(1)開会について
○太田座長より今後の審議の進め方について、説明があった。
- 前回は、原子力と立地地域との共生をテーマに、国、自治体、事業者がそれぞれどのような役割を果たすべきかについて議論した。本日は、前回の議論を踏まえ、引き続き「原子力と立地地域との共生について」をテーマに、立地地域の長期的な発展のあり方、立地地域と消費地の意識の格差について、審議を行うこととしたい。
| ○ | 事務局より、本日の配布資料の確認があった。また、資料5-1に基づき原子力政策円卓会議の提言について、資料6-1、6-2に基づき策定会議における秋元委員のプレゼンテーションについて、事務局より簡単な説明があった。
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(2)原子力と立地地域との共生について
| ○ | 太田座長より、最初に、福島大学経済学部教授の下平尾委員より、電源立地と地域振興の視点から現状と課題について、引き続き、消費者の立場から消費科学連合会副会長の伊東委員より、プレゼンテーションをいただく旨の説明があった。 |
○下平尾委員より、資料2を用いてプレゼンテーションがあった。
「福島県双葉地域の状況」
- 福島第一及び福島第二原子力発電所が存在する福島県双葉地域の状況については、以下のような事項が指摘でき、結論として発電所の立地は地域の振興にとって、プラスの面に働いたと判断できる。
- 若年層の人口が比較的多く、いわゆる釣り鐘型の人口構成を形成している。また、20歳代の人口の伸び率や出生率が県平均より高い。
- 発電所及び関連・協力企業での従業者は、地元居住者特に立地町居住者の割合が高く、また高い学歴や多様な資格を持つ人も多いことが示されており、発電所立地が地元の雇用に大きく貢献していると言える。
- 立地町及び周辺市町村では、立地を契機として、製造業や商業も定着し順調に発展してきている。
- 財政力指数が1を超えており、調査時点では財政的にも恵まれているが、固定資産税が立地以降15年で15分の1となり、それ以降横這いとなるため、今後財政問題の深刻化が懸念される。固定資産税についての考え方は、最初に手厚くする、平均的に配分する、後に多くするという3種類がある。
- 立地に伴い、他の地域に比べて遅れていた学校や公民館などの公共施設の整備が進んだ。
「電源立地の前提条件」
- 電源立地の前提条件として、安全性の確保、相互信頼及び情報の提供が挙げられる。
- 安全性に対する意識調査では、立地地域よりむしろ消費地において不安とする割合が高く、消費地におけるPRをいかに行うかが大きな課題である。また、男性よりも女性、低学歴者より高学歴者に不安との声が多い。
- 原子力は仕組みがよくわからないため、安全か否かの判断は国や電気事業者に頼らざるを得ないことに不安の原因があるのではないか。そのために、極めて特殊なトラブルであっても、全体に対する不安につながってしまう。自動車事故のリスクなどは、原因が明確であり、自己責任において利用しているため、リスクが受容されていると言えよう。
- 相互信頼については、電気事業者と地域の関係だけでなく、国と地域の関係や供給地と消費地との共生の問題が重要である。私見では、電気事業者が地域の振興について丸抱えで責任を持つというのはいかがなものかと思う。
- 情報の提供の問題については、住民が知りたい情報と知らせる必要のない情報を区別する必要があるであろう。
「現行制度の問題点」
- 現行制度は立地促進の観点から設けられており、恒久的、広域的、総合的な電源地域の振興策とは言い難い面がある。新規立地地域、増設地域、運転年数20年以降の既設立地地域に分けて、地域の状況に即した振興策を検討する必要がある。
- 立地から20年程度経過すると商工業も停滞し、地域で中心的に活動されている50歳代の方は、若年層が地域に定着するような地域振興がなされていないことに危機感を覚えている。現在の電源三法交付金の在り方は、局部的で立地促進の観点に偏っており、総合的かつ効率的で発電所が存在する限り継続するものとしなければならない。
「原子力発電所の考え方の変化」
- 電源立地地域の性格として、生産と消費とが同時に行われ、建設時期には、雇用が拡大するが、建設終了後は産業としての地域連関性が小さく雇用が減少していくことが指摘できる。立地している限り、地域に一定の貢献をするべきではないか。
