「市民参加懇談会in東京」議事録

日 時:平成14年7月24日(水) 13:30~16:30
場 所:主婦会館プラザエフ 9F「スズラン」


【木元原子力委員】  木元でございます。本日はご参加いただきましてありがとうございました。皆さんのお手元に資料の配付をさせていただいておりますけれども、そこに、この市民参加懇談会についての活動の目的とか、それから内容のご説明を1枚紙にさせていただきましたので、お読みいただけばと思います。ご承知のように原子力行政は自主・民主・公開という原則にのっとってやっております。その中で原子力の平和利用がここまで来たわけなのですけれども、なかなかそれぞれが抱いている考えというものは違っている。では、日本はどうしたらいいのだろうか。そのことでいろいろ悩むわけですけれども、原子力委員会としては、こういう民主的なルールにのっとって、自分たちが研究して、開発して、利用するという長期計画を立てることになっています。それも自分たちが企画して審議し、決定するという機能を持っているわけですが、なかなかそれが履行されていないということを私も気付いております。では、それをどうやったら具体化することができるかということで、昨年から提案させていただきまして、「市民参加懇談会」を設立させていただきました。
 その中で、どういうことをするかというのは、ここにいろいろ書かせていただいておりますけれども、ともすると、「国民の理解を得て」という言葉が原子力行政の中にはよく踊っているわけです。けれども、ちょっと違うのではないかと私は思ったわけです。それはなぜかというと、国民に理解していただくのではなくて、こういう行政をやりたいと思うのであれば、まず国民がどういうお考えでいらっしゃるのかということを理解する、つまり「国民を理解する」ということから始めなければいけないという考えを持ちました。それで、「広聴」という言葉を使わせていただいています。「広聴」というのは広く聴くということで、公ではなくて、広く聴くことから始まって、その中でそれぞれが意見交換し合って、日本にとって一番何がいいかということで理解をいただこうじゃないか、理解し合おうではないかという趣旨で設立させていただきました。
 本日のテーマも、日本のエネルギーの需要と供給、どうあったらいいとお考えなのか、そのときに自給率ということが農業のほうで使われますけれども、エネルギーの自給率というのはどういうことなのか、どうあったらいいのか。ここに書いてありますが、その中には経済性とか、安定供給性とか、それから環境特性もあります。CO2の問題があります。それから、地理的な条件もあります。EUと日本は違うというようなこと。そういうことを踏まえた上で、どう考えたらいいのかというご意見を伺いたい。その中で原子力発電は、必要なのか不要なのか。必要ならばどうあったらいいか、不要ならばどうあったらいいか。そこまで言及していただければ幸いだと思います。
 それから、原子力委員会が長期計画を立てておりますけれども、そういうような計画を立てる場合に、国民の考え、市民の考えがどういうふうに、このプロセスの中で反映できるのかできないのか。できるとすればどういう形があるのか。反映とはどういうことなのか、そういうこともご討議できればと思います。あるいは、原子力委員会というのは厳然としてあるわけなのですが、その存在に対するご意見だとか、要らないとおっしゃるのか、要るとすればどういうことなのか、そこまでも踏み込んでお話しいただければ私としては幸いでございます。あるいは、こういう市民参加懇談会を立ち上げましたので、それに期待していただけるものがあるならば、ぜひご意見を伺わせていただきたいと考えております。
 今日は、後ほど、ご意見を伺う方を中村浩美さんからご紹介いただきますけれども、私どもの市民参加懇談会ではコアメンバーを構成いたしました。皆様のお手元の市民参加懇談会の1枚紙の裏のほうなのですが、「市民参加懇談会コアメンバー会議構成員」と書かせていただいております。今日は副主査の森嶌委員も来ていただいていますが、竹内委員、遠藤委員、お二人おそろいですけれども、原子力委員でございます。原子力委員のほかにコアメンバーをお願いしておりますのは、碧海茜癸さん、井上チイ子さん、小川順子さん、小沢遼子さん、加藤秀樹さん、吉川肇子さん、高木美也子さん、露木茂さん、中村浩美さんは、今日、司会をしていただきます。それから松田美夜子さん、宮崎緑さん、屋山太郎さん、吉岡斉さん。13名プラス原子力委員という形ですが、原子力委員は基本的にはコアメンバーの方々のご意見に従い、あるいは一緒に考えながら運営していくという形を取らせていただいております。
 今日のご出席は、こちら側から紹介させていただくと、森嶌委員、それからあちらには遠藤委員、竹内委員にお座りいただいております。そのほかに井上チイ子さん、小川順子さん、小澤遼子さん、加藤秀樹さん、中村浩美さん、それから屋山さんがまだお着きじゃないのですが、屋山太郎さん、それから吉岡斉さんとなっておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 これはご意見を伺う場ですので、この伺ったご意見をどうするかということだろうと思うのですが、伺ったご意見はこのコアメンバー会議に持ち帰ります。持ち帰りまして、私たちが討議させていただき、その結果を原子力委員会に報告する形をとります。その報告を原子力委員会が受け、政策策定プロセスに反映させていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
 今日はお話し合いの上、司会進行、コーディネーターを、私どものコアメンバーの中村浩美さんにお願いいたしましたので、ここからバトンタッチいたします。よろしくお願いします。
【中村委員】  ご紹介いただきました科学ジャーナリストの中村浩美でございます。今日は司会進行、コーディネーターを務めさせていただきます。暑い日が続いておりますが、寝苦しい夜があって、そのせいかどうかはわからないのですけれども、昨夜から急に歯痛で顔がはれてしまいまして、顔がはれたのはしようがないんですが、若干発音が不明瞭な点があるかもしれません。それだけちょっとご容赦いただきたいと思います。
 今日の「市民参加懇談会in東京」、趣旨は今、木元主任からお話があったとおりなのですけれども、大きく3つのテーマを考えております。「日本のエネルギーの需給問題」、それから「原子力発電の問題」、そしてこれが市民参加懇談会としてはやっぱり一番力を入れたいテーマなのですけれども、「我が国の原子力政策決定プロセスと市民とのかかわり」についてご意見を伺いたいと考えております。
 今日はご意見を伺う方、各界の皆様をお招きしておりまして、この皆様からのご発言というのがメインになるわけですが、その後、出席しております市民参加懇談会コアメンバーとの意見交換、さらには会場にお集まりいただきました皆様からもご発言、ご意見をちょうだいする時間を持ちたいと考えておりますので、どうぞご協力をよろしくお願いいたします。
 きょうは木元主任も申し上げましたけれども、議論の場ではなく、あくまでもご意見をお伺いしようということでございますので、市民参加懇談会のコアメンバーとの意見交換といいますのも、お招きしたご意見発表者の皆様のご意見をより明確にするためのもので、我々がこれから会議を持って、原子力委員会に提案していくときにより明確になるようにという趣旨で意見交換という場を考えておりますので、そのあたりを踏まえてのご発言をよろしくお願いいたします。
 それでは、早速ですが、きょうご意見を伺う、お招きいたしました各界の皆様をご紹介してまいります。私のほうから五十音順でお並びをいただいておりますが、後ほどのご発言はランダムに私が指名をさせていただきます。まず、日本経済団体連合会資源エネルギー対策委員会の委員長でいらっしゃいます秋元勇巳さん。よろしくお願いいたします。続きまして、全国農業協同組合中央会常務理事の今尾和実さんです。日本経済新聞社論説委員、最近は大学教授でもいらっしゃいますが、鳥井弘之さん。続きまして、日本生活協同組合連合会常務理事の藤岡武義さんです。そして日本青年会議所常任理事の水野直人さんです。よろしくお願いいたします。続きまして、日本労働組合総連合会副事務局長でいらっしゃいます村上忠行さんです。そしてきょうの会場は主婦会館でございますけれども、主婦連合会事務局長の吉岡初子さんでいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。それからもうひと方、全国漁業協同組合連合会常務理事の宮原邦之様もお招きしておりましたけれども、急遽重要な国際会議にご出張ということで、本日ご欠席でございますが、ご発言なさりたいテーマにつきましてはメッセージを頂戴しておりますので、後ほど私からご紹介をさせていただきたいと思います。
 それでは、早速皆様のご意見をお伺いしてまいりたいと思いますが、まず最初のテーマ、「日本のエネルギーの需要と供給はどうあるべきか」ということでございますが、特に日本のエネルギー自給率と、これからのエネルギー供給というあたりについて皆さんどのようにお考えなのか、もっと広がりのあるご発言でも構いませんけれども、エネルギーの需給関係についてのご意見をお伺いしたいと思いますが、ご意見の最初は鳥井さん、お願いできますでしょうか。
【鳥井弘之氏】  自給率は何%ぐらいがいいのかという話は、よくわかるはずがない話なんですね。日本がかなり外貨を稼いでいて、その外貨で石油なり何なりが買えるという状況が続いていれば、自給率はそんなに高くなくても、今のままでも、もうちょっと低くても日本が暮らせていくということは間違いないことなのですね。だけど、日本の経済は非常に悪くなってきて、貿易収支が落ちてきて、それで石油を買いたくてもお金がないよというようなことになってくると、これはだんだん危なくなってきて、何が起こるかと思ったら停電が起こったり、生活レベルを下げたりするということをやらないとしようがないわけですね。今のところは十分買えるぐらいの黒字があるわけでありますが、だんだんそこはどうなっていくのかというのは難しい問題であります。買えなくなりますとますます経済は悪くなりまして、経済が悪くなりますと、ますます買えなくなるという悪循環に陥るわけですね。これが第1点なのです。
 もう一点は世界が平和であることが大事なのですね。平和でなければ、やっぱり石油を買おうと思っても買えないという状況が出てくるわけですね。そうすると、世界が平和であるために何が必要かということを考えていく必要がある。そうすると、例えば、環境問題であるとか、食料の問題であるとか、もうちょっと日本はあまりあれですけれども、水の問題であるとか、国際的な課題というのが表面化してくると、だんだん紛争が起こってきて、日本がお金を持っていても今度はエネルギーが買えないという状況が生まれてくるわけであります。そういう意味では日本のエネルギーの自給率を考えると同時に、グローバルなエネルギーがどうなっているかというような話をちゃんとやっぱり背景に持ってものを考えていかないとだめなのだろうという感じがいたします。もうちょっと数字で示せばよかったのですが。
【木元原子力委員】  中村さんに今ご説明いただきますけれども、お手元に資料を配りました。その中の③ですが、食料の自給率のことはメディアも随分取り上げるのですが、エネルギーの自給率はあまり取り上げておりません。ここで数字を比較しました。この場合、農業、食料の自給率と対比させておりますので、ご参考にしていただければと思います。
【中村委員】  はい。それでこの3番目、エネルギーと食料の自給率の比較という表がございますけれども、やはり食料のテーマとともに、エネルギーの自給率というのは我々今、真剣に考えなければいけないところなので、ここはぜひ続いて今尾さんからご発言を頂戴したいと思います。
【今尾和美氏】  全中の今尾です。この会に来る前に大変悩みました。悩みましたと申しますのは、原子力の資料をちょっと見ていましたら、食料の安全性が問われているこういう時期に原子力の問題と極めて共通部分があるなと思いました。今、資料③でご覧いただきますように、私どもは食料の自給率は今40%で、6割を輸入に依存していると。自らの生産者側の責任も非常に今回あったわけでありますが、BSEについて言えば、やっぱりえさをほとんど輸入しているということで、自ら管理もチェックも追跡もできないといったような事態になっておるわけであります。
 特に、これは受け売りなのですけれども、農林水産政策研究所の篠原所長さんが「フードマイレージ」という言葉を使っております。日本では輸入食料が5,300万トンありまして、これに輸送距離を掛け合わせると、アメリカや韓国の3倍のフードマイレージを使っておるということであります。全産業合計でも7億トンの輸入量に対して、輸出はたった1億トン。そうすると6億トンはゴミとか産業廃棄物になって日本の土地にしみ込むということで、大変な問題じゃないかという指摘をしております。エネルギーの消費という点からも、農産物の地産地消運動を今やっているところでございますが、そういった取り組みを前進していかないと、やっぱりこのエネルギー問題にかかわってしまうなと。
 実は農業で供給電力64億キロワットという数字なのですね。これが電力供給量のデータの取り方というのはちょっと一夜漬けじゃよくわからなくて、私のヤマカンでは1割よりちょっと下回っていると。そうすると、GNPの農業生産比率は1割いっていないわけでありまして、農業も実は大変エネルギーを使っているなと。例えばたしか露地野菜の生産農家は18万5,000戸ですが、施設園芸農家は9万6,000戸あるわけですね。こういうエネルギーは重油が主体ということで、ほんとうにいいのかどうかということも考えていかなきゃいかん時期に来ているのかなと思っておりまして、大変農業とこのエネルギー問題はもう密接不可分だなというふうに思いを新たにしております。
【中村委員】  はい、ありがとうございました。では続きまして藤岡さんにお伺いしましょう。
【藤岡武義氏】  きょうのテーマ設定で「日本のエネルギーの需要と供給はどうあったらいいか」まではいいのですが、その下に「日本のエネルギー自給率を考える」とサブタイトルがついています。議論の焦点を「自給率」にのみしぼることについては多少異論がございます。
 エネルギーの需要・供給を考えたときに、供給者と消費者というふうにも言えると思うのですが、消費者の立場から言えば、この議論の中で例えば価格の問題が入ってこなくちゃいけないし、それから自給率というよりも自給率を含む例えば安全性、ですからこれは安定供給というふうな言い方で言ったほうがいいだろうし、さらにサブタイトルで書いてありますが、環境対応という点も重要なポイントかと思います。最初に木元さんがおっしゃいましたように、それらについて国民、消費者が何を選ぶのかという選択を十分できるような情報提供をぜひお願いしたいわけでございます。
 私どもは日本生協連として原子力発電に対して是とも非とも議論し切っていないのですが、少なくともチェルノブイリの事件の後、全国の生協の組合員にアンケートを取ったところでは、非常に警戒的であるのは事実でございまして、最大公約数でいくと、「新しい原発は勘弁してください」というようなところではないかと推定されます。だからといって、もともと原子力発電の技術そのものに否定的であるかどうかという点についてはまだ我々も勉強不足だというところではないかと思います。そこで私たちはエネルギー問題については省エネの問題、後の資料でも出ていますように、どういうふうに家庭でのエネルギー使用をどう減らしていくのかという運動を起こしていくということをやっていくべきだということで、このところ取り組んできているところでございます。
【中村委員】  ありがとうございました。ちょうど今、消費者、我々市民の選択、あるいは省エネルギーというお話も出ましたので、ちょっとお手元の資料をまた見ながら皆さんお聞きいただきたいと思うのですけれども、資料の1番目にありますのが、日本のエネルギー消費の傾向です。いわゆるオイルショック以降、産業界というのは非常に省エネに努めてきまして、ほぼ横ばいで推移してきたのですけれども、ここへ来て民生と運輸、民生というのは私たちの生活、それからビル、学校、病院、ホテル等ですね。それと運輸、これがトラック便と、私たちの自家用車。ここが右肩上がりで増えてきているという問題があります。
 それから、もう一つ、5番目の「今後の暮らしのレベル」という、これは社会経済生産性本部が取った調査のデータでございますけれども、やはり今程度の暮らしは維持したい。しかしなるべく省エネに努めていきたいという皆さんが全国的に見ても多いということは言えるのではないかと思うのですね。そういう中で今の藤岡さんのご発言にもあった省エネルギーと私たちの暮らし、あるいはエネルギーの供給と消費ということをやっぱり考えていかなければいけないのではないかと思うわけですが、そこで今度は吉岡さんにご意見をお伺いしたいと思いますが。
【吉岡初子氏】  今、藤岡さんが生活協同組合としては消費者の立場からは、省エネに取り組むとおっしゃったわけですけれども、主婦連合会もエネルギーの問題としては、省エネが直接的な取り組みになっております。原発についてはこれも生協さんと似ていると思いますが、絶対反対とか、導入しなければいけないとか、そういう立場は取っておりません。
