状別分類についても、同じく省庁の壁を越えた国レベルあるいは長期的に見た事業主体の一元化、一元管理が必要ではないか。
 今後、放射性廃棄物と化学廃棄物などとが混合した、いわゆる混合廃棄物の処分問題もクローズアップしてくることに備えてのことである。
B 上記と関連して、とくに、高レベル廃棄物についての世代を越えた一貫した安全監視の責任体制をどう作っていくか。
C 電気の利用に皆が関与という目で、放射性廃棄物の処分地の立地選定について、国、地方自治体、産業界、および国民の果たすべき役割をどうしていくか。
D廃棄物処分におけるいわゆるクリアランスレベルなどをも含み、安全性と経済合理性をどう調和させるか。海外事例を見つつ合理性ある安全基準をどう作るか。

7.核燃料サイクルと放射性廃棄物全体について
 限られた資金と人材のなかで、従来のやり方を省みつつ、官民の棲み分けと同時に共同の事業活動・研究開発活動、国際的な共同活動が重要になってくる。さらに、世代を越えた安全の継続のためにも、原子力分野へ若い人材をひきつけるメッセージが発信されるべきである。
  議論点:
@ 小さな政府・大きな民間の市場経済原則のなかで、どのようにしていけばよいか。


放射性廃棄物を含む核燃料サイクルについての議論点

<分野別・個別議論点>

1.ウラン資源
<現状把握の要点>

 ○天然ウラン市場は、1970年代半ばから80年代初頭の生産過剰等の理由により、現在に至るまで、比較的低価格の状態で安定的に推移しており、カナダのマッカーサーリバー等、鉱量が大きい優良鉱区の開発計画が進行中であること、米国、ロシアの核兵器の解体に伴い発生する高濃縮ウランの低濃縮化による利用計画があることから、今後十数年間は、世界のウラン価格は、安定的な状態が見込まれる。
 ○電気事業者は、長期購入契約等により今後十年近くの必要量を確保しており、供給国は政治的に安定した国であり、かつ友好関係にあることを踏まえ、今後とも適切な価格により天然ウランの供給は可能との認識を表明している。
 ○一方、ウラン価格の低迷の中、探鉱活動も低下し、新規鉱床の発見は久しく途絶え、また、新たに鉱床が発見されても、生産までのリードタイムは15年と長い。
 ○ウラン産業の寡占化が急速に進行しており、需給バランスが崩れたとき、メジャーによる価格調整が懸念される。
 ○核燃料サイクル開発機構(以下、サイクル機構)は、探鉱活動により、カナダ、オーストラリアを中心に約4万トンの埋蔵鉱量の権益を保有しているが、同機構の海外ウラン探鉱は整理し、主要な権益や技術は、国内民間企業等に移転し、国内民間企業が引き受けない権益は、適宜海外企業に売却することとしている。
<議論点>
 ○サイクル機構が保有する権益については、民間企業に譲渡の条件として5年間は他に売却しないこととしているが、将来のエネルギーセキュリティの観点から、今後、国策としてどうあるべきか。
 ○長期的なエネルギーセキュリティの観点から、供給源の多様化を図りながら、国による民間探鉱活動への助成をどの程度にすべきか、市場経済に委ねるか。

2.ウラン濃縮
<現状把握の要点>

 ○ウラン濃縮事業については、世界的な濃縮役務供給能力の過剰な状況が、当面は継続するものと推定されており、我が国においては、従来以上に経済性の向上に積極的に取り組むことが極めて重要となっている。
 ○サイクル機構と民間の協力により、国際競争力のあるプラントを目指して遠心分離機の開発が行われている。今後は、民間で開発を継続することとなっており、サイクル機構からの技術移転を行うこととなっている。
 ○サイクル機構のウラン濃縮は、整理事業として適切な過渡期間を置いて廃止されることになっている。同機構の原型プラントは、役務運転を2000年度まで継続し、以後、廃止措置研究を行っていく予定である。
 ○海外では、米国のガス拡散法プラントの老朽化、欧州の遠心分離法プラントも更新時期を迎えている。
 ○レーザー法濃縮技術の研究開発については、分子法は1998年度で国の予算措置が終了している。原子法は1987年度より事業を開始、1999年度に評価を実施しており、2000年も継続予定である。
<議論点>
 ○欧米のガス拡散法プラントの老朽化、ロシアの濃縮ウラン供給等の状況下で、我が国はどのような政策をとるべきか。民間濃縮事業の位置づけはどうあるべきか。
 ○競争力あるウラン濃縮技術の開発を我が国独自または国際協力で行って市場参入をめざすか、それとも、世界市場からの調達に委ねるか。
 ○レーザー法濃縮技術(分子法、原子法)の評価と今後の方向性をどうするか。
 ○劣化ウランの利用方策について、今後の方向性はどうあるべきか。

3.再転換・ウラン燃料加工
<現状把握の要点>

 ○国内、国外ともに設備過剰の状況にある。
 ○ジェー・シー・オーの事故が発生した。
<議論点>
 ○ジェー・シー・オーの事故に関する事故調査と事故対策の検討が行われているが、その影響および今後の市場経済を考慮し、海外調達、日本企業の海外進出・事業展開等を踏まえた国内製造のあり方をどうするか。