- 立地以前と立地後では地域のニーズが大きく変化することに留意すべきである。立地以前の地域のニーズは、雇用の拡大、所得の増大や社会資本の整備であるが、それらがある程度達成されれば、地域の子弟の進学率が向上するが、地域に十分な教育施設がないため若者が都会に出ていき、地域の高齢化が進むことになる。高等教育施設や研究所の整備など、若者が地域に定着するような地域振興を行うことが重要な課題である。また、高齢化に伴い病院の整備も必要であろう。
- 原子力発電所の立地について、地域住民の意識は、昭和30〜40年代には先端産業の立地として将来への期待が大きかったが、現在では、迷惑施設、危険施設という考え方に変化している。こうした意識を払拭しないと、立地は進まないであろう。
- 電力の消費地は繁栄し、供給地は衰微しているのが現状である。電源地域に、若者が定着し、快適に人が住めるような環境を整備する必要がある。
- 福島、新潟地域などでは、電力の供給地は電気料金が高く、消費地は安いという住民感情も存在する。
「電力供給の自由化、電力料金の引き下げ」
- 地球温暖化など環境保全の観点から原子力発電所の立地の推進の必要性が主張されている一方、現実には電力自由化の流れの中で、火力発電所の立地が急増している。これは制度上の矛盾ではないか。エネルギーは最も重要な生活インフラであるから、原子力については、特定の事業者に任せ、規制を加える必要があると考える。原料、資源に乏しい我が国においては、電力に関しては規制を行い、英国などとは異なる制度を採用することが適切であろう。
- 立地地域では、電気料金の引き下げによって、下請、関連企業へしわ寄せがくるのではとの危機意識が増大している。また、原子力に対するアゲインストの風潮や自由化や電気料金の引き下げの中で、長期的視点に立って推進されるべき原子力エネルギー政策が今後どうなるかという疑問が、国民の間で生じている。
- エネルギーは最も重要な生活インフラであり、今後の世界人口の増大に伴い国際紛争の火種にもなりかねず、また、地球環境問題も深刻化している。国内では、今後高齢化に伴い電力需要も増加するであろう。そうした状況の中、地方分権の推進と原子力発電所の立地との関係については、今後検討すべき重要な課題が含まれていると言えよう。
○下平尾委員のプレゼンテーションに対する主な質疑応答は以下のとおりである。
(石橋委員)
- 電源三法交付金について具体的な提言があったが、1、2年前に福島で発電所増設が決議されたようである。プレゼンテーション資料によると福島県には、5年の交付金はもう支給されていないようであるが、この決議と電源三法交付金の関係をどのように考えればよいのか。また、JCO事故による増設決議への影響はどのようなものか。
(下平尾委員)
- 現在、福島県はプルサーマルと福島第一7、8号機増設の2つの課題を抱えている。地元は増設に賛成だが、プルサーマルについては、知事が中心になり様々な方の意見を聞いた結果、原子力発電所が安全であればプルサーマルも安全であり、推進するとの結論が出された。ところが、MOX燃料のデータ改ざんの影響もあり、延期をすることとなってしまった。プルサーマルは、エネルギーの全体的な循環、国家全体に係わる重要な問題であり、こちらを優先して検討するとの考えであろう。
- 増設については、農協、商工会、建設業界など各種団体の支援を得て、2つの町は、県、事業者にできるだけ早期に増設するよう要望している。知事や議会の判断では、環境影響調査は受け入れるが、立地については後に検討するという二段構えにて対処することのようである。県としては、浜通り全体として、原子力発電所の立地を推進するとの基本方針に変わりはないが、具体的計画を進めるには、国との関係や放射性廃棄物の問題、原子力発電所が立地することにより生じる諸問題の解決に向けた目途を立てることが先決であるとの意向であろう。
(注)福島第一1,2号機は、昭和49年以前に設置されたので、電源三法交付金を受けていない。
(桝本委員)
- 福島県知事のご判断では、プルサーマル、増設問題については、国や県民の合意が未だなされておらず、JCO事故の影響もあって、後へ延ばさざるを得ないような状況であるとのことだと理解をしている。