 毎年6月の総会で運動方針を決めていますが、ことしの総会の運動方針を見てみましても、原発という言葉は使っていないのです。「限りある資源を大切にし、環境破壊から暮らしを守る運動」という項で暮らしのエネルギーを有効に利用し、CO2削減、地球温暖化防止のための行動を進めようという方針になっております。それは具体的にできることから省エネに取り組むということで、環境家計簿であったり、あるいは子どもと一緒に冷蔵庫の開閉の回数を調べ、開閉回数を減らす工夫をするとか、あけている時間が長過ぎるのじゃないかなど、暮らしのチェックをする。あるいは車のアイドリングの問題だとか、そういう具体的な問題に取り組むということで省エネの活動をしております。
 話をもとに戻しまして、日本のエネルギーの需給を考えて、その自給率はどうなのかということですけれど、私も日本の場合、自給率は非常に低いと思っております。それは今のエネルギーの中心が化石燃料であり、それからウランであるということです。一部についてはプルトニウムという話もありますが、これは安全の問題等が出たときに発言できればと思います。これは車も含めて今のエネルギーの中心が化石燃料ですから、やはり輸入せざるを得ないというところに問題があると思っています。
 ただ、自給率を考えたときに、地産地消ということが農業協同組合からお話がありましたけれども、エネルギーについてももう少し身近なところに原材料がないかということを考える必要があるのではないかと思っております。というのは、自然エネルギー、新エネルギーと言われるものがなくはないと。風力であり、水力であり、あるいは太陽光といったものがあるわけです。それから廃棄物、ゴミ発電、バイオマスなどもあります。そういうことでいろいろな材料が私たちの周辺にはあります。それから周りが海ですから、潮の満ち干を利用した発電も一部で実験されております。
 つい先月が、ドイツの黒い森の中にあるシェナウという2,600人ぐらいの人口の市で市民エネルギー発電会社を運営している、スラーデック代表が日本に見えまして、お話を伺ったのですが、今の主流を太陽光発電に持っていこうとしていらっしゃるということでした。それから、ブロック型のコジェネの利用です。コジェネの場合、現在は化石燃料を使っているのですけれど、それだけではなくて、植物油脂の利用についての研究もしているということでした。そういうことで、もう少し広い目で見ていくことが大切だと思います。
【中村委員】  コストの問題もありますよね。
【吉岡初子氏】 はい、ありますね。そういうことは考えていかなければいけないのですけれども、選択肢の中にはそういうものもある。そういうことを含めて自給率という問題は考えなければいけないのではないかと考えております。あまり1人の発言が長くなってもいけませんので、また次の機会のときに発言したいと思います。
【中村委員】  はい、ありがとうございました。続いてJCの水野さんにお伺いしましょうか。
【水野直人氏】  はい、ありがとうございます。日本青年会議所としましては、どちらかというと、需要と供給という視点でいきますと、やはりこの需要サイドという形の中で省エネということを考えた視点で今までも運動を取り組んできたというのが大きな視点かと思っております。いかにこの需要サイドの省エネを努めるかという形で、こちらの資料のほうにも入っておりますが、産業という形が並行的にだんだん落ち着いてきたという形でございますけれども、我々の組織は5万人のメンバーを有しておりまして、その中は中小零細企業がほとんどでございます。そういった中小零細企業がほとんどの日本の企業の9割以上を占めているわけでございまして、そういった中で我々の企業自体が何か環境という中で取り組めないかという形で、新しいエネルギーというわけじゃないですけれども、そういった中でビジネスも当然考えていかなきゃいけないという視点もございますし、先ほどお話もありましたように太陽光とか、風力などを使った新しい効率的なエネルギーを考えるとか、そしてリサイクル型のエネルギー、先ほどお話にもありましたけれども、廃棄物の発電ですね。そういった形の研究をさせていただいております。その中で、企業で取り組んで、それぞれ自分らでできることは何かという視点に基づいて行っているのが今の現状でございます。
 これは資料として、うちの組織の中で環境運動推進委員会という委員会を設けさせていただいておりまして、環境という大きな中で捉えさせていただいているわけでございますけれども、その委員会のほうから出てきた資料によりますと、2000年の各種のエネルギーの伸び率というのをちょっと世界レベルで調べたところ、風力発電の容量が32%、太陽電池の出荷量が43%増加、石炭の利用量は4%減少、天然ガスは2%増加、石油は1%の増加、そして原子力は1%弱で増加しているという形でエネルギー経済の再構築が始まっているのではないかと捉えまして、小規模な分散型のエネルギーを今後考えていかなければいけないのではないかということも捉えています。
 それぞれの住宅とか、オフィスビル、工場といった中で、それぞれのニーズに合わせた形の対応を何か考えられないかという視点で、いろいろと我々の組織の中ではそれぞれが考えて行動させていただいているという形を取っています。
 需要と供給という形で需要が大きい、供給が少ないという視点ではなくて、まず今の視点では需要を何とか我々生活者の視点のレベルもありますし、我々起業家という視点のレベルでも何か少しでも省エネに向かった形の運動をさせていただけないかと、いろいろな形の活動をさせていただいております。以上でございます。
【中村委員】 はい、ありがとうございました。いくつか水野さんのご発言の中にはキーワードも含まれていたように感じますけれども、連合の村上さんはどのようにお考えでございましょうか。
【村上忠行氏】 私ども連合は、連合の主要な活動として組合員の労働条件の向上等をやっておりますが、あと一つは社会改善運動というのでしょうか、そういう意味で政策・制度の問題について主要な取り組み活動をやっておりまして、その中の1つとして資源エネルギー政策というものを取り上げております。
 私は労働組合がこのエネルギー問題に関係したのが、オイルショックが契機だったと思いますが、どうもそれから30年たっても化石燃料頼りで、しかも買ってくる先もあまり変わっていない。若干石炭が増えたかもしれませんが、ほとんどが中東に頼って、供給構造もぜい弱なままだということで、今平穏のように見えますけれども、今後、中長期的な世界の需給関係を考えますと、もう一度大きなショックが来るのではないかと思います。どうもそこへ対する備えが、実は日本が遅れている。特にここのところ、環境との関係が、大変重要でございまして、そこのところの国の政策がギクシャクしているように思うのですね。
 例えばCO2、温暖化ということから考えますと、化石燃料をできるだけ使わない、使うにしてもCO2の排出量の少ないエネルギー源を大切にすべきですけれども、国が行っている電力、ガスの自由化の流れから見ますと、規制緩和を否定するものではありませんが、その規制緩和の結果が増えるのは石炭火力ばかりという話になっているわけでありまして、環境との整合性というのはどう考えたらいいのだろうかということも同じ経産省でやっていながら、ギクシャクしているということではないかと思います。
 それから、その規制緩和絡みで、電気・ガス事業の自由化問題がありますが、これも私どもはある程度受け入れたいと思いますけれども、やはりコスト削減ということが競争になってきておりまして、このことで安全性とか、環境面での配慮が欠けてしまっては何もなりません。この辺のところもどうも経産省の中での取り組みが、バランスが取れていないようにしか私どもは思えないのです。
 それから、やっぱり我々国民サイドもどうするかということが問われているのだろうと思っていまして、先ほどの資料の①でもあったように、どうも家庭部門が一番伸びているよと。便利なものですから、ついつい電気を使ってしまう。ここのところはガスが今年に入って、実は相当売れ行きが落ちていまして、省エネにつながったのかなと思ったら、電力に変わっていると。エネルギー効率からいくと、実は悪い方向に行っているわけでありまして、どうもその辺のところがうまくいい流れに乗っていないのが日本の流れかなと思いながらも、私どもも720万の組合員を抱えておるわけでありまして、私ども自身も責任があるということで、省エネとか、省資源ということ、それから優しい環境をつくるという意味からも自らもライフスタイルを変える取り組みをしております。また企業には環境に優しい行動を求めていく、そういう商品づくりを求めていくという運動を98年から展開してきております。
 昨年、この3年間の取り組みを振り返って総括をいたしましたけれども、結果はある意味で皆さん方に胸を張って言えるようにはなっていない。残念ながら、私どもの取り組みがなかなか家庭まで浸透し切っていないという実態が明らかになりました。ここであきらめてしまってはもともこもないということで、一段と今年から新たな取り組みをつけ加えまして、我々の中でせめてそういう国民につながるようなものを芽生えさせていきたいということで頑張っておりますけれども、とにかくこういう問題についてはあきらめないで粘り強く継続していくしかないと思っております。私どもとしては私どもなりの役割をその中で果たしていきたいと思っております。以上です。
【中村委員】  ありがとうございました。確かに設定は自給率をどうするかということですけれども、エネルギー・セキュリティーというのは日本にとってもともとのテーマでありますし、それが今はちょっと環境のほうが目立つような形になっていますけれども、それとともに電力の自由化ということもありまして、このあたりをどう整合性を取っていくのかというのが国の政策としても非常に重要でしょうし、私たちもその中でどういう選択をしていくのかというのは非常に大事なところだと思います。そういうご指摘だったと思います。
 そこで、秋元さん、いつも「あ」で始まりますから、最初だと思うのですが、今回はちょっと最後になりましたけれども、日本経団連として、特に資源エネルギー委員会の委員長でいらっしゃいますが、秋元さんのご意見をお伺いしたいと思います。
【秋元勇己氏】  一番最後に発言するというのはこういうことかということで、いい体験をさせていただきました。いつもトップバッターをやらされるものですから、ちょっと文句を申し上げましたら、きょうは最後に回していただきました。最後は最後で結構大変だなという感じがあるのですけれども・・・・・・。
 今、資源エネルギー対策委員会は一体何をやっているのだというようなお話がございました。ちょうどエネルギー・セキュリティーの問題というお話が出てまいりましたので、実はこの問題につきまして一昨年の春だったと思いますけれども、私どもが提言を出していろいろなところに呼びかけたということがございます。いわゆる3Eということをよく言われるのですけれども、1つはエネルギーのセキュリティー、それから、もう一つはエンバイロンメント、環境ですね。それからエコノミック・グロース、いわゆる経済的な発展、この3つを同時に達成させるようなのが一番望ましいエネルギー政策だというようなことが国際的にもいろいろなところで言われているわけでありますけれども、その中で一体その3つはほんとうに正三角形なのかというような話になりますと、実はそうじゃないじゃないと。この3つのものは実はおのおの次元が違う要素でありまして、親ガメの上に小ガメが乗って、子ガメの上に孫ガメが乗るというような形であるよというようなことを、資源エネルギー対策委員会として提言をさせていただきました。ではその一番もとにあるのは一体何かというと、やはりエネルギーのセキュリティーであると。エネルギーがきちっと確保・供給されることによって初めて環境対策もやれるわけでありますし、その上で経済も発展できるのだというようなことを申し上げました。
 今年、政府がエネルギー政策基本法という法律をお出しになられました。その中でこの3つについて言及をしておられるわけでありますが、その中でもやはりエネルギーの供給を安定化するということ、それからそれを環境に優しくやるということ、これが非常に大きな問題であると。それを踏まえた上で市場原理を考えたらいいのではないかというような理解になっていたと思います。なぜそういうことになるかといいますと、やはり私は文明生活というのはエネルギーと情報の上に成り立っている。人間がほかの生物と違ったこういう快適な生活が送れるのは、まさにそういうエネルギー・情報があってだと思うからです。
 東京ですと、大体1平方キロメートルに1万人ぐらいの人がいろいろな形で生活をし、働いているわけでありますけれども、もし人間がチータとかライオンとかと同じような哺乳動物であったとして、まさに一切エネルギー・情報の恩恵を借りずに生活をするとして、どのくらいが適正範囲かといいますと、せいぜい1平方キロメートルに2人、あるいは2人弱ぐらいになるのだそうです。これは生物関係のことをいろいろと研究しておられる先生からのお話では、そういう法則が成り立つそうでありますけれども、それじゃ2人と1万人の開きは一体なんなのかというと、それはやはりエネルギーが押し上げているわけですね。先ほど今尾さんが農業をやるにも大変エネルギーがたくさん要るとおっしゃいました。我々がこういう快適な生活をしていく上ではそういう農産物をつくるにも、あるいは農産物をここに運んでくるにも、我々がここに集まるために地下鉄に乗ってくるにしても、やはりエネルギーを使わずにはいられない。都市生活はまさにその上に成り立っていると思いますし、これは田舎に行きましても、文明生活というのはまさにそういうことだと思います。
 そうしますと、じゃ人間がどのくらいのエネルギーを使っているかというと、大体筋肉労働、肉体の労働に換算いたしますと、1人で600人分ぐらいのエネルギーを使っているというのが今の日本の状況であると思います。開発途上国では、それが百数十人とか、アメリカあたりに行くと1,000人以上使っているとかいう話になるわけでありますけれども、やはりそういう形でエネルギーとは切っても切れない状況にある。
 エネルギーがもし切れたらどういうことになるかというと、これは前に石油ショックで経験がありますが、それだけではなくて、最近ですと、昨年、カルフォルニアで停電事故が起こりました。エネルギーを自由化しようとして失敗をいたしまして、結局輪番停電ということで個々人の家まで大分長い間停電をさせられました。あそこにある我々の工場では一時的ですけれども、電力代が4倍近くはね上がるというような状況が起こりました。そういうことを考えますと、安いエネルギーを志向して、市場原理を導入する。それだけではエネルギーというのは片づかないと。もちろん安いに越したことはないわけですけれども、それがほんとうに我々の生活をやっていく上で効果がなければ駄目だ。安いエネルギーをきちっといつでも安心して使えるような形で供給するということが大事だということになると思います。
 ただ、エネルギーを無駄に使ってはいけないわけですので、先ほど省エネルギーのお話がございましたけれども、エネルギーをとにかくきちっとセーブしながら使っていこうと。これは産業界の中では今自主行動計画というものをつくりまして、いろいろな運動をしております。特に最近、地球温暖化の問題がございますので、産業セクターから炭酸ガスの排出量を増やすというようなことがあってはいけないというようなことがありまして、経団連に関連している数十の業界団体がございますけれども、その業界団体一つ一つが自主的に自分のところはこういう目標でエネルギーを使っていくというようなことの計画を出します。その上で1年たちますと、それを全部チェックをしまして、それがうまく行っているかどうか評価するというようなことをやるわけであります。そういうことをここ数年やっておりますけれども、先ほど、1ページのところで日本のエネルギー消費は民生・運輸部門で増加して、産業部門は1.07倍という数字が出てきておりますけれども、この数字はただ成り行きでこうなったのではないのです。
 我々産業界は非常にシビアな目標を与えられておりまして、エネルギー消費は1990年のレベルから上がらないようにというのが今の京都議定書の要求でございます。なかなかそこまでは行きませんけれども、少なくとも現在使っているよりもエネルギー消費を上げないような形で産業活動をいろいろな工夫をしていこうということで、実はここ数年間ちょっと景気のいいときには1をちょっと上回りますけれども、少し悪くなると、それがすっと下がるというようなことで、平均をいたしますと、去年はマイナスになりました。おととしはプラスでしたが、平均1倍、すなわちエネルギー消費を増やさない実績を維持しているというようなことでございます。
 こういうような形で産業界ではエネルギーのセービングといいますか、そういったことが効果をあげているわけでございますけれども、ここにありますように民生・運輸の部門ではかなり大きく増加しています。ただ、この部分は、産業は知らないよということではないわけでありまして、当然運輸の部分については、自動車でもとにかく燃費の効率のいい自動車を出していく。そして将来的には炭酸ガスを出さない自動車に向けて、いろいろな開発を続けていくというようなこと、あるいは民生の部門でもなるべくコジェネ、あるいはいろいろな工夫をしてエネルギー効率の良い住宅を促進していくというような形で、こういう部門がもっとエネルギー消費が少なくなるようにと、努力はしているわけでありますけれども、なかなかここの分野の数字を押し下げるほどの効果には至っていないというところもございます。
