文明論的視点に関する主な議論
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(1)大量生産・大量消費型社会から循環型社会へ
- 大量生産・大量消費型の文明がいつまでも継続するはずはなく、新たな文明に移行するに当たって、原子力の利用により、徐々に縮小に向かうことができるのではないか。
科学技術に支えられた近代文明は、人間の欲望の肥大化をもたらしてきたが、この文明の再生の可能性があるとすれば、それだけの力量を持った文明自身が自己の進む方向を自ら変更すること以外には無いのではないか。
- (2)地球環境との調和と、持続的な経済成長の同時達成
- エネルギーの中で原子力は、地球環境問題に対する貢献の観点からは、一番優れている。
- (3)現世代が享受する便益と後世代に残す資産、負債
- 化石燃料は燃やして電気に変換するより、化学工業に利用するなどより付加価値の高い利用法が存在する。
現世代のエネルギー消費の増大が将来世代のそれを減少させる。公益に関わる事業体は、将来世代のことも考慮に入れなければ成らない。なぜなら「公」は、歴史的継続性の上にうち立てられる概念。
- (4)技術の成熟化
- 日本の原子力開発の歴史はまだ40年と短く、原子力という技術が社会に確実に定着していく課程と考えられるのではないか。
- (5)グローバリズムと我が国の対応
- 世界は、高度国際社会にすぎず、グローバルとインターナショナルは似て非なるもの。資源、エネルギー、環境等の問題でグローバリズムに巻き込まれないこと。
- (参考1)「第一分科会における検討の論点」に挙げられたその他のキーワード
- 工業化社会から高度情報化社会へ
- 少子高齢化に伴う経済社会の成熟化
- 地球的視野の中での我が国に求められる役割
- 新しい科学技術文明の創造
- (参考2)「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画の策定に当たっての基本的考え方について」(5月18日原子力委員会)に示された理念
(1)文明の中の原子力
- 人類は、その発展の歴史において、自然からもたらされる恵みを最大限に活用し、人類の英知をもって経済社会活動の発展と地理的な制約の克服を可能とすることにより、今日の高度な文明を築き上げてきた。火の利用から始まり、18世紀の産業革命以降の化石燃料資源の利用を経て、物質に内在するエネルギーの開放・利用を目指す「量子の世界」への挑戦を通じて、新たな文明の段階に移行しようとしている。世界人口の飛躍的な増加に直面し、食料・環境・エネルギー問題の解決が人類の生存をも左右すると懸念される状況において、新たなシナリオと政策体系の構築が求められている。
- (2)エネルギーとしての原子力
- 人類が将来にわたって経済社会の健全な発展を図り、豊かな生活を実現していくためには、長期にわたるエネルギーの安定確保が不可欠である。自然が数億年もの歳月をかけて育んできた化石燃料資源は、貴重な天然資源として、本来それでなくては対応できない用途に向けられるべきであり、高々数百年の間に消費してしまうことなく、できる限り後世代に継承していくことが、現世代に生きる我々に課せられた責務である。このような中で、資源に恵まれない我が国にとって、中東諸国等からの輸入に頼らざるを得ない「他律的」なエネルギー源への依存を減少させ、自らが主体的にコントロールし得る「自律的」なエネルギー源を確保することは、エネルギー安全保障の観点から重要な意義を持つ。このような我が国のエネルギー供給構造の脆弱性の克服に向けて、それぞれの特性に応じて、供給源の最適な組み合わせを実現していくことが必要である。
- (3)地球環境との調和を図る原子力
- 太古の昔から自然との共生の下に営まれてきた人類の活動は、今や地球環境に甚大な影響を与える可能性があり、人類と地球の将来に深刻な危機をもたらす恐れがあることが懸念されている。とりわけ、地球温暖化問題は、人類の生存基盤に関わる最も重要な地球規模の環境問題であり、その解決に向け、社会を構成する全ての主体が多様な取組を行っていかなければならない。この問題を契機として、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会活動や生活様式の見直しが迫られ、新たなリサイクル文明の構築が求められている。このような状況の中で、エネルギー需要面の対応として省エネルギー型の社会構造に変革していく努力を払うとともに、エネルギー供給面の対応として二酸化炭素等の温室効果ガスの排出を極力抑制できるエネルギー源を開発し、普及させていくことが必要である。
- (4)総合科学技術としての原子力
- 科学技術の歴史において、原子核への理解の進展は、物質やエネルギーの根源に対する知識を人類にもたらし、新たな学問体系の形成を通じて、先端的な研究開発を牽引する先導的な役割を果たすとともに、健康の増進や生活の利便性の向上に大きな貢献を果たしてきた。現在、我が国は、科学技術創造立国を目指して、社会的・経済的ニーズに対応した研究開発を推進するとともに、人類の知的資産の創出につながる未踏の領域に挑戦し、新たな分野を開拓していくことが期待されている。原子力の分野において世界のフロントランナーとなった今日、我が国には、産学官及び国際的に開かれた研究開発体制を構築することにより、人類の未来を拓く夢と高い志を持つ研究者・技術者のポテンシャルを結集しつつ、研究開発の活性化を図り、世界に対して成果を発信していくことが求められる。
- (5)国際社会における原子力
- 「核兵器の究極的廃絶」と「原子力の平和利用」は、国際社会が取り組むべき共通の課題であり、これらを両立させながら、人類の福祉に最大限役立てるという機軸で統合的な展開を図ることは、平和国家日本の使命である。東西の冷戦構造が崩壊した今日、我が国は、唯一の被爆国としての立場を踏まえ、原子力の平和利用を率先垂範している姿勢を貫くことにより、諸外国との信頼関係の強化と国際的な枠組みへの貢献を図るとともに、我が国の平和利用技術を国際的な核不拡散の強化のために役立て、世界平和の実現に決意を新たに取り組んでいかなければならない。さらに、世界経済のグローバル化の進展に伴い、我が国は、近隣アジア地域の一員として、技術的蓄積や経験を基に、地域の発展や相互協力の促進において中核的な役割を担うことが求められる。