(石橋委員)
- 福島県では、発電所立地によって地元のインフラや教育など、生活全体の水準向上が見受けられるようだが、増設を要望するのは電源三法交付金をさらに受け入れ、社会的、文化的な整備を図ろうとの考えであるのか。
(下平尾委員)
- そのような考えも皆無ではないと思うが、それだけではないであろう。我が国のエネルギー供給に貢献しようとういう意識から生じているが、地域の産業構造も考えなければならない。双葉郡の就業者においては、建設業の占める割合が一番多い。経済構造が公共事業依存型あるいは発電所立地依存型となり、地域の産業構造全体が発電所に大きく依存するものと変化してしまっている。それが地元の増設の要望につながっているのであろう。地元では増設の意見が強いが、県全体を見れば、JCO事故等の影響もあり、増設の必要はないとの慎重な意見も、有力者の中に存在する。
- このような産業構造の問題から、いかに地域が抜け出し、新しい方向に展開するかを検討すべきである。従来の延長線上にある産業展開ではなくて、研究所や大学施設など、より異なるものを取り入れ波及効果をもたらしていくべきである。これは、産業政策の基本に関わる課題であるといえよう。例えば、東京電力が提供したサッカー施設は非常に大きな波及効果を生んでいる。美浜、柏崎など他の立地地域も同様であろうが、電源立地の時点での産業構造の延長線上ではなく、もっと異なる視点から地域振興策を定義していく時期にきているのではないか。
(西部委員)
- 原子力問題に関しては、規制緩和は安直に提案するべきではないと考える。
- 地方分権を推進すべきとの地方主義は、原子力、エネルギー問題のみならず、国の作り方として根本的に誤った考え方である。原子力問題に関しては、インターリージョナルな関係でしか処理できないものであり、これは、政府にて進められつつある地方分権の考え方と本質的に抵触する問題をはらんでいるのではないか。策定会議として、こうした流れに対し、どのように批判やアンチテーゼを提示することが可能なのか検討すべきである。私はそれは必要なことであり、それなしには長期計画もきれいごとで終わりかねないとの危惧を抱いている。
(太田座長)
- 策定会議における第二分科会からの審議状況の報告の中で、自由化されたエネルギー市場において、原子力の規模は市場の選択に任せればよいのであり、長期計画の必要性は薄いとの意見が紹介されたが、それに対して十分に反論申し上げたので、後ほど議事概要を参照していただきたい。
- プルサーマルや、あるいは原子力それ自体の必要性も、資源論を抜きにしては議論できないのではないか。この一年で石油価格は3倍に高騰しており、第三次石油危機とも言える状況であるが、アメリカやフィリピンなど石油依存度の高い国においては経済的な社会への打撃も大きいのに対し、日本やフランスへの影響は原子力の割合が高いこともあり、比較的小さいということも指摘したい。
- 策定会議において、原子力は電気の供給の約37%も担っているといった事実をわかりやすく国民に知らせるようにすべき、との意見もあったことを紹介したい。
(河瀬委員)
- 先日、敦賀市と福井県は、日本原電敦賀3、4号機の増設計画の事前了承願いを受理した。JCO事故を契機としてではあるが、原子力災害対策特別措置法も制定され、安全対策が強化されることをある程度評価している。また、敦賀市は40年間原子力との共存共栄をしてきており、関連した産業に従事する市民も多く、景気の低迷も深刻であることなどから、商工会議所を中心とした方々より、地元経済の起爆剤としたいとの要請もあり、議会の大方の賛同も得られたこともあって、受理をいたして、かねてより要望している電源三法や税制対策の見直しなどの課題について、議論する機会を設けることとした。国に対しては、国民の理解に向けて原子力の位置づけを明確に提示下さるとともに、立地地域の果たすべき役割を示していただくことを求めたい。
(太田座長)
- 地元は交付金目当てに増設の要望を行っているのではとの指摘もあったが、原子力発電所が4〜5基あれば、ほぼ一年中定検作業を行うこととなり、建設関連企業以外にも作業者へのサービス業などを含め、経済波及効果も大きい。既設原子力発電所地域においては、新規立地や増設がなくとも、地域発展の原動力になりうることも指摘しておきたい。