 こういうことも含めまして、やはり全体のエネルギー需給をどうしていくか。そのエネルギーの安定供給が図れるようにどうするかということについて、国がきちっと1つの方向性を示してくださいまして、それに応じて我々民間側もいろいろな形で協力をしていって、みんなで目標を達成していくというような体制に持っていくことが一番望ましいのではないかと思っております。原子力の問題についてはまた後ほど。
【中村委員】  ちょっと時間の関係がありまして、次のテーマの原子力発電に行きたいのですけれども、やはり今のエネルギー・セキュリティとそれから環境との問題、あるいは私たちのライフスタイルのこれからというような非常に重要なところでまだまだご発言されたい方がいらっしゃると思いますけれども、この後のテーマとの関連で、もしご発言いただければ幸いでございます。
 原子力発電、現状で日本の3分の1の電力を賄うようになっているということ、それから国の温暖化防止対策の柱としても省エネルギー、新エネルギーの促進とともに原子力発電というのが大きな1本の柱になっている。そういうあたりを踏まえて原子力発電についての皆さんのご意見を伺いたいと思うのですけれども、参考資料としてはお手元の6番目、最後のページになりますけれども、これはエネルギー情報工学研究会議のデータでございますけれども、原子力発電が今後の日本の電力需要を満たすのに、どの程度重要になるかというアンケートに対するお答えでございます。「非常に重要である」「ある程度重要である」「あまり重要ではない」「全く重要ではない」「わからない」ということになるわけですけれども、全国的に見ても、それから実際に発電所が立地しているところで見ましても、アンケート結果というのはそれほど大きな違いはないのかなという感じですけれども、「ある程度重要である」と「非常に重要である」というのを見ますと、ほとんどの皆さんは原子力発電、これからの電力需要のために重要な位置づけがされているという認識はお持ちなのかなという印象も持ちますけれども、この10年間で若干の変化もある、これを一応参考にしていただきたいと思うのですが。
 原子力発電についてなのですけれども、先ほど藤岡さんのほうからちょっとお立場のご説明がございましたけれども、重ねて原子力発電についてございますでしょうか。
【藤岡武義氏】  原子力の問題、原子力発電について考える際に、これまで日本のエネルギーはどう変遷してきたかというおさらいが必要かなと思っております。我々、子供のころ発電というのは水力だよという話で、今後は火力もというようなことを聞いたことがあります。原子力発電が本格的に展開された時期に一番テーマになったのは化石燃料の有限性ということだったように思うのですね。推定埋蔵量はどのくらいだとか、ローマクラブの報告なども引用されながら原発が導入されてきたと思います。
 一方その間、火力発電のほうはLNGという新しい燃料が導入され、また、推定埋蔵量がどんどん変化してくる。つまり科学技術の発展だとか、採掘能力・探索能力だとか、あるいは応用技術、そういうものの変化の中でエネルギー源が変わってきているということ、またそれに対する見方も変わってきているということを数十年の歴史から見ておかないと、原子力発電も絶対化できないし、相対化して見ていくということが必要なんじゃないかなと思っております。
 そういう意味で、現在、原子力発電が果たしているエネルギー供給へのウエートは否定しようもない事実なわけですが、それに対して無理無理これをすべていいものだという言い方をすると、何かゆがんできてしまう。この間のいろいろな情報の提供のされ方については大変懸念を持っております。例えば電気の単価についての設定が原子力発電は一番安いというレポートが私どもの感覚で言えば無理無理つくられている。例えば償却年数を40年という設定をすることによって単価を安くするという表示がされているのではないかという疑いを持っているわけです。
 実際のところ、原発はかえってコストが高いんじゃないかと。最終処理まで含めて考えてみると、あるいは立地の開発のコストなども考えたりすると、かえって高いのではないかということを感じているという段階ですね。そこで原子力発電の現状を否定するものではないけれども、できるだけエネルギーは多元化して供給するのがセキュリティーの上でも重要なことではないのかなと。先ほど新エネルギーの問題も出ましたけれども、そういうふうに考えるべきだし、新エネルギーもよく出る議論は非常にコストが高いんだということ、あるいは推定資源量がどのぐらいだという議論があるのですけれども、それは過去の石油やLNGの埋蔵量の議論などから推定すると、科学技術が発展するとまたその見方も変わってくるのだというふうに見たほうが正しいのではなかろうかと。これは私の私見も含めまして感じております。
【中村委員】  ありがとうございました。吉岡さんからも先ほど主婦連としての原子力発電所に対するどちらかというと、これからは自然エネルギーなどゴミ発電も含めて身近なほかのエネルギーをさらにという視点と原子力発電所、対比ではないと思うのですけれども、そういうご発言がありましたけれども、重ねて原子力発電につきましてご意見ございましたらお伺いします。
【吉岡初子氏】  最初に申し上げましたように、「初めに原発ありき」ではいけないと思うのですね。やはりいろいろな技術を使った、いろいろな発電があって、そういう多様化されているもを考えていかないと、これからは日本の場合には難しいのではないだろうかということが1つあります。
 それから、これは後のほうになるのかもしれませんけれども、今の国の考え方は、右肩上がりでエネルギー消費が増えていくということを前提としての計画といいますか、それが基本になっているように思います。ほんとうにそうだろうかということを考える必要があるのではないかと思います。これは個々の家庭における省エネと同じように企業においても、お話にありましたけれども、エネルギー消費が少なくなるような技術開発が進められてきております。ですから技術開発が進めば省エネ機器の普及も進んでまいりますので、そういうことからいうと、ただ一方的にエネルギー消費が増えるという考え方で計画を立てていいのかどうか、ここは検証してみる必要があると思います。
 COP3の京都会議のころですけれども、あのころもCO2を削減しなければいけないということで随分議論があり、CO2を出さないのは原発なのだということから、原発を推進していくことが、これは世界に対しても日本の責任だということがかなり言われていました。そこで原発をあと20基増やすという計画が出されました。そのときも私は、20基増やすといってもどこに増やす余地があるのだろうと思ったのですけれども、ただつくって発電をすればそれで解決する、あるいはCO2を出さなければいいというだけではいけないのではないかと思います。そういうことを考えながら、じゃあ、完全に否定して、原発がない状態で日本のエネルギーを賄えるかといったら、これは今の生活を維持することはとても難しくなりますから、そこのところはゼロでいいということを言えないという、そういう問題もあります。
 ただ、原発をさらに増やす必要はないのではないかということを、これは個人的にですけれども私がなぜ考えるかというのは、安全の問題があります。JCOの東海村臨界事故の場合には、孫請といいますか、企業の問題があって、ずさんな取り扱いをしていたということがありますので、これは安全管理を末端まで徹底していけば避けることができる問題かもしれないとも思います。ただ、従業員が死亡したという大変な犠牲をはじめ、近隣への健康問題など、大きな問題にもなった。そういうことを考えると、やはり安全性の問題は非常に気になります。
 もう一つは最近起こっている、これは事故というのか故障というのか、不具合というのか、そこは微妙なところだと思っておりますけれども、あちこちの原発が、30年ぐらいたっているものでいろいろと問題を起こしています。水が漏れたということだけでは問題はないのだという見方もありますけれども、やはり当初考えていただけの長期間耐え得るのかどうか、そういうことも考えないといけない。そう考えたときに経済性の問題はどうなのかということも検証してみる必要があると思います。
 それから大きな事故の場合には、どっちかというと人為的ミスによるのが多いのではないかと思います。これはチェルノブイリも含めてです。ただ、人為的ミスは防ぐことがほんとうにできるのかどうか、そう考えたときに、よく科学者の方は、安全は絶対ということはあり得ない。100%安全ということはあり得ないとおっしゃいます。原発に限らずですけれども。これは私、正直な発言だと思っております。100%絶対安全ということは、どの世界でも言えないことだと思います。ただ安全のレベルが99.の下に幾つ9がつくか、そういうことだと思うんです。それが999なのかあるいは9999なのか、もっとなのか、そういうことで安全のチェックというかレベルがわかるわけです。大体の場合には999とかあるいは99999とか、そういうところまでいけば、まあいいだろうということになると思うのですけれども、原発の場合には、それでも事故が起こったときには大きな事故になり得るという、そこが全く、自然人の1人として考えたときには非常に心配です。心理的な心配と言われるかもしれませんけれども、そういう不安は根強くあるということを申し上げたいと思います。
 それから経済的な問題として言えるのは放射性廃棄物の処理の問題です。低レベルの場合にはもう少し違った処理ができるのかもしれませんけれども、高レベル廃棄物の場合には相当神経を使って処理をしなければいけない。それが六ヶ所村でということになりますけれども、じゃあ放射能の半減期をどのぐらいに見たらいいのか、この辺も人によって随分差があるように聞いております。何百年と言う人もいますし、いや1,000年のオーダーだと言う方もいらっしゃるし、もっとと言う方もいらっしゃいます。その辺のところが非常に長い期間ということになると、安全の処理を子孫に負の遺産として残す、そういうことになりはしないか。そういうことがもう一つ大きな問題としてあります。費用の問題と安全の問題が、特に高レベル廃棄物の場合にはあるということです。
【中村】  今のお話の中で、高レベル放射性廃棄物の最終処分については六ヶ所村に別に決まっているわけではない。これからです。
【吉岡初子氏】  まあ、それはそうですね。おそらく日本じゅうどこでも嫌だということになるんだろうと思いますけれども、それはわかりません。
【中村委員】  これから公募されますので、その辺はまだ六ヶ所とか青森とかということではないのですね。
【木元原子力委員】  青森の六ヶ所は、最終処分地にならないことになっています。岐阜も北海道の幌延などは研究だけです。
【中村委員】  ご趣旨はわかりましたけれども、それだけちょっとご訂正させていただきます。
【吉岡初子氏】  わかりました。それと日本の場合には地理的条件が非常に難しいと思うのです。地震がとても多いと。プレートがある。そういうことを考えると、やはり自然条件を、地理的な条件を考えなければいけないだろうということがあります。もう一つは地理的条件ではなくて、これはあってはいけないことなのですけれども、戦争というような場合にミサイルを撃ち込まれるとかいうこと。それからテロの問題。航空機がぶつかるという、そういうことが絶対ないとは言えないということもあります。
【中村委員】  それは発電所のお話ですか。
【吉岡初子氏】  はい、そうです。
【中村委員】  今の流れから言うと、何か最終処分地の話みたいな。どちらのお話でしょうか。
【吉岡初子氏】  ごめんなさい、発電所の場合です。そういうことを考えると、原発には、安全性の問題については不安要因が多いということを申し上げたかったのです。
【中村委員】  わかりました。安全と安心ですね。
【吉岡初子氏】  はい。それから経済性も含めて。
【中村委員】 わかりました。ありがとうございます。
 村上さん、いかがですか。
【村上忠行氏】 私ども先ほど申し上げましたエネルギー政策の中で、エネルギー安定供給の重要なエネルギーとして原子力発電を位置付けております。さらにCO2にも効果はあると。ただ利用に当たって、やはり先ほど来出ていますように安全確保、これは第一であります。どう安全確保していくか。安全確保には私は100点はないと思っております。常に努力の継続をしていかざるを得ないと。しかし先ほど来お話があるように、このためにはやはり技術革新、科学技術、こういうものを大いに活用していくことが重要だと思っています。
 もちろん原子力発電の設計において、人為的ミスがあっても安全なように設計をされていると伺っていますけれども、どうも、マスコミ報道等を通じて聞きますと全部がそういうことになっていないという部分もある感じがいたします。人為ミスの連鎖があっても、安全サイドに行くように設計をやり直す必要があるのかどうか。ここは早急に対策を立てていく必要があるのだろうと思ったりもしております。
 それから、やはり情報開示という問題は、私は信頼性をつくっていく上での絶対基本的な要件だろうと思っています。どうも情報開示のところが国民の方にうまく伝わってこない。何かその時々の状況で、情報開示すべき情報かどうかというのが動く。これは今まではこうだったけれども今回はこれを開示するという話があるやに伺っています。これはやはりすべての情報を開示して、それを選択、判断するのは国民サイドだという立場に立って、情報開示というのは絶対的にやってもらわなければ困ると思っております。
 私どもが今の段階で原子力発電の利用を認めておりますのは、やはり環境問題をどうしていくのかということも考えなきゃいかんだろう、それから安定供給、コスト面のところも考えなければいけない、ということがあるからです。もちろん私どもとしては、新エネルギーの利用というものを強力に、さまざまな施策をしながら、または技術革新というものを進めながらやっていかなければいかんと思っておりますが、今ただちに原子力発電にとってかわるだけの供給力がない。ここをどう埋めていくかということを現実的に判断せざるを得ない部分があるのです。それでも私どもの中にも安全性についての議論はございます。安全性をどう確保していくか。常に安全性について技術革新、科学技術開発に力を入れながら、やはり情報開示、それとあわせて国民の信頼をどうつくっていくかということに尽きると思っております。以上です。
【中村委員】  ありがとうございました。
水野さん、原子力発電についてはいかがでしょうか。
【水野直人氏】  ありがとうございます。原子力発電につきましては、是非論という形では私たち日本青年会議所では、基本的には行っておりません。先ほどもお話させていただきました通り、環境エネルギーという大きな視点の中で考えさせていただいております。
 原子力だけでなく、エネルギー全体の視点の考え方で今後も大きく捉えていかなければ
ならない事と考えます。2003年度以降に関しても、新しいエネルギーを含めた、エネルギー全体を考える中で、原子力エネルギーも恐らく今後大きな取り組みになってくると
思います。私たちは地球環境問題がそもそもの原点という中で考えておりますし、その中でやはりエネルギー問題という事が一番大きな問題と捉えております。私たち青年会議所としては、是非この視点で取組んでいきたいと思っている次第です。
 大きなエネルギー問題の一つとして、原子力政策等について、原子力委員会の皆様と、今後、私たちの組織でもお話をさせていただく時間を頂いたりして、かかわりを頂けたらと思っております。私たち青年会議所は40歳までの、地域に密着しているメンバーが集まっております。若い経済人の組織でもありますので、そのような観点で今後の取り組みに期待したいと思っております。
【中村委員】 ありがとうございます。
 それでは秋元さん、関連産業のお1人でもあると思うのですけれども、簡潔にお願いできますか。
【秋元勇己氏】  はい。私これからエネルギーの自給率を高めて、しかも温暖化問題を解決すると。その2つのことをやっていくとしますと、これは原子力に限らず、あらゆる非化石エネルギーを全部動員していかなければいけないと思うのです。ですから先ほどお話がありました太陽、風力、その他すべて、とにかくできるだけ頑張って、それでもなかなかこれから自給率を高め、しかも将来は、例えば中国や東南アジアのエネルギー需要は確実に増えてくるわけですから、中国ももう石油輸入国になったという状態の中で、将来のエネルギーを確保していくとすると、どうしても国内の努力で産み出すことのできるエネルギーを増やしていかなければならない。
 そういうことを考えていきますと、やはりその中で原子力を排除するわけにはいかないというか、むしろどうしても原子力がクローズアップされることになるのは、1つはやはり原子力の持っているポテンシャルの大きさだと思うのです。1グラムの原子燃料から、石炭1トンから出せるのと同じぐらいのエネルギーがとり出せるということでして、いわばポテンシャルが100万倍あるということです。100万倍のポテンシャルがあるということは、それだけコントロールの技術も必要だし、もし使い方を過ったら危険だと、心配だということにもつながってくるわけで、皆様がいろいろと原子力について持たれる不安というのは、そこにあるのだろうと思います。