4.MOX燃料加工
<現状把握の要点>

 ○海外再処理による回収プルトニウムは、欧州でMOX燃料に加工することとしている。
 ○国内では、MOX燃料加工の事業化が進められている。
<議論点>
 ○サイクル機構からの円滑な技術移転を図り、生産工程の効率化、コスト抑制等を図りながら、電気事業者が中心となって進めていくことについて議論する必要がある。
 ○サイクル機構からの技術移転については、どのような方法が効果的か。

5.プルサーマル(軽水炉によるプルトニウム利用)
<現状把握の要点>

 ○高速増殖炉による本格的なプルトニウム利用のワンステップとして、実用規模の核燃料リサイクル技術を確立するために重要である。
 ○MOX燃料を使用する安全性については、国内外での実績および「ふげん」の実績等を踏まえて、3分の1炉心までの実施について確認されている。
 ○2000年までに、関西電力・高浜、東京電力・福島第一、同・柏崎刈羽の各発電所における実施が計画されているが、ジェー・シー・オーの事故等の影響が懸念される。
<議論点>
 ○プルトニウム・リサイクルに関して、プルサーマルの位置づけをあらためて議論する必要がある。

6.使用済燃料の中間貯蔵
<現状把握の要点>

 ○発電所内での使用済燃料の貯蔵について当面の収容能力増強等が図られているが、2010年頃にはあらためて貯蔵の対応が迫られることが予測される。
 ○使用済燃料は再処理することにより資源として活用できることから、「リサイクル燃料資源」として位置づけられ、再処理するまでの間、従来からの発電所内での貯蔵に加え、中間貯蔵を実施することとしている。
 ○中間貯蔵は、基本的には、発電所内での貯蔵と同じであり、敷地外での実施に関する原子炉等規制法の改正等、法的な整備を完了している。
<議論点>
 ○中長期にわたる使用済燃料の中間貯蔵の意味づけについて議論しておく必要がある。

7.軽水炉使用済燃料再処理
<現状把握の要点>

 ○六ヶ所再処理工場は、現在建設中で、2005年に操業開始の予定である。
 ○軽水炉使用済燃料の海外再処理委託による燃料の搬出は、1998年9月で契約数量をすべて終了している。
 ○サイクル機構の東海再処理施設は、1998年3月までに約940トンの再処理を実施してきた。同施設は、1998年4月以降停止中であるが、早期に運転を再開し、役務契約処理を行いながら、民間への技術移転を進めるとともに、高燃焼度燃料・使用済MOX燃料等の再処理技術に関しデータを取得していくこととしている。
<議論点>
 ○循環型社会形成の基本理念である「リサイクル」と、海外産ウランを国産エネルギー資源へ転換するという観点から、再処理の意義を議論する必要がある。
 ○六ヶ所再処理工場の位置づけの明確化、海外再処理委託の考え方、第二再処理工場の位置づけについて議論する必要がある。
 ○英、仏への海外再処理委託を、選択肢の一つとしてどう位置づけるか。
 ○サイクル機構の東海再処理施設における今後の技術開発についてどう方向づけるか。
 ○回収ウランの利用方策について、今後の方向性はどうあるべきか。
 ○MOX使用済燃料の再処理をどうするか。

8.放射性廃棄物
<現状把握の要点>

 ○ウラン廃棄物を除いた廃棄物についての処分方策が取りまとめられつつあり、処分概念も5種類(地層処分、深度地下処分、コンクリートピット処分、素掘り処分等)に集約されつつある。
 ○六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物埋設センターが操業中である。
 ○高レベル廃棄物については、処分事業の実施主体を2000年設立に向けて準備が進められている。また、RI・研究所等廃棄物については、処分事業のあり方の検討が進められている。
 ○放射性廃棄物の処分は、一義的には発生者の責任であるが、発生者が個々に処分地を探し求めていくのは現実的ではなく、処分地選定については政策的な対応が必要である。
<議論点>
 ○従来の発生源(施設)別の廃棄物分類から性状別分類に変え、同一処分概念で処分できるものは処分するという統括的な処分方策についてどう考えるか。
 ○国はどのように放射性廃棄物を持つ機関をもれなく把握し、全体の整合性のとれた処分方策を進めるのか。
 ○高レベル廃棄物の地層処分方策については、今後の処分事業の円滑推進、国の安全基準等の策定、国民的合意形成に向けて、課題を明確にし、実施すべき研究開発の方向性、官民の役割等を示していく必要がある。
 ○研究炉等を含む各種研究・開発施設の運用または施設の解体によって生じるTRU、高ベータ・ガンマ、ウラン系低レベル廃棄物等の処分対策(とくに実施主体、資金確保(基本的には発生者負担))を検討する必要がある。
 ○原子力発電所の解体によって生じる廃棄物の活用や取組みの方向性を示す必要がある。
 ○長寿命核種の分離変換技術をどう考えるか。

9.その他
(1)新型転換炉「ふげん」
<現状把握の要点>

 ○実証炉の建設に至り、前回長計後に新型転換炉の開発の中止が原子力委員会で決定された。
 ○「ふげん」は、平成14年度まで運転、その後は廃止措置に向かうこととなった。
 ○「ふげん」は、我が国の自主技術開発の一環として開発が進められ、多様な燃料を使用できる原子炉として良好な運転実績を示すとともに、海外への技術支援に貢献している。
<議論点>
 ○「ふげん」における開発技術、運転経験を今後の開発プロジェクト推進にどう生かすべきか。
(2)研究炉、研究開発関連施設
<議論点>

 ○やむなく廃止措置にする場合、研究炉や施設の解体費用、廃棄物等の最終処分をどうするか。

以 上