(神田委員)
- 発電所があるにもかかわらず電気料金が高いとの指摘については、県立発電所を設けて、リードタイムが10年以内などの条件を満たした場合、立地県において発電所からの距離に応じて電気料金を割り引くなど、思い切った提案をすれば、立地地域の電気料金の低減につながるのではないか。運営などは電気事業者、建設はメーカーに任せることとすればよい。より住民に立地して良かったと思わせる発電所の在り方を検討すべきである。
(桝本委員)
- 国からの助成金により電気料金を下げるような制度も、すでに設けられており、地域によっては実施されているところもある。県立発電所などの提案に対しては、電力自由化の中で選択肢は広がることとなると申し上げたい。県営発電所などは卸電気事業者にあたるが、それらについてはどこに電気を売るか選択できる、また、需要家も、どこから電気を買うか選択できるなど、従来とは異なる枠組みも今後はあり得るであろう。
- 地域の発展については、夕張、室蘭や釜石においては大きな産業がなくなるのに伴い地域が衰退、あるいは、別の形で発展するなどの事例もあった。私見では、立地により地域が得た収入をどのように使い、地域の発展を図っていくかということは、地域住民皆さんの問題であり、それをもとに新しい地域を創るという観点で検討していただきたい。原子力に全面的に依存するのでは、発展的なよい地域は成立しえず、電力会社としては大いに協力を行うので、得られた収入を活用して次の発展を目指していただきたい。
(下平尾委員)
- 立地地域の現状を述べれば、関連企業の従事者の収入増加分などは主に教育費に充てられ、結局は子弟を東京の大学などに通わせるための仕送りに費やされてしまう。また、高齢者が難しい病気になった際も、地元に適当な病院がないため、患者は仙台市などの大都市の病院に送り出すこととなる。従って、せっかくのお金を地域で循環することにならず、大都市に流れることになる。
- 大学進学率が上がっている現在、地域に大学を整備し、地域内での進学率を高める、また、地域の人達が発電所で働き、やがて中堅幹部となるような状況が実現するのが望ましい。地域の状況に合わせて振興策を図り、地域の中で再生産を行い、自前で産業を起こせるようにしなければならない。地域の定住条件全体を高めていく必要がある。いつまでも電力会社に依存していたのでは、共生ではなく寄生である。
(河瀬委員)
- 立地地域としても、原子力に全面的に依存するつもりはない。原子力は、それに代わる新たなエネルギー源が開発されるまでの30〜50年の間の過渡的なものであるとの認識で、原子力政策に協力している。立地自治体の規模等により事情は異なるが、その他の産業と共に原子力も進めていきたいと考えている。原子力依存とならないよう別の面での街づくりを進めていきたいが、一旦トラブルが起こるとその度に地元は大きな迷惑を被ることになるため、その前提として、電力会社においては安全、安定運転に努めていただくよう強く申し上げておきたい。
(太田座長)
- 30〜50年後には原子力発電所はなくなるとの認識には異論がある。そもそもその頃には化石燃料などの資源自体がなくなりかけるのだから、むしろ、核分裂のエネルギー、原子力のみしか存在しなくなるのではないか。核融合の実用化には時間がかかるであろうし、太陽光や風力も補完的な役割を越えることはないであろう。
(河瀬委員)
- 将来における新たなエネルギー源の開発などを目指し、夢をもって研究開発を行うべきではないかと考える。
(太田座長)
- ウラン238を燃やすための原子力技術を確立するなど、長期的な展望の上に立って検討を行うのが、本長期計画のあるべき姿ではないか。
○伊東委員より、資料2に基づきプレゼンテーションがあった。
- 一般消費者の大多数は、日本の総エネルギー供給に占める原子力の割合や、高レベル放射性廃棄物を非常に長期間、地中深く埋め、見守らなければならないという事実を知らないであろう。
- 世論は、JCO事故もあり、現状以上に原子力発電を増やす方向には向いていないことは確かである。絶対安全とは言い切れない原子力に頼りながら、我々は現在の便利で快適な暮らしに馴れ、現在の生活レベルも下げられないのが現状である。