 一方それだけ強力なものを持っているということは、これからの切り札としてすばらしいわけです。もし原子力発電1基を太陽発電で賄おうとしますと、山手線の内側の土地を全部太陽電池で埋め尽くすというようなことをやって、ようやく原子力発電1基分ぐらいのエネルギーがとれるということです。だから太陽はやるなというのではなくて、太陽エネルギーは太陽エネルギーで、またいろいろな使い道があるわけですけれども、原子力のかわりをつとめるだけの力はない。いろいろなエネルギーを、それぞれの持ち味を生かしながら、全体として自給エネルギーを高めていくということが、必要だろうと思っているのです。
 原子力のコストが非常に心配だというお話があったわけでございますけれども、これも、コストが無理につくられた数字ではないかというご心配はご無用ではないかと思いますのは、アメリカは自由競争の市場価格の国です。ところがアメリカでは1973年以降、新しい原子炉の受注は全くないわけで、その後、原子炉の数は少し減っているのですけれども、1990年から2000年までの間に、原子力発電の量は1割以上増えているのです。この時期、アメリカでは今まで各電力が一基、二基とバラバラに持っていた原子力発電所を買い取りまして、これを、総合管理をしますと、一基ごとの管理コストは安くなりますから、安全に経済的にまたエネルギーを出して売りさばく企業が育ってきました。石炭、石油をはじめアメリカではかなりエネルギーは安いわけですが、それと太刀打ちしてやっているということは、これはコスト的にも原子力がひき合うという1つの証拠だと思います。さらに申し上げますと、ドイツは今グリーンの政党のもとで、結局原子炉を将来に向けてだんだんフェーズアウトしていくという約束をしている国なのでありますけれども、そのドイツのような国でさえ、90年から2000年の間に、原子力発電量は1割以上増えているのです。そういうことは、やはり経済的、マーケット的に、原子力発電が太刀打ちできるようになったということの1つ大きな証拠ではないかと思います。
 もう一つ、原子力の実力を示すものとしましては、現在1人当たり、我々がいろいろな社会活動をしまして、1年間に炭酸ガスをどれくらい排出している勘定になるか計算をいたしますと、アメリカは自動車に乗ったり、いろいろな電気を使ったり、全部で、1人当り5.2トンの炭酸ガスを排出しています。日本はその半分の2.5トンです。実はフランスは1.8トン。アメリカの3分の1の炭酸ガス排出量になっているのです。この違いはどこで出てきたかというと、実は1973年に石油ショックがありまして、あのときは我々もトイレットペーパー買いに並んだり、大騒ぎをしたわけでありますが、その時点からこのかた、どれだけ原子力発電にコミットしたかという違いなのです。フランスは石油ショック後の発電は、全部原子力発電所でやるということを国是で決めまして、73年には一次エネルギーの2%しかなかったのが、20年後の93年には40%を原子力で賄えるようになった。
 日本はそういうはっきりした国是はつくりませんでしたけれども、たまたまそのときが原子炉の運開が続いたときでありまして、石油ショックのときは1%以下であったわけですけれども、石油ショックが終わったときには自給率が15%になっていた。こういうことで、一次エネルギーからの炭酸ガスの排出量を、フランスは50%押し下げていますし、日本でも20%押し下げたという実績が出ているわけであります。こういうことで、やはりオイルもない、コールもない、いろいろな天然資源が何もない日本やフランスが、原子力によって石油ショックからの脱出に貢献し、しかも地球温暖化の防止にも貢献するような実績をあげている。これをやはり正当に社会に認知していただきたい。こうした情報を社会に正しく伝える仕事が一番大事なことだと思います。
 先ほどから放射能、あるいは放射線に対しては、安全といわれても安心できないというお話がたくさん出ました。これは先ほど申し上げましたように、100万倍のポテンシャルを持つのが原子力エネルギーですから、確かにそういうものについては安心できないというお気持ちがあると思いますけれども、例えば自動車と飛行機を比べてみて、どっちが安全かねというと、恐らく皆さん、飛行機のほうがちょっと危ないなと。自動車のほうが安全だとお思いだと思うんですが、現実には自動車では年間に1万人の人間が交通事故で死んでいます。走行距離でも時間でも計算をしますと、飛行機のほうが自動車よりずっと安全なのですけれども、やはり皆様が体感で持っておられるのは、飛行機は何となく怖いねということがあると思うのです。それと同じようなことが原子力発電にはある。
 さらに放射線に対しては正しい報道もあるのですけれども、それ以上に、誤解を含むいろいろな話が舞い踊っておりまして、その中でどれが正しいかということを、まだなかなかきちんと判断していただけるような状況になっていない。原子力推進側のほうも情報は出しているのでしょうけれども、出している情報がほんとうに皆様に、体の中でこれは安心できるというところまでわかっていただくというか、体で安心を感じていただけるというところまで情報提供ができていない。そういう意味ではまだちゃんと双方向の情報伝達になっていないというところがありまして、このあたりは、これから原子力を進めていく上では、やはりほんとうに怖いものは怖い、だけど怖くないものまで怖がってチャンスを失うということは決して得なことではないわけですから、そこをきちんと我々としても伝達していく必要があると思いますし、皆様方もぜひ開かれた心で、公平にそういう問題の評価をしていただきたいと思っております。
【中村委員】  続いて今尾さんにお伺いしたいと思うんですけれども、農業関係の方ですと、特に最近気になりますのがいわゆる風評被害のようなものですね。東海村の事故あたりから非常に大きくクローズアップされていると思うのですが、よろしければそういうあたりも含めて原子力発電についてお伺いしたいと思います。
【今尾和美氏】  私どもも組織で整理しているわけではないのですが、東海村のときは自分たちもなかなか明確に理解できなかったというのがありました。資源エネルギー庁の報告でも、あの後、農林畜水産物については採取分析をして影響は見られず、安全であることが確認されていますとなっているわけですが、あそこは干し芋の産地でありまして、事故発生直後にJCOが示談を整えて一定の保障をしてもらったのですけれども、実を言いますと、その後栽培面積が2割減りまして、価格は25%下がったまま2年たっているわけです。農協では組合員から買い取ったのだけれどもまだ在庫が残っているという。こういう状況で、風評被害というのはどのぐらい影響が出るのかが読み取れない部分がございます。それと1回産地が崩れると、なかなか回復できないという問題があります。したがって原子力施設の設置時に、どういった保障ルールをつくるのかというので、今後大きな検討課題だなと思っております。
 あと、これは全く個人的な素人考えでありまして、今もう3割以上の供給力を担っているので否定はできないのですけれども、まさに安心の部分で、先ほどもご指摘ありました高レベル放射性廃棄物を地下300メートルに埋めると。まさに今後地球の中にみんな埋めていく、そのことのコストというのはどこにも計算されていないわけで、その辺が大きな課題じゃないかなということ。それから漠然と、先進国は原子力の安全性管理というような一定のルールをつくったり、方策を講じますが、途上国とかロシアとか、そういったところの廃棄物の処分というのをほんとうに国際的にきっちり決めていけるのかどうか。現在国際的ルールがあるのかどうかも私は知らないのですけれども、そういう点が地球規模で大変不安であります。
【中村委員】  その点については関係の方もきょうは一般席にいらっしゃいますから、後ほど国際的なルールづくりやなんかの話はお伺いできるのではないかと思います。ありがとうございました。
 全国漁業協同組合連合会様をお招きしたのですけれども、先ほど申し上げたような次第で宮原さんは、今日、ご欠席でございます。特に原子力発電の立地につきましてご意見を頂戴しておりますので、ちょっと長いのですけれども、全文、皆さんにご紹介をさせていただきたいと思います。「国のエネルギー政策に関する全漁連の考え方」ということで、「原子力発電の立地推進について」。
 日本は狭い国土に現在52基の原子力発電所を有しており、電力供給に占める比重は30%を超えている。世界的に見ても米国、フランスに次いで3番目の原発大国である。全漁連は原子力発電立地を初めとする国のエネルギー開発政策のあり方について、漁業の振興とエネルギー開発の重要性に対する認識に立ち、昭和57年9月、全国漁連会長会議において、海洋放射能モニタリングシステムの確立、立地にかかわる事前協議体制の確立、風評被害対策など11項目に及ぶエネルギー開発政策と漁業との調整に関する提言を取りまとめている。この提言を踏まえ、現在の原子力発電立地推進に関し下記の問題点を提起する。
 ということで、3点ご指摘いただいております。
 1.原発は長期的に見てCO2削減の切り札と見られているが、敦賀市高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏出事故、茨城県東海村ウラン加工施設での臨界・被爆事故、静岡県浜岡原発の冷却水漏えい事故などが発生しており、安全性については漁業者を初め国民の不安は払拭されていない。
 2.既設の原発に事故が起こる可能性を認めた上、徹底した安全管理及び事故保障について万全の体制を敷くことが必要であり、原発運営に地域住民参加の検討や徹底した情報公開が不可欠である。これらを実現しない限り原発の新設は考えるべきではない。
 3.我が国原発はすべて沿岸域にあり、海域環境保全の観点から、原発立地の集中化が、その地区海域の温排水量、取水量を増大させ、海洋生態系、漁業資源に与える影響が憂慮されている。特に大量の温排水は回遊性魚類の経路に悪影響を与えているのではないか、また海水温度が上昇し魚種が変化しているのではないかとの漁業者の声があり、現在の原発立地が環境の保全や生態系維持を考慮していないのではないのかとの不安がある。以上。
 ということで、今の今尾さんの農業のほうからのご指摘とも共通するところもありますし、漁業固有のご提案もあったと思います。こういうご意見をいただいております。
 それではそろそろ時間がなくなってきましたので、原子力発電について最後に鳥井さんにお伺いしたいと思います。
【鳥井弘之氏】  私は技術というものをどういう視点で見るかというお話をさせていただきたいと思います。
 ある年金生活者がいます。年金だけでは足りず、毎月働いていたときの貯金を取り崩して生活費に充てている。でもその貯金がだんだん底をついてきた。こういう状況、生きていくことが限界に近づいているような状況になってきているわけであります。もう一人の人はまだ職業を持っていてそれなりの収入があって、ある月、給料袋を落としてしまったとか、衝動買いで高い物を買ってしまった。こっちの人は別にその分貯金からおろしてもどうということはないわけです。
 今の世界を考えてみますと、例えばきれいな水が手に入らずに病気になる人がたくさんいて、毎年400万人の子供が死んでいるのだそうです。汚い水が原因で。これは、ですから人間の数が、水の、自然界の浄化能力の限界を超えちゃったことを示しているわけであります。食糧の生産を見ましても、これまでは人口増加より食糧生産の増産の方が、まさっていたもので、問題なく済んできたわけであります。もちろん配分の問題があって、世界中を見ますと5億人ぐらいが食糧不足で悩んでいるわけです。でも、これからも同様に食糧の増産ができるかというと、耕作面積をこれ以上増やすことは世界的に見てほとんど不可能だと考えられていますし、もう一つ、かんがい用の水というのがなくなって、非常に問題が起こっています。
 こうやって考えてみますと、人類というのは、大変大きな限界型の問題に直面しているわけです。その限界型の問題を打ち破るのには、多分エネルギーが必要なのです。例えばきれいな水をつくろうといって海水を淡水化するとエネルギーが要るわけです。例えば日本の田んぼとタイの田んぼの生産性を考えますと、日本には3倍ぐらいあるのだそうです。これは何かといったら、さっき今尾さんがおっしゃったエネルギーをどんどんつぎ込んでいるからであります。ですから途上国の田んぼにもエネルギーをつぎ込んでやれば、増産の可能性はまだあるということです。
 そのエネルギーでありますが、先ほどからお話があるように、化石燃料を使えば大気中の二酸化炭素ガス濃度が高くなって温暖化をするわけです。これは化石燃料の使用量が既に自然の浄化能力を超えたことを意味しているわけです。もちろん自然エネルギーで賄える量の100倍以上、数百倍のエネルギー消費になっているわけであります。切ないですね、水の限界を破ろう、食糧の限界を破ろうとすると、今度は温暖化という環境の限界にぶつかっちゃうわけで、先ほど申しました年金生活者のひどい状況に入っているというのが実は人類なわけです。
 エネルギー源をずっと見渡しまして、じゃあそういう限界型の問題、人類が努力してもどうにもならない限界型の問題というのを含んでいないエネルギー源はあるだろうかと考えてみると、意外と原子力は限界型問題が少ないわけであります。資源で見ますとウラン寿命は70年といいますが、プルトニウムを使うことになると数千年は大丈夫だという計算になります。もちろんトリウムという別の資源もあります。それから廃棄物がというと、確かに高レベル廃棄物は大変危険ですが、例えば日本が50年以上使って、原子力を利用してきた廃棄物というのは、わずか2キロ四方のところに処分できる。それを20キロにすれば数千年は軽くできるわけです。原子力というのは、これもご指摘があったように、これまでに大変いろいろな問題を起こしてきたわけです。もんじゅのナトリウム漏れ事故、JCOの臨界事故、幾つもの放射能漏れ事故などです。でもこれはいずれも限界型の問題ではなくて失敗型の問題であります。ちょっと例えは悪いかもしれませんけれども、衝動買いをしてしまったのと同様な問題であります。
 もし限界型の問題があるとすると、例えば高レベル放射性廃棄物、先ほど1,000年とか300年とかいうお話が出ていましたけれども、数万年はしっかり隔離しなくちゃいけないわけでありますが、数万年後人類が生きているのかという、そういう限界はあるような気がいたします。またそれほど長い間どうやって、ここに埋めたよという情報を子孫に伝えていくのかという、そういう限界もあるかもしれません。ただしこれは、どううまく解決できるかわかりませんが、少なくとも今起こっているのは失敗型の問題であります。失敗型の問題というのは人間の努力、つまり研究開発だとか教育訓練だとか、社会制度の整備、そういったことで、ゼロにはできません、だけど限りなく小さくしていくことはできるわけであります。私たちが限界型の問題を含んだ技術というのを選択するのか、それとも失敗型で、人間が努力すれば何とかなる、そういう技術を選択するのか。これは大変大きな課題だと感じております。以上であります。
【中村委員】  ありがとうございました。大変鋭いご指摘ありがとうございます。
 そういったことも踏まえて、既に今の原子力発電に関するご発言の中にも、国のエネルギー政策、方針決定あるいはそのプロセスについての内容を含んだご発言もあったかと思いますが、本日用意いたしました最後のテーマ、市民参加懇談会としては最も関心を寄せていることでございます。原子力政策決定過程と一般市民、国民とのかかわり。これには国のエネルギー政策決定に関するご意見も結構でございますし、原子力委員会の存在あるいは役割についてのご意見も結構ですし、可能ならば、きょうこういう会を設けました私たち市民参加懇談会というものを、これからもやっていきたいと思っているわけですが、これについても、先ほどちょっと水野さんからは、一緒に話し合うというご姿勢も示していただきましたけれども、そういったことも含めてご発言を頂戴できればと思っております。今度はアイウエオ順でまいります。秋元さん。
【秋元勇己氏】  最後に来ました。
 原子力委員会、大変、私ども期待するところが大きいのです。といいますのは、日本の原子力は、いわゆる「民主・自主・公開」の三原則をうたった原子力基本法によって始まったわけです。ですからそのときから、我々は、原子力は平和利用に徹するということを国是にして原子力を開発してきたわけですし、それを推進していくための司令塔として原子力委員会ができたわけです。その三原則にのっとった原子力開発の番人でもあるし推進役でもある原子力委員会が先導しながら、その後日本が50年間、いろいろな開発を進めてまいりました。いろいろな問題にぶちあたりましたが、平和利用の分野で、日本はよその国に比べましても立派な実績を上げてきたと思います。ほんとうに胸を張って誇れるのは、いわゆる平和利用に徹するという意味では、世界に冠たる実績を出してきた。