- 太陽や風力、地熱といった自然エネルギーは安定供給が難しく実用的でないといわれるが、新規の原子力発電所の経費や万一の事故の対応費用などをそれに振り向けるとすれば、どの程度の役割を果たしうるのかを比較で示すような具体的なシミュレーションを提示いただけば、我々も原子力ありきの押し付けではない合意ができると考える。
- 本分科会でも、朝のウォシュレットに使用する電力が原子力発電所の8基分の出力に相当するという話を伺った。また、先日リサイクルに関する講演会でアルミ缶1個作るエネルギーで八畳間を10時間38分照らすことが可能ということも聞いた。便利とされるワンウェイの製品がゴミとしてではなく、それを作る過程からエネルギー問題に繋がることを、具体的な事例や表現で消費者に知らせる必要があるのではないか。行政や電力会社が教育など力を入れていることは承知しているが、ある程度勉強する気持ちがある人を除いて、一般の消費者には伝わらないのではないか。
- 昨年、エネルギーに関する講座を開催し、参加者に簡単なアンケートを実施した結果、エネルギーの将来について不安を感じている、生活レベルを下げても省エネに取り組むべきと考える人も、かなり存在することが分かった。また、原子力施設の見学では良いことしか説明されず、かえって不安を覚えた、廃止した原発施設や埋設する放射性廃棄物などが次世代へ大きな負の遺産となる、核燃料廃棄物の扱いの難しさ、地球にやさしい新エネルギーの開発促進、身近な生活でどう配慮すればエネルギー問題解決に繋がるか知りたい、エネルギー消費の少ない住宅や企業のあり方を考えるべき、といった意見が多く寄せられた。
- 上記の結果からも、原子力のみに依存するのではなく、自然エネルギーの可能性についても検討し、それをいかに取り込むのか、また一般消費者はどのように省エネのための努力をしたらよいか、社会全体が、華美な照明などにみられるような無駄の多い文化を改め、どのような未来を選択するかを問われている時だと考えている。また、エネルギーの消費量を減らし、再生循環型の社会に変えてゆくことこそが今の課題だと思う。
| ○ | 下平尾委員及び伊東委員のプレゼンテーションを受けての審議における主な意見は、以下のとおりである。 |
(神田委員)
- 私の研究室に、原子力から撤退した場合のライフスタイルというテーマで研究を行った学生がおり、増設しない、現状維持、全廃するの3種類の前提において、ある程度の省エネや新エネの開発が進んだとの仮定をも含めて、主要電気機器などについて検討した結果、原子力なしでは非常に悲惨な生活となることが示された。原子力施設の見学では良いことしか説明されず逆に不安を覚えたとの指摘は重要であり、長所のみを強調するのではなく、こうした検討結果を正直に国民に示すことが理解につながるのではないか。
- 原子力は、放射性廃棄物など負の遺産を残すとの指摘に対しては、化石燃料の利用が残す炭酸ガスの方が問題であり、環境への影響が限定される原子力に比べ、より長期にわたる負の遺産となるのではないかと申し上げたい。
(太田座長)
- 経験上得た知識で感覚的にもたらされた不安感を取り除こうとしても、正しい知識を身につける機会も十分でないため無理がある。やはり、エネルギー問題などについては基礎的な正しい知識を学校教育の段階で教えるようにすることが重要であると考える。
(伊東委員)
- 現在社会を担っている年齢層、子供を持つ親など既に社会に出てしまった方にどのような形で教育を行うのかも、重要な検討課題である。
(太田座長)
- 原子力発電所の見学でのアンケートでは、見学後には、安全に運転がなされているとの印象をもたれる方が大きく増加するとの結果が示されている。百聞は一見にしかずとの言葉のとおり、可能な限り現場を見ていただくことが有効であろう。
- 将来、化石資源がなくなることを考えれば、量子エネルギー、特に原子力しかないと思う。感覚論になってしまうが、風力は適地が限られており、需要地のほとんどは十分な風が吹かない。また、1基あたり3000kWの出力を想定すれば、90mの高さに直径90mの羽根を据えることとなる。原子力発電所の約1基分の出力にあたる100万kWを賄うためには、そのような風車が333台も必要になる。
- 今後は伊東委員の指摘のとおり、わかりやすい説明を心掛けたい。
(クラーク委員)
- 下平尾委員の指摘にもあるとおり、学歴が高くなれば反対が増加するのであり、教育者に最も反対が根強い。教育で原子力に対する理解の増進が図れるとの考え方は楽観的である。日本も、今後市民運動が盛んになるにつれ、反対が増加するであろう。もっと危機意識を持って真剣に検討を行うべきである。
(岡本委員)
- 反対や恐れには、心理的なものと合理的判断に基づくものがあり、それらを峻別する必要がある。HIVについても、かつてはヒステリックで過剰な反応がみられたが、ある程度なじんでしまうことで客観的な理解が進んだ。なじみの有無も、重要なポイントとして挙げられる。我々もJCO事故後に世論調査を行い、東海村、その他立地地域、それ以外の地域に区分し分析を行った結果、全体では米国にも増して原子力に対して否定的となったが、原子力、国や科学に対して否定的になった度合いについては、東海村が最も低く、次いで、その他立地地域、それ以外の地域の順となることが示された。なじみがある場合、大きな怒りの刺激に対しても、判断が大きく振れることはないが、なじみがない場合、怒りの刺激に反応して、大きく判断が変わりうるとの傾向が指摘できる。従って、淡々と時間をかけて取り組み、国民のなじみの程度を上げていくことが、理解の増進につながると言えるのではないか。
(桝本委員)
- パンフレットなど良いことしか説明しないとの指摘はもっともであるが、今後は少しずつ電力会社の発するメッセージも変わることとなるので期待いただきたい。判断いただく際に必要な情報や要素を提示する、その中にマイナス面の情報や課題も含めるといった考え方が、広報の中にも定着しつつあり、今少し時間を頂き、今後も指導いただくようお願いしたい。
- わが国での太陽光発電の規模は世界一であり、風力についても急速に増加しつつある。それらに携わる人間は、もちろん良い点もあるが、反面課題も多いことを肌で感じている。ところが、報道が自然エネルギーの持つ課題について取り上ることはほとんどない。資源小国のわが国では、可能な限り新エネルギーの開発に努めることはもちろんであるが、その課題についても忘れてはならない。
- 先ほど地域振興における電力会社の役割について私見を述べたが、発電所立地が地域振興の一種の起爆剤になればとの意味で申し上げたことをご理解いただきたい。
(太田座長)
- 世界の太陽光発電の出力規模は約3万6千kWであるが、その約3分の1を日本が占めており、世界一の太陽光発電推進国である。しかし、3万6千kWといっても、原子力発電所1基の約30分の1であり、稼働率をも含めた発電電力量ではさらに小さくなる。ただ、日本が太陽光発電をはじめとした自然循環エネルギーに対して後ろ向きなどということは決してないと申し上げたい。
(田中委員)
- 太陽光や特に風力について、原子力と同様にNIMBY現象が存在する。デンマークなどは、風力発電機の輸出国でもあり、国民の大多数も受け入れているものの、景観や騒音の問題で自分の側は困るとの意見も約20%存在する。デンマークでは風力が30〜35%、その他が全て化石燃料であるが、これは小さな国であるから許されていることであろう。
- 日本などの大きな工業国は、開発可能なものは全て開発して利用するとの観点から、戦略を立てるべきであろう。これからの長期計画は、21世紀の日本のエネルギー戦略はどこにあるか、特に「なぜならば」という点を明確にして示すことなしには、国民や地方自治体の長にも受け入れられるものではないと考える。
- 原子力のみを集中して推進するという議論には問題がある。米国政府の最近の見解等を見ると、自然エネルギー特に太陽光発電を推進するとの発言が多い。米国では国や業界の合意の下に太陽光発電を推進しつつある中で、日本では実用化の目途が立たないと開発を放棄することには問題がある。先端技術の開発戦略については、常にオープンマインドでなければ世界市場に進出することはできない。可能性のあるものについては、優先順位は設けつつも、全て相応の資源を配分していくべきである。
- その中で、原子力の先端技術的な側面について、さらに安全性などを含めて研究開発を推進することは重要である。技術革新という観点では、FBRの研究開発は必要であるが、実用化については国民的な議論による合意が求められると考える。
- 50年先に原子力のみしか残らないとの指摘には異論がある。もう何度か大きな事故が発生すれば、国民の政治的選択として、生活のレベルを落としてでも原子力から撤退することもないとは限らない。