 我々には、広島以来のもう一つの大きな悲願、核兵器の廃絶という目標があるわけですが、この問題についても、平和利用でこれだけ成功をおさめ、原子力は平和に使えるんだということを実証する一方で、それと同時に日本は核兵器の持っている非人道性を事あるごとに、いろいろな形で世界に訴えてきたわけでして、この地道な努力によって世界で核兵器を使おうにも使えないとう状況が出来上がったのだと思います。もしどこかの国が愚かにも使おうとすれば、世界のあらゆる国から村八分にされる。核兵器の使用はまさに非倫理的なものなのだという世界的な与論が定着したと思うのです。これはやはり日本の努力が非常に大きかったと思うのです。そういう2つの面で、日本は正しい原子力のあり方を世界に示すモデルで日本はあり続けてきたと思いますし、これからもそうでなければいけない。その旗振り役が原子力委員会だと思うのです。
 原子力基本法は国会で400数十人の超党派で可決された議員立法の法律なのです。その意味で原子力開発は日本全体のコンセンサスから始まったものなので、やはりこのコンセンサスが続くような状況を原子力委員会が常につくっていただくということが、非常に大きな使命だと思っているのです。ところが原子力をひろめてゆく途中で、特にいわゆる原子力の立地地域の方々、一般市民の皆様に対して、原子力に関するイメージといいますか、正しい姿が伝わらないような状況が幾つも出てきて、それに対して正しい対応が十分二とられてこなかったということで、今のような食い違いが出てきてしまったわけです。
 私がこれからの原子力委員会にぜひともお願いをしたいのは、そういう意味での、一番最初に木元さんがお話しになりましたように、やはり国民に理解を求めるのではなくて、国民の理解の上に原子力が存在しているという、そういう状況をつくり上げるために、この市民対話の会も大変すばらしい試みだと思うのです。1回2回やったのではあまり効果がないわけでして、やはり継続して、いろいろな場所で、いろいろな方々を対象にしてやっていくということが必要だと思いますし、そういうことの中で正しいメッセージが少しずつでも伝わっていくようになることが、望ましいのではないかという気がいたします。
 ちょっと一言余計なことをつけ加えさせていただきますと、例えば、先ほど風評被害の話が出ました。JCOで干し芋が売れなくなってしまった。こういうような問題も、やはり、本当の意味であの事故についての正しい理解があれば……。干し芋が放射能で汚染されるというような状況があり得ないということは非常にはっきりとわかっているにもかかわらず、そういうことについて地元の方あるいは一般の方々に納得していただくまで、いろいろな説明が十分行われなかったということが、やはりこちらの原子力推進側の反省としてはあるのではないかと思います。事故の実体は非常に正確な、科学的な言葉でもって発信をされていますし、1人1人の方がどのような放射線をお受けになったかというレベルまではっきり報告されているわけですけれども、受けられた方にしてみたら、そのレベルが一体どのくらい心配すべきものなのか、安心していいものかについての納得のゆく説明がない。飛行機に乗って日本からアメリカまで飛んだら、そのくらいの放射線は浴びるというような程度のものなのに、やはり私は非常に大きな放射線を浴びたのではないかと心配をされる。それに対してはっきりした説明、フォローをしていなかったというようなことがあると思います。
 恐らくそういう意味で、正しい情報を正しいタイミングで発信をしていくということがあれば、東海村では現実にいろいろな心理的な被害といいますか、経済的な被害も出てきたわけですし、いまだにやはり何か放射能を浴びたのではないかと心配をしておられる方がおられる。これはまさに心理的につくり出された被害と言ってもいいわけですけれども、そのようなものを起こさずに済んだのではないかと思います。その意味で、原子力に対する正しい知識を皆様にわかっていただくような努力は、原子力委員会にひとつぜひ指導をしていただきまして、いろいろなフェーズで、これを国民的な運動に展開していかなきゃいけないんじゃないかと思っております。
【中村委員】  ありがとうございました。
 今尾さん、先ほど保障のルールづくりというご発言がありましたけれども、これもやはり広く日本の、我が国のエネルギー政策はどうあるべきかのところに非常に重要に絡んでくるテーマだと思います。ぜひ重ねてご意見を聞かせてください。
【今尾和美氏】  はい。私はこの委員会は初めてだったんのですが、原子力委員会と、それを補完するこの市民参加型の懇談会と、大変すばらしい活動だなと思いました。と申しますのは、そういう機会がないと私自身も勉強できなかったというのがあります。1点だけ。日本の官僚機構だとか大企業、やっぱり本当の情報を即座に出せば良いと思います。風評被害になるから情報を出さないという、そういうような行動スタイルが本当にないのかどうか。そういう点で木元さんを中心として、こういった形で市民との対話を持たれるというのは大変重要なことだなと。あらゆる役所がやっている仕事をそうしてもらいたいなと思うくらいでございます。
 それと1点だけ宣伝させてもらいます。原子力はなかなか私も不安で、安心の部分がどうしてもぬぐえないところがありますけれども、ひとつ親戚の林業です。林業のCO2、日本の森林の年間CO2の吸収量が、きのう読んだ資料ですと、自家用自動車の年間排出量とほとんど同じだというようなのがありまして、こういった点も森や林を大事にするという活動につなげていくべきかなと思っております。
【中村委員】  ありがとうございました。最初のお話、村上さんのほうからもあったのですけれども、我々がライフスタイルを変えるということは、いろいろな意味で大事なのですけれども、それもすごくいろいろな幅がある。今の木を大切に、森を大切にというのも、漁業との関係も非常に強いですよね。それとともにCO2の問題もある。何か身近なところに我々も実践したり考えたりしなきゃいけないテーマがたくさんあるなと思うわけですが、それにしてもやはり国のエネルギー政策が明解で、しかも十分に説明されていなければ、やはり我々としてはわからないという部分があるんで、もうちょっと労働界とか消費者のご意見を続いてお伺いしたいと思います。
 藤岡さん、いかがでございましょう。
【藤岡武義氏】  先ほど秋元さんのおっしゃった原子力の平和利用の原則、「民主・自主・公開」。その中で、原子力委員会の役割への高い評価というご発言がありました。やはり原発問題というのは核兵器の問題とどうしてもつながってしまう危険性があるということを、よっぽど注意深く見なければいけないと思うのです。秋元さんは、日本の実績がいろいろな懸念をかなり払拭してきたというふうにもおっしゃいましたけれども、海外からの見方は、燃料の再利用というようなことは、結局、プルトニウム、つまり核兵器につながっているんじゃないかという懸念が、やはり我々が国内で考える以上にあるのだという自覚をもっともっと持つべきだろうと思います。
 その点から、先日あった政府高官による核兵器所有の可能性ということに対して原子力委員会がどう対応したのか、残念ながら十分よく聞こえないと。一部、発言を木元さんがされたというのは聞いているのですが、もっと原子力委員会自体、そんなことを言うんなら全部辞任するよというような強いアピールにはなっていなかったのではないかと感じております。私はこの間いろいろと、原子力委員会だけではなくて、原子力安全委員会であるとか保安院であるとか、いろいろ機関があるので、これどうなってるのだというようなことを調べてみたのですが、よくわからないのです。そういう意味ではもっと国民にわかるようなあり方、行政のあり方あるいは機関のあり方が必要なのじゃないかと思います。
 先ほど、その意味で情報開示について、原発の発電コストについてアメリカの例を引いて、ごまかしていることはないのだとおっしゃいましたけれども、99年12月の総合エネルギー調査会の資料によると、1キロ当たり原子力発電の原価内容は5円90銭となっております。これは減価償却費を40年という基準で恐らく算定したからだろうと推定されるわけですけれども、それ以上のことが開示されておりません。また、先ほど今尾さんが言われた、たしか高レベル廃棄物の処理費用についてもカウントされているということになっておりまして、廃棄物処理処分には1キロワットアワー当たり25銭というカウントがされております。関連して日本原子力発電の2001年10月の商業用原発の初めての廃炉についてのプレス発表によると、廃止措置の費用は廃棄物処理処分に関しては580億かかるという発表がございます。この程度しかわからないわけです。ところが高レベル廃棄物について、じゃあどういう処理をするとこの25銭が出てくるのかというのがわからない。場所も決まっていない、やり方もはっきり確定していないのに、何でコストが算定できるのだという疑問があります。勉強不足でとれる情報が部分的であるということかもしれませんので、別途教えていただければよろしいかと思いますが、少なくとも一時的に取得できた資料がその程度であるということでは、なかなか選択の判断ができないなと思わざるを得ないところでございます。
 いずれにせよ、情報公開なり市民参加ということについては大いに支持するところでございますので、いろいろな機会で情報を公開していただければということを期待したいと思います。
【中村委員】  ありがとうございました。横でも木元さんが、「説明不足なのよね。」とおっしゃっていますけれども、そういう部分は多々感じられますね。
 続きまして水野さん、いかがでしょう。
【水野直人氏】  ありがとうございます。先ほどお話しさせていただいたように、日本政府におかれましても毎年組織が変わりますので、それぞれにおいて担当メンバーが変わるわけなのですけれども、エネルギーという問題については、ここしばらく環境という視点の中で運動させていただいておりますが、エネルギーという形の中で今後取り上げていく大きな問題として、この原子力発電も含めて、先ほどのお話の中で、ぜひいろいろな形でお話し合いをさせていただいたり、勉強させていただいたり。我々の団体は全国747の散らばった地域の青年会議所がありまして、それぞれにおいて地域で運動しているという形でございます。私もたまたま福井県でありまして、原子力発電については身近な問題として、個人的には非常に感じているところでございます。
 これは個人的な意見になりますけれども、福井の場合でいいますと嶺南と嶺北という2つの地域に東西で分かれるわけですけれども、そういった中でも認知が非常に違うのです。嶺北という北のほうに行きますと、どちらかというと原子力のことはそんなに、自分で当事者意識としてあまり持っていない人が多いのではないかと思っています。嶺南という、敦賀とか小浜とか、原子力が非常に多いところに関しましては、やはり自分らの地域に密接につながっているという形で、非常に当事者意識は強い。ただ、よくよく考えれば、福井県という形の中を考えますと、ほんとうにそれは真剣に考えなきゃいけないレベルなのではないかなと思っています。
 青年会議所では、行政とかNPO団体さんとか、そういった市民と非常に密接につながった活動をさせていただいておりますので、市民参加懇談会という、今、非常にいい形でやられているなと感じておるわけです。我々の青年会議所でも、そういった形でもしかしたら一緒にやれる可能性もあるのではないかという思いもありましたので、ぜひその前にいろいろなお話をさせていただきながら、そういったかかわり合いができたらという思いで先ほど発言させていただきました。以上でございます。
【中村委員】  ありがとうございました。特にJCは全国ですから、立地地域のJCの皆さん方と、我々、東京のような大消費地のJCの皆さん方との交流も、非常に近いわけですから、私たちの懇談会としてもぜひお話したいですね。
【木元原子力委員】  お話をさせていただきたいと思います。
【中村委員】  いずれご一緒に語り合う場を持たせていただければと思っております。
 村上さん、お願いいたします。
【村上忠行氏】  まず、国のエネルギー政策でありますが、冒頭申し上げましたように、どうも今確固たる中長期的な視点に基づく政策がなくなってきているのではないのか。もともとあったのかどうかわかりませんが、エネルギー問題というのは中長期的に大変重要な問題ですし、エネルギー問題というのは解決するための時間がかかるわけです。いろいろなエネルギー構成を変えていくためにも、時間がかかるわけですし、早くここはしっかりしてもらわなければ困るということをまず申し上げておきたいと思います。
 それから今後日本全体、どう生きていくかということにも関係するわけでありますけれども、科学技術が万能とは思いませんが、技術開発というのはエネルギー問題でも大変重要でございまして、先ほど来出ていますように省エネにしろ、新エネにしろ、技術開発がキーポイントでございます。ここのところがどうも小泉改革も何か力が入っていない。格好いい言葉は出てくるんでありますけれども、予算の費目の名前は変わるのですが使われ方は変わっていないですね。やはりこれから日本がどうしていくのだということを明確にするためにも、実はエネルギーの技術開発、また新エネの技術開発というのは大変重要なのです。例えば新エネで、私はコスト的にも技術開発的にも有望なのは燃料電池と考えています。自動車、特に家庭での燃料電池の利用、それから産業での利用。これはあと一歩のところに来ているのです。ただ家庭での燃料電池利用の技術開発費を聞いて私はびっくりしたのです。実はガス会社が細々とやっていて、年間100億も使っていない。こういうことでは良くないと思います。あと一押し二押しがあれば、コスト的なことも含め、これが確実に家庭でも利用できるようになってくると私は思っているのです。そこがうまくいけば、これは相当なエネルギー革命と言えるような形にもなりますし、これとコジェネを絡ませれば、相当なエネルギーの効率的利用ということにつながってくると思うのです。
 もう一つは太陽光。これも技術的にはそこまで来ています。だが技術開発のコストをどれだけかけるか。時間×技術開発費というところまで私は来ていると思っています。この2つを早急に経済的にも合うように技術開発にかける。このことがエネルギー問題の手っ取り早い解決につながってくるのだと私は思っています。そこをぜひお願いしておきたいわけであります。まあ、コジェネを利用した分散型電源は既に利用がどんどん拡大しており、これはほうっておいても進んでいくと思っていますから、これはいい、効率的なエネルギー利用ということで、私はみんなでやっていけばいいと思っています。
 それから技術開発で、原子力の安全問題でも、例えば放射線の半減期を早めるという技術についても既にあるのです。これをどう早く使えるようにしていくかということを考えなきゃいかんだろうと思っています。やり方はいろいろあると私は思うのですが、そこのやり方とかお金の使い方が、今の政府、行政は、どうもうまく切りかわっていないというところを申し上げたいわけであります。
 それから国民を理解する活動を強化したい。私は大賛成でありまして、押しつけ型の国民に対するPRというのは逆効果だと思っています。ただ、国民は何を考えているか、そことの対話というのは非常に重要だと思っています。そのためにはやはり先ほども申し上げましたけれども、情報公開をきちっとやることが前提でなければならないということを再び申し上げたいわけであります。
 それからこの市民参加懇談会、私は良い試みだと思うのですが、ここへ来まして実はびっくりいたしました。こちらに並んでいるのは全員が団体の代表なのです。一言で言いますと。まあ団体の意見を聞いていただくのはありがたいのでありますが、市民参加懇談会という以上は、やはりこのテーブルに一般市民の方々も参加する形がいいのではないかと。後でいろいろな討論はあるようでありますが、初めから同じテーブルに着く形のほうが市民参加懇談会の名前にふさわしいのではないかということを感じております。以上です。
【中村委員】  ありがとうございました。それは後ほど木元主任からお話があると思いますが、「市民参加懇談会in東京」はこういう形になったのですけれども、ほかの場所ではまた違う形式ということになると思います。
【木元原子力委員】  違います。おっしゃったような形でもやっております。
【中村委員】  そのあたりはまたご説明を後ほどいたします。
【木元原子力委員】  はい。
【中村委員】  吉岡さん。
【吉岡初子氏】  もう大体言いたいことを言わせていただいております。
【中村委員】  この機会ですから、どうぞ。
【吉岡初子氏】  言い過ぎたかなと思っておりますけれども、今まで言ったことと重複する必要はないと思います。やはり、1つは、安全と同時に安心という、そういう問題があります。これは過去のいろいろな事故もそうですし、BSE問題もそうですけれども、やはり安心できるということがないと、なかなか納得はしないという、そういうことだと思います。
 その安心するために何が必要なのかということの重要なことは、村上さんもおっしゃいましたけれども、いかに情報を素早く公開するか、透明性を保つかという、そういうことが重要ではないかと思います。それと同時に、出された情報が理解できなかったら意味がありません。説明責任、わかるように説明するということがあわせて持たれなければいけないのではないかと考えます。
 そういうことから言いまして、今日のような市民参加懇談会が、拝見させていただいた資料の中では、随分あちこちで、各界の方々とやっていらっしゃるということで、ある程度の──ごめんなさい、ある程度としか言えないのですけれども、役割を果たしつつあるのではないか、そのように考えています。やはり、情報はわかりやすい形で、納得できるような内容が出されると同時に、双方向性をもって意見が交流する、そういうことで初めて納得につながっていくということになりますので、こういう会をもっと頻繁に持つということが非常に重要ではないかと考えます。