(山崎委員)
- 伊東委員の資料に「絶対安全とは言い切れない原子力」という表現があるが、原子力のみが、なぜ工学的に存在し得ない絶対安全を要求されるのだろうか。どの程度安全かということが重要な点である。原子力より遥かに危険性が高い技術も、数多く存在する。原子力発電所にかかわる安全を、放射線で人に迷惑を掛けるということで定義するなら、その様なことは今までに一度もない。この様にリスクの低い産業が他にあるか、この点を公平に理解していただきたいが、それ以前に感覚的に受け付けてもらえないのが現状である。事業者としても今後も努力は行うが、学会や学識者にも協力いただき、技術の利便性とそのリスクについて、皆が理解し判断できるような社会を実現しなければならない。
- 電力自由化に伴い、コストダウンやリストラに伴う雇用問題が懸念されるとの指摘には、事業者も同様の懸念を抱いており、ある程度期間をかけながら、共生という関係を維持しつつ我々も合理化の努力を行うが、協力会社においても同様な努力をお願いしたい。また、その際には安全性に問題が及ばないよう十分に配慮することも当然である。
(西部委員)
- 教育水準が高くなると、人間はきれいごとを言いたくなる。今後、高学歴化が進むにつれ、反対は益々増加するであろう。政府や原子力委員会に伺いたいが、今は多数決で決まる民主主義の時代であり、みんなが原子力発電所など要らないと言えば、国や電力会社は莞爾(かんじ)と笑って、左様ですかとやめるべきではないか。それにより客観的に生活水準は低下するが、それを避けるべくパンフレットを作り、説明すれば説明するほど、より明解な説明が欲しいとの要求や懐疑心をかき立てるばかりで、決して多数派を獲得することはないであろう。民主主義的決定の観点から言えば、そろそろ諦めてはどうか。但し、将来の世代の幸福を考えることも、国の義務として存在する。国民の決定には従うものの、それに際して、子孫のために説得を行う責任と権利があるのであり、公の立場の者は堂々と政策的意見を述べるべきであろう。そろそろ物事を割り切って考えるべき時期ではないか。
- 米国での情勢については、情報社会においては、実態が十分に伴わない情報やイメージそれ自体を売り込もうとの動きも存在するため、足をすくわれぬよう十分に見極めるようにすべきである。
(田中委員)
- 広い空間の完全な闇の中に長時間放置されれば、人は座標感覚を喪失し恐怖感にとらわれる。ところが「なじみのある」自分の部屋の中であれば、比較的平気である。知覚の中の情報不足が、恐怖感をもたらすのである。原子力について、安全か否かを問えば、6〜7割の人が安全でないと言うが、怖いかどうかではほぼ10割が怖いと言うであろう。どうすれば、この恐怖感を取り除くことができるのであろうか。おそらくどんなことをしても、完全に取り除くことは不可能であろう。
(山崎委員)
- 世間一般の方が怖いという原因の一端はマスコミの報道にもあると考える。煽り立てるような報道が行われれば、無関心で知識を持たない方の多くは不安感を抱いてしまうであろう。マスコミには、客観的に技術的な解説を行うなど、良識ある報道をしていただくよう要望したい。
(木元委員)
- メディアが間違った情報や誤解に基づく情報を流したら、間髪を入れず反論や反証などの対応をしていただきたい。特にテレビなどの誤報道については、とかく見過ごされがちであるが、国民の多くはそのテレビから情報を得ている。反論を行わないと、メディアの側も受け手の国民にも、それが正しいと認識されてしまう。
- 従来までの国や電気事業者の原子力広報のやり方は誤っていた。今までは安心させようとするあまり、安全を強調し過ぎていた。原子力は電力供給において既に大きな貢献をしていることなども、広報のやり方が下手であったために十分に国民には伝わっていなかった。国民が原子力について判断するための、客観的な情報を提供することが重要である。
- 原子力は怖いですかと聞かれれば、私も怖いと答えるし、薬や包丁は凶器ですか利器ですかと聞けば両方ですとの答えが返ってくるだろう。科学技術は常に凶器にも利器にもなりうるものであり、その両面を比較考量しながら、人間の英知により凶器の部分を抑えて、利器の部分を採用しているのである。従来の原子力広報にはそうした視点が欠けていたのであり、それを理解いただくように努めれば状況は変わるのではないかと期待している。
(下平尾委員)
- 住民の判断において、感情的、感覚的にイメージや好悪の感情で判断する層と、理論的、政策的に判断する層がある。マスコミが前者に対して訴えかけるようであれば、同じ土壌でPRするのは得策ではない。PR館なども若い女性ではなく、校長経験者など地元の有識者が豊富な経験に基づく説明を行うことが有効であろう。
- 女性や、教員をはじめ教養のある方に反対が強いということを踏まえた上で、学校教育について検討を行う必要がある。どのレベルで判断を行っているかを見据えて、それに応じた手法を採用しないと、十分な効果が望めないであろう。
(石橋委員)
- 国民の理解にあたっては、パンフレットやテレビでの広報は効果がないのではないか。科学技術庁の廃棄物シンポジウムという全国レベルでの意見交換会が実施されているが、テーマを廃棄物の問題に限るとしても、原子力全般に対する様々な疑問が一般出席者から述べられる。その場で、特に何らかの結論が出るわけではないが、国の機関が長きにわたり全国に足を運ぶことに意義があると考える。国民の理解に向けては、こうした双方向のアプローチを地道に行うことが有効ではないか。
(高原座長)
- 本日の会合でも、消費者と事業者をはじめとする原子力関係者の認識の間には、大きなギャップがあることを感じた。フォーラム「エネルギーを考える」において、大阪で美浜発電所の事故を取り上げた際には、700名を超える参加者があり、そこではありとあらゆる情報を提供をしたが、事故という怖い情報も提示し、マスコミが間違えたのであれば自らそうした情報を流すという取り組みが重要であろう。
- 一般の消費者は、100万kWをまかなうために風車が333台も必要といった数字を提示されても、十分に理解できない。風車を見せられ、これで何軒の家庭の電力をまかなうことができると言われれば、実感を持って理解ができる。そうしたわかりやすい説明を心掛けていただきたい。
(太田座長)
- 一般の方に広報を行う際には、わかりやすい平易な説明を行うよう十分に配慮したい。
(飛岡委員)
- 意見交換会などでデータを提示しても、なぜ今まで公開しなかったのだと責められ、従来から公開されていると説明しても認識のギャップは大きく、今後はより積極的な情報公開が求められるであろう。
- 北海道にて説明会に出席した際には、地元の方に、反対派の方は前の晩から一升瓶を持ってきて腰を据え何でも話すのに、賛成派の先生は会議5分前に大きな自動車で来て、終わるとすぐに帰ってしまうと指摘されるなど、コミュニケーションのギャップは大きいと感じた。
- 研究者としての夢は数多くあり、ひとつは海水ウランを回収する「魔法の布」であり、これが実現すればほぼ無尽蔵にウランを利用できることになる。むつの漁協には、これは栽培工業であると申し上げ、無条件で実験を認めていただいた実績もある。ご要望があれば、こうした楽しい夢についてはいくらでもお話しさせていただく。
| ○ | 太田座長より、本日予定されていた月尾委員のプレゼンテーションについて、どのように取り扱うか別途調整する旨の説明があった。
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(3)その他について
○太田座長より、審議のとりまとめについて、発言があった。
- これまで、本分科会では、「文明論的視点」、「国民の信頼の確保」、「安全と安心の確保」、「原子力と立地地域との共生」について審議を行ってきたが、当初予定した論点については一通り審議が終了したと考えている。
- 今後は、報告書作成に向けて作業を進めることとしたいが、「原子力と立地地域との共生」については、まだ、論点を整理していない。事務局にて論点を早急にまとめ、各委員にFAXにて送付することとするので、これに対する意見があれば、事務局までお送りいただきたい。
- 提出された意見も踏まえて、次回の会合には、報告書のドラフト的なものを審議いただけるようにしたい。また、ドラフトの作成にあたっては、各項目について、特に見識を持たれる委員の方々に協力をいただきたい。
(4)閉会について
○事務局より、次回以降の会合について、以下のとおり開催したい旨説明があった。