 もう最後の発言ですから、あまり文句は言わないでおこうと思います。
【中村委員】  いやいや、構わないですよ。全然構わないですよ。まあ、後ほどまた、意見交換のときにもご発言のチャンスはございますけれども。
【吉岡初子氏】  ただ、そういうことでご努力いただいて、ほんとうに安心できるような状態にしていただくということが先決ではないかな、そのように思います。
【中村委員】  ありがとうございました。
 すみません、飛ばしたわけでも、忘れたわけでもないのですが、鳥井さん。トリだから鳥井じゃないのですけど、鳥井さん、お願いします。
【鳥井弘之氏】  あんまりいつも文句ばかり言っているから、ここの部分だけは言わさないように……。
【中村委員】  いやいや、そんなことないですよ。
【鳥井弘之氏】  4点、申し上げたいと思います。
 1点目が、なぜ日本のエネルギー政策というのは日本のことしか考えないんだという話で、先ほど申し上げたように、世界にたくさん大きな問題があって、ああいう問題をきちんと日本がリーダーシップをとって解決していかないと、日本の国って成り立たないのですよね。日本の国は1国で暮らしていけるわけじゃないのですよね。例えば、日本は1億2,000万人で、世界は60億人ですよね。日本は世界の人口の2%しかいないのに、十二、三%のGNPを稼ぎ出しているわけです。それだけ世界のお世話になっているということなのです。世界の将来に向かって、我々は少し責任を持つ必要があるのです。そういう世界を視野に入れた技術開発をしないとだめだと。だけど、今までは日本のことしか考えてこなかった。
 それから2番目です。そういうせいもあって、日本の原子力開発というのは、アイソレートされた特殊法人の中でされていたのです。外から血が入りませんから、一度決めたら動かさなくて、成果を出さないほうがもっと予算が長々ともらえる。まあ、それはちょっと言い過ぎですけど、そういう状況の中でやられてきたということで、もっと開かれた技術開発の体制をつくらないとだめだと思います。
 それから3番目が、国策なのだか、電力会社の営業政策なのかよくわからないところをあいまいにしていたという点なのです。都合のいいとき国策と言い、都合のいいとき電力会社のあれだと、こう言ったわけです。国策なら国策で、最後まで国が責任を持つべきなのです。電力は民間企業だってなるので、それは、電力は自由にちゃんと自分の経営をできるエネルギー源を選択すればいいのです。
 4番目であります。原子力委員会は内閣府に移ったわけでありますが、内閣府にはもう一つ、総合科学技術会議というのがあります。総合科学技術会議というのは、大変精力的に日本の研究開発を全部取り仕切ろうとしています。原子力委員会は、総合科学技術会議に比べますと、活動の状況が見えてこない。少し活力がないのではないか、こういう感じがするわけです。総合科学技術会議と原子力委員会との関係というのはどういうふうにあるのかというのをもうちょっと整理をして、きちんと役割分担をして、果たすべきことを果たすべきだと私は思います。 以上です。
【中村委員】  ありがとうございました。ご指摘ありがとうございました。
 それでは、ここからは市民参加懇談会、コアメンバーの皆さんにも加わっていただいて、今、ご発言をいただいたご意見、陳述の皆様の発言、ご指摘と対話をしてみたいと思っております。
 コアメンバーで、まず、どなたでも結構です。それでは、吉岡教授からどうぞ。
【吉岡委員】  吉岡ですが、ご意見をいろいろ伺わせていただき、ありがとうございました。
 4点ほどコメントしたいのです。まず第1点ですけれども、これは招聘人のほうが我々より進んでいたというようなことも改めて感じました。テーマ設定に関してです。これに関しては、テーマ①②③とありますけど、①②については、私、随分いちゃもんをつけました。例えば、エネルギー需給はどうあったらいいかという1番のテーマですけど、自給率というのはあまり大した問題ではなくて、経済性と安定供給性と環境特性が3Eと言われていて、それに軍事的な問題と、もう一つ、安全性の問題、こういうものの総合評価で需給についての考え方を決めるべきだ。だから2行目は外せというふうな主張をしたのですけど、棄却されました。今日の議論では自給率というのはそれほど重点的なテーマでなかったようですので、より現実的な形で招聘人の皆さんのほうがとらえられたと私としては思います。
 ちなみに、エネルギーセキュリティーに関する最近の議論では、資源の枯渇というのはあまり現実的には考えられない。あるいは、備蓄でも耐えられないような長期の途絶というのも考えにくい。だから、価格の変動、これが主たるエネルギーセキュリティーの問題であり、自給率というのはあまり関係ない要因なのだというような、そういう議論が、自由化が優勢になるもとで多くなされるようになってきてます。そういう問題も考えると、この2行目はやっぱりなかったほうが我々としても良かったのじゃないかと思います。
 それから、2番のテーマの「必要か不要か」というのも、これもあまり皆さん議論されなくて、そのことは妥当だと思うのです。つまり、今から増やすか、現状維持か、減らすかというような、それが問題であって、「必要か不要か」という問題設定自体が意味がない。長期シナリオで規模を示せというように書きかえろと言ったのですけれども、このままで出てきてしまいました。現実にはそういう議論がされたと思いますので、①②については招聘人のほうが適切な認識をされて議論されたと思います。
 コメントの2番目ですけれども、電力自由化時代における適切な原子力についてのあり方の議論はどうあるべきかということなのですけれども、なるべく短めにしますけれども、政府がどこまで介入する権利があるかについては、一般産業以上に飛び抜けて介入する権利は恐らくなくて、インセンティブを与える程度である。発電手段の選択は一般的には経済競争で決まるのであって、安定供給性とか環境特性に優れたエネルギーがあるとすれば、その優れた度合いに応じて、別にエネルギーの種類が原子力だとか太陽とか、そういうことに区別せずに支援をするインセンティブを与える。それもできるだけ経済的な仕組みにおいて与えるというのが政府の役割である。こういう形での議論が、今の自由化時代に通用する議論だと思いますけれども、それについてのあまり深い議論は、今回は残念ながらされなかったですけれども、次回以降はしていきたいなと思います。
 それと、3番目、コストの問題ですけど、これはまた後でフロアの方からも議論されると思うのですけれども、発電単価5.9円といわれる。私、情報公開請求の指導教官みたいなことをやってきて、核燃料サイクルコストを公表せよというようなことを、一応、情報公開審査会に頼んでました。先週その答えが出て、一部開示という答えが出ましたけれども、実質的にはかなり開示されております。何で5.9円なのかというと、核燃料サイクル、再処理のコストを非常に低く見積もるような計算が行われています。つまり割引率を、利子率を3%として、3分の2の使用済み燃料を8年後に再処理をして、3分の1を50年後に再処理をする。その計算をすると、大体、現在価値換算では実費の半額ぐらいにカウントされます。私の言い方ではサバを読んでいる。だから、そういういろいろなことは開示請求すればそれなりに出ることはありますので、粘り強く、私もやりますけど、ぜひやっていただきたいなと思います。高レベルについては言いません。また聞かれれば詳しく言いますけれども。
 4番目は、政策の迷走ということを、特に村上さんがおっしゃったのですけれども、まさにそのとおりで、何で迷走するのかというと、私の意見では、担当している経済産業省というのがそういう組織だからというのが答えになります。
【中村委員】  コアメンバーは、ご意見は、今日はお控えください。後ほどまた。
【吉岡委員】  わかりました。
 つまり、さまざまな集団の利益を、特に生産者の利益を中心にバランスをとって反映させ、海外の圧力も反映させる。その結果として、こういう、どうも一貫性のないような政策が出ているのであって、それを一貫させるにはどうすればいいかについては、違う組織でやるのがいいというのが私の意見です。
 以上です。
【中村委員】  加藤さん、どうぞ。皆さんのご発言を、今日、お聴きになって。
【加藤委員】  さっきから、私は何のためにここに座っているのかなと思って伺っていました。あまり意見は言う場所じゃないらしいし。
【中村委員】  聴き役です、基本的には。
【加藤委員】  聴き役ですか。
【中村委員】  トランスファーするシステムだと思ってください。
【加藤委員】  1つ、これは今、お話しをされた方に対するではなくて、最初にむしろ木元さんと中村さんから、途中でしたか、六ヶ所村の話で、これは決まっていないのだと。
【木元原子力委員】  処分地としてね。
【中村委員】  最終処分地はね。
【木元原子力委員】  処分地として。まだどこも決まっていません。
【加藤委員】  実験とおっしゃいましたよね。
【木元原子力委員】  いえ、実験ではなくて研究です。どういう岩盤が良いのか。今、地層処分の方向ですから、地層処分する場合に、日本は国内に埋めようとしていますから、まあ、諸外国も全部そうですけど、その場合にどういう岩盤がいいのかという地層研究をしているところが岐阜県瑞浪市の東濃地科学研究所。それから、もう一つは、北海道の幌延になる。そのような段階です。
【加藤委員】  六ヶ所というのは、例えば、1つの候補地ということですか。
【木元原子力委員】  いいえ。それは知事とのお約束で、最終処分地にしないということで核燃料サイクルの施設を置いていますし、高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵をしています。
【中村委員】  その話、皆さんも明確にしておきたいですか。
【木元原子力委員】  それはもうご存じの方が多いのでは。
【中村委員】  会場にいらっしゃるようなので、はっきり言ってもらいましょうか。
【会場】  言いかかっているのだから、言わせたらどうですか。
【中村委員】  はい、わかりました。加藤さん、それで?
【木元原子力委員】  だから、青森の六ヶ所は処分地ではありません。
【加藤委員】  私は、それが1つの例かなと思って、今、伺ったのですが、私自身は専門家じゃないので、詳しくは知りません。ただ、何が言いたかったかというと、決まっていないというのであれば、それはいつ、どういう時点で、どういうプロセスを経て決めるのだということを明確にしない限り、決まっていない、決まっていないということだけでは決まっていないということにはならないということを私は申し上げたかったのです。
【木元原子力委員】  ありがとうございます。
【加藤委員】  ちょっといいですか。というのは、いかに多くの、例えばダムが決まっていない。しかし、20年間ぐらい、毎年数億円の金を使って調査をしてきて、もう100億円も使っちゃったからやらざるを得ないというので、ずるずると、そんな例は非常に多いわけです。ですから、私は、この会に参加したのは、そういうことを1つ1つきちんと説明して、その上で信頼を得ようという会だということだから、じゃあ、伺いますということで参加したのです。ですから、そういうことについての、きちんと具体的な説明がなければ、例えば、今日のいろいろな資料を配るというのも、これは大変いいことだと思いますけれども、日本全体のことについてエネルギーの消費量の資料を配ったところで、それは説明したことにならないわけですし、信頼を得るために議論しましょうという抽象的な日本全体の話をしても、私はやっぱり、なかなか説明にはならないのではないかなと。この会の運営のことをここで言うのは、また場所が違うかもわかりませんが、しかし、私は、そういうことをまさに、我々の役割というのは、やっぱりそういう、今伺った話の中で、さらにこの会を良くしていくには、いろいろ周りで聴いておられる方に、この会をさらにこういうふうにしたほうがいいのではないかと申し上げるのが私の役割かなと思ったものですから言うのですけれども。
【木元原子力委員】  わかりました。ありがとうございます。
【加藤委員】  なるべくミクロの時点で説明が大事なんじゃないかなと思います。
【木元原子力委員】  ここで、コアメンバー同士で討論をやる気はさらさらないのですけれども、大変ショックを受けました、加藤さんのご発言で。というのは、高レベル放射性廃棄物の処分懇談会というのが科学技術庁のときに、もう六、七年前に設立しまして、すべて公開のもと2年間かかって、どういうふうに処分したら良いかということを検討し、報告書を出させていただきました。全国展開もいたしました。それは新聞紙上にも出ましたし、いろいろなメディアも報道しました。今日は、前、核燃料サイクル機構、現在、処分の実施主体である原子力環境整備機構にいらっしゃる方もお見えですので、この件でご発言いただいたほうがいいかもしれません。それからその後ですが、その報告を踏まえて、今度は資源エネルギー庁の原子力部会で、高レベル放射性廃棄物の処分についてどういうプロセスでそれを行うかを審議し、報告書を出し、原案かなり討議しあい、法案をつくって国会に提出し、通りました。ですから、高レベル放射性廃棄物をどう処分したらいいかという報告書も法律もすでにできておりまして、まだ決まっていないというのは最終処分地が決まっていないということだけです。そこに至る段階にはどうしたらいいかという仕組み、組織、プロセスは法律で全部決まっております。
 そこで、実施主体として高レベル廃棄物の処分に関する原子力環境整備機構というのができました。それから、お金をどう集めるかという、お金を集める機関も決まりました。そして今、各候補地を決める場合には、手を挙げていただこうということになっています。地層処分の条件が研究開発の中で出てきたと。どういう岩盤が良いし、どういう地域が良いというデータをもとに、各地域で手を挙げていただこうと。そこまで決まっています。これから手を挙げていただく段階に入っています。その中で、さっき吉岡さんもそのことをおっしゃってくださったのは、法律もできているのだけれども、果たしてどこが手を挙げていただけるかということなのです。
 ですから、そこまで今日は申し上げると思っておりませんでしたし、それはご承知の上と思ってお呼びしているようなところがありましたので、そこがもしご存知ないのでしたら、お1人、お1人にまたご説明しなければならないのです。そこが、私がさきほど申し上げた、こちらは一生懸命やっている、法律もできた、これだけ国会でも論議された。だけれども、やはり届いていないところには届いていないということが実感としてあります。ですから、どなたかもおっしゃった、説明責任がないというのはそこの部分だろうと思うので、後で加藤さんとは話し合っていきます。
【中村委員】  そのぐらいにして、市民参加懇談会のほうとしては、別にまたちゃんとその辺は話し合っておかなければいけないことですが、今日は意見を述べていただいた皆さんとの意見交換ということで、小川さん、どうぞ。
【小川委員】  いろいろなご意見をお聞きして、いくつか皆さんにこういうことでよろしいのですねというご確認があります。コアメンバーの立場は、今日のご意見を次のコアメンバー会議で、今日を踏まえて原子力政策にどのように市民の皆様のご意見を反映するのかというところにあると思いますので、そういうような役割として発言したいと思います。
 まず、木元主任がいつも、日本人としてどのような──本当は鳥井先生がおっしゃったように世界人ということを考えなければいけないのでしょうが、まずは、私たちはどういうようなエネルギー生活をしていくのかというのが全体にあって、原子力政策もその先にあるということをおっしゃっていらっしゃいますね。それで、きょうのお話の中で、皆様方がエネルギー生活というものを今後どうしたいと考えていらっしゃるのかなというのをポイントにお聞きしていました。まず皆様がおっしゃっているのが、省エネルギーであると。村上さんのように生活改善活動という言い方でおっしゃっていた方もいらっしゃいました。省エネルギーというのを、まずきちっと生活の中に根付かせたいというような感じは皆さん強くお持ちになっていたと思います。
 それから、次に自然エネルギーですね。自然エネルギー導入に対する、とても好意的な気持ちというのもわかりました。省エネと新エネと一生懸命やっていて、その先、原子力は現状維持でいくのか。あるいは化石燃料はどうするのかというところが、私の理解ではお話の中で結論づけられなかったのです。
 省エネ、新エネを一生懸命やって、化石燃料と原子力の関係をどうするのかというのは、まだ原子力の安全性ですとか、安心の問題ですとか、風評被害対策や技術革新など、何らかの方向性ができて、それから考えられることなのかもしれませんけれども、原子力政策に反映していくとなったら、やはり省エネ、新エネを入れた後、化石燃料をどうするのか、原子力と化石燃料はどちらのほうが優先して考えられるべきなのかというのを、きょうのお話も踏まえて、さらにまたいろいろな日本全国で展開されるところの話も踏まえて、結論を見るというようなところに行くのかなと思います。それでよろしいと思うんですが、きょうの皆さんの話では、そこの結論までは行っていなかったですね。
【木元原子力委員】  何かご質問なさりたい?
【小川委員】  本当はお1人お1人に、その辺のところをお聞きしたいですね。省エネと新エネは、みんなだれもがやっていきたいというコンセンサスが大体できていると思うのです。その先、化石燃料と原子力というのをどのような案分で行くのかというところをお聞きしてもよろしいですか。
【木元原子力委員】  いや、まず、お聴きする会なので、こちらは、最初から意見を述べちゃいけない。いけないってこともないけど、そのご意見をより知るための質問ならば。
【中村委員】  いや、ただ、僕があえてそこのところで「じゃあ、どうします?」というふうに聞かなかったのは、先ほどご指摘があったように、きょうは個人よりも団体、組織の代表というお立場が一応あるので、そういう形で個人のご意見を伺っていいのかどうか、一応、了解を得ていないものですから、それで私があえて聞かなかったのですけど、でも、おっしゃることはそのとおりだと思います。
 結局、ベストミックスといいましょうか、何か1つで無理だというのはもう皆さんもご指摘になったとおりですよね。じゃあ、どうするのだ。大きな問題は、おっしゃるように、化石燃料をこれからどれぐらい使って、原子力はどれぐらいにするのというのが、我々にもし選択権があるとしたら、そこのところなのでしょうね、きっとね。一番大きいのは。
【木元原子力委員】  きょうは東京でやる初めての会ですから、コアメンバー会議でも、やはり団体の代表という形でご出席いただかないと何百人という単位になってしまうということで、こういう形にさせていただいております。
【中村委員】  いや、もうはっきり言うと、東京で市民を選ぶというのはどうしたらいいのだろうということで、今回は初めてだったので、皆さん、そういうお立場の方にお集まりいただいたのです。でも、市民ということだったら、本当は組織とは別に、個人ではどう思っていらっしゃいますかと伺わないといけないと思うのです。
【小川委員】  私の次のポイントがそこだったのです。きょうは代表の立場でいらっしゃっていますけれども、多分、個人のお考えも立派にお持ちだと思うので。
【木元原子力委員】  これから個人ということで伺って、ここからは自由闊達にお話しいただいたほうがいいと思います。
【中村委員】  今日のご発言の皆さんから、もし、重ねてご発言なりございましたらどうぞ。
【木元原子力委員】  今の小川さんの質問に対して。個人として伺ったほうが早いかもしれない。
【小川委員】  私の意見を言うということではなくて申し上げたいのですけれども、せっかくフロアに大勢いらしているので、少し、フロアの方のご発言をいただく時間を取らないとと思っていますが。
【中村委員】  それは取っております。
【木元原子力委員】  今のことに関しての、小川さんからの問いかけをどなたになさるか。
【中村委員】  それはどなたでもいいですよ。ご発言いただける方、どなたでも構わないです。
【木元原子力委員】  だけど、どなたかのご意見に対してそういう見解を持ったのだから、ずばりお尋ねしたほうが懇談になると思うのだけど。
【小川委員】  それでは、藤岡さん、いかがでしょうか。
【藤岡武義氏】  最初に、全国の生協の組合の調査による感覚ということで、新増設については一たん止めてほしいという機運だと解釈をしているというふうに言いましたとおりで、このところ出てきているのは、先ほど村上さんがおっしゃった、燃料電池です。燃料電池とコ・ジェネ分散型の発電が技術開発上も恐らく、もっともっと重点を入れるべきだし、先ほど村上さんから100億しか開発費用が使われていないなんていうご紹介があったんですが、その辺こそちゃんと誘導策をとるべきではないのかなと思います。
 もう一つ、私どもの内部でちょっと議論しているのは、そういえば、太陽熱温水器というのは、あれ、どうなったのだろうということで、調べてみますと、大変設置数が減っているんです。いろいろトラブルもあったのは事実なのですが、太陽光よりも、むしろエネルギー効率としては有効なはずなのにどうなのかと。これも誘導策が十分明確に示されていないというふうに思っております。だから、それが数値的に合うのか。つまり、その程度で間に合わないよという意見と、いや、省エネすれば大丈夫なはずという意見とか、いろいろあると思うんで、数値的な整合性を持った提案までは到底、私どもの力ではまだいかないわけです。だから、ベクトルとしてはそんなところかなと思っております。
【小川委員】  そうしますと、燃料電池を新エネルギーの一部としますと、技術革新の動向をある程度見てから、化石燃料と原子力ということについて研究するというような、今はそういうことですか。
【藤岡武義氏】  新エネルギーというのをどこ定義するのかというのは、何か議論があるようですね。
【中村委員】  水素を取り出す方法ですよね。それは石油を使えば化石燃料じゃないかと。
【藤岡武義氏】  そういうことです。
【中村委員】  ただ、燃料電池は非常に今、注目されて、特に自動車搭載になると、トヨタが先鞭つけて、ホンダがやりますから、相当いいところへ行くと思うのですけど、でも、コストですよね。
【藤岡武義氏】  ええ。先日聞いたら、今のところ見通せるのが、100万まで見通せると。家庭用でですね。補助金込みで量産効果を見たら、30万から50万という、これは研究者の学者の方が、そこまで行ければ何とかなるなという議論をされていると聞きました。
【中村委員】  ただ、現実にはまだ、アメリカが相当進んでいますけれども、その10倍ぐらいはまだ・・・・・・。
【藤岡武義氏】  今は1,000万のオーダーのようですからね。
【木元原子力委員】  私が申し上げるのは何ですけど、私は省エネルギー部会もやらせていただきまして、今度、京都議定書の批准もしましたし、もっともっと省エネが必要です。去年の7月に省エネルギー部会で答申を出したのです。5,700万キロリットル、これだけ省エネしなきゃいけないのです。どうやって削減できるのか。これは原油換算ですけど、5,700万キロリットルというと、日本中の全家庭のエネルギーの消費量の1年分です。そういうことでエネルギーの需要、供給を考えなければならないのです。
省エネ対策も全部出しましたが、さきほどから予算が出ているので、そのことだけ申し上げさせていただくと、省エネルギー対策費として1,312億円、これを計上します。それは運輸、民生といろいろなところに配分します。ナビも使います。後から森嶌先生にお話ししていただくかもしれませんけれども、国・環境省がお出しになった地球温暖化対策大綱というのがありますが、そこで個人の生活の部分で、28度を29度に設定するとか、いろいろな対策が打ち出されています。
【中村委員】  シャワー1分間。
【木元原子力委員】  シャワー1分間短くするとか、テレビの視聴時間を1時間短くするとか、いろいろあるのですけれども、そういうことではなくて、制度として、あるいはさきほど、どなたかがおっしゃった、省エネ機器の普及として、そういうことでやっていこうではないかというので、これだけ予算がとられています。
 それから、新エネルギーの定義も問題なのですが、これも予算が通りました。1,449億円。これだけでどれだけできるかという問題があるにしても、かなり配分を決めました。
では、原子力にどれぐらい使うのかというと、1,677億円です。ですから、政府関連予算では、新エネと省エネにかなり予算配分したということが言えるのではないかと思いますが、さきほどおっしゃったように、中身をどう使うかということでウオッチしなければいけないということは事実だと思うので、またご意見をいただければ幸いだと思います。
【中村委員】  会場の皆さんからのご意見も伺いたいのですけれども、コアメンバーの方からまず伺ってしまいましょう。
 井上チイ子さん。
【井上委員】  市民参加懇談会という、その市民という立場で参加していると私は思っています。こういう政府の、ある種、公の機関にこういう1人の市民が参加できるような時代になったのだなという意味で、私はここで得た情報を私の仲間たち、生活者、地域に伝えるという、そういう位置付けで私は皆さんの情報を伺って、これを持って帰りたいと思います。
 消費者というか、生活者というのは、1つ1つの専門的な領域に関しては、本当に何も知らないのですね。今日の皆さんのご意見を聞いて、すべての方の意見のすべてに、もう全部、なるほど納得、そうだそうだと思うのです。ですから、新聞を読んでも、いろいろなニュースを聞いても、これを聞けばああそうか、これを聞けばそうかと。決して自分なりのものを持てと言われても、そのことを勉強しているわけでもないですが、ただ感覚的に、例えば、それはまだよくわからないとか、どうしていいかわからないとか、それから、どっちの方向に向いていくかということに関して、ある程度、私たちはやっぱり国民ですから、国のサジェスチョンというのがあって、なるほどそういうほうに向いているのだなという社会の流れとか風というのはやっぱり受けたいわけです。できるだけ正確なものが知りたい。それから、ある種、そういう非常にきちんと専門的領域の中で発信された情報を知りたい。
 そういう意味で、この市民参加懇談会に出させていただくのは私にとってはうれしいし、私たちの仲間にとっても大変良いことです。そういう意味で、大変開かれている、1つの、私のような者が参加しているということの証明かなと思います。
 それから、先ほどから聞いていて、やっぱりよくわからないものに対して不安だとか、安全の保障とかというのは、あらゆる生活に出てくるわけで、特に、私たち、このごろ、野菜の問題とかBSEの問題だとかいうのは生活に直結しているわけです。それから見ると原子力というのは少し遠くなります。でも、風評を起こすということに関しては同じような行動をとったり、発想したりします。こういうことに関して日本の技術レベルはどの程度かよくわかりません。もし本当に高いのなら、何であんなすごい倍率のものがスーパーの店頭にまで並ぶのかというのがよくわかりませんし、国によって基準が違うということも、かくもあれほどの差があってオーケーなのかというのもよくわからないです。私たちが思うのは、言えば言うほど、例えば不安だとか、安全じゃないかとかいったことが、どこへ波及していくのかなと思ったときに、私たちは関西に住んでいますので、私たちの52%のエネルギーをもらう福井の立地地域の人たちは、不安だとか、安全じゃないとか、安心できないとか、なくてもいいとかいうことを聞かれる人たちがいるということ。この事実もちゃんと認識しないと、私たち、ただ使うだけで本当に省エネもやりますけれども、やっぱり必要なものは使うわけです。使うエネルギーを生んでくれる地域の、そこで生活をしている人たちに一方的な発想、体感の不安というものを言っていいのかというのは、ちょっとばかりわかってくるようになりましたので、この頃は、消費者、使う側として、それを生み出してくれるところの生活をしている人と交流をするということを少しテーマに今、持っています。それがここに参加させていただいたことの、大変大きな私たちの意識の変化と思っています。
【中村委員】  ありがとうございました。井上さん、実際にそれを生産地と消費地でやっていらっしゃいますからね。
【木元原子力委員】  今日、森嶌委員に座っていただいているのですが、この市民参加懇談会の副主査という形でずっとアドバイスをくださって、一緒にやらせていただいております。実は、森嶌委員は、高レベル放射性廃棄物の処分懇談会では、座長代理としておまとめいただいたのです。そういうお立場もありますので、今、いろいろな疑問が出ました。コアメンバーの中からも出ましたので、一言、やっぱり言っていただかなければ困ると思います。
【森嶌原子力委員】  高レベル放射性廃棄物の処分懇談会の検討の経過の説明等については、ちゃんとした報告書もありますし、さらに詳しいこと、例えば、加藤さんなどがお求めでしたら、いろいろなパンフレットも用意されていますので、後でお出しするといいと思うのですけれども、私が非常勤で原子力委員会に就任した動機というのは、原子力発電が先ほど鳥井さんからあった限界型の事態を迎えていながら、皆さんが評論するけれども、実は、あまり真正面から取り組んでいない、と感じたからです。国民にとってこれほど重大な問題を正面から、だれかが取り組まなければないということを痛感しました。高レベル放射性廃棄物処分懇談会の後、長計にもかかわったわけですが、私は原子力発電をやっている側から国民に対する説明責任が果たされていないのではないかと感じています。説明責任というのは、何もかも全部わかっているほうが説明をするという意味での説明責任なのですけれども、実際には、そうではない。日本のエネルギー問題にしろ、環境問題にしろ、根幹にあるところを、反対する方も含めて、お互いあまり触れないで、イエスとかノーという形で議論しているように思います。
 そういう意味では、今日、いろいろご意見をお伺いして、私が今までに原子力にかかわって以来、悩んでいることを皆さんご指摘なので、なるほどなというより、やっぱりこういうことをやらなきゃならないのだと感じました。この市民参加懇談会は木元さんのご提唱ではあるわけですけれども、これまでの原子力行政に一番欠けているところじゃなかったかと思います。もっと大事なことをどうするかということに、いろいろな立場で、一方的にこうなっているのだよというのではなくて、いろいろな立場から、先ほど多様性ということをおっしゃいましたけれども、政策についていろいろなチョイスを示しながら、こういうプロセスを通じて様々な意見を伺い、原子力委員会として、自分たちの責任で決めていかざるを得ないということを考えています。木元さんが期待された返事とは全然違うのかもしれませんけれども、やはり、こういうところで皆さんの建前ではなくて、本当に何が問題かという本音をお伺いしたいと思っています。
 私は原子力委員として、今日は、コアメンバーと違って、意見を伝える側ではなくて、最終的に皆さんの意見を伝えられる側におります。実は、市民参加懇談会は発足して結構時間が経っておりますが、実際に表に出てやるのは、いろいろな事情もありまして、これまでまだ2回だけです。しかし、こうした会合を開催する、この間、コアメンバーの方には、しょっちゅう出てきていただいています。これから多分、会場の市民の皆さんにもご意見を伺うことになると思うのですけれども、市民と団体の代表とはそんなに違うものか、それと同じように、原子力委員だから違うのかという問題はありますけれども、次の世代の安全の問題、エネルギーの問題、あるいは日常生活の問題を我々は考えていかなくてはいけない。その意味でみんなが知恵を、あるいは疑問をぶつけあいながら今後の原子力の問題を考えていく必要があります。このような会議だけでできるとは思いませんけれども、その一角をつくっていければと思っております。何か説明というよりも心情吐露みたいなことになりましたけれども、我々原子力委員は皆さんの意見を伝達される側ですので、十分にお聞きしたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
【中村委員】  ありがとうございました。
 ということで、残りの時間は、会場の皆さんからもご意見、あるいは今のコアメンバーを含めた発言に対する、あるいはご質問も含まれるかもしれませんが、会場からのご発言をお待ちしたいと思いますが、マイクを持って伺いますのでお話しください。
 この市民参加懇談会はすべて公開ということで、この議事録はホームページに掲載という形になります。恐れ入りますが、ご発言される方、どちらからおいでになったどなたかをお聞かせいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 今、手をお挙げになった女性がいらっしゃいます。
【岩下美知子氏】  原子力発電所のおひざ元です。新潟県柏崎市というところからまいりました。埼玉に出てきて、今、3年目なのですけれども。
【中村委員】  お名前を教えていただけますか。
【岩下美知子氏】  岩下美知子と申します。
 その土地にもう四十何年生まれ育ってまいりましたので、反対運動は三十数年続いております。福井の方も、福島の方も、同じような不安を抱えていらっしゃることと思いますけれども、風評被害とか実際の被害というものも、ある程度、もう発生しております。新潟県は皆さんご存じのとおり、お米を中心として、山の幸、海の幸、非常に豊かなところです。東京からおいでになった方が、日本のイタリアだとおっしゃってくださったぐらいのところです。
 だけれども、不安なのです。希望が持てないのです。私が子供を抱えて埼玉のほうに越してきたのは、結局、今、不況がありますけれども、新潟県はその上でもトップクラスで不況なのです。いろいろな原因があるかと思いますけれども、原発市であることの将来が見えない不安というのは水面下に、これは除きがたくあるのです。まして本当の風評被害になったら、だれが保障してくれるのか。さっき保障問題があるとおっしゃいましたけれども、全くその通りです。万一、保障問題がちゃんと話し合われたところで、あなた、じゃあ保障してあげるから命よこしなさいと言われて、うんと言えますか。とんでもないことです。私、思いました。
 ごめんなさい、ちょっと、今、あがっているので、それから腹が立っているので、ちょっと震えておりますけれども。ちょっと話は飛びますが、今日、この会場におられる背広を着ている皆さん、ネクタイを締めている皆さん、外は三十何度です。即刻脱いでいただきたい。省エネだ、何だかんだ言う前に、皆さんが日本のエネルギーの消費量をむだにどのぐらい使っていらっしゃるか。これだけいろいろな工夫がなされているのですから、ファッション革命ぐらいすぐ起こせるじゃないですか。暑い国には暑い国の服装があると思います。何もステテコにならなくたって、きりっと引き締まった背広のない服装というものもあるじゃないですか。それがまず省エネの第一歩だと思います。家庭で使われる消費量どうのこうのとおっしゃる前に。
 家庭は結局、決まった収入の中でしかやり繰りできませんから、まあ、省エネといっても限度があるのです。だけれども、仕事の上で使われるエネルギーというのは、まだ販売コストにかけてお客様にもらえる可能性があるから、どうしても控え目にならざるを得ないのです。それはある程度やむを得ないことかもしれません。だけれども、そういった、みんながやっているから、偉い方ほど背広をお召しです。そんな50年も100年も前のヨーロッパの涼しい国のマナーを、今、この暑い日本で守っている必要はないと思います。そういうことで、まず省エネに心がけていただきたいのが1番目・・・。
【中村委員】  ほかの方にもお伺いしたいので、そろそろおまとめください。
【岩下美知子氏】  すみません。
 まず、電力を命を張ってつくらされている土地の人間として、下手な電力のむだ使いをされるといきり立つというのが2番目にあります。
 それからもう一つ、これはまじめにお願いしていることなのですけれども、今、プルサーマルの燃料、さっきおっしゃったウランとプルトニウムの使い方なのですけれども、これをどこでつくるか。新潟も候補地に上がっております。前回、平山新潟県知事、国策ならそれに従うのが住民の務めだと新聞に書いてありまして、私、情けなくて泣きたくなりました。住民の命を簡単に言わないでほしいのです。だったら、関東の、なるべく関東の端っこじゃなくて、首都圏のど真ん中にそのプルサーマル計画を立ててほしいのです。まじめに言っています、私。地盤がどうのこうのいう問題じゃないです。
 まず、つくるにはどうしたらいいか。いろいろな問題点が出てくると思います。できないことの問題点が。それがそっくりそのまま、私たち、新潟、福井、福島の人間の問題なのです。だったら、新潟、福島、福井でつくられている分には感じないですか。さっき、日本人は日本のことしか考えないとおっしゃいましたけれども、関東の人間ばかりが日本国民ではないのです。
 それからもう一つ、大事なことです。消費者ばかりがすべてではないのです。すぐ、風評被害、何だかんだというと、消費者のデメリットばかり叫ばれますけれども、それに命をかけて、風評被害に流される生産者の皆さんの嘆きというものもあるはずです。
 その辺もしっかり考えて、どうぞご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【中村委員】  ありがとうございました。
 風評被害というのは、基本的に生産者の方がこうむる被害ですよね。それは先ほど、農業のほうからも漁業のほうからもご指摘があったと思いますけれども。
 ほかに。きょうはご意見を伺いますので、時間の許す限り。
 では、そちらの女性、お願いします。
【浜口氏】  私は浜口と申します。墨田区で原子力委員会をずっと傍聴している者です。環境問題に興味がありまして、科学技術で、原子力は興味が全然なかったのですけれども。それに、あまり人の足引っ張るのは好きじゃないので、まあ、批判しないでいたのですけど、もんじゅのことがありまして、あと、情報公開がありましたから、原子力委員会に傍聴に行くようになりまして、環境問題に原子力が一番有効だと思ったのです。私は、三重県の伊勢志摩出身なのですけれども、豊かな山がどんどん公共工事も含めて、なくなっていくのは耐えられないわけです。それで、原子力委員会にいきましたら、東南アジアなんかの、ああいう鉱山の鉱毒で苦しんでいる人たちのお話も聞いたら、そういうのを知りますと、やっぱり原子力が少ない自然破壊で済むだろうと思って、それでずっとサポーターをやっているのです。
 今日は、私は、団体の方がいらっしゃってという話があって、団体の方の背後にはすごいたくさんの人間がいるわけですから、その人たちのお話、もっと身近なことが聞ければ良いと思ったのです。特に、東京はヒートアイランド現象がありますし、それぞれ団体労働者の方は労働者の問題としてありますし、生活者は生活者の問題があるわけですから、そういう具体的な話が聞きたかったのですが、東京と言いながら東京の話が全然出てこないのはちょっとと思ったのです。
 でも、私の質問したいことは、新潟の方が立たれましたので、反論をしたくて手を挙げたのです。私は新潟の人が、JCOの事故があったとき、東海の役場を見て、テレビで知りましてびっくりしました。あんな立派な建物を建てているのかと思って。そうしましたら原子力の関係のところというのは、多分、みんなああいうものだろうと思ったのです。ですから、新潟の方はそういうふうに言われますが、本当に地方のそういうところにない地域の住民から思いましたら、本当に立派なところで、皆さん満足して、それで原発は怖いと言って、文句言っているんだなと思って、幸せな人たちだなと思っているのです。
 それと、新潟は、私は一番、環境問題の元凶は田中角栄だと思っているのです。ですから、本当に新潟の公共工事ですね。私の田舎も昔の町長さんたちはみんな立派な人たちでしたよ。それが10年か15年ぐらい前から、ほんとうにもう、ミニ角栄みたいな人たちみたいな人たちばっかりで、もう、自然破壊がですね、私は耐えられないのですよ。だから、農業団体も含めて、ですから、自分たちの文句を言う前に、そのことを考えてくださいよ。その元凶を。
【中村委員】  浜口さん、ありがとうございました。
【浜口氏】  農業問題も含めてそうですよ。私、フードシステム学会にも行っていますから、米問題で新潟の方が来ておられまして、新潟の方は、今、米の問題で困っておられます。それで、実態を聞きました。農家の経営実態はどうか。そうしましたら、あの大規模化をして、田中角栄あたりで、都市の人間が農地を買った人たちは、地価をあれして、もうけて、全然苦しんでいないのです。だけど、規模開発だといって、後から参入して、バブルの前ごろからしました人たちは、地代でものすごいダメージを受けているはずなのですよね。
 ですから、その辺の実態も含めて、新潟には新潟のいろいろ苦労もあると思うのです。ひどいところは、大体、田中角栄がいれば、私の田舎よりもっとひどいだろうと思いますからね。ですから、その辺のところも含めて、文句ばっかり言って、安全性とかって言っていないで、全体として考えていただきたいと思います。
【中村委員】  ありがとうございました。
 だんだん時間もなくなってきましたけれども、できれば我が国のエネルギー政策、あるいは原子力委員会、よく見えないというお話も先ほどありましたけれども、そのあたりについての会場の皆さんからのご意見を伺えればなと思いますが、どなたか。
 同じ方同士で発言されるのはちょっとご遠慮いただきたいと思います。また別の機会にぜひ参加していただきたいと思います。
【日下氏】  神奈川県の藤沢市からまいりました日下と申します。
 ちょっと、この市民参加懇談会の企画に関して質問というか、ちょっと理解できなかったのですけれども、やっぱりコアメンバーの方々でいろいろな方々を呼んでいらっしゃって、また市民というか、ご意見を伺う会としていろいろな団体の代表の方が来て意見を言っていらっしゃるけれども、懇談会というから対話をするところかと思っていたのですけれども、意見を聴くだけの場所で、会場からの意見が出ても返事もないし、こちらの市民の意見を聴く方として呼んでいらっしゃる団体のメンバーの人から意見を言っても、コアメンバーの人は意見を言う場ではなく、聴きおく位置付けというのがちょっと理解しがたかったので、今後、もうちょっと明確に、どういうふうな位置付けで、どういうふうに市民の意見を聞いて、対話でやるのか、もしくは意見を聴く会ならば、懇談会という名前は ちょっとふさわしくないんじゃないかなと思いましたので、意見を言わせていただきました。
【中村委員】  ありがとうございました。
【木元原子力委員】  ありがとうございました。この会は、東京では初めて開催するのですが、一番最初に原子力発電所のある新潟県刈羽村で開催させていただいたのです。そのときには、地元の方と共同でコアメンバーが打ち合わせをして、どういうテーマで、何月何日でどういう場所で何人ぐらいの規模でやろうかと。そのときに、懇談会というものの、だれかが発言して、何かの問題提起をしなければいけないだろうと。その問題提起の役割は地元からとこちら側と少しずつ出したらどうかと、いろいろなことを話しながらやりました。
 今日はちょっとフォーマルなのです。前回は、もっとひざ突き合わせて、こんなテーブルもなく、みんな、周り1メートルぐらいのところでひしめき合っているような感じでやりました。今度は、柏崎市でやらせていただこうと思って、地元の方とお話をさせていただいております。ですから、おっしゃっていただいたように、私がさきほどから申し上げているのは、こちら側にまず問題提起として、こういうテーマで、こういうことを考えているとおっしゃっていただき、そこから懇談していきたい。聴き役というのは、最初の方のご意見を聴いて、そしてそれを反映して自分が話すのは懇談だろうと思うのですが、意見をこちら側も同じように述べるという形ではないという意味です。
 ですから、おっしゃったような懇談、対話というか、もっとざっくばらんに、ご意見の意味が分からなければ、さえぎっておたずねすることはしたいです。これからも頑張っていきたいと思いますので、またご参加いただけますか。
【中村委員】  日下さんのご指摘はごもっともだと思うのですけれども、実は、市民参加懇談会の進め方というものについても、まだ暗中模索している段階です。ケース・バイ・ケースでいろいろなタイプを今、試みているところです。今日の形で、私自身も良い部分もあったし、今のご指摘のように歯がゆい部分も多分、参加の皆さんにおありだろうと思うのです。討論会にせずに意見交換をする市民参加懇談会というのを今、模索している最中というのが現実的なところです。ですから、とにかくこれから重ねていきたいと思いますので、今日、歯がゆい思いの会場の皆さんも多々いらっしゃると思いますが、ぜひ、これからもご参加をいただきたいと思っております。
 申しわけないのですが、会場の都合等もございまして、そろそろ終わらせていただく時間となりました。
 最後に、木元主任のほうからごあいさつを頂戴しますけれども、改めまして、当方の不手際も多々ございましたけれども、ご意見を述べていただきましたご参加の皆さん、どうもありがとうございました。コアメンバーの皆さん、ご苦労さまでございました。会場の皆さん、最後まで参加いただきましてありがとうございました。これで「市民参加懇談会in東京」のスケジュールを終了させていただきます。
 最後に、木元主任の方から皆さんにごあいさつして閉会させていただきたいと思います。木元さん、お願いいたします。
【木元原子力委員】  中村さん、ありがとうございました。私は主任といっても、お手伝いという感じで参加しているのですが、今日の会、私もこれは決して100%うまくいったというか、納得できる状況にはないと思います。コアメンバーの中でもいろいろな立場の方に参加していただいて、その中でかなりやり合っています。いろいろな立場の方のご意見を伺い、今日の会も、大消費地はどうだろうとご要望があったので、東京でとにかくやることにしました。どの程度のことができるのかというのは、今、中村さんがおしゃってくださったように暗中模索のところがありますし、走りながらやっていくという部分もありますが、先ほど、水野さんからのご意見の中にもありましたけれど、もう少し小規模で、十五、六人ぐらい、さっき申し上げたように、ひざ突き合わせたものもしていきたいと。いろいろな形で細かく展開していきたいなと思います。
 それから、今日ご意見を述べてくださった方の間同士の中でお話し合いがなかなかできなかった。このことも反省材料だと思います。それぞれがそれぞれのご意見を述べ合うだけが意図ではありませんので、そこのところを踏まえ、今日はアンケート用紙も配らせていただいておりますので、忌憚のないご意見をいただければと思います。
 それから、一般でお申し込みいただき、今日ご参加いただいた方の中には、それぞれ問題をご自分でお感じになりながらお聴きいただいたかと思いますので、またその中で、私どもに対して、こういう形であればもっとわかりがいい、自分たちも説明しやすいというようなことがありましたら、ぜひお書きになっていただければ、あるいはお申し出になっていただければ幸いに思います。
 まだまだ始まったばかりです。評価も若干いただいておりまして、大変うれしいのです。ですから、市民参加懇談会をいろいろな形で、いろいろな場所で続けさせていただきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。本当にありがとうございました。
【中村委員】  それでは、これで閉会させていただきます。ありがとうございました。

── 了 ──